【「しんぶん赤旗」掲載】行政のデジタル化は何をもたらすか/塩川鉄也衆院議員に聞く(1)

「しんぶん赤旗」12月8日付・8面より

自助優先の社会保障

 菅義偉政権が推進しているデジタル庁の創設など行政のデジタル化が何をもたらすのか、日本共産党の塩川鉄也衆院議員に聞きました。

 ▶菅首相は「デジタル庁」の新設を目玉政策としていますが、何をしようとしているのでしょうか。

 デジタル庁の創設について、菅首相は、規制改革の断行の「突破口」だと述べています。菅政権の基本方針は、「われわれの目指す社会像は『自助・共助・公助、そして絆』」であり、「行政の縦割りや前例主義を打破して、既得権益にとらわれずに規制の改革を全力で進める」としています。デジタル庁の創設によって、▽国、自治体のシステムの統一・標準化▽マイナンバーカードの普及促進を進め、各種給付の迅速化やスマホによる行政手続きのオンライン化▽民間等のデジタル化支援とともに、オンライン診療やデジタル教育などの規制緩和―などを行うとしています。年内に基本方針を定め、次の通常国会に必要な法案を提出し、IT(情報技術)基本法の抜本改正や来秋のデジタル庁設置を目指しています。

個人データの国家管理進む

 さらに、菅政権は、「データ戦略」を策定し、看板政策に位置付けようとしています。デジタル化によって生み出された個人や産業の巨大なデータ(ビッグデータ)が「競争力の源泉である」として、成長戦略とするものです。「国内最大のデータホルダー(保有者)である行政機関は最大のプレイヤー」だとして、行政のデジタル化によって個人データの利活用を推し進めようとしているのです。この路線は、安倍政権から引き継がれたものです。

 ▶行政のデジタル化、「デジタル・ガバメント(電子政府)」の問題点は何でしょうか。

委員会質疑で個人情報保護法の改定が個人の権利・利益を守るものになっていないと批判する塩川鉄也議員=5月27日、衆院内閣委

 この間、国会論戦を行ってきて、デジタル・ガバメントにはいくつか問題点があると考えています。一つは、デジタル化によって個人データの管理を進め、マイナンバー制度で社会保障支出をさらに抑制しようという狙いがあるという点です。

 政府は、あらゆる分野でマイナンバーカードの公的個人認証やマイナポータルを利用することを目指しています。学校や職場等の健診結果を含む医療・介護の個人データ、国税還付・年金給付・各種給付金・緊急小口資金・被災者生活再建支援金・各種奨学金等の公金、障害者手帳や在留カード、各種免許・国家資格、学校教育における学習データなどを対象にしています。

 マイナンバーカードは、全国民が2022年度末までに取得することを目標とし、来年3月から健康保険証としての利用を開始、運転免許証との一体化も計画しています。任意であるマイナンバーカード取得を、実質的に強制とする危険があります。この結果、国民の所得や資産、さらに医療、教育など、個人を丸ごとスキャン(読み取り)した膨大なデータが政府に集中することになり、国家による個人データの管理が進むことになります。

最大の狙いは給付抑制徹底

 もともと財界の要求であった「共通番号」制度の導入は、各人が納めた税・保険料の額と、社会保障の給付額を比較できるようにして、「公正な給付と負担」の名で徹底した給付抑制を実行し、国の財政負担、大企業の税・保険料負担を削減していくことが最大の狙いです。マイナンバー制度は、社会保障を、納めた税・保険料に相当する“対価”を受けとるだけの仕組みに変質させ、「自助」が優先され「自己責任」に後退させるものです。国民の権利としての社会保障を守るため、廃止するしかありません。