【内閣委員会】台風19号被害/都幾川堤防/「越水」ではなく「決壊」/誠実に被害と向き合え

 昨年10月に発生した台風19号の被害にあった、埼玉県東松山市を流れる都幾川の堤防の被害状況について質問しました。

 国土交通省は、都幾川葛袋地点の被害を「越水(川の水が堤防を越えてあふれ出したが、堤防そのものは残っている状態)」と発表しています。

 私は被災翌日に現場調査に入った際に撮影した写真(写真下↓)を示して、当該箇所の堤防はえぐられ、そっくり流されている。これは「越水」ではなく「堤防決壊」ではないか、と質問。

 御法川信英国土交通副大臣は「調査報告は現地の事務所(荒川上流河川事務所)が行ったもので、越水と整理されているが、塩川議員からの指摘もあるので、現地事務所に改めて被災状況を分析・検討させていきたい」と答えました。

 私は、当該箇所のすぐ下流部には民家も田畑もあり、浸水被害を被っている。国交省の認識が越水ということでは住民の方は納得がいかないのではないか。国交省の誠実さが問われる問題であって、放置することは認められない、と強調した。

 赤羽一嘉国交大臣は「再調査をし、正すべきは正していきたい」と答えました。

 私はまた、当該堤防の一部区間では「危機管理型ハード対策(※1↓)」が取られており、対策が施された区間では堤防の一部がえぐられているものの決壊に至っていない。この対策をさらに進め、堤防全体を鎧のように補強する耐越水堤防の実施に踏み出すべきだ、と主張した。

 御法川副大臣は「有識者会議を設置し、堤防強化に向けた検討を進めていく」と答弁しました。塩川議員は「もともとダムを優先して、耐越水堤防をやってこなかったことが問題だ」と強調しました。

※1:危機管理型ハード対策=堤防の天端(てんば)のアスファルト保護や裏法尻(うらのりじり)のブロック補強を行うもの。仮に越水が生じても決壊に至るまでの時間を長引かせる効果を狙ったもの。

衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」

<第201通常国会 2020年3月18日 内閣委員会 4号>

○塩川委員 続けて、治水対策に関連してお尋ねをいたします。
 昨年十月の台風十九号の豪雨災害は、全国各地に甚大な被害をもたらしました。河川の堤防の決壊や越水、溢水などが多数生じたところです。私の地元の埼玉でも、例えば東松山市内で都幾川などの堤防の被害があったわけです。
 資料をお配りさせていただきました。国交省の資料一枚目にありますように、台風十九号による被災状況、荒川水系入間川直轄区間ということで、国交省の直轄の区間ですけれども、ここで、ごらんいただいてわかるように、赤い線で四角く囲っているところが三カ所ありますが、これがそれぞれ決壊場所で、赤いバツ印がついているところです。一方、左上のところを見ていただきますと、越水ということで、東松山市葛袋地先ということで、越水の表記があるところです。
 私は、発災の翌日に現地に調査に入りました。現場を見てきたところです。そうしますと、写真も撮ったんですが、三枚目を見ていただくと、これが葛袋の場所に当たります。ごらんいただいたように、堤防が大きくえぐられているということが見ていただけると思います。
 これは二枚目の資料に、これは国交省の荒川上流河川事務所の速報ですけれども、上の写真にあるように、都幾川が右から左手の方に流れている、その左岸側で、右上に、越水箇所と赤い楕円が記してあるところというのがまさにこの三枚目の写真のところなんです。
 国交省にお尋ねします。御法川副大臣にお尋ねいたしますが、この都幾川左岸の国直轄区間の堤防がえぐられて、そっくり流されている状況というのは写真で見ていただけると思います。この現場を国交省は越水としているんですが、これは堤防の決壊ではないんですか。

○御法川副大臣 塩川先生御指摘の箇所につきましては、約四百メートルの区間で越水が発生したものとして、国土交通省の災害情報で整理がなされているところでございます。
 この災害情報というのは、河川など施設の管理者が被害の状況を調査、報告したものを国土交通省で取りまとめたものでございまして、直轄河川の調査、報告は現地の事務所が行っているところでございます。
 令和元年東日本台風では、入間川流域において複数箇所で越水や決壊が発生した中、先生御指摘の箇所につきましては、一連の区間が越水していたことから、現地事務所からは越水のみが報告をされておりますけれども、施設の被害状況もあわせて報告をすることがより正確な報告であったものと認識をしてございます。

○塩川委員 現地事務所が越水としたんだけれども、これはもう堤防の決壊ということでよろしいですか。

○御法川副大臣 今申し上げましたけれども、御指摘の箇所につきましては、施設被害も含めて報告することがより正確な報告であったというふうに認識をしてございます。
 先生から写真の御提示もございましたし、御指摘の箇所の被災状況が決壊かどうかにつきましては、現地事務所に被災直後の状況を改めて分析をさせた上で、被災状況を確認、そして検討をさせていただきたいというふうに思います。

○塩川委員 十月の災害なわけなんです。でも、現状まで越水のままなんですよ。
 この場所というのは、二枚目の写真にもありますように、右手の方の下流部分というのは、田畑、もちろん民家もあります、そこが浸水被害をこうむっているわけですね。そういったときに、国交省の認識が、決壊じゃありません、越水ですと通されると、それは地元的にも納得がいかないような話じゃないでしょうか。国交省としてのまさに誠実さが問われる問題であって、こういう問題をやはり放置するというのは断じて認められない。
 こんなことになったことについて、改めて御法川副大臣、いかがですか。

○御法川副大臣 越水区間の氾濫発生情報につきましては、これは適切に発表されているとともに、被災後は、他の箇所と同様に、速やかに応急復旧対策を行っているところでございます。
 また、六月の出水期までには、堤防高の確保と一定の補強対策を完了する予定でございます。
 さらに、御指摘の箇所につきましては、令和元年東日本台風と同じ雨が降っても川の方から水があふれないように、上流側の県管理区間とあわせて堤防を整備するとともに、河道掘削を実施し、一日も早い被災地の復興に努めてまいりたいというふうに思います。

○塩川委員 改めて分析したいという話ですから、これは実態をしっかり把握をして、それにふさわしい対策をしっかりとるということを求めたいと思います。
 赤羽大臣、感想があれば。

○赤羽国務大臣 誤解があってはいけないんですけれども、現場の復旧復興の対応自体は、報告がちょっと仮に誤ったとしても、状況では変わりがないということなんです。
 ややもすると、越水の場合と決壊の場合だと復旧工事の仕方が違うんじゃないかというようなことを思われる方もいらっしゃると思いますけれども、現実には、このことについては、被害の程度に合わせて復旧復興をした。それは、地元の被災自治体の皆さんも認識をしていただいていると思いますので。
 いずれにしても、間違いであれば訂正しなければいけないと思いますから、先ほど御法川副大臣が御答弁しましたように、しっかりと国土交通省として、御指摘いただきましたので、再調査をして、正すべきは正すということにしたいと思います。

○塩川委員 現場に私はその後も行きましたけれども、巻きと言われるように、全体にコンクリートブロックをかけるような、そういう応急復旧の措置もありますし、実際に本復旧の取組なんかも行われているということは聞いております。ただ、前提となる認識の問題としてこれでいいのかということは、正すべき点はしっかり正していただきたいということを改めて申し上げておきます。
 あわせて、資料の二枚目に下の写真があるんですけれども、この都幾川堤防の一部区間では、危機管理型のハード対策というのがとられていました。この二枚目の資料の下ですけれども、決壊までの時間を少しでも引き延ばすように、堤防の天端のアスファルト保護や、堤防裏のり尻のブロック補強を行うものであります。写真にあるように、一部侵食はされていますけれども、決壊には至っておりません。先ほど指摘をした堤防決壊箇所には、この危機管理型のハード対策は施されていなかった。
 こういったことについて、国交省としてはどのように受けとめておられるのか。

○御法川副大臣 今御指摘がございましたハード対策でございますけれども、まさに塩川先生がおっしゃったとおり、被災現場の一部にあるわけでございますが、この区間では、昨年の台風においての越流に耐えまして、決壊には至っておりません。このことは、技術的検討を目的とした有識者から成る検討会の方にも報告をしてございます。
 このハード対策が何でやっていなかったんだという話でございますけれども、このハード対策につきましては、氾濫リスクが高いにもかかわらず、当面の間、堤防等の整備の予定がない区間で実施をするということになってございます。
 既に堤防強化を行っていた区間は、高さや幅が不足するものの、暫定的な堤防があって、当面は整備の予定がなかったのに対し、これより上流側の区間については、更に上流側の県管理区間を含め、堤防がない、いわゆる無堤部であったために、堤防の新設が計画をされておりまして、その整備時期は県と調整をし、決めることとしておりました。
 御指摘の箇所については、仮に早期に堤防が整備されることとなれば、これに伴って施設の機能が新設される堤防に移ることとなるため、危機管理型ハード対策は実施しておらないということでございます。

○塩川委員 国直轄の部分は堤防なんですよ。上流の県管理の方に行くと、いわば無堤防のところも当然出てくるんですが、堤防があるところで、でも、この対応をしていなかったといったことについて、それでよかったのかということが問われていることは申し上げておきたいと思います。
 こういった危機管理型ハード対策の効果もあるということは、そのとおりだと思います。その上で、そうであれば、やはりもう一歩進んで、耐越水堤防と言われるような天端の舗装、補強、それから裏のり尻のブロックの強化にとどまらず、堤防全体をいわばよろいのように補強する耐越水堤防、この実施に踏み出すときじゃないのか。この点についてはいかがですか。

○御法川副大臣 危機管理型のハード対策のみならず、もっとやったらいいじゃないかという御提言でございますけれども、先生御存じのアーマーレビーであったり、さまざまな方法があるわけでございますけれども、現在、越水に対して決壊しにくい堤防強化策について、有識者から成る検討会を設置し、先ほど申し上げました御意見をいただいているところでございまして、アスファルト、コンクリートブロック、シート等、さまざまな材料や工法の活用を含め、さらなる堤防強化に向けた検討を進めてまいりたいというふうに思います。

○塩川委員 アーマーレビーの話がありましたけれども、もともとダムを優先してアーマーレビーをやってこなかったというところに問題があるということを最後に申し上げて、この質問は一つの区切りにしたいと思います。
 御都合があるようでしたら、御法川副大臣も御退席いただいて結構であります。

・・・中略(別質疑)・・・

○赤羽国務大臣 まず、先ほどの御法川さんの、ちょっと一点だけ簡潔に、治水対策についてちょっと発言の機会がなかったみたいなので。
 近年の気候変動によって、水害とか災害が激甚化、頻発化しております。ですから、今、省内で、そうした気候変動にあわせてどれだけ被害がどうなるかといったことをしっかり分析しながら、抜本的な治水対策を行っております。
 それで、先ほど県のところはだめだったじゃないかという御指摘もありました。これは全くそうで、国と県と市、流域全体を見てしっかり計画的に、上部ではなるべくダムや遊水地を使って、水を下流に流さない、堤防の強化は下流からしっかり計画的にやっていく。これは市に任せると、自分の市から先にやると、強化された周辺のところに水が当たるみたいなことがあって、なかなか難しいところもありますので、そうしたことをやろうとしているわけでございますので、今後ともしっかりやっていこう、これが先ほどの答えです。