【本会議】デジタル法案/個人データ/不利益利用も/行政サービス充実こそ

 デジタル社会形成基本法案などデジタル関連5法案が衆院で審議入りし、質疑に立ちました。

 私は、デジタル化を口実に窓口の減少など自治体の対面サービスを後退させる事例が多いと指摘。デジタル化を生かすとともに多様なニーズに応える対面サービスの拡充を求めました。

 また、基本法案が推進する「国や自治体の情報システムの集約・共同化」は、自治体の業務内容を国のシステムに合わせるものだと指摘。ある自治体がシステムの仕様変更ができないことを理由に、第3子の国保税免除の要望を拒否した事例を紹介し、自治体独自のサービスの抑制につながると批判。

 菅義偉首相は根拠を示さず、「懸念はあたらない」と強弁しました。

 私は、同法案によって個人データを「活用」する社会になると指摘。マイナンバー制度の拡大をめぐっても、個人の所得・資産・医療・教育などの膨大なデータを国に集積させようとしている。本人に不利益となる利活用が行われるのではないか、と追及しました。

 菅首相は「法定された範囲内で利用する事務を増やす」とし、「個人情報の一元管理はせず、保護に万全を期す」と述べるだけでした。

 私は、基本法案の基本理念に『個人情報保護』の文言がないことは重大だと強調し、国家による個人情報集積が監視社会につながると主張しました。

 デジタル庁については、各行政機関への勧告など強力な権限を持ち、自治体や医療・教育機関の予算配分やシステム運用にも関与でき、多数の民間企業在籍者を登用することで、官民癒着を招くと批判しました。


衆院本会議で行ったデジタル関連5法案の質問要旨は次の通りです。

 政府は行政のデジタル化で住民サービスを向上させるといいますが、実態はデジタル申請のみとした持続化給付金などで、支援を受けられない事業者を多数生じさせ、窓口減少や紙の手続き取りやめ、対面サービスの後退も相次いでいます。

 行政サービス向上には、迅速・簡便な手続きとしてデジタル化を生かし、多様で多面的なニーズに応える対面サービスの拡充こそ必要ではありませんか。

 基本法案は、国・自治体の情報システムの集約・共同化を推進するとし、政府は全国規模のクラウドを立ち上げます。その移行のために主要業務の標準化を推進するとしています。国主導のシステムの集約・共同化は、国がつくった鋳型にあてはまるものしか認められず、自治体を国の「端末」に変質させます。自治体独自のサービスの抑制につながります。

 基本法案は、AI(人工知能)やクラウドなどを利用し、個人データなどを「活用」する社会にしようというものです。その手段が、国・自治体のシステムの集約・共同化と、マイナンバー制度の拡大です。基本法案は「マイナンバーの利用の範囲の拡大」を明記しています。マイナンバー制度の利用範囲を税・社会保障・災害の3分野に限定し、国民の情報の一元管理は行わないとする従来の政府方針と整合性が取れません。

 整備法案では、税理士や医療・介護・社会福祉などの国家資格保有者を手始めに、マイナンバーでの情報管理を進めるとしています。口座ひも付け2法案では、本人同意が必要とはいえ、年金や児童手当などの受給者を手始めに、国が資産状況を把握し、税務調査などに使えるようにしています。

 国に、個人の国民の所得・資産・医療・教育など「あらゆる分野」をまるごとスキャン(読み取り)し、膨大なデータを集積しようとしているのではありませんか。

 重大なのは、基本法案の基本理念に「個人情報保護」の文言がないことです。個人情報は「個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべき」で、プライバシー権は憲法が保障する基本的人権です。「忘れられる権利」や情報の自己コントロール権保障の仕組みこそ必要です。

 個人データの利活用を優先して人権保障を軽んじ、国家による個人情報の集積が「監視社会」につながるのではありませんか。

 整備法案では、民間・行政機関などに分かれていた個人情報保護法制を統合し、自治体独自の個人情報保護条例を一元化しようとしています。プライバシー保護の後退、条例制定権の侵害になりはしませんか。

 デジタル庁は、政府全体のデジタル化の基本方針を策定し、各行政機関に勧告する強力な権限をもちます。補助金を出している自治体や医療機関・教育機関などの準公共部門の予算配分やシステム運用に口を挟むことが可能になります。自治体や大学などの自主性を損ないます。

 デジタル庁は、民間企業の人材を多数、登用するとしています。特定企業に都合の良いルールづくりや予算執行が行われるのではありませんか。


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「議事録」