関東地方の主な米軍・自衛隊施設に関する2020年度概算要求の内容が明らかになりました。2020年度概算要求のポイントは
1)空自入間基地の施設整備費が突出して大きい
来年度の概算要求で入間基地の施設整備費は139億円。2014年度から2019年度までの予算額及び来年度の概算要求額を合わせると、この7年間で464億円。単一の既存の自衛隊基地・駐屯地における施設整備費としては、他に例がないほど極めて大きな額になっている。(この5年間では、奄美の駐屯地新設500億円、海上作戦センターや係留施設など横須賀地区の複数の施設で600億円など)
内訳をみると
①自衛隊病院関連154.6億円
②災害対処拠点地区関連58.8億円
③C2受け入れ関連86.2億円
④次期電波情報収集機受け入れ関連56.1億円
⑤航空医学実験隊移転関連34.4億円
⑥航空安全管理隊移転関連18億円
――など。複数の事業が並行して進められていることがわかる。
2)空自入間基地の電子作戦群の強化
入間基地には航空戦術教導団電子作戦群が配備されている。主な部隊は、レーダー妨害に対する対処訓練用の「電子戦隊」、電波情報収集の「電子飛行測定隊」、レーダー運用能力の評価を行う「レーダー評価隊」。この間、C2を母機とした次期電波情報収集機配備に向けた予算が計上(約56億円)されてきた。
来年度の概算要求では「効果的な電波妨害を実施することにより自衛隊の航空作戦の遂行を支援するスタンド・オフ電子戦機の開発」を掲げている。「通信妨害能力に次いで、レーダー妨害能力の向上といった段階的な開発を取り入れ早期装備化を図る」「C-1とYS-11の2機種を統合し、C-2を母機にして開発する」と説明している。2026年度末の配備をめざしている。これは、「電子戦隊」の強化を行うものになる。
スタンド・オフ電子戦機は「政府が否定する敵基地攻撃能力の保有につながる可能性があり、『専守防衛』との整合性が問われそうだ」(「毎日」2018.7.29)とされている。
3)施設整備費の概算要求計上額の非開示について
今回初めて、一部の施設整備費について概算要求計上額を非開示にしている。「予定価格が類推されることから提示不可」として「少額(1億円にはならない)であり、一工種に限定されるものについては、参加事業者が予定価格を類推できないようにすることが必要」と説明している。
4)米軍・自衛隊施設立地自治体への説明責任が尽くされていない
私が施設整備費について資料要求している米軍・自衛隊施設は20以上に上るが、地元自治体に概算要求について説明資料を提出しているのは、米軍厚木基地及び主要な航空自衛隊基地(入間基地、百里基地、府中基地など)に限定されている。米軍横田基地や陸自駐屯地、防衛医科大学校などについては行われていない。
詳細は以下の通りです。
1.米軍施設(横田飛行場、所沢通信施設、大和田通信所、厚木海軍飛行場) | ||
横田飛行場提供施設整備 | 歳出ベース 28億5600万円 |
契約ベース 9億3600万円 |
駐機場(老朽更新、CV用ではない 新規)、ユーティリティ(給電・給水 継続事業) | ||
厚木海軍飛行場提供施設整備 | 歳出ベース 13億1600万円 |
契約ベース 11億1600万円 |
汚水排水施設調査5200万円、雨水排水施設本工事10億2400万円、ユーティリティ(給電)本工事4000万円。いずれも継続事業 | ||
所沢通信施設及び大和田通信所 | - | - |
関係する経費は要求していない |
2.陸自駐屯地(朝霞・大宮・相馬原・宇都宮・北宇都宮・勝田・土浦・霞ヶ浦・古河・習志野・木更津)及び空自基地(百里・熊谷・立川・横田・府中・入間)における「施設整備費」 | |
朝霞駐屯地 | 約24億円 |
朝霞市公共下水への接続工事負担金0.6億円(2021年度に完成予定)。隊舎の新設12億円(女性自衛官教育隊舎の狭隘化による施設整備)。整備場の新設11億円(16式機動戦闘車整備のため。「2020年度末に配備される予定だが、現時点で配備部隊は未定」という。偵察隊を偵察戦闘大隊に衣替えし、機動戦闘車を配備する計画か。今年度、第一師団の偵察部隊が使用する庁舎新設経費3億円が計上されている) | |
相馬原駐屯地 | 約24億円 |
隊庁舎の新設(部隊供用の既存施設の狭隘化のため) | |
土浦駐屯地 | 金額不明(予定価格が類推されることから提示不可との説明) |
隊舎(部隊供用)の改修 | |
霞ケ浦駐屯地 | 金額不明(予定価格が類推されることから提示不可との説明) |
実習場の改修(UHXヘリ整備要員の教育実習のため) | |
習志野駐屯地 | 約4億円 |
隊舎(部隊供用)の改修4億円(2棟の空調設備改修)。調査工事数百万円(隊庁舎の狭隘化による建て替えのための測量) | |
木更津駐屯地 | 金額不明(予定価格が類推されることから提示不可との説明) |
格納庫の補修(既存施設の老朽化対応。オスプレイ関連ではない) | |
百里基地 | 金額不明(予定価格が類推されることから提示不可との説明) |
燃料設備の改修(燃種変更に伴う機器の追加) | |
熊谷基地 | 約5億円 |
武道場の建替え(老朽更新。剣道場、柔道場を一か所に集約) | |
府中基地 | 約41億円 |
庁舎の新設28億円(航空中央音楽隊の庁舎新築)。庁舎の建替12億円(航空開発実験集団司令部庁舎の耐震対策)。庁舎の改修0.8億円(宇宙作戦隊(仮称)の配備。宇宙状況監視(SSA)システムの運用の拠点として活用) | |
入間基地 | 約139億円 |
燃料貯蔵施設の新設17億円、倉庫(貨物ターミナル)建替え11億円、誘導路の改修7億円(いずれもC2受け入れ関連)。航空医学実験隊(1・2部)庁舎の新設16億円。航空安全管理隊庁舎の新設18億円。受配電設備の老朽更新8億円。自衛隊入間病院の整備53億円(付属棟、教育棟、病院3期工事)。災害対処拠点地区等の整備10億円(訓練場、構内道路、雨水排水)。調査工事0.4億円(基地内のユーティリティ・ライフラインの管路調査) | |
大宮駐屯地、宇都宮駐屯地、北宇都宮駐屯地、勝田駐屯地、古河駐屯地、立川基地、横田基地はなし | |
― |
3.陸上総隊隷下の部隊(司令部および司令部付隊、第一空てい団、第一ヘリ団、中央即応連隊、特殊作戦群、中央特殊武器防護隊、対特殊武器衛生隊、国際活動教育隊、中央情報隊、システム通信団、水陸機動団)及びその他の主な部隊に係る概算要求額(装備品等) | |
陸上総隊司令部及び司令部付隊(朝霞) | 計上事業なし |
― | |
第一空てい団(習志野) | 約1.9億円 |
空挺傘損耗更新など | |
第一ヘリ団(木更津) | 約0.9億円 |
フォークリフトなど | |
中央即応連隊(宇都宮) | 約800万円 |
サーチライトなど | |
特殊作戦群(習志野) | 約1.7億円 |
― | |
中央特殊武器防護隊(大宮) | 約1.0億円 |
除染車1両 | |
対特殊武器衛生隊(三宿) | 約0.1億円 |
生物剤対処用衛生ユニット維持 | |
国際活動教育隊(駒門) | 計上事業なし |
- | |
中央情報隊(朝霞) | 計上事業なし |
- | |
システム通信団(市ヶ谷) | 約6.0億円 |
無線搬送装置 | |
水陸機動団(相浦) | 約10.9億円 |
水中偵察装置(水際機雷探知)など | |
大井通信所(ふじみ野市) | 約3900万円 |
保全警備システムの保守整備293万円、通信所警戒監視要員(役務)の確保3630万円 | |
防衛医科大学校(所沢) | 約171億円 |
患者医療費41億円、学校機能維持費85億円、インフラ整備費27億円、医療備品整備17億円、防衛医学研究センター0.4億円 | |
航空医学実験隊(入間) | 約2.6億円 |
訓練機材(遠心力発生装置、操縦者作業負担度測定装置)の保守点検整備2億円、訓練用教材経費0.1億円、常圧低酸素訓練装置0.5億円 | |
航空機動衛生隊(小牧) | 約400万円 |
機動衛生ユニット維持費 | |
陸自化学学校(大宮) | 約570万円 |
学校教育に必要な消耗品、教材等の経費 | |
航空戦術教導団電子作戦群(入間) | 約1.9億円 |
電子戦教育装置の換装 |
※参考資料
防衛省2020年度概算要求説明資料【百里基地】 画像クリックでPDFが開きます→ |
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防衛省2020年度概算要求説明資料【府中基地】 画像クリックでPDFが開きます→ |
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防衛省2020年度概算要求説明資料【入間基地】 画像クリックでPDFが開きます→ |