【予算委員会】保健所弱化浮き彫り/参考人「今後議論を」

 予算委の参考人質疑。私は、コロナ危機のなかで医療機関の経営がひっ迫しているとして、財政的に支援する必要性について質問。

 尾身氏は「医療機関は懸命の努力をしてベッドを確保している。医療経営的に大変困難な状況にあることは間違いないので、国から財政的支援をお願いしたい」と答えました。

 また、私は、保健所数が大幅に減少した。保健所活動の科学的根拠を支える診断・検査機能が大きく劣化してきたのではないか、と質問。

 尾身氏は「保健所が大規模な検査をすることを前提にした仕組みになっておらず、人員も削減されてきた」と述べ、新しい感染症の流行に対応する検査体制がとられていなかったと指摘。「感染が収束した時に、これからどうするか、しっかりと議論すべきだ」とのべました。

 さらに、私は地方衛生研究所の体制強化について質問。

 脇田氏は「地方衛生研究所では、感染症だけでなくさまざまな業務を担っており、配置転換も頻繁で、検査対応は大変だ。感染症の流行に対しては、地方衛生研究所の検査ネットワークが非常に重要なので、強化していく必要がある」と答えました。

政府の諮問委員会の尾身茂会長
政府の諮問委員会の尾身茂会長
専門家会議の脇田隆字座長
専門家会議の脇田隆字座長

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「議事録」

<第201通常国会 2020年5月20日 予算委員会 24号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 新型コロナウイルス感染症対策に関する参考人質疑に貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。
 私は、新型ウイルス感染症対策専門家会議の提言に基づいて、きょうは質問をさせていただきます。
 何よりも、緊急事態宣言の解除については、その判断基準として、当然、一つは感染が落ちつくということと、やはり医療提供体制をしっかりと整備するということが必要であります。
 この点で、まず座長の脇田参考人にお尋ねをいたしますが、当然第二波も想定をされます。そういったときに、この医療体制の整備の必要性、今、何をしっかりとやっていくことが必要なのか。このことについて、お考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○脇田参考人 お答えいたします。
 医療提供体制ですけれども、今回の流行でわかりましたことは、やはり患者さんのトリアージといいますか、その症状によりまして、重症の方はしっかりと治療を提供することが必要であり、そして軽症の方は、最初は自宅ということもありましたけれども、施設の療養でしっかり経過を見ていただく。中には症状が変化するという方もいらっしゃいますので、施設の療養においても、医師あるいは看護師がしっかりとその経過を見ることができるような体制をつくっていくということであろうというふうに思います。
 ただ、医療が十分に提供できる体制であれば、そういった軽症の方も病院で療養するということもあり得るんだろうというふうに思いますので、地域において、そういった、柔軟に医療を提供できるような体制、つまり、患者さんが急にふえてくるような局面になれば、そういった施設的な療養というものも行っていくということになります。
 それから、患者さんがふえてくれば、当然、重症者の方がふえてきます。これはもう一定の割合でふえてきますので、そういった方に対応できるようなICUの病床の拡張、あるいは人工呼吸器、あるいはECMO、そういったものの拡張というもの。それは、機械をそろえるだけではなくて、やはり機械を扱う人員が必要になりますので、そういったところもしっかりと準備をしていくということが重要だと考えております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 尾身参考人にも伺います。
 この提言の中では、今後の患者急増に対応可能な体制の確保と述べておられます。
 この現状の体制において、まだまだ不十分、こういう認識なのかどうか、その辺について、必要な対策等ありましたら教えてください。

○尾身参考人 お答えいたします。
 四月のあの緊急事態宣言を出す前のあたりについては、これは医療の現場の、専門委員会の中でも実際に患者さんを診ている臨床医がおりますので、彼らの生の声だと、あのころは本当に、こういう言葉、悪夢を見ているようだと。患者さんがどんどん来て、ベッドがあふれ返って、これはどうしたらいいかという強い危機感を持ったというのを、もう何度も臨床科の先生方は我々にそういう実感をシェアしていただきました。
 この間、本当に都道府県、各関係者の、医療関係者の努力で少しずつベッドのあきというのか余裕が出てきて、まだまだ十分な余裕というところではできませんけれども、我々が把握している限りでは、重症化の人、それから一般の患者さんも含めて、ベッドが一〇〇%を超えてどうしようもないという状況は今のところ脱していると思うんですけれども、また何かがあればまた満杯になって、そういうことで、やはり余裕を持って。
 そういう中では、今までの努力に加えて、保健所の業務も、それから、ベッドがどのぐらいあいているというのも、実はこれをモニターするというのは、言うはやすし行うは極めて、なぜかと言うと、患者さんは動きますから、きょう中症だった人が重症ということで、このモニターをすることが極めて難しいんです。
 そういう意味では、医療の現場もそれから保健所なんかも、そろそろITをもう少し活用して、今までは、例えば保健所なんかも手書きでファクスでやっている、そういうことですけれども、だんだんとこれからはITを活用して、しかもスタンダードなフォーマットをつくってやるということが少しずつ、今、厚生省の方もそれを考えて指導し始めているので、ぜひその方を加速、速度を速めてやっていただければと思います。

○塩川委員 ありがとうございます。
 尾身参考人に重ねてお尋ねしますが、医療機関がしっかりとコロナ対策で頑張っていただいて、本当に大変な御努力の中にあると思っております。そういった際にも、医療機関の経営そのものも今非常に圧迫をするような状況にあります。そういう点では、空きベッドを確保することが必要だ、そうなればワンフロア全部あけなくちゃいけない、実入りが入らない、そういう点での経営の困難さもありますし、必要な医療機器を調えることや、また、感染防護具などについても、当然、必要な経費が上がってまいります。
 そういう点でも、今、本当に経費が大変で、国の包括支援交付金一千四百九十億円、一桁足りないんじゃないのかという切実な声もあるものですから、こういった医療機関への財政支援についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

○尾身参考人 お答えいたします。
 実は、医療機関は、民間であろうが公的医療機関であろうが、今、各都道府県等からの要請があって、ベッドを少し確保してくれないかということで、懸命な努力をして、日本の医療者は本当に真摯に、この困難な、そういうことで、今いる患者さんをあけてベッドを確保しているわけですよね。
 そういう中で、医療経営的には、これは民間、それから規模にかかわらず、日本の医療機関が大変経営的には困難な状況にあることはもう間違いないと思いますので、そういう意味では、先生おっしゃるように、国の方から財政的な支援をぜひ医療機関にはお願いしたいというのが私どもの願いでもあります。

○塩川委員 ありがとうございます。
 続けて、脇田参考人にお尋ねいたします。
 専門家会議の提言において、保健所の体制強化を強調していることに注目をいたしました。保健所の体制の現状についてどのように認識をしておられるのか、お示しいただけないでしょうか。

○脇田参考人 ありがとうございます。
 保健所の体制に関しましては、今回の新型コロナウイルス対策の非常に大きな役割を保健所が担っているわけですね。最初のPCR検査の相談窓口であったり、それから、検査のところで検体を輸送したりとか、そういったところにもありますし、それから、もし感染者がその地域で出ますれば、その濃厚接触者の調査に入るというところも保健所が全て担う。それから、もちろん、地域からの相談の電話も毎日あるという、その対応もしなければならないというようなことで、非常にさまざまな業務が保健所に集中をしているということになっております。
 ですので、専門家会議としましても、なるべく保健所の業務の負荷を減らすことができないかということで、検査体制にしても、医師会の先生方にお願いをして、今までの帰国者・接触者外来、相談センター、外来という流れのほかに、地域の外来とそれからPCR検査センターの流れというものをお願いして、なるべく保健所の業務が減るような形でそこをお願いできないかということを言ってまいりました。
 それから、先ほど尾身先生のお答えの中にもありましたけれども、ICTの活用ですね。こちらも保健所の業務を軽減するために非常に重要なところだと思っております。
 以上になります。

○塩川委員 ありがとうございます。
 尾身参考人にもその点をお尋ねしたいと思うんですが、この間、保健所数は、一九九二年度の八百五十二カ所をピークにずっと減り続けております。二〇二〇年度では四百六十九カ所と承知をしております。大幅に減少しています。もちろん、保健所の業務は多様にありますし、また、地域保健センターの役割なども当然あるんですけれども、保健所活動の科学的根拠を支える診断、検査機能というのが大きくやはり劣化してはいないのか、そういう懸念を覚えるんですけれども、現場にいらっしゃって、どのようにお感じでしょうか。

○尾身参考人 お答えいたします。
 先生の御質問は、検査のキャパシティーが劣化したのではないかということだと思うんですけれども、実は、今、PCR等検査についても、保健所に求められているのは基本的にはいわゆる行政検査というふうに言われていて、そういうことで、このような大規模な検査をするということを前提にした仕組みになっていないんですよね。そういう中で今回も、今だんだんと各界の努力のもとでキャパシティーがふえてきていますが、当初は本当に、そういう今までの経緯もあって、人員も削減されているし、もともとそういうことを期待されていなかったということもあって、当初なかなか、医師が判断しても必要な検査ができなかったということでありましたので、これは、今いろいろなところで関係者が努力して、少しずつ改善していますけれども、これはまた、こうした感染が収束したときには、少しみんなで大きな目から評価をして、これからどうすべきかというのをしっかりと後で議論すべきテーマの一つだと思っております。

○塩川委員 ありがとうございます。
 脇田参考人にお尋ねしますが、この専門家会議の提言では、保健所とともに、「地域保健に関する総合的な調査及び研究を行う地方衛生研究所の体制強化にも努めるべきである。」と強調しております。
 この地方衛生研究所の体制強化、その意義はどのようなものか教えていただけますでしょうか。

○脇田参考人 お答えいたします。
 地方衛生研究所は、自治体に設置されている、いわば感染研と同じような検査能力を持った研究所でございます。
 日ごろより感染研と地方衛生研究所は連携をいたしまして、日本におけるさまざまな感染症の検査のネットワークを構築しています。今回も、新型コロナウイルスの流行に当たりまして、感染研で開発しました検査キットを地方衛生研究所に配付をして、全国の検査体制を整えたということになります。
 一方で、地方衛生研究所におきましては、感染症だけではなくて、さまざまな業務を担っています。環境の検査ですとか食品の検査ですとか、さまざまな業務がございまして、感染症に必ずしも多くの人員がいるわけではなくて、配置転換も頻繁に行われるということですので、非常に業務が逼迫しておりますところに今回の流行が来たということですので、地方衛生研究所ではこの検査対応が非常に大変であるということを伺っています。
 ですから、やはり、こういった感染症の流行に対しては、こういった地方衛生研究所の検査ネットワークというのが日本の検査体制に非常に重要ですので、そこを強化していくということが重要であるというふうに考えています。

○塩川委員 ありがとうございます。
 脇田参考人にお尋ねします。
 そういう点で、地方衛生研究所、地方の体制と同時に、国立の感染症研究所、これが、この間、人員や予算などもずっと減ってきているという状況がありまして、今考えるに、やはりここをしっかりと体制の強化が必要ではないのか。
 国立感染症研究所のあり方について、所長としてのお考えもお聞かせいただきたいと思います。

○脇田参考人 お答えいたします。
 なかなか自分のところの研究所の予算のこと等を申し上げるのは難しいんですけれども、ただ、感染研の成り立ちというものが、そもそも病原体の研究部が集まってできているという、ラボ中心、研究室中心の研究所であります。
 ただ、こういった感染症の流行に対しては、疫学の調査能力、それから、こういった感染症危機対応といった専門の部門の充実ということが非常に求められるということを考えておりまして、従前からそれは厚労省にもお願いをして、そういった機能強化をお願いをしておりました。
 ちょうど今年度、新たな感染症危機管理研究部門ということを設立していただきましたけれども、やはりそういった疫学それから感染症危機対応の能力を今後も高めていくべきだというふうに、今回の流行を踏まえて、ますますその意を強くしているところでございます。

○塩川委員 時間が参りました。ありがとうございました。