デジタル関連法案で設置するデジタル庁の権限は地方自治を侵害するものだと批判しました。
内閣官房は、デジタル庁には、強力な総合調整権限を担保するために関係行政機関の長が十分に尊重しなければならない勧告権を付与していると説明。
情報通信技術の活用に関する高い識見を持つ民間出身の事務次官レベルの責任者「デジタル監」を置くことで、「デジタル大臣の政治判断をより迅速・的確に行わせることが可能になる」と述べました。
私は、民間からの意見を直接持ち込んで規制緩和などのデジタル政策を推進する仕組みだと指摘しました。
自治体への関与について、同庁が作成する「重点計画」には、国・自治体の情報システムの共同化や、行政が持つ個人情報を匿名化して民間企業に提供するオープンデータ化を求める内容などが含まれるのではないかと指摘すると、内閣官房は「共同化施策などは含まれている」と認めました。
内閣官房は、デジタル庁は各府省が補助金を支出して行うデジタル関係事業を統括・監理するとも述べ、同庁が総務省を通じて自治体の情報システムにも口をはさむことが明らかになりました。
私は、勧告権も総務省を通じて自治体に及ぶことになる。自治体に二重三重に介入する仕組みとなりかねない、と批判しました。
また、政府はマイナンバー制度で「公平・公正な負担と給付を実現する」というが、大企業優遇税制には手を付けず、消費税増税を前提にしているのが同制度だと批判しました。
「議事録」
<第204通常国会 2021年3月24日 内閣委員会 12号>
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
デジタル関連法案について質問します。
最初に、マイナンバー制度についてお尋ねいたします。
マイナンバー制度の意義についての政府資料を見ますと、政府は、マイナンバー制度、社会保障・税番号制度によって公平公正な負担と給付が行われる社会を実現するとして、納税改革、給付改革を行うとしております。
しかしながら、納税改革と言いますが、そこには企業負担という観点が欠落しているのではないかと思うんですが、この点についてはどうでしょうか。
○冨安政府参考人 御答弁申し上げます。
マイナンバー制度は、行政の効率化と国民の利便性向上を実現し、公平公正な社会を実現するデジタル社会の基盤であり、マイナンバー法に規定する社会保障、税、災害対策の各分野の行政事務において利用されます。
マイナンバー制度は、税務当局が取得する所得や納税の情報をマイナンバーで名寄せし、所得把握の精度を向上させる、マイナンバーを活用し、社会保障給付について、真に支援を必要としている者に対し迅速かつ適切に給付するなどにより、公正公平な負担と給付を実現するための基盤となっております。
ただ、具体的な、今先生ございました納税改革あるいは給付改革といったものでございますけれども、これは、それぞれの、納税でしたら財務省あるいは総務省、社会保障でしたらそれぞれ厚労省といったところが主担として検討されているものと承知しております。
法人でございますけれども、番号制度には、国税庁長官が法人等に対して指定する法人番号がございます。例えば税務当局に提出される各種申告書や法定調書に法人番号を記載されることにより、法人の所在地や名称が変更しても法人を特定し、その法人の税務情報を効率的かつ正確に名寄せ、突合することが可能となるなど、行政事務の効率化や課税の公平性が図られると承知しております。
先生おっしゃいました企業の負担等につきましては、それぞれ、恐らく、税ですと財務省あるいは総務省、社会保障、保険料ですと厚労省等が主担として検討されることと承知しております。
○塩川委員 納税改革と書いてありますからね。でも、しかし、今のお話ですと、国民一人一人の間での納税の話であって、企業負担の観点というのはその中に反映されていないというお話です。納税改革と言いますけれども、企業の納税ですとか社会保険料の事業主負担の立場というのが欠落をしている。
もう一点、お聞きしたいんですが、社会保障・税一体改革大綱を見ますと、消費税増税を行うとして、その逆進性対策として、番号制度の実施を念頭に、社会保障制度の見直しや所得控除の抜本的な整理と併せ、再分配に関する総合的な施策を導入するとしていました。
つまり、マイナンバー制度は消費税増税を前提にした制度だったのではないか。この点はどうでしょうか。
○冨安政府参考人 番号制度につきましては、番号法の一条におきましてその目的を規定しておりますけれども、個人番号を活用し、行政運営の効率化、行政分野における公正な給付と負担の確保を図り、これらの者に対する申請、届出その他の手続を行い、これらの者から便益の提供を受ける国民が、手続の簡素化による負担の軽減、本人確認の簡易な手段その他の利便性の向上を図れるようにということを目的としているものでございます。
○塩川委員 いや、逆進性対策としてこのマイナンバー制度の活用と言った際には、消費税増税がマイナンバー制度の前提としてありますよねと聞いたんですが。
○冨安政府参考人 繰り返しになりますけれども、このマイナンバー法を入れたときの目的というのは、先ほど申し上げました行政の効率化あるいは公正な給付と負担の確保ということでございますので、そのためにこのマイナンバー制度が入っているということでございます。
○塩川委員 経過から見ても、消費税の増税を前提にしての制度ということについて否定されませんでした。
実際に、消費税というのは、社会保障に回されず大企業の減税に回されたというのが実態だ。背景には、経団連などの経済団体の要望がありました。ですから、公平公正な負担と給付と言いながら、大企業優遇税制には手をつけない、消費税増税を前提にしているのがマイナンバー制度で、これでは公平公正な負担と給付にはならないということを指摘せざるを得ません。
大臣、いかがですか。
○平井国務大臣 マイナンバー制度の導入の議論は、この間、玄葉先生もお話がありましたとおり、長い議論の中、政権交代を経て、そして現在に至っているということで、税制に関して言いますと、マイナンバーとは関係なく、そのときの政権の政策判断ということだと思います。
○塩川委員 先ほど紹介したような経緯があるということを改めて強調したいと思います。
次に、デジタル庁の権限、機能についてお尋ねいたします。
デジタル庁の権限、機能について、政府の説明で、デジタル庁は復興庁と同様の強い権限を持つということですけれども、どのような権限か、他省の権限との違いも踏まえて御説明をいただきたいと思います。
○冨安政府参考人 御答弁申し上げます。
デジタル庁は、デジタル社会の形成のための司令塔として設置されるもので、東日本大震災からの復興のための司令塔である復興庁と同様の、他省にはない強力な総合調整権限などを付与しております。
具体的には、他省と異なり、組織の長を内閣総理大臣とし、これを助ける専任のデジタル大臣を置いております。また、その総合調整を担保するために、関係行政機関の長が十分に尊重しなければならないと規定する勧告権を付与しております。また、関係予算の一括計上、配分、関連する行政各部の事業の統括、監理権限等を持つことといたしております。
○塩川委員 強力な総合調整の権限、関係行政機関の長はこの勧告を十分に尊重しなければならない、そういった復興庁と同様の権限、強い権限があるということです。
その上で、このデジタル庁と復興庁はどこが違うのか、地方組織のあるなしとかいうのはおいておいて、マネジメント機能等々で違いがある点について御説明いただけますか。
○冨安政府参考人 御答弁申し上げます。
先生からマネジメントの観点ということでございましたので、マネジメントの観点で申し上げます。
デジタル庁と復興庁の組織マネジメントにつきましては、組織の長が内閣総理大臣であり、長を助け、事務を統括する担当大臣、副大臣、大臣政務官を置くことは同様でございますが、デジタル庁においては、デジタル大臣への助言及び庁務の整理、事務の監督を職務とするデジタル監を置きます。一方、復興庁においては、復興大臣を補佐する大臣補佐官を置くとともに、庁務の整理、事務の監督については事務次官が行うという点が異なっております。
デジタル庁においてデジタル監を置くことといたしましたのは、情報通信技術の進展が著しい中で、デジタル大臣が事務を統括する上で当該技術の活用に関する識見を助言する職が不可欠であることに加え、デジタル社会の形成に向けた行政各部に対する総合調整等を担うデジタル庁においては、高い情報通信技術の活用に関する識見が庁務を整理、事務の監督を行う事務レベルの責任者として不可欠と考えたところでございまして、この二つの機能を兼ねさせることで、デジタル大臣による政治判断をより迅速かつ的確にデジタル庁に浸透させることが可能となると判断したものでございます。
○塩川委員 ですから、デジタル監が置かれているという点では、事務次官に当たる仕事をしっかり行うと同時に、そういった専門的な知見を踏まえて大臣に進言、意見具申をすることができるというところが、他の組織にないマネジメント機能だということであります。
そうなると、いろいろ各役所で異論があった場合でも、デジタル庁が勧告権を使って、民間からの意見も踏まえて、規制緩和などのデジタル政策を推進する、そういう仕組みということになります。この点が、自治体との関係でどうなのかということを続けてお尋ねします。
基本方針を踏まえた重点計画はデジタル庁が作成します。デジタルガバメントに関する最上位の計画になります。重点計画には、国及び地方公共団体の情報システムの共同化、国民による国及び地方公共団体が保有する情報の活用など、自治体の情報システムに強く影響を与えるものになると思いますが、そのとおりでよろしいですか。
○冨安政府参考人 御答弁申し上げます。
デジタル社会形成基本法第三十七条に規定しております重点計画につきましてでございますけれども、デジタル社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策を定めるものでございます。したがいまして、法案で、重点計画で定める事項は政府が主体となって、国ですね、政府が主体となって取り組むべき施策となっており、地方公共団体に対し直接に対応を求めるものではございません。
また、重点計画には、地方自治に重要な影響を及ぼすと考えられる施策について定めようとするときには、基本法案第三十七条第五項の規定により、政府が地方六団体の意見を聞かなければならないということにしております。したがいまして、重点計画を定めるに当たりましては、地方公共団体を始め関係者の意見を丁寧に伺いながら進めてまいりたいと考えているところでございます。
○塩川委員 重点計画では、ガバメントクラウド、オープンデータなど、自治体の情報システムに強く関与することにはなりますよね。
○冨安政府参考人 重点計画に定める事項といたしまして、国及び地方公共団体の情報システムの共同化等に関し政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策など、委員おっしゃるとおり、含まれているところでございます。
○塩川委員 それから、デジタル庁の予算を通じた統括、監理の権限は、自治体に対してどのような関与が可能になるんでしょうか。
○冨安政府参考人 御答弁申し上げます。
今、予算というお話がございましたけれども、まず一つ、その予算の前に整備方針というのを作ることにしておりまして、国の情報システムあるいは地方公共団体の情報システムの整備及び管理に関する基本的な方針、整備方針と呼んでおりますけれども、これをデジタル庁が定めることといたしております。
整備方針を定めることと別に統括、監理ということを行いますけれども、その統括、監理を行う対象は、先生おっしゃいました、予算を出すものになります。要するに、国の行政機関が行う事業と規定しておりますので、地方公共団体の関係で申し上げますと、地方公共団体の情報システムに関して国が補助金等を支出する事業を国の事業として行う場合でございます。
したがいまして、デジタル庁が統括、監理を行うと申しましたけれども、デジタル庁が統括、監理を行う対象はあくまでも各府省でございまして、各府省が補助金を支出して行う事業に対して行います。その各府省が補助金を支出して行う事業が、デジタル庁が定めます情報システムの整備方針に沿ったものであるかどうかなどを見ていくことになります。
○塩川委員 各府省から自治体への関与ということであります。
予算を通じた統括、監理というのは、個別の情報システムの全プロセスを見るということです。システムに係る予算の要求前、要求時、執行段階の各段階で評価を実施をする。補助金を出していれば、自治体も対象になります。総務省を通じて、デジタル庁は自治体の情報システムにも口を挟むことになる。
デジタル庁の勧告権は自治体に及ぶんでしょうか。
○平井国務大臣 デジタル庁の勧告権、デジタル大臣の勧告権ということですね。行政各部の施策の統一を図るために必要となる事務の遂行のために、関係行政機関の長、ですから各府省大臣等に対して行うものでありまして、地方公共団体に対して行う権限はございません。
○塩川委員 総務省に勧告をして、そこから自治体に及ぶということというのは、当然、予算の話もありましたけれども、想定されたものであります。
これら一連の重点計画や統括、監理、勧告権と、自治体に二重三重に介入するような仕組みになりかねない、地方自治を侵害するものになりはしないのか、こういう指摘については大臣としてはどうか。
○木原委員長 平井大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○平井国務大臣 はい。
あくまでも、効率的、効果的なシステム構築を目指すものでありまして、個々の業務、運営に関することを口出しするつもりはございません。
したがいまして、デジタル庁設置法の下でのデジタル庁の権限が地方自治を侵害するものではないと考えております。
○塩川委員 終わります。