【内閣委員会】カジノ、国民多数は反対/担当相、答弁立てず

 IR(カジノを中核とする統合型リゾート)を解禁するカジノ実施法案の質疑に立ち、「国民はカジノ解禁を認めていない」と、民意を無視してカジノ解禁を推進する政府の姿勢を追及しました。

 今国会でカジノ実施法を成立させる「必要はない」71%(「朝日」4月14・15日調査)などの直近の世論調査結果がある。国民多数がカジノに反対している理由は何だと考えるか――と何度もただしたが、石井啓一IR担当相は答弁に立とうとしませんでした。

 国民の反対はカジノが依存症・経済破綻・地域社会の荒廃をもたらす懸念があるからだ。

 石井担当相は「カジノばかりに焦点があたっている」と、反対世論はIRの全体像への“無理解”によるものだと居直り、カジノ解禁を進める理由を「わが国を観光先進国に引き上げる原動力になる」と述べました。

 IRの推進は「抑止すべきギャンブルを奨励するものになる」「そもそもギャンブルは抑止・抑制すべきものではないか」とただしました。

 石井担当相は「現行法上、カジノ行為は刑法で禁じられている」と認めました。

 カジノ合法化で、新たなギャンブル依存症が増えることを認めるか――とただしても、石井担当相は「明確にお答えできない」と答弁を避けました。

 国民多数はギャンブルによる『経済振興』に明確に反対している。

衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」
<第196通常国会 2018年05月30日 内閣委員会 22号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 カジノ実施法案、いわゆるIR実施法案について質問をいたします。
 カジノ解禁については、国民世論は反対が多数であります。例えば、共同の三月三、四日の調査では、カジノ解禁に賛成が二六・六%に対して、反対が六五・一%。また、朝日の四月十四、十五日の調査では、カジノ法案を成立させるべきは二〇%で、必要はないというのが七一%であります。
 大臣にお尋ねいたしますけれども、このように、カジノ解禁について国民世論は反対が多数であります。その理由は何だとお考えでしょうか。

○石井国務大臣 IRにつきましては、カジノばかりに焦点が当たりがちなことから、さまざまな弊害を心配する声が世論調査に反映されているのではないかと思われます。
 カジノの設置につきましては、依存症防止対策、犯罪・治安維持対策、青少年の健全育成対策として厳格な入場規制や広告・勧誘規制など、重層的かつ多段階的な措置を講じているところであります。
 政府といたしましては、IR推進法及びその附帯決議に基づき、IR整備法案の策定に当たりまして、その制度の大枠についてパブリックコメントや説明会を実施し、国民の皆様の意見を丁寧に伺う機会を設けてまいりました。
 引き続き丁寧に説明を行うとともに、世界最高水準の規制の執行体制の整備等を着実に実施いたしまして、依存症防止対策などに万全を期しながら、世界じゅうから観光客を集める滞在型観光を推進してまいりたいと考えております。

○塩川委員 いや、大臣は質問に答えていないんですけれども、反対が多数だ、その理由は何かと聞いているんですよ。対策の話は聞いていないんです。
 大臣も言っていたように、国民の意見は丁寧に伺ってきたと。要するに、国民はどんな意見を言っているのか、反対だという理由は何なのか、その点をもう一回答えてもらえますか。

○石井国務大臣 冒頭答えたと思いますが、IRについては、カジノばかりに焦点が当たりがちなことから、さまざまな弊害を心配する声が世論調査に反映されているのではないかと思われますと先ほど答弁をさせていただいたところであります。

○塩川委員 じゃ、何でカジノに焦点が当たるから反対が多いんですか。

○石井国務大臣 IRは、カジノだけではなく、MICE施設等さまざまな誘客施設が備えられた総合的なリゾート施設であります。そのIRの全体像がなかなか知られていないというところに、やはり一つの要因があるのかなというふうに思っております。

○塩川委員 いや、だから、IRの話じゃなくて、カジノの解禁の話をしているわけですよ。カジノ解禁に反対だという国民多数の意見、それはなぜだと思いますかと聞いているんです。

○石井国務大臣 カジノを単体で解禁するわけではありません。あくまでもIR、統合型リゾートの中の施設としてカジノを解禁する、なおかつ、これがさまざまな弊害防止対策を行っている、そのことについてまだ十分知られていないのではないかなというふうに思っておりますので、今後とも丁寧に説明をしてまいりたいと考えております。

○塩川委員 いや、IRにカジノが含まれるのははっきりしているんですよ。そのカジノの解禁に反対だという声が多数なんだから、カジノ解禁反対というその国民多数の理由は何だと考えているんですかということをお聞きしているんです。単純な話なんです。何で答えられないんですか。

○石井国務大臣 ですから、カジノを単体で解禁するのではなくて、IRの一部として実施をするということが十分に知られていないのではないかと思っております。

○塩川委員 だから、十分に知られていないということを前提に、じゃ、何で反対なのか。

○石井国務大臣 十分に知られていないから反対が多いのではないかと思っているということであります。

○塩川委員 だって、知られていなければ反対のはずもないじゃないですか。知られていないんだから。

○石井国務大臣 ですから、繰り返しになりますけれども、IRの中で統合型リゾートの一つとしてカジノがあるということが十分に知られておられずに、カジノ単体で解禁されるのではないかというふうにお思いの方が多いのではないかというふうに想像をしております。

○塩川委員 いや、ですから、カジノが入っているんです、IRは。そのことが、IR全体の話が知られていないという話、それはそれとしてあるわけだけれども、カジノがあるからですよ。カジノがあるから反対だと言っているわけだから。
 その理由について、だって、具体的にこの後皆さんに説明するんだったら、そこの部分は欠かせないじゃないですか。どういうふうに説明するということですか。

○石井国務大臣 これまで重ねて答弁してきたとおりであります。

○塩川委員 いや、ですから、答えていないんですよ。
 そもそもカジノ解禁について反対が多数だということは出ているわけですから、その理由を端的に聞いているんですよ。もう一回。

○石井国務大臣 これまで答弁してきたとおりであります。

○塩川委員 そんなのじゃ、説明になっていないですよ。こういったことを繰り返すから、国民の理解が得られないんじゃないですか。こういう答弁だから、国民の理解が得られないということになるじゃないですか。
 この対応策で、大臣が言っていたように、ギャンブル依存の問題とか、治安の悪化の問題とか、青少年の健全育成の心配だとか、結局、こういうところがあるから反対の声が多数であるわけで、国民の中には、カジノ、ギャンブルは依存症、経済破綻、地域社会の荒廃をもたらすことへの懸念がある、それが反対が多数の理由であるわけです。
 大臣に重ねてお尋ねしますけれども、そもそもギャンブルというのは、抑止、抑制すべきものじゃないでしょうか。

○中川政府参考人 御答弁申し上げます。
 政府といたしましても、今、国会におきまして、ギャンブル等依存症の対策を強化するための法制について御議論をいただいているものというふうに理解をしております。
 これは、IR推進法、議員立法でございましたけれども、の成立を機会といたしまして、その附帯決議などで、既存のギャンブル依存症などについて抜本的に取組を強化すべきであるという御決議をいただきまして、それをもとにして、政府におきましても、依存を防止し、そしてギャンブルのことで生活を破綻させ、あるいは経済的な生活、社会生活に悪影響を及ぼしている方を一人でも少なくするための措置に取り組んできているところでございます。
 したがいまして、今、国会を挙げて、それから政府も含めて、ギャンブル等による悪影響に対して真っ正面から向かって抜本的な対策を強化しなければいけない、そういう流れにあるということは重々理解してございます。

○塩川委員 附帯決議の話とかされましたけれども、既存ギャンブルの依存症対策、抜本的強化をするという話ですけれども、大臣にもう一回聞きますよ。そもそもギャンブルは、抑止、抑制すべきものじゃないんですか。

○中川政府参考人 御答弁申し上げます。
 我が国における賭博法制につきましては、もちろん刑法にあります賭博に関するルールをベースといたしまして、これまでも議員立法などにより各種公営競技法がつくられてきて、その法制のもとで公営競技などが行われているというふうに理解をしているところでございます。

○塩川委員 だから、公営ギャンブルとかパチンコについても依存症対策のためにはしっかり対策をやりましょうと、この前の法案の審議のときにも提出者の方は言っていたじゃないですか、依存症者を減らすんだと。そういう目的でやるわけでしょう。
 だから、ギャンブルそのものについて、抑止、抑制すべきものというのは当然じゃないですか。大臣、お答えください。

○石井国務大臣 現行法上、カジノ行為については刑法等で禁止をされているということかと存じます。

○塩川委員 ですから、禁止されているカジノ、ギャンブルについては抑止、これも許されないと。当然のことながら、そういうギャンブルは抑止、抑制するものだというのは当然のことですよね。

○石井国務大臣 IR推進法の附帯決議では、刑法等の賭博に関する法制との整合性が図られるよう、目的の公益性等八つの観点から十分な検討を行うこととされたところでありまして、本IR整備法案につきましては、この八つの観点から具体化した諸制度を整備したところでありまして、刑法が賭博を犯罪として規定している趣旨を没却するものではなくて、法秩序全体の整合性は確保されているものと考えております。

○塩川委員 単純な話にお答えにならないというのは何なのかということがそもそも問われるわけですけれども、賭博、カジノについては犯罪で、禁止されているということですから、当然そういうギャンブルというのは許されるものではない、当然のことながら、抑止、抑制すべきもの、当たり前の話であります。
 大臣に重ねて伺いますけれども、こういった既存ギャンブルに加えて、新たなギャンブルであるカジノを合法化することで、これは結果として、新しいギャンブルを始めるわけですから、ギャンブル依存症がふえることになりますよね。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど御答弁申し上げましたように、我が国の賭博法制の展開を振り返ってみますと、もちろん刑法がベースにあることは間違いないことでございますけれども、そのときそのときの公益上の政策目的などに鑑みまして、例えば競馬でございますれば、畜産を振興する、あるいは戦後すぐの地方公共団体の財源を確保していく、そういう公共政策の目的に沿った形で公営競技を行うという法制がつくられてきたものだというふうに考えております。

○塩川委員 だから、公営ギャンブルは、公共政策の目的に沿っていわば賭博ではないといった形での整理をしているわけですけれども、その話を聞いているんじゃないんですよ。
 そもそも、新しい類型のギャンブルであるカジノを始めることになれば、そこでのギャンブル依存症者はふえることになりますよねという話ですよ。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 まさしく塩川委員御指摘のとおりでございまして、これまでの我が国のギャンブル法制といいますか賭博法制につきましては、そのときそのときの公共政策上の目的に応じて、どのような制度設計のもとで刑法が禁じている事実行為を開催することができるかという観点から法制度が形づくられてきたものだというふうに考えてございます。

○塩川委員 違法性の阻却の話を聞いているんじゃないんですよ。それはまた後で聞くから。
 そもそも、新しいギャンブル、カジノを始めれば、そこで新しいギャンブル依存症者がふえることになるんじゃないですかと、そのことについての確認を大臣にお聞きしているんです。

○石井国務大臣 それは明確にはお答えできないと思います。

○塩川委員 信じられない答弁ですね。じゃ、何でこの法案の中に依存症対策とかカジノ規制が入っているんですか。そんな当たり前のことが何で言えないのか。もう一回。

○石井国務大臣 ギャンブル依存症が全体としてふえるか減るかという御指摘かと思いますけれども、必ずしも、IRをつくったからといって全体としてギャンブル依存症患者がふえることにはならないというふうに思っています。

○塩川委員 だから、全体の話は聞いていないんですよ、全体を減らすのは当たり前なんだから。
 既存ギャンブルやパチンコのを減らすというのは、依存症対策、当然のことであるわけで、聞いているのは、新しい類型、今までやっていない新たなギャンブル、カジノを始めるんですから、そこで新しい依存症者がふえることになるんじゃないか、そこの話を聞いているんですけれども、そう思いませんか。

○石井国務大臣 塩川委員の当初の御質問は、全体としてギャンブル依存症患者がふえるのではないかというふうに受けとめたから、それは明確にはお答えをできない。
 だから、それはそうだと思うんですよね。公営ギャンブルもありますし、パチンコもありますし、今後IRもつくりますけれども、ギャンブル依存症対策もこれからしっかりやりますから、全体としてふえるかどうかは明確ではないというふうに思っています。

○塩川委員 だから、全体の話は聞いていません。全体の話は聞いていないんです。新しい類型であるギャンブルのカジノを始めることによって、そのカジノに伴う依存症者がふえることになるんじゃないですかと、そこを聞いているんです。そこをはっきり答えてください。

○中川政府参考人 御答弁申し上げます。
 塩川委員お尋ねの点につきましては、IR推進法案を国会で御審議いただいているとき以来国会でも議論になり、そのための万全の対策をすべきだという附帯決議がなされたものだというふうに理解しております。
 そういう意味では、国民の中に、あるいは国会の中に、新しい形での賭博行為を社会の中につくっていくということになればそういう依存がふえるのではないかという懸念があることは重々承知しているつもりでございます。

○塩川委員 ですから、依存症者がふえる懸念があるということで、やはり多くの方が心配になっているというのは、現に、新しいギャンブルであるカジノを始めれば依存症者がふえるということが見込まれるからであります。何で、こんな当たり前の基本のところでこんな時間がかかるのかと言わなければならないんですけれども。
 大臣にお尋ねします。こういった国民多数が反対をしているカジノを、IRと言いかえてもいいですけれども、なぜ推し進めるんでしょうか。

○石井国務大臣 政府といたしましては、議員立法で成立をいたしましたIR推進法において、カジノを含むIRの整備推進が国の責務とされております。ですから、法律上、国は、IRの整備推進が責務とされているわけであるということが一つございます。
 それから、カジノ収益も活用して、MICE施設等のさまざまな誘客施設が一体となった国際競争力を有するIRを整備することによりまして、これまでにないような国際的な展示、会議ビジネスを展開し、新たなビジネスの起爆剤とする、日本の伝統、文化、芸術を生かしたコンテンツの導入により世界に向けた日本の魅力を発信する、これらにより、世界じゅうから観光客を集める滞在型観光モデルを確立することを実現いたしまして、我が国を観光先進国へと引き上げる原動力となることが期待をされているところであります。
 一方で、カジノの設置につきましては、今御指摘もありましたようなさまざまな弊害を心配する声もあることから、依存症防止対策、犯罪・治安維持対策、青少年の健全育成対策として厳格な入場規制や広告・勧誘規制など、重層的かつ多段階的な措置を講じているところであります。
 今後、魅力ある日本型IRを実現するために、世界最高水準の規制の執行体制の整備等を着実に実施し、依存防止対策などの課題に万全の対策を講じながら、観光先進国の実現に向けまして、世界じゅうから観光客を集める滞在型観光を推進してまいりたいと考えております。

○塩川委員 今、お話の中でも、国際競争力、そういう中で、世界で勝ち抜くMICEビジネスの確立ですとか、滞在型観光モデルの確立とか、世界に向けて日本の魅力を発信するとか、こういったIRの役割を強調されておられるわけですけれども、そうなると、そういった国際競争力に資するような、観光先進国となり得るような、そういったIRの実施法案というのは、結果として、当然、その中核にカジノがエンジンとしてあるわけですから、抑止すべきギャンブルというのを奨励することになってしまうんじゃないのかと思うんですが、率直にどうですか。

○中川政府参考人 御答弁申し上げます。
 ただいま石井国務大臣からIR制度を整備する趣旨について御答弁がございましたけれども、まさしくIRは、カジノをIR事業全体の収益源とするという位置づけではございますけれども、その収益を活用して、さまざまな誘客施設を展開することにより、これまでにないビジネスチャンスを日本につくったり、あるいはこれまでにない形で日本の観光資源の魅力を世界に向けてアピールする、そういう舞台を提供するものだというふうに考えてございます。
 したがいまして、IRで実現されるこういうノンゲーミング部分の付加価値、これは、まさしく究極のIR制度の目的であります、日本を観光先進国にしていく原動力にするということでございまして、そのためにIR制度が設計されているというふうに理解してございます。

○塩川委員 ですから、観光先進国の原動力となるようなIRは、その収益のエンジンはカジノですから、IRの収益源のかなめであるわけです。
 結局、IRを推進するということは、抑止すべきギャンブルというのを結果として収益源として奨励することになるんじゃないですかということを聞いているんですけれども、大臣、いかがですか。

○中川政府参考人 御答弁申し上げます。
 先ほど御答弁申し上げましたように、IR制度の究極の目的は日本を観光先進国に引き上げていくということでございまして、それを実現するためのものとしてIR制度を設計しておりますし、また、そこでさまざまな事業を展開していく際の民間事業資金を獲得する一つの方法としてカジノも位置づけられている、そういう形でございます。

○塩川委員 観光先進国に引き上げるためにカジノ解禁を国民は認めているわけじゃないんですよ。だから、国民の多数はギャンブルによる経済振興に反対だというのがやはり実態ですから、そここそ踏まえるべきだということを申し上げておくものであります。
 次に、そもそも賭博行為であるカジノは違法であるわけですけれども、その理由についてもう一回確認したいと思います。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 IR整備法案は、IRの推進法に基づきまして、カジノ施設を含む特定複合観光施設を設置する区域を整備するための法制上の措置でございますので、これは、カジノ単体の整備のための制度を設計するものではございません。

○塩川委員 そもそも、単体でのカジノを整備しない、整備するものではないのは当たり前の話で、賭博であるカジノは違法だ、その違法性の阻却の話を聞いているわけです。
 刑法の賭博禁止のもとで特別法で実施されている公営ギャンブルというのは、八要素の話も先ほどやりとりがありましたけれども、公設、公営で公益を目的とするという極めて限定的な条件で、特例として認められてきているわけです。
 今回のIRの場合でいえば、民間事業者がみずからの私的利益のためにカジノを開設することがどうして許容されるのか、そういう整理はどうしていますか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 お尋ねの点は、先ほど法務省の刑事局の方からも御答弁がありましたように、法務省の見解によりますと、新たな賭博法制を考える場合には、刑法が賭博を禁じているその法の趣旨を、刑法の趣旨を没却しない新たな法制度になっているかどうかということを確認する際、この八つの観点からの考察を総合的に行うというふうに伺っております。
 今のお尋ねでございますけれども、特に、この八つの観点のうち、運営主体等の性格ですとか、あるいは運営主体に対する公的な管理監督の仕組みが新しく提案されている法制度の中でどれだけきちっとセーフティーネットがつくられていて、それが刑法が賭博を禁じている趣旨を没却しないものになっているかどうかという観点を踏まえて制度設計がなされておりますし、また、先ほどの法務省の答弁によりますと、法務省としても、今回の御提案申し上げている制度設計案は、この八つの観点からの考察をした上で、刑法が賭博を禁じているその制度の趣旨を、法の趣旨を没却するものではない、そういう意味で整合性がとれているものだと判断しているという御答弁があったというふうに理解をしております。

○塩川委員 法務省の答弁で、八つの要素それぞれの説明がありました。目的の公益性のところでは、例えば観光や地域経済振興とか財政への貢献もあるでしょうけれども、そういった公共性があるんだということでの説明です。これは、推進法の第一条でも、観光及び地域経済の振興に寄与、財政の改善に資するというものであれば、いわばカジノは許容されるというたてつけになっているということです。
 そういうことは、民間企業がカジノ行為を行うことで観光に貢献し、雇用や地域経済の振興に寄与し、多額の納税などを通じて財政改善に資すればカジノはオーケーという理屈ということですかね。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 新しい法制度を賭博法制として検討する際には、法務省の答弁によりますと、八つの観点からきちんと確認をしていく、総合的に考察をしていくということでございますので、今、塩川委員からは目的の公益性とそれから運営主体の性格などの御指摘がございましたけれども、そのほかにも、収益の扱い、先ほどの法務省の答弁によりますと、カジノ収益を内部で還元して、ゲーミング以外のさまざまな誘客施設を通じて観光、地域振興、経済の振興を図る、それからさらには、カジノ収益そのものが、国庫ないしは地方に対する納付金として、社会還元を通じて公益を実現するものになるといったようなことも触れられているわけでございます。
 そのほかにもこの八つの観点がございますので、それらを総合的に考察して、先ほどの法務省の答弁によれば、刑法が賭博を禁じている、刑法の趣旨を没却するものにはなっていない、整合性がとれている、そういう御答弁があったものというふうに理解をしております。

○塩川委員 公共政策の話でも、さっき一条の答弁でもやりとりがありました。
 今回のIRにおいては、やはり公共政策としてのIRとして、MICEビジネスの話や滞在型観光モデルや日本の魅力発信、こういうスキーム、こういうものが政策目的に合致をしているということで、賭博も合法化できるというスキームになるわけです。これは、その解釈ですと、どんどんどんどん広がっていくんじゃないのかなという懸念がするわけであります。
 この点についてはまた改めて議論したいと思うんですが、そもそも、今回のIRの制度設計についてはシンガポールのIRを大きく参考にしているということは一つの事実だと思うんですが、その点はよろしいですか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 はい。シンガポールを含め、カジノの規制、そしてカジノの事業の廉潔性を保つための制度的な取組、あるいは依存防止のための取組、またマネロン対策を講ずるという点からの取組、そういうものが世界で非常に高いレベルにある諸国の制度を参考にさせていただいております。

○塩川委員 シンガポールも参考にしているということです。
 昨年の七月、IR整備推進会議の取りまとめでは、カジノの施設面積について、上限値(絶対値)でカジノ施設の面積の規制を設けるべきであるとしていましたが、しかし、法案では、上限規制ではなく、IR施設床面積の三%以内となっています。これはなぜでしょうか。

○中川政府参考人 お答え申し上げます。
 カジノ施設の規模の規制につきましては、そもそも、IR推進法の附帯決議におきまして、国際的、全国的な視点から、真に観光、地域経済の振興の効果を十分に発揮できる規模のものとして、その際、複合観光施設全体に占めるカジノ施設の規模に上限等を設けるということが御決議されていたことも踏まえまして、これまで制度設計を検討してきたことでございます。
 この法案の中におきましては、カジノ施設のカジノ行為区画のうち専らカジノ行為の用に供される部分の床面積の合計につきまして、IRの規模をあらわすものとして、IR施設全体の延べ床面積を基準としてその一定割合以下に制限することが適切であるという考えに基づいて法案を作成しているところでございます。
 御指摘のとおり、この上限値を絶対値とする考えもあり得ますけれども、IRの立地地域や規模が現時点では未確定だということでございまして、そういう状況の中では、そういう絶対値の上限を設けることによりカジノ事業の収益を活用して整備されるIRの施設規模が制限される可能性もあり、そういう意味では、IRを通じて達成することができるかもしれない公益の部分について制約要因になり得るかもしれない、そういう考慮の上で現在のような御提案になっている次第でございます。

○塩川委員 時間が参りましたので、次回に回したいと思います。
 終わります。ありがとうございました。