【議院運営委員会】内閣が役職を延長させることを容認/人事官候補の所信聴取

 政府が提示した国会同意人事案のうち、人事官候補である古屋浩明元人事院事務総長から所信を聴取しました。

 私は、古屋氏が給与局長時代に手掛けた「給与制度の総合的見直し」が、一般職国家公務員の給与を引き下げ、勤務地と年齢による賃金格差をつくるものであり、人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割を否定するものだとして見解をただしました。

 古屋氏は「状況に応じた対応だった」と正当化しました。

 また、私は、東京高検検事長の定年延長に関して、人事院は1981年の国会答弁で示した「検察官の定年については検察庁法で定められており、国家公務員法の定年制は適用されない」との立場を維持してきたのではないか、と質問。

 古屋参考人は「当時は適用されないとの立場だった」と認めつつ「法解釈は法務省に委ねられている」と述べました。

 私は、今国会に提出されている国家公務員の定年を引上げる国公法改正案において、検察庁法そのものを書き換えて「内閣が定める事由」があるときには役職を延長させることができる規定を盛り込んでいるのは重大。今後、黒川氏のような政治判断での勤務延長がまかり通ることになりはしないか、と質問。

 古屋参考人は「任命権者である内閣が役職を延長させることは自然な対応ではないか」と容認する立場を明らかにしました。


「議事録」

<第201通常国会 2020年3月25日 議院運営委員会 14号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 古屋浩明参考人にお尋ねをいたします。
 古屋参考人が人事院事務総局給与局長のときに行った施策の一つに、給与制度の総合的見直しがございます。職務給の原則や地域経済への影響を考慮せず、地域の民間賃金の水準に公務員賃金を合わせて地域間格差を拡大するものであり、また、五十歳代後半層の給与を引き下げるものとして、我が党も批判をいたしました。
 給与制度の総合的見直しは、職務給原則を損ない、勤務地と年齢による賃金格差をつくるものであり、人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割を否定するものではないのか。この点についてのお考えをお聞かせください。

○古屋参考人 平成二十七年度から三年かけて、給与の総合見直しというのを実施したところでございます。
 これは、当時、国家公務員給与をめぐる諸課題の解決ということで、一つは地域間の給与配分のあり方、それから世代間の給与配分のあり方、職務、勤務実績に応じた給与配分のあり方ということについて課題があったということでございまして、全国共通の基本給について二%引き下げた中で、改めて地域間の配分の見直しを行うというようなこと。それから、世代間の見直し、先ほどもありましたけれども、若年層を厚くし、高齢層の方については少し削減率を高くするというようなことの見直しを行い、民間の賃金カーブとのバランスをとったということでございます。
 国家公務員法におきましては、職務給の原則が述べられているところでございますが、地域の事情を考慮して支給する給与種目というのも規定がございます。そういう意味では、地域手当を支給する、俸給を補完するという形の地域手当については職務給の原則に反するものではないというふうに考えているところでございます。
 また、民間賃金の低い地域における官民の実情を踏まえると、先ほどの地域手当の配分というのも、状況に応じた、まさに情勢適応の原則に沿った対応ということでありまして、労働基本権制約の代償機能としての役割は果たしているものではないかというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 次に、国家公務員の定年延長に関連して、国公法と検察庁法の関係についてお聞きします。
 検察庁法には検察官の定年延長は規定されておりません。今回、黒川東京高検検事長の定年延長、勤務延長に当たって、国家公務員法の規定を使って定年延長を認めるとしました。
 しかし、人事院は、国家公務員に定年制を導入する国公法改正に係る一九八一年の国会答弁で、検察官と大学教官については現在既に定年が定められている、今回の定年制は適用されないとしておりました。
 人事院はこの立場を維持してきたのではないでしょうか。

○古屋参考人 国家公務員法は一般職の公務員全体に原則として適用になるということでございますが、その中で、特例法が設けられれば特例法が優先されるという関係でございます。
 そういう関係で、確かに、今、引用された部分、導入当初につきましてはそういう解釈でされていたというふうに我々も認識しておりました。
 ただ、特別法の解釈等につきましては、これは検察庁法ということでございますので、法務省の方でその解釈等について整理するというのが一般法と特別法との関係ということになろうかと思います。
 そういう意味で、この部分については法務省さんの整理ということになろうかと思います。

○塩川委員 検察官は準司法の仕事に当たる。同時に、定年の年の前の日に退官をするという仕組みと一般の公務員との関係の違いというのは当然あるわけです。
 そういった点でも、これを一律に引っ張ってくるというのは納得のいくものではないと思っておりますし、今回の黒川東京高検検事長の定年延長というのは、これはやはり違法なんじゃないかと率直に思いますが、改めて、いかがでしょうか。

○古屋参考人 繰り返しで恐縮ですけれども、そこの解釈については、特別法を担当する法務省の解釈によるということでございまして、人事院として中身について申し述べるということは適当ではないというふうに考えております。

○塩川委員 検察官の勤務延長の解釈変更とつじつまを合わせるために、今回の国家公務員の定年引上げの国公法改定案においては、検察庁法そのものを書きかえて勤務延長規定を盛り込むとしているのは極めて重大であります。その際、国公法改定案では、事務次官などの幹部が役職定年を迎えてもそのポストにいられる場合は人事院規則で定めるとしているのに対し、検察庁法の改定案では、次長検事や検事長が引き続きとどまれるのは内閣が定める事由があると認めるときとしております。
 国家公務員一般については人事院規則、それに対して、次長検事、検事長は内閣が定める。そういう点では、今後、黒川氏のような、政治判断での勤務延長がまかり通ることになりはしないか。公務の公正性という観点で、どのようにお考えか、お尋ねいたします。

○古屋参考人 先ほどのかなり繰り返しになるかと思いますけれども、国家公務員法のいわば適用除外して特別な措置を行うという中において、どのような手続を行うのかということは別途定めるということで、その一部分だけ捉えて、どうかというのは難しいのかなと。
 ですから、内閣の任命になる検事長等についてそのような手続をとるということは、当然というところまでいくかどうかはわかりませんけれども、自然な対応ではないかというふうには考えております。
 いずれにしても、そこの、特別法の対応の中における判断でございまして、基本的には、私どもの方といいますか人事院の方で申し述べるものではないのではないかというふうに考えております。

○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。

 

===自由質疑===

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 この間、大企業などの民間企業出身者が、非常勤の国家公務員として、企画立案、総合調整機能を担う内閣官房で勤務する事例が増加をしています。第二次安倍政権以降、七年間で九十三人が百六十八人と、ほぼ二倍にふえております。
 個々の企業や業界の利害にかかわる事務も当然含まれているわけです。人事院の所管する官民人事交流法は、公務の公正性を担保するため、出身元企業における業務の従事や給与の補填を禁止していますが、政府は、内閣官房の非常勤職員が出身企業の仕事に従事していることや給与の補填を受けていることを否定しておりません。
 非常勤職員として雇用することで公務の公正性が損なわれているのではないのか、この点についてのお考えをお聞かせください。

○古屋参考人 官民人事交流法については、まさにそのような規制を設けているということでございます。
 また、非常勤職員につきましても、民間企業出身者を採用するという場合には、公務の公正性を確保して、官民癒着等の疑念を抱かせることのないようにする必要があるだろうというふうに考えております。
 したがいまして、当然、国家公務員としての各種の服務規律というものはあるわけですから、この服務規律の遵守は当然のこと、職員の配置や従事する業務というものについても各省において十分慎重に対応していただく必要があるだろうし、また、これについては、人事院としても、必要があれば指導を行うということをしていきたいというふうに考えております。