【内閣委員会】2次補正審議/巨額予備費は政権の都合優先/財政民主主義を否定

 2020年度の2次補正予算案で10兆円もの予備費は、財政民主主義を否定するものだと批判しました。

 政府は20年度予算の予備費233億円と1次補正予算233億円を使い、全世帯に2枚の布マスク(いわゆる「アベノマスク」)を配布。異物の混入や配布の遅れもあり国民から批判が相次ぎました。

 私は、「補償なき自粛要請」など政府の対応への怒りが広がるなか、批判をかわそうと実施したのがアベノマスク配布だ。思いつきのばらまきに使うことは許されない。これがまかり通ったのは、国会の事前チェックが働かない予備費だからだ。10兆円の予備費は、好き勝手に予算は使いたいが、野党に追及される国会は開きたくない政府与党の身勝手な都合を優先したものと、ただしました。

 西村康稔経済再生相は「臨機応変に対応するため予備費は有意義」と述べるだけでした。

 私は、大蔵省財政史室編纂『昭和財政史』が、戦前の予算編成を「徹底的単純化」し、「戦時に緊急な施策を臨機に実行できるように予備費を増加計上」「財政上の立憲主義は、残骸だけとなった」として、「新憲法の財政条項は、戦前の非民主的規定を廃止し、重要な項目の一つ目に財政処理の権限は国会にある」と指摘している。予備費10兆円は財政民主主義を否定するものだと批判しました。

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「議事録」

<第201通常国会 2020年6月9日 内閣委員会 17号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 REVIC法案について質問をいたします。
 この法案の説明ペーパーを見ますと、そこには、地域の中核企業等の経営改善等のため、REVICにおいて、事業再生の枠組みを活用した支援や、地域金融機関と連携したファンドを通じた資本性資金の供給等を進めるとあります。
 ここでいう地域の中核企業というのは何なのか、御説明ください。
○西村国務大臣 この機構は、平成三十年の機構法改正により支援決定期限を三年延長されて以降、民業補完の趣旨を踏まえ、延長された期間内において、地域金融機関等へのノウハウ移転を加速し、そして、地域における民間の自律的な中小企業支援、地域活性化の取組を定着させることに重点を置いて取り組むというふうにしてきたところであります。
 こうした趣旨を踏まえて、機構は、まさに有用な経営資源を有しながら過大な債務を抱えた地域の中堅・中小企業や、先ほど来議論のありました病院など、幅広く再生支援に取り組んできたところであります。
 そうした観点で、まさに今、新型コロナウイルス感染症で地域経済が非常に厳しい状況にある中で、地域経済を担っている中堅企業、中小企業を対象に、さまざまな支援策を今回延長させていただいて、支援をしていこうということでございます。
○塩川委員 地域の中核企業とは何かということでお尋ねしたんですけれども、二〇一四年版の中小企業白書によると、地域中核企業、括弧してコネクターハブ企業としていますけれども、これは、地域の中で取引が集中しており、地域外とも取引を行っている企業をいう、地域経済への貢献度が高い企業のことを指すということですし、まち・ひと・しごと創生総合戦略二〇一七改訂版を見ますと、地域中核企業とは、国内各分野の先端を支え、地域経済を牽引している企業のことだといいます。
 そうしますと、政府の成長戦略フォローアップ、二〇一九年を見ますと、地域中核企業への支援として、「地域未来牽引企業等の地域経済を牽引する事業を行う者に対して、地域未来投資促進法をはじめ、予算、税制、金融、規制の特例などの支援策を重点投入する。」とあります。この地域未来投資促進法に基づく地域中核企業への支援措置として、REVICによるファンド創設、活用の支援が位置づけられています。
 このように、REVICの支援対象というのは、地域中核企業といった特定の事業者が主に念頭にあるということになりはしないでしょうか。
○石田政府参考人 お答え申し上げます。
 REVICの場合は、先ほど大臣からお答えさせていただきましたとおり、REVIC法に基づきまして、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている中小企業者というものが支援の対象というふうになっているところでございます。
 今お話のございました地域未来牽引企業、そういう文脈の中での地域中核企業ということでございました。REVICは、REVIC法の規定に基づきまして、再生支援のほかに地域経済活性化支援事業ということで、ファンドをつくりまして、そちらの方で地域の企業を支援していくという事業も行ってきてございます。
 そのファンドをつくった支援ということの中には、一つには、再生支援をファンドを通じて行うということもございますが、他方で、再生ではなくて、むしろ成長支援という分野での先行的な支援というものもございました。
 そういうことで、これまでも、一方で、そういう、成長支援ということの中には、地域未来牽引企業という概念というかコンセプトに入る、そういう会社というものも入ってくると思いますけれども、このREVIC法の支援の対象というものは、必ずしもそういった企業に限られるものでございませんで、あくまでも、このREVIC法、機構法の定義するところの、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている中小企業者ということで、この機構法の規定に従うところの中小企業というものを支援していくということでございます。
○塩川委員 再生支援と同時にファンドを使って、再生支援もあるし成長支援も行うといった中で地域中核企業というのが出てくるわけです。今回のポンチ絵を見ても、あるいは、二年前のこのREVIC法の質疑のときにも私もただしましたけれども、やはり、この地域中核企業、まさに地域の優良企業、地域経済への貢献度が高い企業とか、国内各分野の先端を支え、地域経済を牽引している企業ということが主な支援対象として挙がってきているのは確かであります。
 そういう企業であれば、地域金融機関がしっかりと支援を行えばいいわけで、REVICの出番ということではないのではないのか。その点でも、二年前の法改正の附帯決議には、REVICは、時限的組織であることに鑑み、再度の期限延長を前提としない経営に努めることとあります。この点でも、期限延長の必要はないと考えています。
 そこで、もう一つお尋ねしたいのが、REVICの事業再生支援に当たって、雇用への配慮がどうなっているのかという問題であります。
 このREVICが行う事業再生支援に当たって、雇用機会の確保に配慮とありますが、こういう雇用機会の確保についての実績はどうなっているのかについてはわかりますか。
○石田政府参考人 お答え申し上げます。
 機構が事業再生支援を行う場合には、今お話がございましたとおり、機構法第一条、業務の目的というところにおきまして、雇用機会の確保に配慮することとされるとともに、また、同機構法第二十五条、再生支援決定の第五項におきまして、再生支援の申込みをした事業者における弁済計画や事業再生計画についての労働者との協議の状況等に配慮しなければならないと規定されていることを踏まえまして、機構におきましては、可能な限り既存の雇用関係を維持し、解雇が発生しないように努めてきているところでございます。
 地域経済活性化支援機構はこれまでに八十四件の再生支援決定を行っているところでございますが、そのうち四十一件が公表されているところでございまして、その総従業員数は約一万一千二百名となっているところでございます。
 これらの案件におきまして、事業再生計画等で希望退職等を予定していた案件は六件、約百四十人となっていると承知しておりまして、機構の事業再生支援によって多数の雇用の維持が図られてきているものと考えているところでございます。
 なお、平成三十年の前回の機構法改正以降の再生案件では、希望退職の募集等は行われていないものと承知しております。
 以上です。
○塩川委員 八十四件のうちの公表の四十一件ですから、公表している案件としてはそういう数字かもしれませんが、非公表のところがどうかという問題なんですよ。この点で本当に雇用が維持された、雇用が確保されたのかといったことについての説明はありませんでした。
 再生支援の決定基準を見ますと、「申込事業者が、労働組合等と事業再生計画の内容等について話合いを行ったこと又は行う予定であること。」とあります。労働者と話合いを行う予定でも構わないということにもなり、これで雇用の確保と言えるのか。そもそも、REVICの前身である企業再生支援機構は、日本航空再建に当たって、機構の目的に、雇用の安定等に配慮との規定があるにもかかわらず、従業員の不当解雇や不当労働行為など重大な問題を引き起こした。この点でも、雇用維持への懸念が拭えないということを指摘をせざるを得ません。
 こういったREVIC法案について、我が党としては期限延長の必要がないということを申し上げておきます。
 次に、二次補正関連法案ということでもありますので、二次補正予算に関連して、多額の予備費計上についてお尋ねをいたします。
 その点でお聞きしたいのがアベノマスクの問題なんですが、四月一日のコロナ対策本部で安倍総理は、補正予算成立前にあっても、予備費の活用などにより、感染者数が多い都道府県から順次配付を開始する予定と表明をし、全世帯に二枚の布マスクを配付するというアベノマスクを実施をしました。
 今年度当初予算の予備費で二百三十三億円、一次補正で二百三十三億円の合計四百六十六億円を計上しました。国民から厳しい批判の声が上がりましたが、西村大臣、このアベノマスクに国民から厳しい批判の声が上がったのはなぜだと思いますか。
○西村国務大臣 政府が一世帯二枚ずつのマスクを配付することについては、少しおくれがあるというふうに聞いておりますけれども、しかし、さまざまな御意見があるというふうに聞いております。
 これから、この事態がまだ長引く可能性もあります。人と人との距離を置かなきゃいけない、こうしてみんなマスクをしなきゃいけない。そうした中で、毎日毎日、市販されているマスクを買っていると、月に一人三十枚買わなきゃいけないことになってしまいます、一日一枚使うとしてですね。そうした中で、布マスクであれば、それを洗って使えるという面のよさを指摘をされる声もあります。
 さまざまな声があるというふうに承知をしておりますので、そうした中で、全世帯に送るべく、厚労省において今その取組が進められているものというふうに承知をしております。
○塩川委員 アベノマスクは小さくて使いにくいとか、四人家族に二枚の配付では足りないとか、妊婦さんに配付された布マスクには目で見てわかる汚れがついていたり異物の混入があった、アベノマスクは大丈夫か心配など、要らないのに送りつけてくると批判の声が相次ぎました。
 これは、当時、感染が広がる中で、PCR検査を受けられない、自粛要請といって行動規制や営業規制を強いながら補償は全く行わないという政府の対応に国民の怒りが広がった、その批判をかわそうと、思いつきで実施したのがアベノマスクということではないでしょうか。このような思いつきのばらまきがまかり通るのは、国会の事前チェックが働かない予備費だからではないのか。
 大臣にお尋ねしますが、こんな予備費が十兆円にもなれば、天文学的な思いつきのばらまきがまかり通ることになる、結局、十兆円の予備費というのは、好き勝手に予算は使いたいが、野党に追及される国会は開きたくないという政府・与党の身勝手な都合を優先したものではありませんか。
○西村国務大臣 私も常々申し上げておりますけれども、小さな流行は来ます。北九州でも起こっております。それを大きな流行にしないように全力を挙げて取り組んでいるところでありますけれども、いつ、韓国や、あるいはイランのように、イランは第一波よりも今大きな波が来ているわけであります。どういったことが起こるかわからない。このウイルスはどこに潜んでいるかわからないわけでありますので、そうした、仮に第二波が大きな波になるようなケースもあり得るわけでありますので、そういったことも含めて、臨機応変に、時期を逸することなく対応していく、そのことのために、予備費は私は非常に有意義なものだというふうに思っております。知事会からも増額を要望されていたところであります。
 そうした中で、予算総則において、「新型コロナウイルス感染症に係る感染拡大防止策に要する経費その他の同感染症に係る緊急を要する経費以外には使用しないもの」とされておりますので、その範囲内で、いざ緊急のときに、何か必要なものについては使用させていただくというための予備費であるというふうに理解をいたしております。
○塩川委員 過去、予備費の多額の計上というのは、戦争遂行体制のもとで行われました。
 大蔵省の昭和財政史編集室編さんの「昭和財政史」というのがありますが、昭和十六年十二月、太平洋戦争で、日本財政は専ら戦争遂行一筋に絞られていった、戦時緊急な施策を実施するための予備費の計上も増加をした。そういう中で、昭和十七年七月の昭和十八年度予算編成に関する閣議決定では、「相当多額ノ予備費ヲ計上スルコト」とあり、昭和十八年七月の同様の予算編成に関する閣議決定では、「戦時緊要ナル施策ノ臨機実行ニ遺憾ナカラシムル為予備費ノ計上ヲ多額ナラシムルコト」と。同じように、昭和十九年七月の昭和二十年度の予算編成の閣議決定にも同様のことが盛り込まれたわけです。
 そのもとで、予備費が全体の歳出に占める割合が昭和十七年に九・一%、昭和十八年は一〇・九%、昭和十九年は九・六%。今年度の予備費は、それに匹敵するような七・五%であります。昨年度の〇・五%と比較をしても、巨額の金額に上ります。
 ですから、この「昭和財政史」では、日中戦争、太平洋戦争と進む中、不健全ながらも守られていた議会主義的な約束は一つ一つ取り外されていき、財政上の立憲主義は残骸だけとなったと指摘をしているわけです。
 だからこそ、戦後の憲法では、財政民主主義の確立を重視をした。その重要な眼目の一つが、財政処理の権限は国会にあるとして、その財政権限を拡大したことにあります。
 予備費十兆円は財政民主主義を否定するものであります。修正議決で必要な予算措置を行うこと、三次補正に速やかに取り組むこと、このことを求めて質問を終わります。