【内閣委員会】専門家会議/官邸に沿わぬと廃止か

 政府の新型コロナウイルス感染症対策の専門家会議が突然廃止されたのは、官邸の意図に沿わぬ専門家会議を政府対策本部から遠ざけようとしたものではないかと西村康稔特命担当相をただしました。

 私は、政府対策本部直属だった専門家会議を廃止し、「新型インフルエンザ等対策特措法に基づく有識者会議の下に分科会として位置付けることにした」と西村氏が述べたことに触れ、改組した組織の法的位置付けを質問。

 西村氏は、首相が「行動計画」案を策定する際に学識経験者の意見を聴かなければならないとする同法6条5項に基づき、「有識者会議の下に分科会として置いた」と答弁しました。

 私は、この規定は平時対応の話。すでにコロナが発生し、政府対策本部が立ち上がり、コロナの『まん延の恐れが高い』状況での政府の対応は基本的対処方針であり、その策定に当たっては18条4項に基づき、政府対策本部に直結した組織(諮問委員会)において専門家の意見が求められる段階。法的に位置付けるなら、これに位置付けるのが当然ではないか、と追及しました。

 その上で、これまで専門家会議は感染実態の状況分析や3密回避対策などを提言し貢献してきた。これらの提言が反映され基本的対処方針となっている。専門家会議が「感染対策として行動変容を促す意図から政府に経済的な補償の要請(6月24日)に言及してきた」と述べていることを指摘。官邸の意向に沿わない提案を行ってきた専門家会議を政府対策本部から遠ざけようと意図したものだと言わざるを得ない。

 西村氏は「まったくそういった意図はない」と否定。

 私は、科学的知見を軽んずる姿勢ではコロナ対策を進めることはできない、と批判しました。


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「議事録」

<第201通常国会 2020年7月8日 内閣委員会 20号>

○塩川委員 次に、新型コロナの政府専門家会議の廃止の問題についてお尋ねをします。
 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議、政府専門家会議は、この間、感染実態の状況分析や、三密の回避、また人と人の接触の八割減など、いろいろなコロナ対策の提案を行い、政府の施策にもそれが反映されてきたところであります。政府対策本部に直属していた政府専門家会議は、専門家としての知見を発揮をして、政府のコロナ対策に貢献をしてきました。それなのに、なぜこの政府対策本部のもとに置かれた専門家会議を廃止しなければならないのか。
 西村大臣は、会見などで、政府専門家会議は特措法に根拠があるわけではない、特措法に基づいて有識者会議のもとに分科会として位置づけることにしたんだと述べておられます。
 そこで、お尋ねしますけれども、専門家の意見聴取については、そもそも特措法ではどういうふうに規定されているんでしょうか。今回の政府専門家会議の廃止、分科会の設置というのは、特措法のどの規定に基づく措置ということになっているんでしょうか。お答えください。
○西村国務大臣 新型インフルエンザ等対策特別措置法、いわゆる特措法では、第六条で、行動計画の作成や変更などの際に学識経験者の意見を聞かなければならないとする規定を設けております。そして、基本的対処方針等を定める際、これは十八条でありますけれども、同様に、学識経験者の意見を聞かなければならないとなっております。
 こうした規定を受けて、専門家の皆様から御意見をいただく、聴取するための会議体として新型インフルエンザ等対策有識者会議が置かれているところでございます。その役割につきましては、設置要綱においても、特措法の規定も明確に引用する形で定めております。第六条五項の規定に基づく意見を述べるということで書かれております。
 そして、もう御案内かと思いますが、その有識者会議のもとに基本的対処方針等諮問委員会というものを設けて、この委員会では、基本的対処方針の諮問を行っていく、つまり、緊急事態宣言を発出する際とか解除する際、当然、対処方針を変更しますので、そういったことを諮問をして、御意見をいただくこととしております。
 今回、専門家会議の皆様から、御自身のこれまでの取り組んでこられた経験を総括をされて、六月二十四日に提言がなされました。私も、委員御指摘のとおり、これまで、専門家会議の提言を受けて、政府としてさまざまな対策をとってきました。日々、尾身先生を始め、いろいろな専門家の皆さんと意見交換をさせていただく中で方向を決めていく、そんな分析、評価もいただいております。私も本当に感謝を申し上げたいと思います。
 その専門家の皆さんがみずから、医学や公衆衛生以外の分野からもさまざまな領域の知を結集した組織とする必要がある、新たな組織をつくるべきだ、いろいろ誤解を受けてきたということも、前のめりになってきたというようなことも書かれております。そうした御意見を踏まえて、今般、分科会というものをこの有識者会議のもとに設置をしたところであります。
 したがって、今後、専門家の多くの皆さんはこの分科会に入っていただいておりますので、引き続き、当然、対策の連続性のことも必要になってきますので、そうした専門家の皆さんの知見をいただきながら、そして、今回はそれ以外の幅広い領域から入っていただいておりますので、さまざまな観点からの御意見をいただいて、今後、対策をしっかりと講じていければというふうに考えているところでございます。
○塩川委員 この新型コロナウイルス感染症対策分科会は、第六条第五項に基づく新型インフルエンザ等有識者会議のもとに置かれるということですから、特措法上の位置づけは第六条第五項ということでよろしいんですね。
○西村国務大臣 第六条第五項に基づいて置かれました有識者会議のもとに分科会として置かれるということであります。
○塩川委員 ただ、第六条第五項というのは、内閣総理大臣は、政府行動計画の案を作成しようとするときは、学識経験者の意見を聞かなければならない。つまり、政府行動計画の案を作成しようとするときなんですよね。それは、だから、平時対応の話です。
 一方、もう一つ紹介されていた第十八条第四項というのは、政府対策本部長は、基本的対処方針を定めようというときは、学識経験者の意見を聞かなければならないということで、これは、ですから、既に新型コロナが発生した段階であり、政府対策本部が立ち上がり、総理は政府対策本部長となっています。つまり、新型コロナの蔓延のおそれが高いと認めるときという状況において、基本的対処方針を作成するに当たっての専門家の意見聴取が求められる段階であります。
 これまでこの政府専門家会議が果たしてきた役割というのは、まさに政府対策本部のもとに置かれていて、十回にわたる見解や状況分析・提言などを出されて、それが諮問委員会の議論にも反映をされ、政府対策本部の決定を踏まえて基本的対処方針にもつながっている。まさに新型コロナの蔓延のおそれが高いと認めるときという、本部が設置された段階で求められる専門家の意見として尊重されてきたものであるわけです。
 それを何で平時対応の政府行動計画に対しての意見を求める第六条の第五項のもとの有識者会議の下に置かなければいけないのか。政府専門家会議を法的に位置づけるのであれば、平時対応ではなく、第十八条四項に基づく政府対策本部に直結した組織として位置づけるというのが当然じゃないですか。
○西村国務大臣 この十八条は、基本的対処方針を定めたり変更したりする際にお聞きをする、つまり、緊急事態宣言を発出したりする場合も、当然基本的対処方針を変更しますので、そういう場合の有識者の組織として基本的対処方針等諮問委員会というものが置かれているわけであります。
 実は、この基本的対処方針等諮問委員会も、六条に基づく有識者会議のもとに設置をされています。平時は、御指摘のように、有識者会議というもので行動計画を策定したりしていくわけですけれども、ある意味で、この十八条の緊急事態、緊急の、今のような、緊急事態宣言は発出していませんけれども、本部が立ち上がったものについても、この有識者会議のもとで、特に緊急事態に対応するということで基本的対処方針等諮問委員会が置かれているわけであります。
 ただ、この基本的対処方針等諮問委員会の方は、我々が、政府が緊急事態宣言を出す出さない、あるいは対処方針を変更する、こういう諮問を受けて回答、それに対する意見を述べていただくという諮問、答申のような立場の委員会なものですから、専門家の皆さんからのお立場でも、むしろ、さまざまなテーマについてもう少し自由に率直に議論する場が欲しいと。これは、御指摘のように、専門家会議がこれまで担ってきたような役割も担っていただくためにどうしたらいいかということで、専門家の皆さんとも議論をし、そしてこの有識者会議の全体のたてつけも考えた上で、今回のような分科会という形にさせていただいたところであります。
○塩川委員 平時対応の政府行動計画をつくるに当たっての意見を求めるという専門家の組織ではなくて、もう既にコロナが問題となっている、政府対策本部が立ち上がっている、政府の方針というのは基本的対処方針になるわけです。ですから、基本的対処方針の諮問委員会は、平時のときにも一応常置して、いざというときに対応するために有識者会議のもとにあるかもしれないけれども、しかし、そもそもこの十八条の四項に基づく組織として専門家の意見を聞く。だとしたら、この諮問委員会の下に政府専門家会議を位置づければいいだけの話であって、わざわざ平時対応の政府行動計画をつくる際の六条五項に置くというのは、これはやはり位置づけとして伴わないものだと言わざるを得ません。
 政府の専門家会議は、その専門的知見を踏まえて見解や提言を発表してきました。その中には、官邸の意向に沿わない提案もあったということです。一年以上持続的対策が必要との文言が五月一日の提言で削除をされたとか、緊急事態宣言解除の基準について、直近一週間の十万人当たりの感染者〇・五人以下に抑えるとしたところ、官邸が、十万人当たりの感染者が一人程度以下の場合は総合的に判断するとの表現に変えて、判断基準を弱める対応を行ったと報道されています。
 六月二十四日、政府専門家会議のメンバーは、構成員一同として、「次なる波に備えた専門家助言組織のあり方について」という意見書をまとめました。その中には、専門家会議として、「感染症対策として人々の行動変容を促す意図から、政府へ経済的な補償・援助の要請を言及するに至った。」と、休業要請と一体の補償を求めてきたことに触れています。自粛要請と補償をセットで行うことが感染症対策として有効だという指摘です。
 これに背を向けてきたのが政府であって、今回の政府専門家会議の廃止というのは、こういった官邸の意向に沿わない提案を行ってきた政府専門家会議を政府対策本部から遠ざけようと意図したものだと言わざるを得ません。この点について一言いただきたい。
○松本委員長 時間が過ぎておりますので。
○西村国務大臣 全くそういった意図はございません。
 引き続き、耳の痛いことも含めて、専門家の皆さんから御意見をいただいて、政府として適切に判断して、対応していきたいというふうに考えております。
○塩川委員 科学的知見を軽んずる姿勢ではコロナ対策を進めることができないと申し上げて、質問を終わります。