【内閣委員会】土地利用規制法案/対象施設も機能阻害行為もあいまい/従わなければ刑事罰

 基地や原子力施設などの周辺住民を監視する土地利用規制法案について、対象施設が広範・曖昧なのにもかかわらず、従わなければ刑事罰を科すものだと批判し、廃案を求めました。

 法案は、防衛関係施設や原発などの周囲約1キロなどを「注視区域」に指定し、「機能阻害行為」には中止を勧告・命令します。特に重要な施設は「特別注視区域」に指定し、一定規模の土地売買に事前届け出を義務付け、従わない場合は刑事罰が科されます。

 私は「特別注視区域」では、事前届け出を忘れたままの取引も罰則対象となると指摘、「機能阻害行為の内容も、対象施設の範囲もあいまいで、重要な点は政府に白紙委任のまま、従わなければ刑事罰を科すというのは納得いかない」と批判しました。小此木八郎領土問題担当相は「安全保障確保と経済のバランスに配慮した」と強弁。

 私は基地周辺の不動産屋から「明らかなマイナス要因」と懸念が上がっていると強調。区域外の住民も売買や賃借の当事者となりうる。全ての住民の財産権やプライバシー権を侵害する違憲立法だと批判しました。

 また、「注視区域」の対象施設の例示として、防衛省は駐屯地、港湾施設、飛行場施設、射撃場、医療施設をあげ、演習場も含まれうると答弁。内閣府は原子力研究機関は含まれないとする一方、核燃料の製造・加工事業所や核燃料廃棄物の保管・貯蔵施設も対象になりうると認めました。

 私は、核燃料の製造、廃棄、貯蔵まで含めると非常に広い。茨城県東海村ではそうした施設が集中し、住民の懸念は大きいと批判。候補地のリストを出さないのはおかしいと強調しました。


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「議事録」

<第204通常国会 2021年6月2日 内閣委員会 29号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今日は、最初に、土地利用規制法案について質問をいたします。
 理事会で政府が提示をしました防衛関係施設の注視・特別注視区域の候補の例示施設について何点かお尋ねをいたします。
 防衛省にお聞きしますけれども、この中で、注視区域で、部隊等の活動拠点となる施設とあるんですけれども、これはどのようなものになるんでしょうか。
○川嶋政府参考人 防衛省でございます。お答えいたします。
 ただいま御質問がありました部隊等の活動拠点となる施設についてでございますが、これは、陸上自衛隊の駐屯地、海上自衛隊の港湾施設、陸上、海上又は航空自衛隊の飛行場施設、射撃場施設、医療施設などを想定してございます。
 例えば、陸上自衛隊習志野駐屯地、海上自衛隊下関基地隊、陸上自衛隊立川駐屯地が挙げられます。
 以上でございます。
○塩川委員 陸自の駐屯地、海自の港湾、海自、空自の航空施設、それから射撃場の施設、それから医療施設というふうにおっしゃったということでいいんですかね。
 駐屯地については、全部入るということですか。
○川嶋政府参考人 お答え申し上げます。
 駐屯地であるから全て自動的に入るということは考えておりませんで、やはり一つ一つちゃんと洗い出して、この法律の要件に合致するかどうかというのをきちんと調べた上で対応するということだと考えてございます。
○塩川委員 その線引きはどういうふうな考え方なんですか。
○川嶋政府参考人 まさに、重要施設あるいは特に重要な施設として、その駐屯地が該当するかどうかという点を総合的に勘案することになろうと考えてございます。
○塩川委員 その辺の線引きが曖昧なんですけれども。
 それから、駐屯地に隣接して、駐屯地に附属するような形で演習場や訓練場があるんですけれども、これはこの活動拠点となる施設に入るんでしょうか。
○川嶋政府参考人 お答えをいたします。
 確かに、駐屯地に隣接して演習場だとか訓練場が隣接する場合、これはございます。したがいまして、それは、その使用の実態といいますか、それをよく見極めて、対象施設と認識し、あるいは対象施設じゃないと認識していくことになろうかと思います。
 ただ、基本的には、例えば演習場というのは、広い空間、空間といいますか、地積といいますか、があるということに意義がある施設でございますので、その施設自身が重要な施設というわけではないんじゃないかというふうには考えてはおりますが、あくまでも使用の実態をよく見て、今後、総合的に考えてまいりたいと考えてございます。
○塩川委員 非常に線引きが曖昧だという点では、近隣の方々にするとどうなるのかという点での予見可能性の問題としても極めて問題だと思います。
 次に、土地調査検討室に原子力関係施設についてお尋ねいたします。
 生活関連施設として原子力関係施設を挙げています。答弁では、原子力発電所と核燃料サイクル施設を検討しているということですが、それでは、研究用の原子炉を持っている原子力の研究機関というのはどうなんですか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、法第二条第二項三号に規定いたします生活関連施設として、原子力関係施設を政令で指定するかどうかにつきましては、土地等利用状況審議会の意見を伺うなど、法定する手続に沿って判断をさせていただく予定でございます。
 その上で、原子力関係施設を政令で指定することとした場合に、個々の施設の周辺を対象区域として指定するかどうかにつきましても、それぞれの事情を勘案し、審議会の意見を伺った上で、指定の要否を個別に判断させていただきます。
 御指摘ございました、原子力研究機関や、あるいは大学の研究炉、試験炉につきましては、国民生活に関連を有する施設であって、その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められるものといたします、本法案で定める生活関連施設の要件には該当せず、それらを政令で指定することは考えていないところでございます。
 以上でございます。
○塩川委員 五月二十一日の答弁で、原子力関係施設については、電力供給への影響、原子力施設の災害防止、核燃料物質等の保護の観点から、必要な施設の周辺を区域指定することを検討とあるんですけれども、研究炉や実験炉であっても、核燃料物質の保護の観点で考えたら、入るんじゃないですか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 重ねての答弁でございますけれども、本法案の中では、生活関連施設につきまして、国民生活に関連を有する施設であって、その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められているもの、このように定義させていただいております。
 その関係で、御指摘がございました、研究機関につきましては、生活関連施設の要件に該当しないということでございますが、こちらにつきましても核燃料物質がございますので、こちらにつきましては他法において適切な規制がなされておるもの、このように考えておるところでございます。
 以上でございます。
○塩川委員 他法で全体がそもそもかかっているところもありますから、何で新たにこれなんだというところがよく分かりません。
 それと、核燃料の製造、加工事業所はどうでしょうか。
○木村政府参考人 お答えさせていただきます。
 御指摘ございました、核燃料の製造、加工事業所でございますが、原子力発電所で使用する核燃料の製造、加工を行う施設でございます。
 核燃料物質を有しており、国民生活に密接に関連をいたします原子力発電所と一体不可分の関係にございますことから、概念上、原子力関係施設には含まれるものと考えてございます。
 原子力関係施設を政令で指定することとした場合に、核燃料の製造、加工事業所の周辺を指定するかどうかにつきましては、その施設に所在いたします核燃料物質のリスクなどを勘案いたしまして、審議会の意見を伺った上で、個別に判断をさせていただきたい、このように考えてございます。
○塩川委員 核燃料又は核燃料廃棄物の貯蔵施設というのはどうなりますか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘ございました、核燃料又は核燃料廃棄物の貯蔵施設でございますが、原子力発電所で使用した核燃料や放射性廃棄物を保管、貯蔵するための施設でございます。
 核燃料物質を有しており、国民生活に密接に関連いたします原子力発電所と一体不可分の関係にございますことから、概念上、原子力関係施設に含まれるものと考えてございます。
 その上で、原子力関係施設を政令で指定するということといたしました場合に、核燃料又は核燃料廃棄物の貯蔵施設を指定するかどうかということにつきましては、その施設に所在いたします核燃料物質のリスクなどを勘案いたしまして、審議会の意見を伺った上で、個別に判断をさせていただきたい、このように考えてございます。
 以上でございます。
○塩川委員 商業用原発に連なるような施設ということであれば、製造から廃棄に係る貯蔵の施設まで含めて入るというふうに受け止めました。そういう点では非常に広くなりますし、茨城県の東海村などは、非常にそういった施設も集中しているという点で見ますと、住民の皆さんにとっても非常に懸念されるところというのは大きいと思います。
 自衛隊の施設、あるいは米軍施設がどうなるかというのはそもそも分からないわけですけれども、こういったリストを作ることは可能だと思いますし、対象施設のリストも出さないのはおかしいということは申し上げておきます。自衛隊の演習場のところなど、対象区域の線引きも曖昧だと、駐屯地の話なども取り上げたところであります。
 その上で、小此木大臣にお尋ねします。
 特別注視区域内にある土地建物のうちで一定規模以上の面積のものについて売買を行う場合に、売主と買主の双方に対して事前届出を義務づけることになります。その際、事前届出を忘れてしまったまま取引をした場合であっても罰則の対象になり得るという答弁がありました。これは余りにもひどいんじゃないでしょうか。
○小此木国務大臣 おっしゃいましたように、故意ではなく事前届出を忘れてしまったまま取引をした場合であっても罰則の対象にはなり得ると思います。ただし、運用上、そのようなケースについては、事後であってもできるだけ速やかに届出を提出していただくように、丁寧にお願いをする予定でございます。
 事前届出義務を含め、求められる対応については周知を徹底してまいりたいと思います。その一環として、事前届出義務については、不動産取引を媒介する業者から土地等の買主に説明していただくことを考えています。加えて、実際の届出に当たっては、行政関係の手続に不慣れな方であっても円滑に届出を行えるよう、届出書類の簡素化、記載マニュアルの作成、内閣府における相談体制の整備などを行うことを検討してまいりたいと思います。
 本法案は、通常の不動産取引を制約するものではなくて、不動産取引に影響を与える可能性は小さいものと考えておりますが、運用上も不動産取引に影響が生じないよう取り組んでまいりたいと存じます。
○塩川委員 周知と言いますけれども、そもそも曖昧な法案なんですよ。だから、周知のしようがそもそもないんじゃないのかということが問われているわけです。
 注視区域、特別注視区域において、所有権や賃借権等に基づく土地利用者に対して、利用状況の報告徴収を拒否すれば刑事罰、機能阻害行為があった場合の必要な措置への命令違反も刑事罰、特別注視区域で事前届出を怠った場合でも刑事罰となります。
 機能阻害行為の内容も曖昧で、対象施設の範囲も曖昧で、重要な点は政府に白紙委任のまま、従わなければ刑事罰を科すというやり方そのものが納得がいかないんですが、お答えください。
○小此木国務大臣 本法案ですが、これは、安全保障の確保と経済の自由のバランスに配慮して制度設計したものであります。憲法で保障された国民の権利や自由を不当に侵害するものではなくて、違憲立法とも言われることがございますけれども、そういった指摘には当たらないものと考えています。
 機能阻害行為については、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な対応が想定されるため、特定の行為を代表的、普遍的な機能阻害行為として法案に規定することは必ずしも適当ではないと考えております。また、仮に特定の行為を機能阻害行為として法案に例示すれば、例えば、機能阻害行為は例示したもの及びそれに類似したものに限定されるのではないか等の誤解を生じさせかねず、安全保障環境や施設の特性の変化等を適時に反映することが困難になるといった問題があるものと考えております。
 一方で、土地等の利用者の予見可能性を確保する観点から、閣議決定する基本方針では可能な限り具体的に機能阻害行為を例示する考えであります。
○塩川委員 曖昧さを残したままで罰則だけあるというようなやり方自身がおかしいということを重ねて申し上げ、不動産取引への影響が小さいと言いますけれども、私も基地周辺の不動産屋の方にお話を伺いました。売る前に調査対象となることを当然説明することになりますねと。印象が悪い、明らかなマイナス要因だ、不動産屋にとってメリットは何もない、土地の値段が下がるのではないかと懸念をしておられました。土地の取引にマイナスの影響を及ぼすのは明らかじゃないですか。
○木村政府参考人 お答え申し上げます。
 私どもの調査は、機能阻害行為を防止するという観点から利用の実態を調査させていただくものでございます。
 加えまして、特別注視区域におきましては、取引に際しまして事前の届出をしていただくわけでございますが、この事前届出そのもの自体が契約の有効性に直接関わるものではございません。土地の取引そのもの自体を規制するものではございませんので、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、不動産取引に与える影響は小さいもの、このように考えているところでございます。
 以上でございます。(発言する者あり)
○塩川委員 今、後藤さんが言ったように、現場の声というのは耳に入っていないのかということを言わざるを得ません。
 特別注視区域や注視区域内の住民の財産権やプライバシー権を侵害するだけではありません。区域外の住民も区域内における売買や賃借の当事者となり得るわけで、全ての住民を対象にして財産権、プライバシー権を侵害するものとなるということを指摘をし、廃案しかないということを改めて申し上げておきます。
 小此木大臣はここまでで結構です。