【倫理選挙特別委員会】開票不正事件/国民主権と議会制民主主義の原則にかかわる問題/真剣な原因究明を

 相次ぐ選挙管理委員会の開票不正事件。選挙は民主主義の根幹。公務員の選定・罷免権の行使という憲法上保障された国民主権と議会制民主主義上の原則にかかわる問題。真剣な原因の分析・検証を求めました。

 開票作業の作業ミスなどを取り繕うため、選管が白票を水増ししてつじつまを合わせ、隠ぺい工作を行った開票不正事件が2013年参院選、14年総選挙、17年総選挙で相次いで発覚しています。

 わたしは、選挙の正当性が失われる事態だ。現憲法下でこのような開票不正が行われることがあったか――とただしました。

 総務省の大泉淳一選挙部長は、指摘の3例しかないと認めました。

 隠ぺいのため投票用紙を焼却処分した滋賀県甲賀市で開票不正にかかわった選挙事務局長が、その理由について「開票遅れを回避するため」と説明している。法で定めている選挙経費の基準を引き下げ続けてきたことによって、開票時間の短縮を求めるプレッシャーがあったのではないか――とただしました。

 大泉選挙部長は「選挙の執行経費は国民の税金で、ある程度の効率化は当然考えるべき」と答弁。野田聖子総務大臣は「効率的な投開票事務に取り組んでいる事例の周知等のほか、必要な予算の確保に取り組む」と答えました。

 わたしは、選管事務の現場の実態に見合った経費や人員配置とともに、徹底した原因究明を求めたのに対し、野田大臣は「しっかり取り組む」と述べました。

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「議事録」
<第196通常国会 2018年06月15日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 3号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、今、先ほども取り上げていただいた選挙管理委員会の開票事務の不正問題についてお尋ねをいたします。
 最初に大臣にお尋ねいたします。
 選挙は民主主義の根幹であり、主権者である国民の参政権の問題であります。不正があれば選挙の正当性が失われることになり、選挙無効になりかねないので、ひいては選挙権を行使できなくなる。選挙執行に当たっては、その公正さに疑念が持たれるようなことがあってはならないわけで、決して不正があってはならない、その点をまず確認をしたいと思います。

○野田国務大臣 塩川委員にお答えいたします。
 御指摘のとおり、選挙は民主主義の根幹をなすものでありますから、適切な管理、執行により選挙の公正を確保することは極めて重要であると考えております。

○塩川委員 そういった際に、この間、国政選挙における選管の開票不正が相次いでいるという現状があります。この間、どのような事案があったのかについて、簡単に説明してもらえますか。

○大泉政府参考人 お答えいたします。
 国政選挙において不正な開票事務がなされた事案としては、先ほど申し上げました、平成二十九年衆議院選挙における、滋賀県甲賀市で、投票者数と投票総数のそごについて、白紙投票を水増しして処理し、その後さらに、未開票の投票用紙が入った投票箱を発見したものの、当該投票用紙を処分したという事案がございました。
 それ以前には、平成二十五年参議院議員通常選挙におきまして、香川県高松市で、投票者数と投票総数のそごについて、集計済みの白紙投票を再度集計することで整合がとれるように処理し、後日、未集計の有効投票の束が発見されたため、箱の封印を不正に開披して、これを集計しないまま無効票の箱に混入したというようなこと、平成二十六年衆議院議員総選挙におきましては、宮城県仙台市で、投票者数と投票総数のそごにつきまして、集計表上の持ち帰り票と白紙投票を増加させることで整合をとれるように処理した事案、その三件がございます。

○塩川委員 二〇一三年の参議院選挙では高松市で、これは隠蔽工作も行うような、これはだから、高松市の選挙事務局長が主導するという格好になるわけでしたし、また、二〇一四年の総選挙では、仙台市において、この選挙管理委員会、これは選挙課長が了承して不正を行うということでしたし、昨年の総選挙では、甲賀市において、選挙事務局長がかかわっての不正になっていると。
 これは、処分したと簡単に言いましたけれども、この投票用紙を燃やしちゃったわけですよね、わざわざ持って帰って。そんな、投票した有権者の一票一票、その貴重な一票を、隠蔽するために燃やしてしまうなんということがまかり通ること自身が、どう考えてもおかしいわけであります。
 ですから、これを見ていただいてもおわかりのように、単なる選挙事務のミスじゃないんです。選挙事務に携わった職員が不正を行う事件になっているわけです。
 ですから、選管の事務局長や青葉区の選挙課長のように、まさに選管の中心にいるような役職者がかかわっているという点で、選挙への信頼を揺るがす重大事態であるわけで、この現憲法下で、こういった開票不正というのは、過去、ほかにも行われたことがあるんですか。

○大泉政府参考人 従来からの選挙の管理、執行についてのミス等が報告されておりますが、ミスとして、事務従事者が確認誤りや思い込み等によって誤ってしまったというようなことがございましたけれども、選挙事務に携わった幹部を含む職員が不正を行うということについては、その三例を承知しております。
 選挙への信頼を大きく揺るがしかねない事態でございますので、大変ゆゆしきことと認識しております。

○塩川委員 ですから、選管幹部がこういうふうに不正にかかわるような事案というのは、過去をさかのぼって、ないという話なんですよ。二〇一三年以降のこの五年間で三件も発生しているというのは、極めて異常な事態であるわけです。
 大臣にお尋ねしたいんですけれども、これまでなかったのに、この五年間の間に信じられない開票不正が三回も連続して起きている、極めて重大なことであって、何でこんなことが起こったのか、このことについて、総務省、総務大臣として、どのような分析、把握をされておられるのか、お聞きしたいと思います。

○野田国務大臣 お答えいたします。
 各選挙管理委員会は、選挙の管理、執行機関として、常に公正かつ厳正な手続や事務処理が求められていますが、昨年の衆議院議員総選挙において管理、執行上問題となった事項は百七十五件で、前回の衆議院議員総選挙時の百九十四件を下回ったものの、遺憾ながら、依然として多くの管理、執行上のミスが発生しています。
 それぞれの選挙の状況も異なっていて一概には言えないんですが、個別のミスの原因としては、多くが事務従事者の確認誤りや思い込み等であるものと考えられます。
 管理、執行上問題となった事項については、全国の選管で情報共有を図っているところであり、各選管において、これら他団体の事例を参考にしながら、適切な管理、執行に努めていただきたいと考えております。
 また、近年……(塩川委員「質問への答弁じゃないんですよ」と呼ぶ)あっ、続き、いいですか、続けてよろしいですか。(塩川委員「はい」と呼ぶ)
 また、近年、高松市や仙台市、甲賀市の事例のように、単なるミスを超えて、選挙事務に携わった職員が不正を行うという事案が発生したことは、選挙への信頼を大きく揺るがしかねず、大変ゆゆしきことと認識しています。
 これらの事案は、民主主義の根幹をなす選挙への信頼を支えているという自覚や、罰則の適用を含めた選挙制度の理解が欠如していたことや、事務体制や個々の作業に不正が混入し得る余地が、過誤が発生し得る余地があったことが原因であったと考えています。
 各選管においては、改めて選挙の公正の確保という原点に立ち返り、緊張感を持って職務に臨み、一つ一つの作業を確実に実施するとともに、節目節目で十分に点検を行うなど、選挙の厳正な管理、執行に万全を期していただきたいと考えています。
 総務省としても、引き続き、あらゆる機会を捉えて、各選管に、選挙の厳正な管理、執行を要請してまいります。

○塩川委員 いや、お尋ねしたのは、過去一度もないようなことがこの五年間で起こっているよねと。これはやはり、従来の延長線上の話ではなくて、何か異常な事態になっているんじゃないのか、こういう認識が必要じゃないかという問題なんですよ。
 事務ミス、これをなくしましょうというのは当然のことですけれども、また、選挙制度について、やはりその一票の重さの問題、そういうことについてしっかりと認識をする、これも当然のことなんだけれども、それは前からやってきている話であって、それであるにもかかわらず、過去一度もないようなことがこの五年間で三回も発生をしてしまった。このことについての、総務省として、国政選挙にかかわる不正、開票事務の不正が行われたということについて、しっかりと分析する必要があるんじゃないかと思うんですけれども、そういうことをやっていないということなんですか。

○野田国務大臣 繰り返しになるんですけれども、今の御指摘の件につきましては、やはりまず、民主主義の根幹をなす選挙への信頼を支えているという自覚を、その責任者が欠如してしまっていること、また、事務体制の中にそういうことが、個々の作業に不正が混入しやすいという余地や過誤が発生し得る余地があったということが原因だということは、今考えているところであります。

○塩川委員 自覚の欠如の問題も、これはこれで問題ですけれども、実際、その事務体制の問題でどんな問題があるのか。その辺の認識はどういうことなんですか。

○大泉政府参考人 お答えを申します。
 それぞれ三例につきまして、再発防止委員会が行われておりまして、それについて原因あるいは改善策などが検討されております。そういうことを含めまして、私どもも研究し対応していきたいと思います。
 その中で、今回、甲賀市の事案、最初は、高松市のときには、先ほど申しました法令遵守の徹底、選挙の信頼回復などを通知したところでございますけれども、今回はこれに加えまして、全国の選管を対象とした会議、研修会などにおいて、私ども、直接、選管の幹部職員に対してその意義を訴えることによりまして意識改革を図る施策、あるいは、投開票の実務に精通した選管OBを派遣しまして、選挙執行事務に対する基本姿勢、あるいは不測の事態が発生した場合の対応などについて、研修を積極的に行っていただこうというような取組を始めているところでございます。

○塩川委員 率直に言って、意識改革とか研修とかという、そういうレベルの話なのかということだと思うんですよね。こんな連続して起こるようなことって信じられないわけですよ。じゃ、みんながみんな起こり得るのかという話で、率直に疑念が持たれるような状況で。
 この甲賀市における選挙開票事務の不正事件では、不正にかかわった選管事務局長兼務の総務部長、それから総務部次長、総務部の課長級職員の三人は、無効票を水増しした理由を、開票おくれを回避するためにやったと説明しているわけです。
 私、この委員会でも何度も指摘をしてきているわけですけれども、こういう事件の背景に、開票時間の短縮を求める、そういうプレッシャーが働いていたんじゃないのか。開票時間をどんどん短くしてくれと、こういうプレッシャーが、こういう事件の背景にあるんじゃないのかと率直に思うわけですけれども、大臣、いかがですか。

○大泉政府参考人 一つ、前回の参議院選挙の前に執行経費基準法を改正いたしましたが、そのとき、開票時間が当時四時間というふうに設定されておりましたが、それを四時間半に、実情に即して延ばしたというようなことも対応しておりますので、私ども、そういうことで、プレッシャー、あるいは過度に迅速さに駆られないようにということを考えながら制度設計をしているところでございます。

○塩川委員 前回の参議院選挙のときで四時間想定している、まあ四時間半、つまり、国政選挙経費の基準額積算の前提となる開票時間というのを設定している。要するに、執行経費、お金を国政選挙の場合に国の方で出すような場合に、その際の積算の根拠として、開票時間をどれだけ想定するかということがあるわけですよね。それを、四時間と言っていたのを四時間半に延ばしました、そういう点での実態に合わせた配慮をしたという話なんですけれども、でも、これはさかのぼると、そもそも、もともとは何時間だったんですか。

○大泉政府参考人 もともとは六・五時間ということでございましたが、平成十九年の改正において六・五時間を五時間にしております。
 これは、実態を踏まえることと、あと、選挙執行経費は国民の負担である、原資が税金であるということも鑑みまして、ある程度の効率化というものは当然含んで考えるべきであろうということから、このように見直しているというふうなことで、現在は四時間半となっているというところでございます。

○塩川委員 今説明があったように、開票準備時間を合わせて、開票事務にかかる時間について、二〇〇四年基準は、今答弁にあったように六・五時間だったんですよね。それが、二〇〇七年の基準は五時間になり、二〇一三年の基準は四時間になって、今、現行は四・五時間と若干戻したわけですけれども、もともとは六・五時間想定だったんですよ。
 それは実態に合わせてと言いましたけれども、一方で効率化ということを言っているわけじゃないですか。効率化ということで経費節減を図るという趣旨がここにある。結果とすれば、現場にすると、この選挙の執行経費について、開票時間に係る経費が短い時間を設定されたために削られるという中で、どんどんどんどん開票時間を長くするようなことはできない、なるべく短くしよう、こういうプレッシャーがこんな経費の面でも働いていたんじゃないのかということが問われているわけです。違いますか。

○大泉政府参考人 直近の総選挙で、今基準として定めております四時間半で開票を終了しているというところが大体八割弱ございますので、おおむねの選管の求めには応じられるのではないかと考えております。

○塩川委員 今言ったように、現行の四・五時間以内に開票を終了している開票所の割合が八割弱という説明ですけれども、それに及ばないような状況というのも現に発生しているわけで、今言った、昨年の総選挙で四・五時間以内に開票を終了しているのが七八・八%ですけれども、十七年総選挙でもとの基準の六時間以内に開票終了している開票所は九五・五%ですから、本来、そこに戻してこそ、実際の実務に対応した開票事務の時間になっているんじゃないのかという点でも、これはやはり、減らし続けたということがこんなプレッシャーとなって開票事務の不正を招くような、こういうことになっているということが問われているんじゃないですか。
 効率化とか経費の問題と言いますけれども、選挙という、まさに民主主義の根幹を支える制度に不正があってはならないわけで、そのときにかかるコストは無駄なものじゃないんですよ。まさに民主主義のコストそのものじゃないですか。こういうことを削るということ自身が大問題なんじゃないですか。
 だから、現状でいっても、こういう選管の事務のトップにいるような人間が不正を主導するような事態が三回もこの五年間で連続しているということを、極めて重く受けとめるべきなんですよ。そのときに、単にしっかりと法律を守ってくださいねとかマニュアルをちゃんとつくって徹底してくださいねとか、そういうレベルの話じゃないんです。
 やはり、選挙制度でのこういう経費の問題や、あるいは人的な、人の配置の問題とか、いずれにせよ、そういった公正な選挙を保障するための体制がどうだったのかというところまで含めて検証する必要があるんじゃないですか。
 その点で、やはり、国政選挙にかかわる開票事務の不正ですから、そういったお金の手当ても責任持ってやっている総務省として、これはしっかりとこの三件についても分析をする、国としてもこれについて明らかにする、これこそ必要じゃないですか。改めて、野田大臣、いかがですか。

○野田国務大臣 お答えいたします。
 御指摘の選挙の管理、執行については、その全般にわたって遺漏のないよう万全を期すために、必要な予算、選挙事務に従事する人員を確保することは重要だと考えています。
 一方、御承知のように、国、地方の厳しい財政状況を踏まえれば、効率的な経費支出にも努める必要があることから、事務の効率化に向けた取組もまた重要だと考えています。
 こうした観点から、各選挙管理委員会において、それぞれの団体の実情に応じ、効果かつ効率的な執行体制を整え、公正かつ適正な選挙の管理、執行が行われるよう、総務省としても、効率的な投開票事務に取り組んでいる事例の周知とか国政選挙における必要な予算の確保には、しっかり引き続き取り組んでまいります。

○塩川委員 経費や人員配置についても、しっかりと現場を見て確保することの必要性と同時に、一方での効率性という言い方をしますけれども、選管の事務の現場の実態をよく見ていただきたいんです。
 国政選挙でも、この間、たくさんの選挙制度の改正が行われたじゃないですか。そういう中には、例えば十八歳選挙権というふうに新たに有権者が拡大するということなんかもありました。そういったさまざまな整備も必要だったわけですし、参議院では合区も行われるという点では、県の選管をまたがるような事務になってくる。そういう複雑さも出てきますし、小選挙区の区割りがこれほど複雑になったこともないわけです。
 ですから、一つの選挙区でも複数の選管がまたがるような実態という点では、非常にやはり開票事務も複雑になっているんですよ。そういうときに、現場の地方自治体の職員の数は全体として減っているわけですし、現場の選管を専任でやっているようなのは大きな規模の自治体でなければないわけで、多くの方々が兼務で懸命にやっておられるわけですよね。そういったときに、しっかりとした、余裕というか、適正な選挙を保障する、そういう体制、経費や人員の面で行うということが改めて問われなければならないと思います。
 ですから、早い開票をとあおるような問題というのは根本から改めなければいけないということを申し上げたいと思いますし、主権者国民の代表を選ぶ選挙というのは、民主主義の根本であり、公務員の選定、罷免権の行使という憲法上保障された国民主権と議会制民主主義上の原則にかかわる問題ということをしっかりと貫くということであり、改めて、総務省として真剣に分析、検証しろ、このことを求めたいと思いますが、最後に一言、大臣からお願いします。

○平沢委員長 大臣、時間が来ましたので、簡潔にお願いします。

○野田国務大臣 お答えいたします。
 しっかりと取り組んでまいります。

○塩川委員 終わります。ありがとうございました。