【倫理選挙特別委員会】参院選挙区の政見放送/政党所属候補者等だけビデオ持ち込み可能に

 参院選挙区選挙の政見放送に候補者のビデオ持ち込みを条件付きで認める議員立法(公職選挙法)が19日の衆院本会議で可決・成立しました。日本共産党は、一定要件を満たす政党等の所属・推薦候補者だけに可能としたことは不合理だとして反対。自由、社民両党も反対しました。

 本会議に先立ち18日の倫理選挙特別委員会の質疑で、現行の参院選挙区の政見放送の主体は候補者個人となっているのに、なぜ、主体ではない政党等の要件を持ち出すのか―――とただしました。

 提出者の古賀友一郎参院議員(自民)は「多くの国民に候補者の政見がより効果的に伝わるようにする」ための改定であると述べながら、「全ての候補者に認めると品位を欠くものが持ち込まれる懸念がある」として、衆院小選挙区の実績も踏まえ「政党要件という線引きを行う」と説明。

 わたしは、衆院小選挙区選挙の政見放送の主体は候補者届出政党のみで候補者個人には認められておらず、選挙運動の主体の設定が違うにも関わらず、同じ要件を持ち込むことを批判。

 その上で、政見放送が有権者にとって接触しやすく役立つ情報源であるとの調査を紹介。多くの有権者に候補者の政見が伝わり、政策比較できるようにするため、政見放送の改善が必要だ。比例代表や知事選のビデオ持ち込みや手話・字幕の義務化、選管による政権動画のネット公開の検討を提案しました。

 また、国民・有権者が、自らの代表を選び積極的に参加していくためには、複雑な公選法を抜本的に変え、選挙運動の自由を保障すべきだ。

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「議事録」(質疑)
<第196通常国会 2018年06月18日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 4号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 最初に、大阪など近畿地方における地震が大変心配をされるところであります。被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げると同時に、政府として、災害情報の迅速な提供、また、被災者支援、災害復旧に関係機関と連携をとって取り組んでいただくことを求めるものであります。
 それでは、政見放送ビデオ持込みに係る法案について質問をいたします。
 現行では、政見放送の制度がある選挙は、衆議院の小選挙区、衆議院の比例、参議院の選挙区、参議院比例、都道府県知事となっており、そのうち衆院小選挙区選挙だけが、スタジオ録画方式か持込みビデオ方式を選択できることになっております。
 本案は、参院選の選挙区選挙における政見放送で、一定の要件をクリアした政党や確認団体所属、推薦の候補者に持込みビデオ方式を認めるものであります。
 お尋ねしますけれども、そもそも、現行の政見放送の主体は、衆議院の小選挙区では候補者届出政党、参議院選挙区では候補者個人となっております。本案では、なぜ主体者ではない政党等の要件を持ち出しているんでしょうか。

○古賀(友)参議院議員 お答え申し上げます。
 今回の改正は、参議院選挙区選挙におきまして、障害等の有無にかかわらずできるだけ多くの国民に候補者の政見がより効果的に伝わるようにするためにビデオの持込みを認めようとするものであることは、先ほど足立議員の提案理由説明でも申し上げたところでございますけれども、政見放送はそのまま放送しなければならないということを踏まえますと、全ての候補者にビデオの持込みを認めますと品位を欠く政見放送が持ち込まれる懸念があると考えられますために、その対策として、いわゆる政党要件という線引きを行おうとするものでございます。
 候補者個人本位の参議院選挙区選挙におきましてあえて政党要件を用いることといたしますのは、衆議院小選挙区選挙における実績などを勘案いたしますと、現状におきまして品位保持を担保するための最も客観的かつ合理的な基準であると考えられるからでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 衆議院小選挙区では候補者届出政党で、参議院選挙区では候補者個人というのが選挙の主体ということについて、何で衆議院の小選挙区におけるような政党要件を持ち出すのかということについて、衆議院小選挙区における実施の事例を踏まえてと言うんですけれども、それはこの件についての説明になっていないと思うんですよ。衆議院小選挙区の要件と横並びという話ですけれども、衆議院小選挙区の場合は、候補者届出政党だけしか政見放送は認められていないわけで、候補者個人は行えないわけです。
 そういうのを引っ張ってくるというところがちょっと、参議院の選挙区における候補者個人における選挙という性格との関係でこれは適当なのかなと率直に思うんですが、改めていかがですか。

○古賀(友)参議院議員 お答え申し上げます。
 確かに、参議院選挙区選挙は候補者個人本位の選挙であるということは、これはそのとおりでございまして、しかし、他方で、今申し上げたとおり、品位保持をいかに担保するか、こういう課題があるというわけでございまして、そのための解決方策として、今現状、最も合理的、客観的と考えられるその要件として政党要件があるわけでございますので、それを用いましてその解決方策にしようとする趣旨でございますので、御理解いただければと思います。
 以上でございます。

○塩川委員 選挙運動の主体の設定が違うんですから、そのまま持ち込むという話ではないのではないのか、やはり候補者個人、そういった選挙の主体の性格に見合った制度設計ということが求められているのではないのかということを申し上げておくものです。
 もちろん、選挙のさまざまな需要を高める、特に、主権者国民、有権者にきちんとした選挙の情報を提供するという意味でのこういったビデオの政見放送の持込みを拡大するということ自身は前向きの取組だと思うわけですけれども、そうであれば、本案は参議院の選挙区選挙のみを対象としておりますが、参議院の比例代表選挙や、また知事選挙というのは検討はされたんでしょうか。

○牧山参議院議員 お答え申し上げます。
 参議院選挙区選挙以外の選挙におきましては、政見放送に手話通訳や字幕の少なくともどちらかは付与することができるということとされております。
 具体的には、参議院比例代表選挙では手話通訳と字幕の付与が認められておりまして、衆議院比例代表選や都道府県知事選挙では手話通訳の付与が認められております。また、衆議院小選挙区選挙では持込みビデオ方式が認められております。そのため、持込みビデオに手話通訳や字幕の付与が可能であります。
 これに対しまして、参議院選挙区選挙におきましては、通常選挙では、全国の選挙区で行われるところ、手話通訳者が少ない地域があること、そして、字幕につきましても、これを付与する設備や技術的な対応についても困難があるとされておりますため、手話通訳と字幕のどちらも付与できないというのが現状でございます。
 そこで、喫緊の課題としまして、参議院選挙区選挙におきまして、持込みビデオ方式を導入することによって政見放送に手話通訳また字幕を付与できることにすること、こういったことによりまして、障害などの有無にかかわらずできる限り多くの国民に候補者の政見がより効果的に伝わるようにすることが必要であると考えまして、本法律案を提出したという経緯でございます。
 なお、比例代表選挙や都道府県知事選挙における持込みビデオ方式の導入につきましては、関係者の御意見も伺いつつ、引き続き検討する必要があると考えております。

○塩川委員 多くの有権者の方に候補者の政見が伝わり、有権者が政策の比較をできるようにするためにも、政見放送の改善は必要だと思っております。障害者の方々から義務化などを求める要望があるということも積極的に受けとめて取り組んでいきたいと思うものです。
 そこで、政見放送は有権者にとって接触をしやすく役立つ情報源だということが、明るい選挙推進協会の調査などでも明らかになっています。前回、二〇一六年の参議院選挙で、有権者が触れた選挙運動の媒体というのは、第一位が掲示場に張られた候補者のポスターであり、第二位に候補者の政見放送、経歴放送が挙げられております。また、四番目には政党の政見放送もあり、また、有用度が高い媒体として、第一位に候補者の政見放送、経歴放送のテレビなどがあり、三番目に、選挙公報に次いで、政党の政見放送が挙げられているわけです。
 有権者が候補者の政見により多く触れ政策比較できるようにするには、放送時間が決まっているテレビでの政見放送だけに限らず、インターネットの利用も考えられるわけです。我が党の提案もあって、選挙公報の選管のホームページへの掲載が二〇一二年の総選挙から全ての選管で行われるようになりました。また、本案では、NHKで録画した政見放送を民放でも放送してよいということが盛り込まれております。
 そこで、お尋ねですけれども、候補者の政見動画を、選挙公報と同様に、選挙管理委員会ホームページで広く有権者に候補者情報を伝えるという工夫を検討してはどうかと考えますが、いかがでしょうか。

○西田(実)参議院議員 まず、先生御指摘のとおり、多くの国民の皆様に候補者の政見動画をより効果的に伝えるということは大変大事であるというふうに思います。
 その上で、現状でありますが、立候補届出の際には、選挙運動のための一つのウエブサイト等のアドレスを記載できるとされておりまして、国政選挙の際には、ホームページに、届出のあった候補者の、あわせてアドレスを掲載しております。そこをクリックをすると候補者のサイトに飛ぶことができるわけで、この飛んだ先のウエブサイトでは自由に政見放送、候補者の動画等を掲載できるというふうになっております。
 その上で、御提案いただきました件ですが、選挙管理委員会のホームページに政見動画を載せるとなりますと、掲載順序や容量等の取扱いについて新たな掲載ルールが必要になる、あるいは技術的なトラブルで閲覧不能になるようなことがあってはならないわけでありまして、そうなると選挙無効となるおそれもあります等々の課題がありますので、十分な検討が必要ではないかというふうに思います。

○塩川委員 ぜひ、前向きな取組ということで、私たちも努力をしていきたいと思っております。
 そもそも、我が国の選挙制度や選挙運動、政治活動を規制している公職選挙法は、べからず集と言われているような問題があるわけで、やはり、国民が主権者としてみずからの代表を選び、政治に積極的に参加していくためには、選挙制度や選挙運動の規制を見直すことが民主主義の発展のため不可欠であると思います。
 国民、有権者が主体的に選挙、政治にかかわりやすくするためにも、根本的には、複雑な現行法を抜本的に変えて、国民の基本的権利である選挙運動の自由を保障すべきだ、このことを申し上げて、時間が参りましたので、終わります。
 ありがとうございました。


「議事録」(反対討論)
<第196通常国会 2018年06月18日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 4号>

○塩川委員 日本共産党を代表して、政見放送に係る公職選挙法改正案に反対の討論を行います。
 現行で、政見放送制度がある選挙は、衆議院小選挙区、比例代表、参議院選挙区、比例代表、都道府県知事となっており、そのうち衆院小選挙区選挙だけが、スタジオ録画方式か持込みビデオ方式を選択できることとなっています。
 本案は、参議院選挙区選挙の政見放送で、一定要件を満たす政党、確認団体の所属、推薦候補のみに持込みビデオ方式を認めるものです。
 そもそも、現行では政見放送の主体が、衆院小選挙区では候補者届出政党、参院選挙区では候補者個人となっています。候補者個人を主体とする選挙に政党要件を持ち込むことは、選挙の性格にかかわりかねません。このことによって、現実には、市民と政党が共同して候補者を擁立することに困難をもたらします。
 また、政党の公認、推薦候補は品位保持できるが、公認、推薦を受けない候補者は全て品位保持できないとして持込みビデオ方式を認めないことに合理性があるのか、明らかにはなっていません。
 本案で、参院選挙区の政見放送にも手話通訳、字幕の付与を可能とすることなども盛り込まれたことは重要です。
 有権者にとって政見放送は接触しやすく役立つ情報源だということが、明るい選挙推進協会の調査で明らかになっています。多くの主権者国民に候補者の政見が伝わり、有権者が政策の比較をできるようにするためにも、政見放送の改善は必要です。
 我が国の選挙は、選挙期間に入ると候補者氏名が入ったビラが極端に減ったり、諸外国では当然の戸別訪問禁止といった、複雑でさまざまな規制があります。有権者が十分に政策比較できるとは言いがたいものです。
 日本国憲法は、国民主権、議会制民主主義の基本理念のもと、主権者たる国民が政治に参加する手段として選挙制度を位置づけています。憲法上の権利行使にとって重要である選挙が正当に扱われるためにも、誰が立候補し、どのような公約を出しているのか、候補者情報が有権者にきちんと伝わることが必要です。
 国民が主権者としてみずからの代表を選び、政治に積極的に参加していくため、べからず集と呼ばれる公職選挙法を抜本的に見直すことが求められています。
 国民の基本的権利である選挙運動の自由を保障することは、民主主義の発展のため不可欠であるということを述べ、討論とします。