【内閣委員会】保育士は常勤が原則/短時間置き換え撤回を

 子ども・子育て支援法と児童手当法の改定案の審議。1クラスに1人常勤保育士を置くとの規制をなくし「2名の短時間保育士で可」とする規制緩和の撤回を求めました。

 私は、保育士は子どもと密接に関わり、保護者との連携を十分に図るために「常勤が原則」だと確認。

 厚生労働省の大坪寛子審議官は「指摘の通りだ」と認めました。

 私は、保育士が次々に入れ替わる短時間勤務による細切れ保育では、保育士の負担が増えて質の低下が免れない。子どもの安心・安全な環境の確保にもつながらない、と批判。

 大坪審議官は「常勤が望ましい」としつつ、「常勤が確保できるまでの暫定措置だ」と正当化しました。

 私は、保育士不足の根本原因は、仕事量や責任の重さに見合った処遇が実現していないことだと強調。全産業平均と比べて月11万円低い保育士の賃金水準について、達成時期も明示して改善策を進めるべきだ、と追及。

 内閣府の嶋田裕光統括官は「最終的には全産業平均を目指したい」とする一方、達成時期は答えませんでした。

 私は、常勤保育士を短時間勤務に置き換える措置は、かえって保育士の処遇改善を妨げる、として同措置の撤回を要求。コロナ禍で奮闘する保育士等への慰労金の支給、全額国費での頻回・定期のPCR検査を行うよう主張しました。


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「議事録」

<第204通常国会 2021年4月7日 内閣委員会 15号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 子ども・子育て支援法、児童手当法に関連して質問いたします。
 最初に、保育所等におけるコロナ対応の問題ですけれども、保育所などは、コロナの緊急事態宣言の下でも、社会の安定の維持の観点から仕事の継続が求められた、そういう職場であります。看護師や医師の方の子供を受け入れ続けるなど、命と暮らしを守るために取り組んでこられました。
 コロナ対応には大きな負担がかかるということで、例えば、横浜の保育問題協議会の調査では、おもちゃの消毒に大変時間がかかるということが取り上げられておりました。半数以上の保育園で、おもちゃの消毒に一時間以上、二時間近くかかる、また二時間以上という保育園も三割に達したということであります。感染予防対策の徹底など、強い緊張感の中で保育サービスなどを提供してきたと。
 大臣、こういった保育園における感染症対策での大変な大きな努力の実態、こういうことについては御承知でしょうか。
○坂本国務大臣 一部、様々な情報もございましたので、聞き及んでいることは事実でございます。
○塩川委員 大変な御努力をされておられます。そういったコロナ禍の中で、保育士の方が感染の不安と向き合いながら保育に従事をしております。こういった、子供と接することが働きがいとなっている保育士の方にとって、子供との接触が感染リスクにつながるというのは大変強いストレスであります。
 保育所を始めとして、子ども・子育て支援施設で働く職員の方に慰労金の支給を行うべきではないのか、こういうことについてお答えいただきたいと思います。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、保育所で働いている皆様方は、御自分の健康管理に加えまして、感染防止に取り組んで、保育の提供、これを継続していただいていることに、大変感謝を申し上げているところでございます。
 このために、慰労金という形ではないのですけれども、施設が職員の皆様に対して、今先生がおっしゃいましたような業務時間外の消毒、清掃等を行った場合の業務外の手当、また、感染を防ぐために職員の皆様が購入されました消毒薬等々、こういったものに対する補助を行っているところでございまして、こうした取組を通じまして、きめ細かい支援を続けてまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 今やっているというのは、あくまでも消毒等の感染症の防止対策の範囲内でしかありません。そういったことではなくて、この間、医師や看護師の方、医療従事者の方への慰労金なども行われてきている、そういった際に、まさに、そういった方々の子供たちも保育をする、そういう意味では、本当に日常的に社会を維持していく上で不可欠な組織でもありますこういった保育所における保育士の皆さんに、しっかりとコロナ対応の慰労金を出すということは極めて重要だと思いますけれども、大臣の方から、その点、お答えいただけますか。
○坂本国務大臣 私の方から云々ということはなかなか言えませんけれども、厚労省の判断にお任せしたいというふうに思います。
○塩川委員 是非、子ども・子育て支援全体を前に進めていく上でも、今のコロナ禍で本当に求められる、そういう措置を直ちに行ってもらいたい。野党は、保育士の方も含めた慰労金法案も提出をしているところであります。是非、政府・与党としても受け止めて、実現のために力を発揮していただきたいと思います。
 それから、保育所において、保育現場は子供が生活をする場でありますし、子供と触れ合うことが職員の仕事であります。そういう点でも、子供と家族、職員の健康を守り保育を維持するためにも、保育所を対象にした職員への頻回、定期的なPCR検査を社会的検査として実施することが必要ではないかと思いますが、この点についてお答えいただきたい。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 クラスターが保育所において例えば発生した場合には、これはもちろん、保健所の判断、御指導の下で行政的な検査が行われるということになっております。
 また一方で、保育所は、高齢者施設ですとか医療機関等々と異なりまして、必ずしも重症化しやすいというエビデンスがあるわけではないということから、感染者がまだ発生していない段階で、一斉に定期的に検査を行うという対象にはしていないところでございます。
 ただ一方で、感染症が多数発生している地域で、現に感染が発生した施設ですとか店舗等とかに限らず、地域の関係施設を一斉に検査する、こういった場合には、当然ながら保育所もその対象になり得るというふうに考えております。
○塩川委員 安心、安全を確保するということが何よりであるわけであります。そういった際に、職員の方が、地域での生活もあり、そして園での仕事があるといった際に、職員の方を中心にした頻回で定期的な検査というのは、これは高齢者の入院、入所施設でも同様でありますけれども、非常に意義のあることだと思います。
 こういう取組を行うことによってしっかりと感染症対策に備えていく、この必要性はあると思うんですが、改めて。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来申し上げたことと重複して恐縮でございますけれども、一斉に定期的に行うというには、やはり感染しやすいですとか重症化しやすいといったエビデンスに基づくものではないかというふうに考えておりますので、今回、保育所が必ずしもそうしたエビデンスがあるという見解はいただいておりませんことから、このような対応をしております。
○塩川委員 是非実施を求めたいと思いますし、感染が蔓延している地域においてという話もありました。そういう点でも、社会的検査を行う場合に、これは感染症法で、自治体の仕事ということだったら、自治体の財政措置、それに対して国が二分の一補助というスキームですけれども、しかし、自治体がお金を出すというところに、やはり、財政上の事情があってなかなか踏み出せない、社会的検査を十分にやれないということがあるわけです。そういう点でも、知事会などについても、その点での改善策というのは要望がされております。
 地方創生臨時交付金が使えるじゃないかなんということもありますが、直接充てることはできないわけですよ。そういう点でも、国が直接手当てをする形でこういった社会的検査ができる、こういうスキームというのは是非考えられるべきだと思いますが、改めてその点についてお聞きします。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 そういったスキームを活用するかどうかということも科学的なエビデンスですとか地域の実情に応じて判断されるものだというふうに考えておりまして、今時点におきましては、必ずしも保育所がそうした対象になり得るという見解は持っていないというところでございます。
○塩川委員 いや、今の話は、まあ保育所も当然念頭にありますけれども、それにとどまらず、社会的検査を自治体が行うといった際に、財政措置として国が直接その費用を持つということを行うべきではないのかということを求めているんですが。
○大坪政府参考人 大変失礼いたしました。
 感染の蔓延の状況、そういったところを踏まえて、国の負担率、こういったところは都度検討されるものだというふうに考えております。
○塩川委員 いや、国の負担率というか、国の負担率って、意味がよく分からないんですが。
○大坪政府参考人 先ほど先生の御質問の中で、例えば、感染症予防事業の負担金ですとか、地方創生臨時交付金の算定の対象となる、こういったときに都道府県の負担分というものが発生するということを御指摘いただいたのかなというふうに思いましたので、そのように答弁させていただきました。
○塩川委員 都道府県の負担分、都道府県が自ら負担するというたてつけになっている、その部分を、例えば、震災復興特別交付税という形で、交付税措置によって自治体の財源にしていくということになれば、その自治体の二分の一の部分を手当てできる、こういう交付税措置でやるということはあるんじゃないかと思うんですが、その点、地方創生臨時交付金が直接の担当でもありますし、それとは違って、今言った交付税措置なども考えたらどうかという点ではどうですか。
○坂本国務大臣 私の立場としては、地方創生臨時交付金の単独事業分、これを活用していただきたいというふうに思いますし、復興交付税措置の場合には、私が答えることではありませんけれども、別途、住民税あるいは所得税から財源をつくってまいりましたので、そこから充てられていたんだろうというふうに思います。
○塩川委員 財源、手当ての話は、それはそれとして考える話であります。今でいえば、富裕層や大企業の優遇税制を見直せという声も広がっているところですから、そういったことを含めて、自治体における社会的検査が進むようなスキームというのを是非考えるべきだ、具体化すべきだということを申し上げておきます。
 次に、新子育て安心プランに関連してお尋ねをいたします。
 この新子育て安心プランの中に、短時間勤務の保育士の活用促進ということが挙げられております。待機児童が存在をする市町村において、各クラスで常勤保育士一名必須との規制をなくし、それに代えて二名の短時間保育士で可とするという話であります。
 そこでお尋ねしますが、三月十九日付で厚労省が事務連絡の文書を出しております。その中にも、最低基準上の保育士定数は常勤の保育士をもって確保することが原則としておりますが、このように、常勤の保育士をもって確保することが原則としている理由は何かについて御説明ください。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 保育の質の確保の上で最低基準として定められているものは、これまで多くの議論の経過を経まして一定程度定まっているものがございますので、そういったところがまずは最低基準としては一応の原則であるという観点から、そのような通知で発出をさせていただいたところでございます。
○塩川委員 最低基準の原則の話でしたけれども、この短時間勤務の保育士の導入については、一九九八年からということで、通知、事務連絡文書が出されています。そこを見ますと、「保育の基本は乳幼児が健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境の中で、健全な心身の発達を図ることであり、また、保育所の利用が一般化する中で従来にもまして保育士の関わりは重要であるばかりでなく、保護者との連携を十分に図るためにも、今後とも最低基準上の保育士定数は、子どもを長時間にわたって保育できる常勤の保育士をもって確保することが原則であり、望ましい」としています。
 つまり、子供との関わりとの関係でも、保護者との連携を十分に図るという点でも常勤の保育士が必要だということを言っている、そういうことでよろしいですか。
○大坪政府参考人 先生の御指摘のとおりでございます。
○塩川委員 ですから、一人一人の子供と接する上でも、また、その保護者の方と日常的に、家庭での生活を含めて、子供たちの様子をしっかりと情報共有、連携をしていく、子供を慈しむということでの十分なコミュニケートを図っていくという点でも、常勤の保育士が必要だということであります。
 保育所の保育指針には、「保育所の役割及び機能が適切に発揮されるように、倫理観に裏付けられた専門的知識、技術及び判断をもって、子どもを保育するとともに、子どもの保護者に対する保育に関する指導を行うもの」であるとされています。
 このことは、保育士は、子供の発達を支援し、健康や安全を確保し、保護者への相談支援などを行うといった保育の専門職として重要な役割を担っているということを示しているということでよろしいですね。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 先生の御指摘のとおりだというふうに認識をしております。
○塩川委員 専門職として重要な役割を果たしてきたのが保育士であり、その専門性を発揮をする上で、常勤の保育士を配置することは当然の措置であります。
 この間、保育は長時間化が進んでおります。その点でも、働き方の在り方そのものを見直すことが求められておりますけれども、子供の長時間保育ということも進んでいるところです。
 その一方で、職員配置の最低基準は改善されないままということで、保育所の運営において、短時間勤務のパート保育士が欠かせないという現実があります。子供が一日の大半を過ごす保育所で、保育士が次々と入れ替わる細切れ保育では、パート保育士も常勤保育士も共に負担が増えて、保育の質の低下は免れないのではないのか、この点についてお答えください。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、保育士について、長時間の常勤の保育士がいることが望ましいということの考え方には変わりはございませんが、一方で、保育所の中で空き定員があるにもかかわらず常勤の保育士がいないことによって児童をお預かりすることができない、それによって待機児童が発生する、こういった事態が生じていることも事実でございます。そのために、市町村がやむを得ないと認める場合に限って、常勤の保育士が確保されるまでの暫定的な措置として、今回、このような通知を出させていただいたというところでございます。
 一方で、先生がおっしゃいますように、保育の質が低下してよいのか、そこは細切れになってよいのかと。それは全くそうではございませんで、この通知の中では、保育の質を確保する際の留意すべき事項として、一貫した保育の提供が必要であるということ、そのために、共同の指導計画や記録の作成、引継ぎ時間の確保、また、日によって異なる短時間勤務の保育士を配置しないこと、そういった様々細かい留意事項をこの通知の中に一緒に記載をさせていただき、自治体にお示しをしているところでございます。
○塩川委員 ですから、共同の指導計画ですとか引継ぎをちゃんとというのは、まさに細切れだからこそそうならざるを得ないということであって、これは子供たちにとってみても、一日の大半を過ごす保育所の中で保育士が次々と替わっていくという状況になります。これは、子供たちにとっての安心、安全な環境の確保につながらないんじゃないでしょうか。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 必ずしもその形が望ましいというふうに申し上げているのではなくて、先ほど申し上げましたように、空き定員があるにもかかわらず常勤保育士が見つからないことでお子様を預かれない、そういうことで待機児童が発生している地域に限った暫定的な措置ということで御理解をいただければというふうに考えております。
○塩川委員 暫定的な措置だ、市町村がやむを得ないと判断した場合に行うことなんだと。ただ、それはやはり保育の質の低下の懸念や、細切れ保育と言われた、子供たちにとっても負荷がかかるような、そういう保育になりかねないという懸念は当然承知をしているということでよろしいですか。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 したがいまして、そういったことがないようにという意味で、同じ通知の中でかなりきめ細かい留意事項をお示ししているところでございます。
○塩川委員 そもそも、なぜ常勤の保育士の確保が困難なのか。この点についてはどのように把握をしておられますか。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 保育に関しまして、様々、自治体の御意見ですとか、アンケートなどを行っておりますが、保育士の確保の現状といたしましては、やはり、仕事量が多いのではないか、また、再就職をするに当たりましても、勤務時間が長い、例えば雇用形態が非常勤であれば再度就職することができるといったようなアンケートが多数見受けられます。これは、東京都の保育士実態調査報告、こういったところからもうかがい知れる状況でございます。
 したがいまして、そういった長い時間の勤務というのがなかなか難しくなっている中で、保育士の確保をどのようにやっていくかといったことも行政の中で検討を様々積み重ねているところでございます。
○塩川委員 仕事量が多い、勤務時間が長い、こういう長い時間の勤務が常勤の保育士としての勤務を難しくしている、非常勤なら再就職できるという言い方でしたけれども、でも、常勤の保育士の長時間労働というところがそもそも問題であって、保育士不足の根本的な原因は、仕事量や責任の重さに見合った処遇が実現していないからではないか。その点はどうですか。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 保育士の方々の処遇改善、これはもうずっと長らく御指摘をいただいているところでございまして、これまでにもその待遇を改善するような政策は様々取ってきておるところでございます。
 今後とも、引き続き、また、民間賃金との比較などを踏まえながら検討を続けてまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 いや、認識の話をお聞きしているので。
 長時間労働、仕事量が多い、そういった実態がありながら、そういった仕事量や責任の重さに見合った処遇が実現していないことが保育士不足の根本的な要因ではないか。その点について。
○嶋田政府参考人 保育士などの処遇改善は、大変重要な課題であるというふうに認識しております。これまでも、平成二十五年度以降、月額四万四千円に加えまして、平成二十九年度から、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を実施してきているところでございまして、高い使命感と希望を持って保育の道を進んだ方が長く働くことができるように、引き続き必要な支援を着実に実施してまいりたいと思っています。
 また、厚生労働省におきまして、保育士の業務負担の軽減とか、あるいは勤務環境の改善を図るということのために、保育業務のICT化や保育補助者の雇い上げの支援などに取り組んでいるというふうに承知しているところでございます。
○塩川委員 いや、ですから、処遇改善とか業務負担の軽減等を行ったということなんですが、その前提というか、なぜそれをするのかといえば、仕事量や責任の重さに見合った処遇が実現していないということが保育士不足の根本的な要因ではないのかということにお答えいただきたいんですが。
○坂本国務大臣 保育士の配置の改善につきまして、子ども・子育て支援の質の向上のメニューといたしまして、三歳児に対しましては、配置を二十対一から十五対一に改善するための加算を平成二十七年度から実施をしているところであります。それから、一歳児そして四、五歳児は未実施でございますけれども、一歳児に係る職員配置につきましては六対一を五対一に改善する、四、五歳児に係る職員配置につきましては三十対一を二十五対一に改善するということでございますけれども、このことにつきましては、各年度の予算編成におきまして必要な財源の確保に努めてまいりたいというふうに思っております。
 引き続き、保育士の確保に向けまして総合的に取り組んでまいります。
○塩川委員 これはこれで、この後また質問しようと思いますけれども、保育士不足の根本的な原因は何なのかということを端的に言ってほしいということなんです。
○木原委員長 厚生労働省大坪審議官、端的にお願いをいたします。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘の処遇改善といいますか、賃金格差というところも一つの課題だというふうにも思っておりますし、また、労務の過多、これについては、先ほど御答弁がありましたように、様々な工夫で、ICT化を図るなど、また、ほかの補助の方を入れるなど、様々な対策を取っているところでございます。
○塩川委員 賃金格差の問題、また業務における負担が非常に大きいというお話でありました。その点は長時間労働という側面にも当然つながってまいります。重大な問題だということです。
 今日の議論にもありましたけれども、賃金格差という点で、保育士の賃金と全産業平均の賃金では月収換算でどれだけのギャップがあるのか、簡単に御説明いただけますか。
○嶋田政府参考人 厚生労働省の調査を基に算出した保育士の年収は、全産業平均と比べまして、令和元年度で百三十七万円の差がございます。
 処遇改善に取り組み始めた平成二十五年度と比べますと、六年間で全国平均で約五十四万円増加しておりまして、一定程度、処遇改善の効果は出ているというふうに考えております。ただ、男女の全産業平均の年収につきましては、勤続年数による差がありますことから、単純に比較したり目標にしたりすることはちょっと困難でございますけれども、こういった差も念頭に入れながら、引き続き着実に支援を実施してまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 十一万円の差があるということです。保育士と全産業平均では月収換算で賃金に十一万円のギャップがある、この賃金格差の解消が必要だということで取組をやってきているという話ですが、保育士の賃金水準の引上げが必要なときに、政府として、保育士の賃金についてはどのような水準に持っていこうと考えておられるのか、そこを教えてください。
○嶋田政府参考人 処遇の改善ということで引き続き継続的に取り組んでいるところでございますが、ただ、目標につきましては、やはり、先ほども申しましたように、勤続年数に差がありますとか、ちょっと単純な目標設定はなかなか難しいのではないかということでございます。
 いろいろな産業の差分とかそういったことも参考にしながら、保育という現場が高い使命感と希望を持って働ける道になるように、着実な支援を進めてまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 いろいろ、勤続年数の話等もありました。そういうのを織り込んだ上でも、全産業平均との関係で、いつまでに例えば全産業平均にたどり着くとか、目標とか達成時期とか、そういうものというのは持たないんですか。
○嶋田政府参考人 いつまでにという、なかなかそこの部分は断言することはできませんけれども、いずれにしましても、そういう差があるということを念頭に置きながら、その幅を縮めていきたいということで、必要な支援を実施してまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 保育士の賃金改善の目標ですとか、その達成時期というのを持たずに改善策を進めることができるのか。その点、どうですか。
○嶋田政府参考人 保育士の処遇改善につきましては、女性が保育士であるケースが多うございますので、まず、女性の全産業平均との差がなくなるように、安定的な財源確保を併せて取り組んでいくこととしているところでございます。
 ただ、最終的には、やはり男女の全産業平均というのを目指していきたいというふうには考えているわけでございます。
○塩川委員 男女差別の根幹は賃金格差ですから、女性の賃金との関係で保育士の賃金を比較するような、そういうやり方自身がおかしいということを申し上げておきたい。全産業平均との関係でも、しっかりと目標を持って、達成時期も明示をして改善策を進めることが必要だということであります。
 そういうときに、常勤保育士に代えて、短時間のパート保育士に置き換えるという措置は、常勤保育士の処遇改善を妨げるものになりませんか。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来の答弁と繰り返しになりますが、常勤の保育士が確保できる場合には、もちろんそれが望ましい姿でありまして、それに代えて短時間の保育士を置いてよいとしているものではございません。ですので、そういったところは望ましい姿というものを確保することに努めていただくことがまず第一かというふうに考えております。
○塩川委員 ですから、常勤保育士が確保できるような賃金水準というのを行うことこそ必要でありますし、長時間労働の解消という点でも、やはり保育士の配置基準の問題というのは避けて通れないということであります。
 この職員の配置基準の見直しのところ、先ほど坂本大臣からも先駆的に御説明をいただきましたけれども、今年度から、小学校において順次三十五人学級を実現をしていく取組となりました。三十五人以下ということであれば、二十五人程度の学級ということにもなるでしょう。一方で、保育所等の四歳児、五歳児の配置基準については、三十人に保育士一人という状況です、先ほどの大臣の説明もありましたけれども。
 この三十人に保育士一人というのは七十年前と同じ基準をそのまま引っ張ってきているという点でも、安全、安心で質の高い保育を保障するために、職員の配置基準の改善、職員の大幅な増員を図る、こういったところで大きく踏み出す必要があるということで、改めてお答えいただけますか。
○坂本国務大臣 先ほどの繰り返しになりますけれども、四歳、五歳児に係ります職員配置、三十対一を二十五対一に改善していく、あるいは、一歳児に係る職員配置について、六対一を五対一に改善していく、この配置改善につきましては、各年度の予算編成において必要な財源の確保に努めてまいりたいと思っております。
○塩川委員 じゃ、例えば、四歳児、五歳児を二十五対一にするというのはいつできそうなんですか。
○坂本国務大臣 毎年度の予算編成において必要な財源を確保するように努めながら、実現に向けて努力をしていきたいというふうに思います。
○塩川委員 いや、いつというのはどうでしょうか。
○坂本国務大臣 そこまで明確にお答えすることは今できません。
○塩川委員 壁に貼り出しているだけだと、それは現場にしてみれば、そんなのは納得いく話ではありませんので。こういった点で大きく踏み出すということが極めて重要だ、そういうときに、この常勤保育士に代えて短時間のパート保育士に置き換える措置というのは、かえって常勤保育士の処遇改善を妨げるものになる、このことを指摘せざるを得ません。
 それと、保育士の資格を持たない保育補助者の活躍促進を掲げて、勤務時間三十時間以下という補助要件を撤廃をする、これはどうなんでしょうか。保育現場の、保育士の処遇改善につながると言えるのか、この点はどうですか。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど来、先生から、保育士の確保が難しい原因は何であるかというお尋ねもございまして、勤務の状況ですとか労働の過多、また、様々御指摘をいただいたところでございます。
 その中で、国といたしましては、配置基準の必要となる保育士の配置、これは維持した上で、保育士の業務負担をいかに軽減していくか、こういったことを様々検討を重ねてきたところでございまして、その中の一つといたしまして、保育補助者という方の雇い上げを補助、支援をしているというところでございます。
○塩川委員 今、活用状況、実績はどんなふうになっていますか。
○大坪政府参考人 大変申し訳ございません。ただいま数字を持ち合わせておりませんので、また改めて御報告させていただきたいと思います。
○塩川委員 おととしこのやり取りをしたときに非常に少なかったということもありましたけれども、この活用が進んだとしても、実際に常勤の保育士の方が、一人一人の子供たちの生活の状況をきちっと記録にとどめるような作業というのは、どうしてもやはり保育に従事をしているということによって成り立っていることというのは大変大きくあります。
 やはり、保育士の処遇改善、労働実態などを改善することを通じて保育の専門性を生かした仕事につなげていく、こういうことにこそ力を入れるべきだ、その方向での取組が求められていると思います。こういった新子育てプランにおける短時間保育士の配置については、これは取りやめるべきだということを申し上げておきます。
 それから、残りの時間で、児童手当法の改正の特例給付の一部廃止の問題ですけれども、日本の家族関係予算が主要国の対GDP比の家族関係支出と比較して少ない実態を見たときに、児童手当の削減というのはおかしいんじゃないのかと率直に思います。この点について、まずお答えください。
○坂本国務大臣 子育て世代に対する支援といたしましては、これまでも幼児教育、それから保育の無償化などを行ってまいりました。
 さらに、今般、不妊治療助成の拡充や新子育て安心プランの実施によります待機児童の解消などを行いまして、子育て世帯全体への支援を充実させてまいりたいと考えております。
 これまでの取組によりまして、我が国の家族関係社会支出の対GDPは、平成二十五年の一・一四%から平成三十年には一・六五%まで、着実に上昇をしております。
 このうち、待機児童問題につきましては、四年間で十四万人の保育の受皿として整備をすることとしたものでございます。この運営に毎年度必要となる追加費用が約一千四百億円でございまして、それにつきましては、社会全体で子育てを支援していくという大きな方向性の中で、今般の児童手当の見直しによりまして生じる財源等に加え、私も経済界に足を運びまして、企業から一千億円を追加拠出していただき、所要額を確保したところでございます。
 年収一千二百万円相当以上の方に対する月額五千円の特例給付の見直しにつきましては、このような総合的な少子化対策を進める中で、長年の課題であります待機児童問題の最終的な解決を図るものでありまして、全体のバランスを考えた上での措置であるということを御理解いただきたいというふうに思います。
○塩川委員 児童手当法の附則の改正で検討規定があります。そこに「財源の在り方」というふうに書いてあるんですけれども、やはりどこから財源を持ってくるのかという議論は極めて重要であります。
 そういったときに、この法案における附則の検討規定における財源の在り方の検討というのは、どのようなことを検討するということなんでしょうか。
○嶋田政府参考人 お答えいたします。
 改正法案では附則に検討規定を設けまして、子供の数等に応じた児童手当の効果的な支給及びその財源の在り方や支給要件の在り方について検討することとしております。
 これは、児童手当については、多子世帯等に給付を求めるという拡充の御意見や重点化の御意見がある中で、財源確保の具体的方策と併せてこれらは検討していく必要があるということから、このような検討規定を設けているところでございます。
 検討の際には、少子化の状況を始めまして、子ども・子育て支援に、それぞれ、ほかの施策の実施状況でありますとか子育て家庭への影響等もよく注視しながら、少子化の進展への対処に寄与する観点から検討を深めたいというふうに考えているところでございます。
○塩川委員 具体的な話は何にもありませんでしたので、続きは次回に行いたいと思います。
 終わります。