【議院運営委員会】参院特定枠関連歳費法案が可決/徹頭徹尾、党利党略の法案/日本共産党は反対

 参院比例の特定枠導入に関連し、参院議員が歳費を自主返納できる歳費法案(自民・公明・無所属クラブ提出)が、自民・公明・国民民主などの各党の賛成で可決しました。日本共産党、立憲民主などは反対しました。

 私は、採決に先立つ質疑で、2009年の最高裁判決を発端として行われてきた参院選挙制度改革について、自民党が2012年に「4増4減」、2015年に「2合区10増10減」で抜本改革を先送りし続けたうえ、2015年改定の附則に「抜本的な見直し」が盛り込まれていたにも関わらず、昨年は比例代表に「特定枠」を導入したと指摘。

 提案者の岡田直樹参院議員(自民)は、地方の声を届けるための改定で抜本改革であったと強弁する一方で、自民党としての抜本改革は合区解消の憲法改正であると答弁しました。

 抜本改革を棚上げするだけでなく、改憲の口実に使うとは、まさに自民党の党利党略。また、自民党の特定枠利用について質問すると。

 岡田氏は「合区の候補者とならなかった者が特定枠の候補となる」と答えました。

 合区で自民党の議員・候補者を救済するため、自民党が党内で解決すべき候補者調整を、選挙制度改定で解消する党利党略で、国民の理解は得られない。

 さらに、今回の法案は、このような国民の批判をかわすために持ち出してきたものであり、徹頭徹尾、二重三重の党利党略の法案は、断じて認められない。

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「議事録」(質疑)

<第198通常国会 2019年05月17日 議院運営委員会 30号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 本法案について、自民党の提案者、岡田議員にお尋ねをいたします。
 本法案の提出の理由、背景ですけれども、今回の法案が提出された大もとには、当然、昨年の参議院選挙制度改革に伴う公選法の改正がある、そういうことでよろしいでしょうか。

○岡田(直)参議院議員 塩川先生からは、去年、参議院の公選法改正についても御下問をいただきましたが、そのときも申し上げたとおり、昨年の参議院の選挙制度に関する公選法改正に際して、参議院の倫理選挙特別委員会において、「定数の増加に伴い、参議院全体の経費が増大することのないよう、その節減について必要かつ十分な検討を行うこと。」という附帯決議が行われたところでありまして、このことが今回の法案の基礎になっているということでございます。

○塩川委員 昨年の公選法における附帯決議を踏まえての措置ということであります。
 でも、そもそもその昨年の参議院選挙制度の改革というのは、二〇〇九年の最高裁判決が投票価値の平等の観点から仕組み自体の見直しを提起したことを発端にしております。
 我が党は、現行制度を抜本的に見直し、多様な民意が正確に反映される比例代表を中心とした選挙制度にすべきと提起をし、各党の合意を形成する努力を続けてまいりました。ところが、自民党は、二〇一二年は四増四減で糊塗し、一五年にも二合区十増十減で抜本改革を先送りしたわけであります。
 一五年の改正法附則には、「抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする。」と明記をされていたわけです。
 昨年の改正法というのは、このような参議院選挙制度の抜本的見直しと言えるものなのか、この点についてお答えください。

○岡田(直)参議院議員 参議院選挙区に合区の導入などを行った平成二十七年公選法改正附則の検討条項には、塩川先生御指摘のとおり、参議院のあり方を踏まえて、選挙区間における議員一人当たりの人口の格差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて検討を行い、結論を得るとしていたところであります。
 それに基づいて、平成三十年の公選法改正は、この検討条項を踏まえて参議院改革協議会において参議院のあり方が検討されてきたことを念頭に置きながら、まず、選挙区間の定数格差の是正として、最大格差を三倍未満とする改正を行うとともに、比例選挙において、これまでの非拘束名簿について拘束式の特定枠を設けることができるようにすることで、政党の選択肢を広げ、少数派の民意など多様な民意を国政に反映できるようにするものでありました。
 本年の参議院選挙が一年後に迫る、そういう状況の中では、このような内容の改正が行われたことについては抜本的見直しと言い得るものであったというふうに考えております。

○塩川委員 いや、もともと二〇〇九年の最高裁判決は、都道府県で各選挙区定数を設定する現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法措置により一票の格差の是正を求めたわけであります。つまり、都道府県単位の選挙区という枠組みそのものを踏まえた抜本的な見直しを行うということであって、それが何で、これが抜本的な見直し、抜本改革なのか、全く違うんじゃないですか。

○岡田(直)参議院議員 都道府県単位の選挙区というもの、これが政治的、社会的、経済的に一つのまとまりとして選挙区としての意義を有することは、その後の最高裁の判決においても判示されたところと承知しておりまして、我々は、一票の格差を縮小して、三倍をまず切る、そのことと同時に、やはり、人口少数、我々にすれば、大変切実な、地方六団体の決議であるとか、あるいは三十五に上る県議会の合区解消の意見書といったものも踏まえて、地方のなかなか反映されにくい声を国政に届ける、こうした切実な問いに対する答えとして特定枠ということも考えたわけでありまして、これは、拘束名簿式を一部導入するという意味では抜本的な改革というふうに考えております。

○塩川委員 全く納得できない。
 そもそも、だって、昨年、安倍総理自身がこの選挙制度改革は臨時的な措置と言っていたじゃないですか。そういうものだったんでしょう。

○岡田(直)参議院議員 それは、クエスチョンタイムで安倍総理が自民党総裁としての考えを述べたということでありますが、これは自民党では、憲法改正をもってこの合区を解消すべし、それが地方六団体やその他の地域から求められている切実な声でありますので、我が党としてはそれが抜本的な、恒久的な選挙制度改革と考えている。今回は合区解消というのはできないわけでありますから、その意味で臨時特例的と、総理がそのように発言をしたんだと思います。

○塩川委員 そもそも、最高裁は投票価値の平等を求めておるわけで、憲法改正を求めているわけではありません。抜本改革を棚上げするだけではなくて、選挙制度の抜本改革を改憲の口実に使おうとすることは、まさに自民党の党利党略だと言わざるを得ません。
 抜本改革を投げ捨てた昨年の改正法においてとりわけ重大なのが、比例代表に特定枠を持ち込んだことであります。自民党はこの比例特定枠をどのように利用されるんですか。

○岡田(直)参議院議員 特定枠は、人口の減少により国政に代表を送ることができなくなった人口少数県を始め、少数派、マイノリティーと言ってもいいかもしれません、その民意を含む多様な民意を国政に反映できるようにする趣旨で私どもは導入をいたしました。
 特定枠をどう活用するかについて、また活用しないかについては各党の御判断に委ねられておりますが、自民党の考えでは、先ほどから申しております、地方からの切実な、都道府県単位で地方の声を国政に反映してほしいという声に配慮をして、人口的にマイノリティーともいうべき人口少数地域の声を国政に届けるような特定枠の活用法を想定しております。

○塩川委員 具体的に、合区のところの島根、鳥取と徳島、高知、そこで、選挙区で出ない候補者のいる県から特定枠を使うということですね。

○岡田(直)参議院議員 現在も、参議院選挙が迫っておりますが、鳥取、島根合区のうち、島根出身者で今回は合区の候補者とならなかった者、これが、今衆議院議員をなさっておられますけれども、特定枠の候補になり、高知、徳島選挙区においては、徳島県の現職議員が特定枠候補となって、その地域の民意を集約しつつ、全国民の代表として働くところであります。

○塩川委員 本来、合区の中で対応するということであれば、この制度の中で自民党内で調整する話のものであるわけです。ですから、比例特定枠の導入というのは、自民党が党内で解決すべき候補者調整について、選挙制度の方を変えることで解消しようとする、まさに党利党略の仕組みということになるんじゃないですか。

○岡田(直)参議院議員 私どもは党利党略とは考えておりませんで、これはあくまでも地域の代表者としての、これは本当に、選挙区には一票の格差を考えると現在立ち得ない、そういう都道府県からも、事実上民意を媒介する、そうしたものを比例特定枠に入れている、そういう考え方でありまして、地域のために行うということで、党利党略ではございません。

○塩川委員 いやいや、本来、党内で候補者調整をすればいい話なのを、選挙制度の方を変えてこれをごり押しするということを党利党略と言うのは当然のことじゃないでしょうか。合区によって立候補できない自民党の議員、候補者を救済する党利党略そのものであります。到底国民の理解は得られません。
 このような党利党略の特定枠導入に対する批判をかわすために歳費削減を持ち出してきたというのが今回の法案であって、この点でも、徹頭徹尾、党利党略と言わざるを得ない。二重三重の党利党略の法案は断じて認められない、このことを申し上げて、質問を終わります。


「議事録」(反対討論)

<第198通常国会 2019年05月17日 議院運営委員会 30号>

○塩川委員 日本共産党を代表し、自民党など提案の参院比例特定枠関連の歳費法案に反対討論を行います。
 本案は、参院選挙制度改革に端を発したものです。二〇〇九年の最高裁判決が投票価値の平等のため仕組み自体の見直しを提起したことを受け、各党による議論を重ねてきました。
 我が党は、選挙制度を抜本的に見直し、多様な民意が正確に反映される比例代表を中心とした選挙制度にすべきと提起し、合意を形成する努力を続けました。ところが、自民党は、二〇一二年に四増四減で先送りし、二〇一五年は二合区十増十減で糊塗したのであります。
 一五年改定では、「抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする。」と附則に明記されていました。しかし、昨年、自民党が強行に成立させた参院選挙制度改定は、抜本的な見直しの一つと強弁する一方、憲法改正こそが抜本的な改正であると答弁したように、選挙制度の抜本改革ではなかったことは明らかです。
 しかも、抜本改革を棚上げするだけでなく、改憲の口実に使うことは、およそ責任ある政党とは言えません。最高裁判決が求めたのは投票価値の平等であって、憲法改正ではありません。まさに自民党の党利党略で選挙制度を改悪したのであります。
 昨年の改定でとりわけ重大なことは、比例代表へ特定枠を持ち込んだことです。自民党は、比例代表において多様な民意の反映などの観点から特定枠を導入したとしていますが、選挙区から参議院議員を送り出すことができない合区対象県に特定枠の活用を考えていると答弁しました。合区によって立候補できない自民党の議員、候補者を救済するということであります。
 結局、自民党が党内で解決すべき候補者調整を制度改定によって解消するという党利党略であることが明白になったではありませんか。到底国民の理解を得られるものではありません。
 そして、自民党は、このような特定枠導入に対する批判をかわすために、参議院議員の歳費削減を持ち出し、歳費を自主返納できるとする本案を出してきたことも、党利党略でしかありません。
 徹頭徹尾、二重三重の党利党略である本案は断じて認められないと申し上げ、反対討論を終わります。(拍手)