【内閣委員会】独占禁止法特例法案に反対/地銀に合併圧力

 地域銀行の合併などを独占禁止法の適用から外す特例法案の質疑・採決が行われ、自民、公明などの賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。

 銀行の合併は、独禁法に基づき、不当な金利引き上げや貸し渋り・貸しはがし等利用者に不利益をもたらさないよう、公正取引委員会が判断を行っています。

 私は、政府の未来投資会議で公正取引委員会委員長が「経営統合は市場における競争が実質的に制限される場合があり・・・消費者や事業者に対するサービス水準の低下につながる恐れがある」と述べていたと指摘。

 公取委の粕渕功経済取引局長は、「独禁法の適用範囲縮小は慎重な判断が必要」としつつ、法案には理解を示しました。

 私は、金融庁による銀行経営維持の観点からの合併判断とは違い、利用者利益を守る立場からの独禁法に基づく合併判断・対応が必要と主張しました。

 また、地方の金融機関の経営悪化について、アベノミクスを支える日銀の金融緩和政策によるマイナス金利が、銀行の収益悪化をもたらした根本原因だと強調しました。

 西村康稔経済再生担当大臣は「日銀が適切に判断しており、それぞれの地域経済に効果があった」「安倍政権の経済政策が地銀を追い込んでいるわけではない」などと答弁。

 私は、地域経済の立て直しに失敗し続けてきた政府に責任が問われている、と批判しました。

衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」(質疑)

<第201通常国会 2020年4月15日 内閣委員会 7号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 独禁法特例法案について、地域銀行の合併に関して質問いたします。
 最初に、公正取引委員会にお尋ねをいたします。
 独占禁止法は、株式保有や合併等の企業結合により競争を実質的に制限することとなる場合には、その企業結合を禁止しております。この理由は何なのかについて、簡単に御説明いただけますか。

○粕渕政府参考人 お答え申し上げます。
 独占禁止法におきましては、いわゆる一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる企業結合、これは禁止をされております。
 これは、この禁止されていることにつきましては、利用者の選択肢が実質的に制限される、こういうようなことが生じるおそれがあるということから、企業結合、このようなものについて、そのようなものに該当する場合には禁止するということにされているものでございます。

○塩川委員 今御答弁ありましたように、利用者の選択肢が制限される。経営統合というのが、市場における競争が実質的に制限される場合があり、消費者や事業者に対するサービス水準の低下につながるおそれがあるということだということで、それでよろしいでしょうか。

○粕渕政府参考人 お答え申し上げます。
 繰り返しになりますけれども、独禁法におきましては、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる企業結合、これが禁止されております。
 その趣旨につきましては、一つには、このような利用者の選択肢が実質的に制限されることになる、こういう懸念があるものですから、企業結合が禁止されるという場合があるというものでございます。

○塩川委員 西村大臣にお尋ねします。
 今回の独禁法特例法案は、主務大臣の認可を受けて行う地域銀行の合併等には独禁法の規定は適用しないという法案であります。
 地域銀行の経営統合、合併について、ガイドラインの見直しなど、独禁法を適用する措置をとるのではなくて、独禁法を適用除外する今回の特例法という形で措置をしたその理由は何なのかについてお答えください。

○西村国務大臣 今も公取委から答弁がありましたけれども、独禁法というのは非常に重い法律でございます。
 今回、地域における基盤的なサービスを維持する、地域住民の利便性の向上にも資するということを目的としながら、一方で、不当な不利益が利用者に対して生じないということを前提としてこの法律をつくるものでございます。
 まさに、公正な競争を担保するという重い法律の例外を設けるということで、十年という時限的な措置もしているところであります。こうした時限的措置を恒久法である独禁法本体に位置づけることはなじまないとの判断のもと、独禁法本体は改正することとはしておらず、また、独禁法上、競争を実質的に制限するような合併等については認められないこととされておりますので、ガイドラインの見直しでは対応できない場合が生じ得るということでありまして、こうした考えのもとで、人口減少下における地域の基盤サービス維持という政策目的を達成すべく、特例法を制定することは必要というふうに判断したものでございます。

○塩川委員 ガイドラインの見直しでは対応できないというお話でしたけれども、公正取引委員会にお尋ねします。
 法案が提出される前の、二〇一九年四月三日の未来投資会議において、杉本公正取引委員会委員長は、経営統合は、場合によっては市場における競争が実質的に制限される場合がある、消費者や事業者に対するサービス水準の低下につながることになるおそれがあると述べておりました。
 公正取引委員会は、地域銀行の経営統合、合併については独禁法上の判断が必要だとしていたのではありませんか。

○粕渕政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申しましたとおり、独占禁止法は、利用者の選択肢が実質的に制限されることとなる企業結合を禁止しているところでございまして、一般論として申し上げますと、独禁法に特例を設けることによってその適用範囲が縮小されることについては、慎重な判断が必要というように考えております。
 一方、本法案につきましては、人口減少等に伴う経営悪化が進むなど、現下の地銀や乗り合いバスをめぐる状況に鑑み、地域における基盤的なサービスを維持するという政策目的の達成に向けて提出されたものと承知しております。
 そのような基盤的サービスを維持するために経営統合が不可欠であると事業所管官庁が判断するのであれば、かかる判断を尊重する仕組みとして、利用者に対して不当な不利益が生じることがないということを前提として独占禁止法の適用を除外することについては、公正取引委員会としても十分に理解のところだというように考えておるところでございます。

○塩川委員 独禁法の適用の範囲を縮小するということについては慎重にという話でありますが、ただ、基盤的サービスの維持という政策目的があって、事業官庁、主務官庁の判断で、不利益がないということ、こういうことを前提に適用除外ということはあり得るという説明であります。
 しかし、杉本委員長は、その未来投資会議で続けて、構造的な需要の減少により、複数の地方銀行による競争の維持が困難として、経営統合により地域における地方銀行が例えば一行となるような場合にも、金融制度の所管官庁である金融庁が金融というインフラ的サービスの維持のために統合が不可欠と判断するのであれば、そういった判断を取り上げながら独禁法上の判断を行っていくということも可能と述べていたわけです。
 金融庁による銀行経営の維持、それによるサービスの維持という観点からの経営統合判断があったとしても、公正取引委員会として、利用者利益の観点から独禁法上の判断を行うということは必要だとしていたのではありませんか。

○粕渕政府参考人 お答え申し上げます。
 繰り返しになりますけれども、一般論として申し上げますと、独禁法に特例を設けることによってその適用範囲が縮小されることについては、慎重な判断が必要であるというように考えております。
 一方、本法案につきましては、主務大臣が、認可に際して公正取引委員会に協議することとされております。
 公正取引委員会におきましては、この協議において、競争当局としての知見や専門性に基づいて、合併等により競争がなくなることにより利用者に不当な不利益が生じることがないかどうかという観点を中心に意見を述べることとなっております。
 また、認可後におきましても、利用者に不当な不利益が生じることなどの問題が生じた場合には、公正取引委員会は、主務大臣に対して是正命令を行うよう請求することができるとされております。
 本法案におきましては、このような公正取引委員会に対する協議等を通じて、地域における基盤的サービスの維持とともに、利用者の利益の確保を図るものとされておりまして、このような制度の枠組みの中で独禁法の適用を除外するということにつきましては、公正取引委員会としても十分理解できるものだというように考えております。

○塩川委員 公取委の協議、そういう中に、話がありましたけれども、そこに企業結合については入ってこないわけですよ。
 ですから、企業結合の禁止といった独禁法上のそういう立場から、企業結合によっての利用者への不利益が及ばないように、企業結合の観点から、利用者利益を守っていく、そういう独禁法上の判断を行うということは、金融庁のサービスの維持とは違う角度から担保するということがそもそも必要なんじゃないのか。
 そういう仕組みとして、金融庁とは別に、公正取引委員会が企業結合という立場から、利用者利益を守るという立場で対応するということが必要なんじゃないですか。

○粕渕政府参考人 お答え申します。
 繰り返しになりますけれども、本法案におきましては、認可に際して公正取引委員会に協議することとなっております。
 公正取引委員会は、この協議におきまして、公正取引委員会としての知見あるいは専門性に基づいて、合併等により競争がなくなることによって利用者に不当な不利益が生じることがないのかどうか、こういう意見を申し上げることができることとなっております。
 そういう意味で、私どもとしては、このような公正取引委員会に対する協議を通じて利用者の利益の確保等が図られるものというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 大臣にお尋ねしますが、経営統合、合併は、市場における競争が実質的に制限される場合があり、消費者や事業者に対するサービス水準の低下につながることになるおそれがあります。利用者利益の観点に立てば、経営統合という手法だけではなく、経営統合以外の手法も残すことが必要であります。
 今回の法案は、地域銀行の経営統合を優先する立場から、経営統合以外の手法を退けるものであり、そのことにより競争が実質的に制限され、消費者、事業者の選択肢が事実上失われる事態が生ずる懸念が拭えないと思いますが、その点、いかがでしょうか。

○西村国務大臣 地域銀行は、人口減少など構造的な変化や地域経済のそうした変化に直面しておりまして、まさに貸出しの利ざやも、以前から比べると低下傾向にある。足元では、顧客向けサービス、利益で約半数が赤字になるなど、経営の厳しさを増している中であります。まさに地銀においては、新しいビジネスのモデルを模索をしている状況だというふうに思っております。
 地域における基盤的サービスを維持する観点から今回の特例法を提出に至ったものでありますけれども、地銀においては、本法案の活用も選択肢として考えていただいて、できるだけ早期に持続可能なビジネスモデルの確立に向けた取組を進め、将来にわたって、地域における、持続的にサービスを提供していただきたいというふうに考えているところであります。

○塩川委員 地方における構造変化に直面をしている、そういう中で利ざやの低下傾向ですとか地域銀行の経営が非常に悪化をしているという話がありましたけれども、そういう点でいえば、そもそも安倍政権のもとで地域金融機関の収益が急激に悪化をしているわけです。アベノミクスを支えるための日銀の金融緩和政策で金利がマイナスまで下がり、国債の運用や貸出しで十分な利益が確保できなかった、これがその地域銀行の経営悪化の要因なんじゃないですか。
 その点についてはどのようにお考えですか。

○西村国務大臣 金融政策におきましては、日本銀行におきまして適切に判断をされて取り組まれていると思います。特にこの間の大胆な金融緩和は、日本経済をデフレから脱却すべく、それぞれの地域も経済を活性化してきた、そうした効果はあったものというふうに理解をしております。
 安倍政権においても、一極集中是正に向けてさまざまな施策を講じてきているところであります。地域においては、人口減少という大きな変化に直面する中で、この金融緩和によって、もちろん利ざやが減少していること、これは当然そうでありますけれども、いわば人口減少の中で、むしろこの地銀が新しいビジネスモデルを構築をしていく、それをむしろ背中を押しているような面もあると思います。これは、持続的にサービスを維持してもらうために、さまざまな知恵を働かせながらビジネスモデルをつくっていく、その今過程にあるというふうに思っております。
 そういう意味で、安倍政権の経済政策が何か地銀を追い込んでいるわけではなくて、経済全体の変化の中で、地域銀行がそれぞれ新しいビジネスモデルを模索しなきゃいけない、模索している、そういう状況にあるというふうに認識をいたしております。

○塩川委員 異次元の金融緩和のもとで、地域銀行における収益がやはり確保できなくなっているということは明らかであります。
 新しいビジネスモデルを探せという話ですけれども、この間、金融庁は、金融システムリポートなどを通じて地域金融機関の経営危機をあおり、銀行の合併や人件費などのリストラ、人材紹介など他業への展開を迫ってまいりました。本法案もその一環と言わざるを得ません。
 金融庁は、地域銀行の本業の利益の悪化の原因を、企業数や人口の減少等、構造的な要因による貸出需要の減少と言っていますが、これはもう二十年前から言ってきた話であって、地域経済の立て直しに失敗し続けてきた今の政府の責任が問われているということです。
 独禁法に抜け道を設けて、地域銀行に経営統合の圧力をかける方法は間違っているということを申し上げておきます。


「議事録」(反対討論)

<第201通常国会 2020年4月15日 内閣委員会 7号>

○塩川委員 日本共産党を代表し、独禁法特例法案に反対の討論を行います。
 独禁法は、公正かつ自由な競争を促進することで一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としています。
 銀行の経営統合、合併について言えば、不当な金利引上げや、貸し渋り、貸し剥がし、手数料引上げで利用者に不利益をもたらすことがないよう、公正取引委員会が判断を行っています。
 本案は、金融庁に監督権限を与え、モニタリングし、是正措置を行い、利用者への不当な不利益を回避できるとしています。しかし、取引銀行が一つしかない状況で、中小零細業者、地域住民は、銀行が決めた融資金利や各種金融サービスの手数料などを受け入れざるを得ない懸念が生まれます。この懸念は公取自身も認めていたことであり、公正取引委員会として、独禁法上の判断を行うことが必要だとの見解を示していたのです。しかし、官邸の未来投資会議での議論を受け、法案が提出されました。
 本案は、地銀の経営統合を優先することで他の手法を退け、競争が実質的に制限されるものです。消費者、事業者の選択肢が事実上失われかねません。これでは利用者へのサービス水準の低下や不利益をもたらすことは否定できません。
 この間、金融庁は、地域金融機関の経営危機をあおり、経営統合のメリットを並べ立て、人件費や店舗統廃合などのリストラ、人材紹介など他業への展開を迫るなどといった政策を進めています。この方向が失敗だということは、二十年前に金融機関の経営統廃合を強引に進めた小泉・竹中路線を見れば明らかです。
 またもや、地銀合併を進めても、資金需要の減少や低金利などといった構造的な課題は抜本的に解決せず、地域経済の問題を先送りしているだけです。地方経済の立て直しに失敗し続けてきた自民党政権のツケを中小・小規模事業者、地域住民や銀行労働者に押しつけることは認められません。
 地方の金融機関が収益が悪化した根本原因は、アベノミクスを支える日銀の金融緩和策によりマイナス金利となり、銀行の本業である貸出しなどで利益が確保できなくなったことにあります。いわばアベノミクスによる犠牲をこうむっているのです。
 このような異常な金融緩和政策を続けておきながら、銀行の生き残り策として独禁法の抜け穴を設けて地域銀行の統廃合の圧力をかけるという法案には反対を表明し、討論を終わります。