【政治倫理・選挙特別委員会】参院選挙制度・自民党案/抜本改革に値せず

 自民党の参院選挙制度改定案が、今日の委員会で、野党の反対を押し切り強行採決され、自民・公明の賛成により可決しました。

 この日の理事会で、共産・立憲民主・国民民主・無所属の会の4会派は、議会制民主主義の土台である選挙制度の問題の徹底審議を強く求めました。

 与党は、質疑終局・討論省略で採決に持ち込もうと動議を提出。審議続行を求める意見に耳を貸さない平沢勝栄委員長(自民)に対し、野党は不信任決議案を提出しましたが、与党などの反対で否決されました。

 野党の質疑は始まったばかり。十分な審議が必要だ。多数党が自らに都合のよい制度に変えることを強行すれば、議会制民主主義を壊すことになり、到底許されない。

 採決に先立ち、自民党案は抜本改革に値せず、自党の候補者を救済するための党利党略だ――と追及しました。

 2009年最高裁判決を発端とした参院選挙制度改革は、12年・15年の公選法改定で自民党等が抜本改革を先送りしてきましたが、15年改定の附則で「抜本的な見直し」について「必ず結論を得る」と盛り込んでいました。

 今回の案は、安倍首相が「臨時的な措置」と認めており抜本改革に当たるのかただすと――自民党提案者は「(合区解消のための)憲法改正が抜本的見直しだ。今回、(改憲なしでの)最善の策を示した」と答弁。

 わたしは、最高裁は改憲を求めておらず、附則をないがしろにした自民党は責務を果たしていないと批判。自民党案は抜本改革に値しない――と強調しました。

 比例代表選挙に導入する「特定枠」(政党が当選順位を決定する拘束名簿式を一部に採用)について、提案者は「活用するかは政党の判断」、「基本的には(国民が当選順位を決定する)非拘束名簿式を維持する」と答弁。

 これは、各党がバラバラな方式では有権者に混乱をもたらす。特定枠人数と当選者数によっては10万票で落選する一方、1千票でも当選する制度で、国民の理解は得られない。

 合区により選挙区で立候補できない候補者の救済という「自民党の都合」に合わせたものだ――と批判しました。


「議事録」
<第196通常国会 2018年07月17日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 6号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今回の参議院の選挙制度法案について質問をいたします。
 そもそも、今回の参議院選挙制度改革の発端は何だったのか、このことを振り返れば、二〇〇九年九月、最高裁判決が、格差が五倍前後に達している参議院選挙区定数配分規定について、投票価値の平等の観点から仕組み自体の見直しを提起したということがあります。しかしながら、自民党などによって抜本改革は先送りをされて、一二年に四増四減、一五年に二合区十増十減という糊塗策がとられてきたわけであります。
 二〇一五年の改正法の附則では、「選挙区間における議員一人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする。」と入っておりました。
 提出者の方にお尋ねをいたします。この本案というのは、参議院選挙制度の抜本改革として提案をしたということなんでしょうか。

○石井(正)参議院議員 お答えを申し上げます。
 今回の私どもが提案いたしました法案でございますけれども、御案内のとおり、格差の是正を図りつつ、また一方で、地方からの国政にその声を届けてほしいという切実なる強い御要望、これに応えるということから、今回、比例選挙の方におきまして特定枠という方式を導入していこう、こういったことで全体として地方の声にも応えていこう、多様な民意にも応えていこう、こういう考え方でございます。
 もちろん、私ども自民党といたしましては、憲法改正によって、各都道府県から少なくとも一人の代表を選出するということ、これは憲法改正によるしかない、現行の最高裁判決等を踏まえますと、このような考えを持っているところでございますが、御案内のとおり、なかなかこの憲法改正の問題が、皆様方のもとで、憲法審査会、自由な討議がまだ入っていないという状況でございます。
 そういった中におきまして、時間的な余裕は、約一年後に迫っております参議院選挙、こういったことを考えました場合に、今回、今のような、冒頭申し上げましたような内容で法案を提出させていただきまして、現下の、今の法律改正によってこの問題をこれから解決していこうという意味におきましては、最善の、法律改正によっては最善の方策の一つである、このように私どもは考えまして、提案をさせていただいているところでございます。

○塩川委員 二〇一五年の改正法の附則にあるような、抜本的見直しということで出されたということは、そのとおりなんですか。

○石井(正)参議院議員 二十七年改正法附則にあります抜本的見直しに当たるのかというお尋ねでございますけれども、私どもといたしましては、この抜本的な改正、見直しに当たる、一つの考え方である、このように考えまして、提案をさせていただいております。

○塩川委員 しかしながら、安倍総理は、六月二十七日の党首討論で、本改正案は臨時的な措置と述べているわけなんですよね。党の総裁が臨時的な措置と言っているのに、抜本的な見直しだというのは非常に整合性がつかない話だと思うんですけれども、これは、抜本的な見直しなのか臨時的な措置なのか、その辺はどうなんですか。

○石井(正)参議院議員 お答えを申し上げます。
 党首討論におきまして臨時的な措置という御答弁があったということにつきましては、先ほど私が御説明申し上げましたとおり、憲法改正というものが我が党といたしましては抜本的な、各都道府県から少なくとも一人選出という意味におきましては抜本的な改正になる。しかしながら、現下のような状況でございますので、そこに至るまでの間の、今回、法律改正によっては最善の策ということでありますけれども、そういった、全体としては次善の策になろうということで、総理としては臨時的な措置、このような御答弁をされたもの、私どもはそのように理解をしております。

○塩川委員 そもそも、最高裁は憲法改正を求めていないわけですよ、現行制度下において抜本的な見直しということを求めているわけですから。そういう際に、この現行憲法下での抜本的な改革の案があるのかということを聞いているんですが、お話を聞くと、最善策だという言い方をするけれども、安倍総理・総裁の発言にもあるように、臨時的な措置ということでは、自民党として、現憲法下での抜本改革の案を持っていないということを示しているんじゃないんですか。
    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

○石井(正)参議院議員 お答えいたします。
 私どもといたしましては、先ほど来御答弁申し上げておりますとおりの憲法改正、このことこそが抜本的な現下の地方の声に応える改正である、このように考えるものでございますけれども、現下のような状況でございまして、こういった中で今回の案を提出したということでございます。
 憲法改正をしないで、現下の法改正の中でほかに方法がないかというようなお尋ねでございますけれども、私どもとしましては、その法律改正という中において考え得る最も最善の案という形において提案をさせていただいた次第でございます。

○塩川委員 埼玉選挙区定数二をふやすということにおいて格差是正を図るという措置にあるわけですけれども、しかし、この間の過去の法改正と同等の話であって、それがやはりあくまでも当座の対策でしかなかったということを言っても、これはどう考えても、前回の附則で言っているような抜本的見直しに当たるとは考えられないという点でも、その責務を果たしていないというのがこの自民党案だということを言わざるを得ません。
 法律の附則に抜本的見直しを必ずという検討事項が入っているにもかかわらず、改憲を前提とした合区解消案に固執し続けていたことは、法律をないがしろにしたものだ、最高裁が求めているものとも違うと言わざるを得ません。
 参議院において二〇一〇年秋より行われてきた各党による協議で、我が党は、選挙制度を考える上で最も重要なことは、多様な民意を正確に議席に反映させることとの基本的な見地に立って、当時、西岡議長が当初提示をしました総定数維持、ブロックごとの比例代表制をたたき台として議論すべきだと提案をし、各党の合意を形成する努力を続けてまいりました。
 我が党の提案というのは、基本的考え方として、投票価値の平等実現を目指す抜本改革案とする、また、多様な民意が正確に議席に反映する制度とする、さらには、参議院の立法、行政チェック機能を弱め、民意を削る定数削減を行わない、こういう立場に立って、議員定数は現行の総定数二百四十二を維持し、全国十ブロックの比例代表制、非拘束名簿式とすることを提案をしています。
 私は、こういった最高裁の判決の要請も踏まえ、また前回の改正法の附則による抜本的見直しということであれば、こういった案こそ検討されるべきだと思うんですが、この自民党案の提出者の方に、こういった案こそ抜本的見直しとして検討すべきではないのか、この点についてお尋ねをいたします。

○岡田(直)参議院議員 先ほどから申し上げております参議院における各派の選挙制度専門委員会において、私どもは、確かに、我々が目指す選挙制度の憲法改正による合区解消、一県から少なくとも三年ごとに一人ということを申し上げてはまいりましたけれども、それに、憲法改正に固執をしていたということは必ずしもございませんで、例えば、都道府県単位を尊重しながら、そうすると、大規模県、人口の多いところ、大都市圏、そういったところに格差が広がって不満を生じる、そういうことのために、複数の候補者に、そうした大都市圏の有権者の方々に複数の投票を可能とする、そういう制限連記というあり方も提起をして、これも真剣に検討をしたところであります。
 当時の参議院の第二会派でありました民進党もこうしたお考えをお持ちでありまして、第一会派、第二会派で何とか接点が見出せないかというような議論もしたことがございます。各派の合意形成に努めてまいったわけでございまして、必ずしも憲法改正に固執をしたということはありませんし、やはり時間的あるいは政治状況を見まして今回は見送るという決断をしたことでございますので、御理解をいただきたいと思います。

○塩川委員 今回の自民党案というのは抜本的な見直しと言えないということをみずから語るような中身だと考えます。
 選挙制度は、民主主義の土台であります主権者国民の代表の選び方や国民の参政権のあり方を決めるものであり、十分な議論を重ね、合意を得る努力を尽くす必要があることは誰もが認めるところであります。多数党がみずからに都合のよい制度に変えることを強行すれば、議会制民主主義を壊すことになるわけです。多数の力で押し切ることは許されません。最大党である自民党の責任が厳しく問われていることを申し上げたい。
 その上で、特定枠についてお尋ねをいたします。
 本案では、比例代表選挙において政党等が優先的に当選人となるべき候補者に順位をつけて名簿に記載する特定枠を盛り込んでおります。
 お尋ねしますが、そもそも現行の非拘束名簿方式というのはどういう制度なのか、有権者が当選する順位を決める、有権者に委ねる、こういう制度だったのではなかったかと考えますが、お聞かせください。

○磯崎参議院議員 お答えさせていただきたいと思います。
 委員おっしゃるように、現行の非拘束名簿式、これが導入されたときの経緯からすれば、顔が見える選挙あるいは国民が当選者を決定できる、こういう趣旨で今の非拘束名簿式が導入をされたというふうに認識をいたしております。

○塩川委員 顔が見える選挙、国民が当選者を決める選挙というお話であります。
 では、本案はどうなのか。この特定枠の人数は、候補者とする者のうち一部の者となっており、この一部というのが全部ではないということで、いわばほぼ全てを特定枠にすることが可能だ、これは参議院の審議の中でも、答弁者、提出者の方もお認めになっていることであります。
 ですから、政党が順位を拘束した候補者を、例えば二十人の名簿登載者のうち十九人まで登載できる、こういう仕組みとなっているということでよろしいですね。
    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

○磯崎参議院議員 お答えいたします。
 今委員御指摘のとおり、今回の法の中では、名簿の中の一部に特定枠を導入することができるということでございますので、全てでなければ法律上は否定をされるわけではないということでございます。
 ただ、この特定枠、まず、活用するのかどうなのか、何名特定枠として名簿登載をするのか、どういう方を登載をするのかということについては、各政党等の判断に任されているということでございます。

○塩川委員 各政党の判断ということです。
 そうしますと、例えば二十人のうち十九人を特定枠にする、二十人のうち一人を特定枠にする、あるいはゼロにするということもあるわけで、そうしますと、実質的に、有権者から見ると、政党ごとに、非拘束名簿式の投票を求める政党や、実質ほとんどが拘束となるような、そういう政党を選んでもらうことになるのか、非拘束なのか拘束なのか、こういうのが政党によってばらばらだといったことで選挙に臨むということは、有権者に大きな混乱をもたらすことになりはしませんか。

○磯崎参議院議員 お答えをさせていただきたいと思います。
 冒頭委員が御質問をされましたとおり、この非拘束名簿式、このメリットというのは、先ほど答弁させていただきましたように、顔が見える選挙、国民が当選者を決定できる、こういうメリットを持つということでございます。
 他方、今回導入をいたしました特定枠、これはやはり、現代において民意が非常に多様化をしている、細分化をしている、こういった中で、少数の有為な人を国政に送りたい、こういうニーズがあるのも事実だろうというふうに思っておりますので、それぞれ制度にはメリットがあるんだろうというふうに思っております。
 そういった意味では、私どもの提案の趣旨としては、あくまでも非拘束名簿式、これを補完する形で比例名簿の一部に特定枠を導入をしようということでございますので、基本的には非拘束名簿式を維持をしていくというのが考え方でございます。
 したがいまして、私どもとしましては、御指摘のように、政党ごとに非拘束名簿とほぼ拘束名簿が混在する選挙にはならない、そのように考えております。

○塩川委員 いや、そうであれば、例えば数を限るとか割合を限るとか、そういう提案もあっていいと思うんですけれども、一部ということで、実質的にはほとんど全てを拘束にする、特定枠にするということも可能とする制度にする意味がわかりません。
 先ほども言ったように、政党がそれぞれ選択をするという場合には、有権者にすればどういう違いがあるのかというのがそもそもわからない。有権者を混乱させるような制度でどうして国民の理解が得られるのか、その点についてもう一度お答えいただけませんか。

○磯崎参議院議員 お答えさせていただきたいと思います。
 まさに、この拘束名簿式を、先ほど申し上げましたように、活用するのかどうなのか、何名活用するのか、どういった方をこの名簿登載者として登載をしていくのか、これはまさに各政党の御判断に委ねられるということでございます。
 したがいまして、有権者としては、例えば拘束名簿、特定枠のあり方、そういったものも含めて有権者は御判断をされるということもあるのではないかなというふうに思っておりますので、逆に、政党の選択肢をふやしていくということに今回の意味もあるのではないかな、そのように思っております。

○塩川委員 それは国民から見て本当にわかるのかという疑念というのは拭えないわけであります。
 ちょっと具体的に聞きますけれども、例えば二十人の名簿登載者がある、そういう政党があった場合に、そのうち特定枠は四人とした場合に、実際に当選した人が四人だったということになります。そうしますと、非拘束名簿式の選挙であるにもかかわらず、当選者は全て拘束の人だけになる、こういうことも起こり得るということですよね。非拘束名簿式なのに特定枠の候補者のみ当選をして、これで非拘束名簿登載の候補者が当選しないということでは、これは非拘束名簿式と言えるんでしょうか。

○磯崎参議院議員 お答えをさせていただきたいと思います。
 まさに、今回特定枠を導入して、今のようなことが発生をする可能性は否定できないというふうに思っております。
 非拘束、特定枠以外の名簿に登載された方については、政党に投票するのかあるいは個人名で投票するのか、これはどちらもあるわけでございますし、特定枠についても、特定枠の個人名を書くことも政党名を書くことも両方あり得るということでございます。
 ただ、やはり、カウントの仕方につきましては、特定枠に登載された名簿の個人名を書いた場合には、政党の当選者を確定する、そのことだけに票が活用されるということでございますので、結果的に、先ほど言われたような結果になることもあり得るということかと思います。
 ただ、やはり、特定枠に掲載されていないそのほかの名簿登載者につきましては、その順位を決定するために個人の名前で投票するという、そのことの意味が失われるわけではございませんので、結果的にそうなるということはあろうかと思いますけれども、根本的なものを失わせるものではないだろう、そのように思っております。

○塩川委員 非拘束名簿式を補完する拘束特定枠というお話でしたけれども、でも、実際の当選者が拘束の特定枠の人のみということになりますと、非拘束名簿式の、まさに顔が見える、そういった選挙のあり方、国民が当選者を決める、そういう選挙のあり方そのものが否定されることになりはしませんか。

○磯崎参議院議員 お答えいたします。
 そのことも踏まえて、重ね重ねということになりますが、名簿、特定枠を活用するかどうなのか、何名なのか、これは政党がまさに判断をするということでございますので、政党の選択肢をふやすという意味での判断に委ねていくということかと思います。

○塩川委員 非拘束名簿式というあり方そのものが問われる制度だと言わざるを得ません。
 今お話の中で、特定枠の候補者についての投票との関係で、政党の投票と個人名の投票のお話がありました。特定枠の候補者に個人名の投票を認めるというのはなぜなんでしょうか。

○磯崎参議院議員 お答えさせていただきたいと思います。
 これは、先ほど来お話が出ておりますとおり、今回特定枠を導入することで選挙の制度が複雑になるのではないか、こういう御指摘がございました。
 特に、今回、例えば、特定枠の名簿に掲載された方については、これは本人の、例えば投票ができない、政党名だけ、特定枠に掲載されていない非拘束の人については政党名でも個人名でもいいということになると、やはりこれはより複雑な選挙制度になるということになろうかと思いますし、更に言えば、基本的には特定枠は個人名を書いても順番に影響がないわけでございますので、政党名だけに絞るということも可能かと思いますけれども、今申し上げましたように、より複雑になるということを避けるということが一つの意味としてはあるというふうに認識をいたしております。

○塩川委員 いや、有権者から見たら奇々怪々の仕組みになるんじゃないでしょうか。
 特定枠の人の中で、例えば、仮に千票だった人がいた場合に、その後の非拘束の名簿の登載者の候補者が十万票とっても、今言ったように四人までしか当選しないような仕組みだとしたら、十万とるような非拘束の人は当選に届かず、千票の人がもちろん特定枠ということで当選するということになると、これは、はたから見たら納得が得られるような仕組みになるんだろうかと思うんですが。

○岡田(直)参議院議員 先ほど後藤議員からもこうした特定枠の候補の性格についての御質問がございましたし、今、塩川先生からもいただいております。
 非拘束名簿式というのは、先ほど申し上げたように、顔の見える、個人を選ぶ選挙。そうしますと、個人名を書いてもらうための選挙というのは甚だ激烈であります、全国回ってですね。しかし、それではやはり酌み取ることのできない、少数派というか、ある意味マイノリティーというか、あるいは社会的弱者という方々もいらっしゃると思うんです。
 例えば、島根、鳥取、高知、徳島というのは、これはもう人口的なマイノリティーというか、絶対的な人口減少地域ということで、これも含めて、我が党はそれを想定しておりますけれども、ほかの党には、いろいろな、なかなか今までの非拘束式の比例選挙では当選し得ないような方を拘束名簿式に入れる、それがゆえに、先ほども申し上げたように、比例四増というのは、現状の非拘束名簿式に大きな影響を与えることなく、こうした新しい、自由度の高い、そして、選挙に必ずしも強いとは言えないけれども、これはぜひ国会で働いてもらいたい、そういう方々を特定枠に入れる、こういうことを構想しているもので、両者の性格が違うということを御理解を賜りたいと存じます。

○塩川委員 いや、私が聞いているのは、百歩譲ってそういう話があったとしても、特定枠の候補者について個人名を書く必要があるのかという話なんですよ。
 今言ったように、有権者から見れば顔が見える選挙で、その有権者が当選者を決めるような仕組みと言われているのに、実際には、得票数で大きな差がある、非拘束の人の方がたくさんとっているのに、特定枠であるがゆえに個人票が少なくても当選するというのは、有権者から見たらわかりにくいんじゃないのかということと、その特定枠の中でも順番がついているわけですけれども、一番の人が十票で、二番の人が一万票とかという場合だってあり得るわけですよ。特定枠の中でも得票数の実際に順位との逆転が起こるような場合も起こるわけで、こういうのというのは有権者から納得が得られるんでしょうか。

○磯崎参議院議員 お答え申し上げたいと思います。
 まず、特定枠の中の票ということにつきましては、これは特定枠の候補者の個人票というのは、あくまでも政党の当選者の人数を決めるためのみに活用されるということでございます。
 ただ、やはり有権者にとってみれば、そこのところの、事前に制度としての説明をきちんとしておく必要はあるんだろうなというふうに思っておりますが、あくまでも特定枠につきましては、あらかじめ順番が決まっておりますので、本人の得票数にかかわらずその順番に当選をしていく。この制度の趣旨ということにつきましては、やはりきちんと導入に当たりまして説明をしていく必要はあるんだろうというふうに思っております。

○塩川委員 いや、個人名の投票を行う意味があるのかという話なんですよ。有権者は、だって理解できないじゃないですか。

○古賀(友)参議院議員 お答え申し上げます。
 特定枠、非特定枠、いずれも基本的に、比例代表選挙は政党を選択する選挙であるというこの原則は変わらないわけでございます。
 その上で、したがいまして、特定枠につきましては政党に対する得票で当選が決まっていく、非特定枠につきましては個人名で党内の当選順位が決まっていくということでございますけれども、特定枠候補に有権者が投票をした場合に、これを死票化してしまうのは不都合である、こういった考えから、特定枠候補者に対して国民が投票してしまった場合でも、これは政党への得票として認めましょう、こういったことで今回の制度設計がなされている、このように理解しているところでございます。
 以上でございます。

○塩川委員 私が聞いている、名簿順位と得票順位が異なった結果が出た場合に有権者の意思と反することになるんじゃないのかといったことについてのお答えにはなっておりません。今聞いただけでも、矛盾が多い、有権者の理解が得られない制度だと思います。
 こういった特定枠を導入する契機となっているのが、この間の答弁にもありましたけれども、合区問題に対応するということで、自民党案の提出者の方は、合区の対象となっている人材は国政上有為な人材と言い得る、こういった人材の当選の機会を高めることを可能とするべく特定枠を利用することは可能であると考えているということで、合区で立候補できなかった人を比例に回し、優先的に名簿登載するために定数も四増し、現職候補者の救済という、自民党の都合に合わせたというのがこの特定枠の導入だというのが率直なところだと思いますが、そういうことですね。

○岡田(直)参議院議員 特定枠については、さまざまな活用法、あるいは活用しないという選択肢もあるところでありますけれども、我が党以外にも、合区対象県にそうした特定枠の候補者を立てるということはあり得ると思います。
 しかし、それは、何党何党の代表を出すという意味ではなくて、まさに地方六団体が、また多くの県議会が求めているように、その地域の代表者を、代弁者を、国政に声を届ける人を立ててくれる、そうした手法というものを今回我々は御提案を申し上げているので、これはいずれかの党に有利になるとか不利になるとか、そういうものではございません。自民党の議席が必ずしもふえないというのは先ほど後藤先生も御指摘になったとおりでありますし、これは価値中立的な、そうした法案であるということを御了承願いたいと存じます。

○塩川委員 現職候補者救済という側面は否めないということと、更にお尋ねしたいのが、自民党の提出者は法案の趣旨説明で、全国的な支持基盤を有するとは言えないが国政上有為な人材又は民意を媒介する政党がその役割を果たす上で必要な人材を当選させることが目的と答弁していました。
 この国政上有為な人材というのが合区の現職候補者の救済の面があるわけですけれども、もう一つの方の、政党が役割を果たす上で必要な人材というのはどういう人を指しているんですか。

○岡田(直)参議院議員 これは各党の御判断に委ねたいところでございますが、一つ、選挙区では酌み取れない、御党も二県合区には御反対というふうに存じておりますけれども、そうした地域の民意をこの全国比例の特定枠という制度で、事実上、やはり地域をよく知り、そして活動できる、そういう方を、しかも全国民の代表者として、全国比例の議員として進出可能になる、そういう制度を考えているところでございます。

○塩川委員 お答えいただいていないんですけれども、政党が役割を果たす上で必要な人材、今言ったような話もあるかもしれませんが、しかし、自民党として、政党が役割を果たす上で必要な人材という理屈で、例えば自民党の参議院幹部を特定枠に入れる、こういうことも可能ということなんですか。

○平沢委員長 岡田君、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

○岡田(直)参議院議員 はい。
 そういうことは現在想定しておりません。

○平沢委員長 塩川君、時間が来ました。

○塩川委員 党利党略、御都合主義、露骨なお手盛りという批判というのは当然のことであって、更に徹底審議を通じてこの問題を明らかにしていきたい、このことを申し述べて、質問を終わります。