【内閣委員会】コロナ入院制限/重症化と病床ひっ迫の悪循環招く/撤回を

 新型コロナウイルス感染症の入院治療を重症者などの「重点化」し、「自宅療養を基本」とする政府方針に対し、重症化を招き、入院期間の長期化などで病床ひっ迫の悪循環を生み出すと批判し、方針撤回を求めました。

 私は、西村康稔担当大臣が「デルタ株は非常に感染力が強い。多くの過程において家族全員が感染した例が見られる」(17日衆議運委答弁)と認めていると指摘し、家族への感染防止のためにも感染者は入院や宿泊療養が基本だと強調しました。

 西村大臣が「症状に応じて必要な医療を提供するための対応だ」と答えたのに対し、私は、専門家からコロナ医療は早期の治療が重要であり、中等症Ⅰの初期で治療を始めることができれば症状も改善する一方、中等症Ⅱや重症の一歩手前で治療を始めると酸素投与も必要となり、回復までに時間がかかるとの知見が出されていると指摘。入院を制限する政府方針では、入院期間が長くなり、かえって病床がひっ迫する悪循環に陥るのではないかと批判し、方針の撤回を求めました。

 内閣官房の梶尾内閣審議官は「最終的には医師の判断だ」と背を向けました。

 私は、中等症は急変する場合もある。現場の知見をふまえた対策こそ必要だと強調し、方針撤回を重ねて求めると共に、宿泊療養施設の増設と臨時医療施設の設置を求めました。


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「議事録」

<第204通常国会 2021年8月18日 内閣委員会 第35号>

○塩川委員 それでは、西村大臣にコロナ対策について伺います。
 昨日の議院運営委員会でも質疑をいたしましたけれども、西村大臣はデルタ株の感染力に関する私の質問に対して、デルタ株は非常に感染力が強い、多くの家庭において家族全員が感染した例が見られると答えました。
 家族への感染を防止するためにも、感染者は入院や宿泊療養が基本であって、自宅療養を基本とするという今の方針というのは、これはまずいんじゃないでしょうか。
○西村国務大臣 既に、先般示されたものについて厚労省から更に詳しく説明がなされていますけれども、患者さんが、感染した方が、誰もが症状に応じて必要な医療が受けられるということをしっかりと確保していくための対応であるというふうに承知をしております。
 したがって、若い人でリスクはなくて独り暮らしであれば、自宅療養でも大丈夫。ただ、しっかりとケアをしていくということですけれども、健康観察を常に行っていくということでありますが、そういった方には自宅で療養していただく。他方、中等症以上で酸素吸入が必要な方、こういった方は当然、入院をして、そうした吸入をしていく。こういった対応をしていくというふうに承知をしております。
 いずれにしても、自宅療養であっても、保健所を中心に、医師会と協力をしながら、また、外部委託もしながら、健康観察をしっかりと行って、何か変化があった場合には速やかに把握をして、必要な医療につなげていくということが大事だというふうに考えております。
○塩川委員 家庭内の感染が大きく広がっている状況、子供たちの感染も家庭内、職場から親が持ち込んできた、そういう例なんかも多数出ているわけであります。
 そういう点でも、やはり少なくとも療養は宿泊療養が基本だとしていたものを、今回のように自宅療養が基本となれば、これは家庭内の感染はもう仕方がないということに取られかねない。実際にそういう下に置かれている方が大変不安の中にあるわけですから、やはり自宅療養を基本とするという方針については、撤回をすべきではありませんか。
○西村国務大臣 厚労省からも詳しく説明がされていますけれども、必要な方が入院される、あるいは施設に入所される、そうした体制を確保するために、引き続き、病床であり宿泊療養施設、これも確保していくということでありますので、状況に応じて、健康管理体制を強化した宿泊療養施設も当然活用しながら対応するということでありますし、宿泊療養施設を、数を増やしていくこともそれぞれの県において進められて、それを国としても協力をしているということであります。
○塩川委員 療養については、宿泊療養をしっかり行うという取組こそ必要だということを申し上げておきます。
 入院治療の件で、今、大臣の方からも、中等症で酸素吸入が必要な方は入院治療という話もありました。
 コロナの医療は早期の治療介入が重要との専門家の指摘があります。
 中等症の1の初期で治療を始めることができれば、症状も改善をする。一方、中等症の2や重症の一歩手前で治療を始めると、酸素投与も必要で、回復するまでに時間がかかる。入院治療を重症者などに重点化をする政府の方針では、入院期間が長くなり、かえって病床が逼迫する悪循環に陥ることになりませんか。
○西村国務大臣 症状に応じて必要な医療が受けられるということが大事だというふうに考えております。その上で、当然、高度な入院治療が必要な重症者の方は治療が一定期間必要になってきますので、そうした方に確実に入院していただいて、しっかりと治療を受けていただいていくということが大事であります。
 もちろん、回復期になればまた別の病院に転院していただくということも当然あるわけでありますけれども、大事なことは、繰り返しになりますが、それぞれの症状に応じて必要な医療が受けられるということ、それをするために今回のような対応を厚労省の方で進めているということであります。
○塩川委員 今回の見直し、考え方で示されているのでは、中等症の1、呼吸困難や肺炎症状のある人については、これは入院とするというのがこれまでの考え方だったわけですが、そこのところが、今回は、中等症でも酸素吸入が必要だというところに変えているわけですよね。従来、中等症1であれば入院という扱いが、そこのところが変えられて、自宅療養ということになると。
 それはやはり、現場においていえば、中等症1の人たち、急激に体調を崩す場合もあるわけですから、そういった方々が入院をして、その入院期間が結果として長くなることによって悪循環になるということというのははっきり見えてくることじゃないでしょうか。
 中等症1の部分について入院治療としないといった方針というのが、かえって医療逼迫を招く悪循環をつくるということになりはしませんか。
○梶尾政府参考人 お答え申し上げます。
 厚生労働省の示している考え方におきましても、必要な方が入院や施設入所をできる体制を確保するということで病床、宿泊療養をしっかり確保していくということで、入院は重症患者、中等症患者で酸素投与が必要な者、投与が必要でなくても重症化リスクがある者に重点化となっていますが、最終的に医師の判断ということで、中等症の中で、医師がこの方は入院する必要がないというような判断をしたリスクが低いというような方については自宅でということがございますけれども、その中にも、重症化が急速に進む可能性が高いと判断されれば医師の判断でということにはなろうかと思っております。
 そういったことで厚労省の方の考え方が示されているかと承知してございます。
○塩川委員 中等症1の初期で治療を始めることができれば症状も改善するが、中等症2や重症の一歩手前で治療を始めると、酸素投与も必要で、回復するまでに時間がかかる、こういう現場の知見を踏まえた対策こそ必要で、病床が逼迫する悪循環に陥るような重点化を図る方針というのは改めるべきだ。
 重症化を招く入院制限、また自宅療養の原則化というのは撤回をすべきだと申し上げ、宿泊療養施設の増設や臨時医療施設の設置をしっかりと取り組んでいく、そういう働きかけを国として行うことを改めて求めるものであります。
 次に、ワクチンに係る集団免疫について少し教えていただきたいんですが。
 脇田国立感染研所長はメディアの取材に対して、当初は、日本に暮らす人のうち六割から七割程度の人がワクチンを接種すれば、いわゆる集団免疫が達成でき、接種していない残りの三割から四割の人も守ることができると考えていました、しかし、残念ながら、デルタ株の感染力の高さや現在のワクチンの効果などを踏まえると、集団免疫を獲得することは難しいことが予想されますと述べております。
 このデルタ株における集団免疫獲得に関するワクチンの効果、この点についての大臣の認識を伺いたいと思います。
○西村国務大臣 イギリスの状況が参考になると思うんですが、ワクチン二回接種者が約六割という形で接種が進んでおります。他方、これまでのイギリスにおける感染者の数は累積で人口の約一割となっていますので、単純に合わせますと約七割の方、若干重なっている方はおられると思いますが、約七割となっていますので、そうした状況であっても、つまり、ワクチンを二回打っている、あるいは過去に罹患した感染歴があるということで抗体を持っているということからすれば、約七割の人がそういう状態であっても、今、現実に週二十万人ぐらいの感染が出ているという状況があります。
 こうしたことを踏まえて、感染研の脇田所長が、八割、九割の接種率でもどうなるか分からない、接種が進むイギリスやイスラエルなどの状況を見る必要があるという見解を示されたものと承知をしております。
 他方、ワクチンの効果については、海外でも、デルタ株でも約八割以上の発症予防効果を発現するという報告のほか、感染研の報告例では、ちょっと数は少ないんですが、感染者六十七名のうち重症者はゼロであった、二回接種者ですね。ということで、一定の感染予防効果と高い重症予防効果は確認をされているということでありますので、重症化をさせない、しないという意味でも、ワクチン接種を着実に進めることは重要だというふうに考えております。
○塩川委員 発症予防、重症予防という点でのワクチンの接種の重要性というのは、そのとおりだと思います。
 その上で、集団免疫の話の議論というのは以前からあるんですが、これは政府として、集団免疫の効果について、ワクチンの接種、何らか目標とか方針というのは政府として持っているんでしょうか。
○西村国務大臣 これまで、専門家の中で様々な議論は私も聞いたことがありますけれども、政府内で何か、いわゆる集団免疫を目指すためにワクチン接種を何割まで目指すとか、そういった目標を何か決めているとは私自身は承知をしておりません。
 他方、総理がこれまでも何度も言われていますとおり、希望される方には、十月、十一月にはその方々が全て打てる、そういった体制をつくっていき、そういう状況をつくっていくということで、今、着実に河野大臣の下でワクチン接種を進めているということでございます。
○塩川委員 ただ、以前、菅総理が、四割の接種で感染者が減少する例もある、そういう論文もあるという紹介をされていたわけですけれども、そういう点でいうと、何らか誤解を招くようなことになりかねないのではないかと思うんですが、その点、どうでしょうか。
○西村国務大臣 菅総理は、以前の野村総研の報告、分析の中で、一回接種された方が四割に達すればかなり感染が抑えられるというデータ分析がなされたことを紹介をされたんだと思いますが、総理には、様々な、デルタ株の状況、イギリスの状況、あるいは、それぞれの国の接種状況なども含めて、また、いろいろな研究者の分析あるいはシミュレーションなども含めて、随時御説明を申し上げ、そうした状況については御理解をいただいているというふうに思いますし、そうしたことも踏まえて、昨日もそうでありますが、強い危機感を示されて、対策を強化していこうということで取り組まれておりますし、私ども、政府一体となって、何としても総力を挙げて今の感染を抑えていく、このことに全力を挙げていきたいというふうに考えております。
○塩川委員 科学的知見を踏まえた発信を是非行っていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。