【議院運営委員会】内閣機能拡大を正当化/公取委員長候補

 政府が提示している国会同意人事案のうち公正取引委員会委員長候補者の古谷一之内閣官房副長官補から所信を聴取しました。

 私は、2001年の中央省庁再編以降、内閣官房、内閣府の機能が拡大強化され、このことが、公文書の改ざん、ねつ造、隠ぺいなどの不祥事につながったのではないか、と指摘。

 古谷氏は、「総理の発議権をフルに使って」企画、調整、立案していることは「積極的に評価をしていただいている」と、さまざまな弊害を生じさせている機能強化を正当化しました。

 私が、19年6月に閣議決定された「成長戦略実行計画」には「独禁当局はデジタル市場についての知見が弱い」とされていることへの認識を問うと、古谷氏は「評価できない」と答えました。

 公取委に注文をつけるような内閣のもとでつくられたデジタル市場競争本部の事務責任者が古谷氏であった。官邸の中枢で政策立案・総合調整を担う立場だった人が独禁当局の責任者となるのは公取委の『職権行使の独立性』に疑問符がつく。

 


「議事録」

<第201通常国会 2020年3月25日 議院運営委員会 14号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 内閣官房副長官補として、二〇一三年以降、長らく政権中枢で活動してきた古谷参考人にお尋ねをいたします。
 中央省庁再編以降、総理の権限強化を始めとして、内閣の重要政策の企画立案や総合調整機能を持つ内閣官房、内閣府の拡大強化が図られてまいりました。こういった官邸機能強化がさまざまな弊害も生じさせているのではないのか、公文書の改ざんや捏造、隠蔽などの不祥事につながったのではないのか。中にいて率直にどのようにお感じか、お尋ねします。

○古谷参考人 大変難しい質問をいただきました。
 現に内閣官房でまだ副長官補として仕事をしておりますので、余り申し上げることはないんですけれども、大きな時代の変化といいますか、やはり日本が、先ほども申し上げましたが、人口減少、少子高齢化、成熟社会になった中で、行政もいろいろな政策面について大きな改革あるいは変革をしていかなければいけない状況にこの時代はあると私は認識しております。
 こういう中で、二〇〇〇年に中央省庁改革が行われまして、総理大臣の発議権というものもつくられました。そういう意味で、今、官邸主導ですとかいろいろな言い方をされますけれども、内閣が各省庁との間で、いわば総理の発議権をフルに使っていろいろな企画、調整、立案をしているということは、私は、中におりまして、大変口幅ったいですけれども、積極的に評価をしていただいていいのではないかなというふうに考えながら仕事をしておるところでございます。
 きょうの私からのコメントはそこまでにさせていただきます。

○塩川委員 公正取引委員会の採用案内パンフレットを拝見しますと、「公正取引委員会は、」「厳格な中立性と高度の専門性が必要とされることから、職権行使の独立性が法定され、他からの指揮監督を受けることなく職務を遂行します。」とあります。
 古谷参考人の、この職権行使の独立性についての御認識を伺いたいと思います。

○古谷参考人 御指摘のとおり、独禁法二十八条で、公取は独立してその職権を行使するというふうになっております。独立行政委員会という位置づけでございまして、ほかから指揮監督を受けることなく、独立で、まさに自由で公正な競争環境を確保する仕事という崇高な使命が公取にはあるんだというふうに思っております。
 私自身は、内閣官房で、先ほど申し上げましたように、各省のあまた調整事をやっておりますけれども、公取委員長に仮に選任されましたならば、この独立して職権を行使するということを心に定めて仕事をさせていただきたいというふうに思っております。

○塩川委員 二〇一九年六月閣議決定の成長戦略実行計画のデジタル市場のルール整備の項には、「独禁当局は、デジタル市場についての知見が弱いこともあり、十分な勘案ができていないとの指摘がある。」とあります。
 この点は、古谷参考人も同じ認識でしょうか。

○古谷参考人 現在の公正取引委員会にデジタル分野の知見が足りないかどうか、そこはちょっと私は評価はできませんけれども、先ほども申し上げましたように、公取という競争当局とは別に、内閣官房にデジタル市場競争本部というものを設置いたしまして、デジタル分野の専門家にも来ていただいて、今、関係省庁で横断的なデジタル分野の競争環境整備についての議論を行っております。
 こうした取組は、諸外国、主要国でもデジタル分野の議論をする際に用いている手法でございまして、こうした横断的な議論の中に、今後、競争当局としての公取も、まさにそれを執行し実行していく役割を担っていくわけでありますので、専門的な知見を高めるよう、組織の力を強くしながら、積極的に加わっていくということが必要になってくるんだろうというふうに思っております。

○塩川委員 閣議決定したこういう成長戦略実行計画において、独禁当局はデジタル市場についての知見が弱いと断定するような話が出ているわけで、それを踏まえると、現状の公取の体制がどうなのか。デジタル市場の知見が弱いということを踏まえて、どのような人員や体制の強化を図る必要があると考えるのか、その点についてはいかがでしょうか。

○古谷参考人 やはりデジタル経済、デジタル社会になりますと、知識や情報の変化のスピードも大変大きいものがございますので、それについていくというのは大変だろうと思います。
 したがいまして、公取が、内部にいる公取の職員に当然いろいろな研修をして知恵をつけていくということは大事だと思いますけれども、それだけではなくて、やはり外部の人材を登用するとか、関係省庁との人事交流を活発にするとか、そういうこともやりながら、やはり組織としての対応力を高めていくということを考えていく必要があるというふうに思っております。

○塩川委員 海外の独禁当局と比べても、やはり人員体制が極めて小さいのではないのか。いろいろな人事の交流ですとか外部人材の登用の話がありましたけれども、そもそも公取の人員体制を大幅にふやす、そういうことについてのお考えはいかがですか。

○古谷参考人 それも必要だと思います。
 杉本委員長のもとでかなり人員もふやしてきておられるというふうに聞いておりますけれども、公取の今の体制の実態をつぶさに今後聞いた上で、人員の増強、組織の増強ということについても検討させていただければと思っております。

○塩川委員 公正取引委員会の知見が不十分だという認識を踏まえて、成長戦略実行計画においては、内閣官房にデジタル市場の競争状況の評価等を行う専門組織としてデジタル市場競争本部を創設するとしました。古谷さんのお話にもあったとおりであります。その事務局組織の、デジタル市場競争本部事務局の事務局長が古谷副長官補ということであります。
 やはり、いろいろ公取に注文をつけるような内閣のもとで新たにつくられたデジタル市場競争本部、その事務局の責任者をやっておられる古谷参考人が、いわば官邸の中枢で企画立案や総合調整を担う立場だった人が独禁当局の責任者となるのは、公正取引委員会の職権行使の独立性に疑問符がつかないかと思うわけですが、その点、いかがでしょうか。

○古谷参考人 私は、きょう、内閣総理大臣から候補者として選考されてここに参っておりますので、私がふさわしいかどうか、私の方から申し上げるのは難しいですけれども、先ほども申し上げましたように、デジタル市場の競争環境を整備していくという問題については、公取、競争当局を含めていろいろなところがかかわってくる話になると思いますので、これは、個人情報保護委員会とか消費者庁、経産省、総務省、いろいろなところと一緒になって議論しております。そういう中で、公取が果たすべき役割というのはあると思います。
 今、内閣官房でそうした調整業務を主として私はやっておりますけれども、一番最初の御質問に戻りますが、公取は独立して仕事をするということでございますので、公取の委員長になりました場合には、きちっとそこは切り分けて職務に当たらなければいけないと思っております。
 私は、これまでいろいろな行政官として仕事をしてまいりましたけれども、それぞれ与えられた職責を一所懸命と思ってやってきたつもりでございます。今後もそうしていきたいというふうに考えております。

○塩川委員 終わります。

===自由質疑===

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 古谷参考人もかかわってこられたデジタルプラットフォーマー取引透明化法案についてお尋ねします。
 巨大IT企業に対して取引の透明性と公正性の向上を求めるという法案ですが、事業者の自主性に委ねることが基本となっており、中小企業いじめや違反行為の規制が十分にできるのか、また、情報開示の命令違反に罰金が百万円以下など規制の実効性を担保する措置が弱いのではないか、さらには、法律の執行をIT産業を育成する立場の経産省が担うという仕組みですので、踏み込んだ監視と規制ができるのか疑問だ、このように思いますが、古谷参考人はどのように評価しておられるでしょうか。

○古谷参考人 今回提出をして御審議をお願いしております取引透明化法案、これは先ほども申し上げましたけれども、やはり、デジタルプラットフォームというのは、これからの経済にとって、イノベーションをして進めていく上で期待の持てる分野でもございます。一方で、デジタルプラットフォームにかかわるいろいろな事業者が不当な不利益や負担を負ってはいけない、そういうバランスの中で議論をしてまいりました。
 いろいろな御議論はあろうかと思いますけれども、これは経産省が所管をして一定の義務づけはいたしますけれども、どうしても独禁法違反が疑われるような場合には、そういう事案については公取委員会の方に独禁法に基づく対処を要請できるといったような規定になっております。ここは、取引透明化法案とうまくタイアップをして、独禁法の厳正な適用というものに心がけてまいりたいというふうに思っております。
 デジタルプラットフォームをめぐる競争環境の議論というのは、私はまだ道半ばだと思っております。これからいろいろな御議論を踏まえながら深めていかなければいけない課題だという認識もいたしております。