【倫理選挙特別委員会】選挙権奪う時間短縮/投票所増が必要

 投票時間が20時まで延長されたものの、投票時間を繰り上げて閉鎖している投票所は、2021年総選挙時で全体の36.4%あります。投票所総数も、この25年間で6770カ所減り、4万6444カ所となっています。

 有権者の投票機会を奪わないよう、投票所そのものを増やし、投票時間の繰り上げを行わないようにする必要があると主張しました。

 私、選挙は民主主義の根幹であり、投票機会の保証なしに選挙権の保障はないと強調。投票時間繰り上げ投票所が94.6%の茨城県では、水戸市全域で1時間短縮していることをあげ、投票時間の繰り上げは、投票人の投票機会を奪うことになる、と批判しました。

 金子恭之総務大臣は「おっしゃる通り」「決して好ましいことではない」「厳正に対応するよう要請している」と答弁。そのうえで、期日前投票所の増設を促すと述べました。

 私は、ワゴン車などに投票機能を乗せてうごく『移動期日前投票所』は、高齢・障害がある方々に有用な制度としつつ、期日前投票が増えているから、投票日の投票所は現状のまま、減らし続けてよいとはならない。複数投票日とするなら、選挙期間の規定も見直すべきだと強調しました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年3月17日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 第4号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 執行経費法案について質問をいたします。
 主権者国民の代表を選ぶ選挙は民主主義の根幹であり、公務員の選定、罷免権の行使という憲法上保障された国民主権と議会制民主主義上の原則に関わる重要な問題であります。国民の参政権行使を保障するには投票機会の保障は不可欠であり、これなしに選挙権の保障はありません。
 まず、投票時間を繰り上げる投票所についてお尋ねをします。
 一九九七年に投票時間が二十時までと延長されたにもかかわらず、その後、投票時間を繰り上げる投票所が増大をしております。九八年の参議院選挙では時間繰上げ投票所は六%程度だったのが、回数を経るごとにどんどんと割合が高くなっています。
 総務省にお聞きします。
 昨年の二〇二一年総選挙における、投票閉鎖時間を繰り上げている投票所が全投票所数に占める割合は、どれぐらいになっているでしょうか。
○森政府参考人 お答えいたします。
 昨年の衆議院議員総選挙において閉鎖時刻を繰り上げた投票所は一万六千九百二十三か所でございまして、投票所総数四万六千四百四十四か所に占める割合は三六・四%でございました。
○塩川委員 三六・四%。今では、三分の一、四割近い投票所で投票閉鎖時間の繰上げを行っております。
 この問題について、我々は、国民の基本的な権利である投票権の行使を制約することにつながるのではないかと、何度もこの場でも取り上げてまいりました。
 二〇一六年改定の際の質問のときに、十八歳選挙権が施行されるときに、若い人の投票行動を見ても、閉鎖時間の繰上げは逆行していると、我が党の穀田議員が指摘をしましたが、当時の高市総務大臣は、引き続きしっかりと要請していくとの答弁がありました。
 一九年改定の際にも、国政選挙や統一地方選挙のたびに、各選挙管理委員会に対して、投票所閉鎖時刻の繰上げについては、厳正に対処するよう要請をしている、繰り上げた時間に対しては、減額するというふうな措置を講じるとの答弁がありました。
 そこでお聞きしますが、一九年参議院選挙と二一年総選挙を比べて、繰上げ投票所数、繰上げ投票所の割合を共に減少させている都道府県は何団体になるでしょうか。
○森政府参考人 お答えいたします。
 令和三年の衆議院議員総選挙において、令和元年の参議院議員通常選挙から当該都道府県内の繰上げ投票所数と繰上げ投票所の割合が共に減少した都道府県は十九道県でございました。
○塩川委員 この間の要請もあり、このような繰上げ投票所数、繰上げ投票所の割合を共に減少させている都道府県は十九道県ということで、このように繰上げ投票所数を減らし、その割合を減少させているわけですが、ただ、投票所そのものを減少させていることが問題でもあります。
 一方で、繰上げ投票所を増やしている県があります。例えば茨城県は、繰上げ投票所の割合が九四・六%、全国で最も高い。しかも、水戸市全域で一時間の繰上げを行っております。また、栃木県は、一九年参議院選挙のときは二〇・五%でしたが、二一年総選挙では五九%。鹿沼市では、二一年総選挙から午後六時から七時までという繰上げが行われているということです。
 大臣にお尋ねいたします。
 このような、特に都市部での繰上げは、投票人の投票機会を奪うことになると思いますが、大臣の認識はいかがでしょうか。
○金子(恭)国務大臣 塩川委員にお答え申し上げます。
 投票所閉鎖時刻の繰上げについては、選挙人の投票に支障を来さないと認められる特別の事情のある場合に限り、市町村の選挙管理委員会の判断で行うことができるものとされております。地域の実情により、例えば、大半の選挙人が早めに投票を済ませていることなどを理由に繰り上げることがあると承知をしております。
 投票所の閉鎖時刻をむやみに繰り上げることは決して好ましいことではないと考えております。地域の実情により繰り上げる場合には、必要に応じて選挙人に対し十分な説明を行うことが重要と考えております。
○塩川委員 投票所の閉鎖時刻をむやみに繰り上げてしまうのは好ましいことではないとおっしゃいましたけれども、投票人の投票の機会を奪うことになるんじゃないのか、そこの認識を大臣もお持ちかということを改めて。
○金子(恭)国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。
 ですから、投票所の閉鎖時刻をむやみに繰り上げることは決して好ましいことではないと考えておりますので、地域の実情により繰り上げる場合には、必要に応じて選挙人に対し十分な説明を行うことが重要だと考えております。
○塩川委員 以前、高市総務大臣でこのやり取りをしたときに、高市大臣は、こういった投票所の閉鎖時刻をむやみに繰り上げてしまうと、投票人の投票の機会を奪うことになると言っていた。それと同じ認識ということでよろしいですよね。
○金子(恭)国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
○塩川委員 繰上げ投票所を増加させた茨城県選管は、繰上げする場合は有権者に十分に周知することと通知したと言い訳をしておりますが、繰上げによって、開票作業の深夜手当の削減でコストカットになったと述べている選管や、開票作業を早く出せるように、他の自治体と足並みをそろえる意味もあったと述べている選管があります。
 コストカットや開票作業の都合を挙げて有権者の投票機会の確保を後退させるようなことでいいのか。効率性重視で、有権者の投票権を制限しているという自覚がないことが問われていると思います。
 大臣にお尋ねしますが、このような繰上げ投票所の増加を食い止め、投票権を制限しないために、どのような対策を行うのか、この点についてお答えください。
○金子(恭)国務大臣 先ほど来御答弁しておりますとおり、総務省では、投票機会を広く確保する観点から、国政選挙や統一地方選挙に際し、各選挙管理委員会に対して、投票所閉鎖時刻の繰上げについて、選挙の行われる時期や地域の実情等を精査し、十分な検討を行った上で厳正に対応していただくことや、必要に応じ選挙人に対して十分に説明いただくことを要請しております。
 今後とも、引き続きこれらを各選挙管理委員会へ要請してまいります。
 また、移動支援の実施、期日前投票所の増設や移動期日前投票所の設置など、投票環境の向上策に工夫して取り組んでいただくよう促してまいります。
○塩川委員 是非、投票時間をしっかりと確保する、投票機会の確保という点での働きかけをしっかり行っていただきたいということです。
 次に、移動期日前投票所についてお尋ねをいたします。
 本案では、移動期日前投票所の設置に要する経費を措置するための規定を明文化しております。ワゴン車などに投票機能を乗せて動く移動期日前投票所は、東日本大震災の際の地方選挙で避難先を回るなど、活用されてきました。国政選挙では、一六年の参議院選挙で島根県浜田市が始めたとお聞きしております。
 総務省に確認します。二〇二一年総選挙では、どれだけの自治体が導入をし、何人が投票したんでしょうか。
○森政府参考人 お答えいたします。
 昨年の衆議院議員総選挙において移動期日前投票所を設置した自治体数は、二十八道県で五十九団体でございました。また、これらの団体で移動期日前投票所における投票者数は一万二千九百十人でございました。
○塩川委員 移動期日前投票所は、期日前投票所を複数設置するのが困難な過疎地などでの活用が進んでいますが、コロナ禍においても導入自治体が増加をしていることを、昨年五月の質疑でもお尋ねしました。
 我が党は、巡回投票制度こそ検討すべきと訴えております。ヨーロッパで実施されている国もあります。現行の移動期日前投票所は、あらかじめ投票場所を特定し、周知のため告示をした上で複数の地域を移動するもので、自宅など、個別の投票が難しい制度であります。選管が立会人と一緒に投票箱を持って車に乗り、施設や自宅など要望がある場所に行き、投票できる巡回投票が、コロナ禍であっても有効な手段だと考えております。
 その上で、移動期日前投票所は、高齢や障害で移動が困難な方々の投票機会の確保という点からも有用な制度と考えています。
 そこで、移動期日前投票所は過疎地だけでなく都市部においても活用することができるのか、どのように周知をしているのかを確認したいと思います。
○森政府参考人 お答えいたします。
 自動車を活用した移動期日前投票所は、投票所までの距離が遠い選挙人などの投票機会の確保の観点のほか、商業施設や駅前などの人が集まる施設で活用することで投票環境の向上を図る観点、大学や高校などで活用することで若者の政治意識の向上を図る観点、新型コロナウイルス感染症対策のため選挙人の分散を図る観点などからも有効な取組と考えられるところでございます。
 昨年の総選挙に際しては、各選挙管理委員会に対し、投票機会の幅広い確保の観点から有効な取組であると考えられるため、積極的な対応を講じるよう要請しており、高校に設置した例などの取組事例も周知をしたところでございます。
 さらに、現在、各選挙管理委員会における昨年の総選挙での様々な取組事例を調査しているところであり、今後、都市部でのいろいろな取組やその工夫点についても全国の選挙管理委員会に具体的に周知することで、新たな設置の検討が進むように積極的な取組を促してまいります。
○塩川委員 是非、移動期日前投票所の都市部における活用についても周知を図っていただきたい。
 ただ、言っておきたいのは、投票所そのものが減少していることが大問題だということであります。九六年と二一年の総選挙時の投票所の総数はそれぞれ幾つか、何か所減少したか、この点、確認します。
○森政府参考人 お答えいたします。
 一九九六年の衆議院議員総選挙における投票所総数は五万三千二百十四か所でございました。一方、昨年、二〇二一年の衆議院議員総選挙における投票所総数は四万六千四百四十四か所であり、六千七百七十か所減少しております。
○塩川委員 二十五年間で六千七百七十か所も減っております。先ほどの茨城県選管の例でいうと、期日前投票は午後八時まで、期日前投票所を増やしたと述べておりますが。
 大臣にお尋ねします。期日前投票が増えているから、投票日の投票所は現状のまま、あるいは減らし続けてもよいということにはならないと考えます。有権者の投票機会を奪わないよう、投票所そのものを増やし、閉鎖時間の繰上げを行わないようにする必要がある。大臣のお考えをお聞かせください。
○金子(恭)国務大臣 総務省では、国政選挙や統一地方選挙に際し、投票所からの距離や選挙人の数を踏まえた投票所の設置について、市町村の選挙管理委員会に対して要請をしてきているところでございます。
 投票所数については、過疎化による選挙人数の減少や、市町村合併などを契機とした投票区の見直しなどで減少してきているものと承知をしております。
 このため、総務省におきましては、投票所までの距離が遠い方などのための投票所への移動支援や、かつて投票所があった地域での期日前投票所や移動期日前投票所の設置など、選挙人の投票機会の確保に向けて取り組んでいただくよう要請をし、各選挙管理委員会におけるこれらの取組も増えてきているものと考えております。
 また、令和元年の公職選挙法改正において、投票立会人等の確保を容易にし、投票所の維持、確保の一助となるよう、投票管理者及び投票立会人の選任要件を緩和したところでございます。
 引き続き、各選挙管理委員会に対し、選挙人の投票機会の確保につながる施策を積極的に措置するよう要請するとともに、投票所閉鎖時刻の繰上げについても厳正な対応を要請してまいります。
○塩川委員 期日前投票所を進めるという話ですけれども、我が国の公選法は投票日当日投票所投票主義を取っております。
 以前、石田総務大臣は、期日前投票制度の導入は複数投票日制の採用を意味するものではないと答弁しています。さらに、公示日から投票日までを選挙期間と定めて、様々な制限の下での選挙運動を認めております。
 期日前投票を投票の柱とするならば選挙期間の規定も見直す必要がある、そのような検討なしに投票が増えている期日前投票の利便性の確保のみでは本末転倒になりかねないということを申し上げて、質問を終わります。