【内閣委員会】経済安保法案の疑念ぬぐえず/準備室長の官民癒着

 藤井敏彦元経済安保法制準備室長の懲戒処分に関し、政府の調査は限定的で、経済安保法案の妥当性の疑念はぬぐえないとして広く再調査を求めました。

 私は、同氏が過去5年間で61件の講演などで980万円の報酬を得ていたのに、うち利害関係者とされたのは経産省時代の担当分野だった5社のみと限定的だと指摘。国家安全保障局が作成した経済安保法案は、サプライチェーン、基幹インフラや先端重要技術、特許にも及びあらゆる産業に関わる、として広く再調査を迫りました。

 松野博一官房長官は「法案に関することで何らかの個人的な影響を藤井審議官が与えたことはなかった」と述べて再調査を拒否しました。

 私は、6年前から経済安保の企画立案、制度設計での藤井氏の関与が明らかなもと、法案の妥当性も疑念がぬぐえないと批判しました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年3月18日 内閣委員会 第10号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 先週に続いて、藤井敏彦元経済安保法制準備室長の問題について取り上げます。
 先週お尋ねをしたところで、大企業経営幹部向けのビジネススクールである不識庵におきまして、藤井氏が師範として関わった企業が過去三年間で二十社ということを明らかにしております。その中に電機メーカーA社が入るのかということをお聞きしたんですが、それが宿題になっておりますので、その点、まずお答えいただけますか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 前回の塩川先生からの御質問で、二十社の中にA社が含まれているのかという点、及びA社とはどこの会社なのか、具体的なお名前も頂戴しましたけれども、その二ついただいていたかと思います。
 後者の、A社はどの会社かという点につきましては、委員長の御指示に従うということで、理事会協議事項となっているかと思います。後者につきましては、委員長の御指示に従いまして、A社との調整も進めておりますので、もう少しお待ちいただければと思います。
 他方、二十社がどこかというところ、A社が二十社に含まれるかという点につきましては、現時点で二十社全てが社名の公表ということはしてほしくないということを申しておりますので、その点については引き続きお答えを差し控えさせていただきたく存じます。
○塩川委員 基本的な点について明らかにしないで問題なかったという話にはならないわけで、こういう点でも、官房長官、改めて、しっかり、こちらの要望している資料を出していただく、その点、お約束いただけませんか。
○松野国務大臣 塩川先生にお答えをさせていただきます。
 情報公開法の趣旨にのっとりまして、委員長の指示に基づき対処させていただきたいと思います。
○塩川委員 この間、要求したものについて、資料要求してきた経緯について、本来であれば今日の質疑に間に合うような形で出されるべきものが、何か、一部のものについては委員会終了後に出すという話では、これは国会審議として誠実な対応とは言えないということを申し上げておきます。
 それで、資料要求という点では、この間、国家安全保障局に要請してきて、まだ出ていないんですけれども、藤井氏の懲戒処分のこの文章の中に出てきます国家安全保障局取扱注意文書等取扱規程、報道関係者との接触等に係る内規、これについて、まずは出していただきたいと思うんですが。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 国家安全保障局取扱注意文書等取扱規程は、国家安全保障局における取扱注意文書等の取扱いについての必要な事項を定めているものでございます。また、報道関係者との接触等につきましては、国家安全保障局の職員と報道関係者の接触についての報告等の手続を定めるものでございます。
 これらの文書につきましては、国家安全保障局のセキュリティーに関わる部分についての記述がございますので、それについての最小限の不開示処理を行った上で提出が可能と考えますけれども、いずれにいたしましても、委員長の御指示に従いまして対処させていただきたく存じます。
○塩川委員 非違行為の調査を行うというのがここで今出されてきた文章であるわけで、その際に、何が非違行為なのかという基本となるそういった内規等が出されないと、我々としても判断のしようがないわけで、一定の配慮ということはありつつも、しっかり出していただきたい。委員長、改めて要請します。
○上野委員長 はい、理事会で協議をいたします。
○塩川委員 それで、今回ので、贈与等報告書の関係についての部分ですが、藤井氏が講演を行っていた依頼先の中には経済産業省時代の利害関係者が五社含まれていたといいますけれども、これはどのような利害関係にあったんでしょうか。
○片岡政府参考人 お答え申し上げます。
 国家安全保障局の調査によりますれば、講演を行った企業の中に経済産業省在籍時の利害関係者が五社含まれていると承知しております。
 これら企業でございますけれども、藤井氏が、令和元年七月から十月の間、経済産業省製造産業局担当審議官に在籍していたときの担当業務に関連する企業であると承知してございます。これは、国家公務員倫理規程上、異動の日から起算して三年間は引き続き利害関係者であるとみなされると規定されていることによるものでございます。
 具体的には、藤井氏は、経産省製造産業局担当審議官といたしまして、製造業における通商案件あるいは自動車産業等を担当してございました。当該講演企業の中に藤井氏の担当分野を業務とする企業が含まれていたということでございます。
○塩川委員 ですから、過去三年間の職掌に関わって、その担当の範囲内での利害関係ということですから、極めて限定されているものということであります。
 製造産業局担当の審議官ということですから、製造産業に係る部分しかそもそも利害関係として認めないということでもありますので、全体がどうなっているのかといったことについては、この範囲では分からないということにもなります。
 この懲戒処分の文章の贈与等報告書等関係に係る事項の部分を見ますと、過去五年間で、六十一件の講演など、九百八十万円の報酬を受け取ったということについて書かれていますけれども、今言ったように、限定された話だけではなくて、元々、今回の経済安保推進法案というのは、サプライチェーンや基幹インフラや特許や官民技術協力のように、ある意味、あらゆる産業分野に及ぶわけですね。
 そういったことについて、この過去五年間の範囲での、調査で分かった六十一件の講演等、特定の企業との深い関わりなども出てきている。そういったときに、藤井氏がこれら関連企業に便宜供与を図ったかどうかの調査というのはされているんですか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 御指摘が、過去五年間に藤井氏が講演を行った企業との関係で、便宜供与をしたり、あるいは供与を受けたか、こういう御趣旨の御質問というふうに理解をさせていただきましたけれども、私どもとして、確認ができた企業さん等々の関係につきましては、藤井氏に対して利益供与を行ったか、あるいは藤井氏から職務上の便宜供与があったかということについての確認はさせていただいておりますけれども、ちょっと今手元に資料がございませんが、いずれの企業からも、そのようなことはなかったというふうな回答を受けているというふうに認識をしております。
○塩川委員 本人の意見だけでよしとしたということですか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 藤井氏本人への確認ではございません。藤井氏が講演を行った企業等に対して確認をした結果を申し上げたところでございます。
○塩川委員 藤井氏自身はどういうふうに言っているんですか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 藤井氏本人も、職務上の便宜供与等は行っていないということを述べております。
○塩川委員 ですから、それが経産省の製造産業局担当の審議官の話だけであれば、極めて限定された話でありますから。そもそも、藤井氏がどういう関与をしてきたのかということについて、どこまで調査が及んでいるかというのは、非常に不透明と言わざるを得ません。
 この文書の中には、藤井氏は、経産省が執行する事業再構築補助金の申請に当たって特定事業者に便宜を図ろうとしていたと。ほかにも官民癒着が問われる事案があったのではないのかという懸念というのは浮かぶわけで、そういう点でも、何らかの便宜供与を図っていたのではないのかといった点について、広げてしっかりとした調査を行うことが必要だということを申し上げたい。
 サプライチェーンだけでも十四分野に及ぶのが経済安保推進法案であります。官房長官として、こういった全産業に関わる経済安保推進法案について、この藤井氏の影響がどうだったのかといった点で今回の調査では不十分ではないのかと考えますが、官房長官のお考えをお聞かせください。
○松野国務大臣 お答えをさせていただきます。
 調査内容に関しては政府参考人からお話をさせていただいておりますけれども、当該調査に関しましては藤井元審議官の非違行為に関する調査でございます。
 ただ、その中にあっても、法案関係に関することで何らかの個人的な影響を藤井元審議官が与えたことはなかったということでございますので、その点に関しては再調査の必要はないと考えております。
○塩川委員 元々、この半年とか一年とかの話じゃなくて、六年前からこの経済安保の議論というのはずっと積み上げてきているわけですから、そういったところに藤井氏が関わってきたことも明らかであるわけです。
 そういう意味でも、まさに企画立案、制度設計のところでどういう関与があったのか、なかったのか、この点がはっきりしない以上は、やはり法案の妥当性ということも疑念が拭えないということは申し上げておきたいと思います。再調査が必要だということを改めて求めておきます。
 その上で、官房長官にお尋ねしますが、藤井氏が国家安全保障局に籍を置いて経済班を担当し、また、それとの関係でも経済安保法制の準備室長の任に当たっていた、併任をしていたということです。この国家安全保障局の体制がどうなっているのか、また、藤井氏の担当の職掌、業務内容がどういうものか、こういうことについて御説明いただけますか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 国家安全保障局は、国家安全保障会議の事務局として、国家安全保障会議を恒常的にサポートするという役割がまずございます。それとともに、国家安全保障に関しましての外交・防衛政策の基本方針、重要事項に関する企画立案、総合調整等を行っております。
 具体的な体制といたしましては、国家安全保障局長の主導の下に、次長が二名、内閣審議官が六名、うち二名が、現在、準備室に所属をしております。その下に七つの班と、現在、経済安全保障法制準備室というのがございます。
 経済班は、経済安全保障の確保が我が国の外交、安全保障上の喫緊の課題となっている中におきまして、経済分野における国家安全保障上の課題について俯瞰的、戦略的な対応を迅速かつ適切に行うべく、令和二年、二〇二〇年の四月に設置をされ、安全保障と経済を横断する領域で生じます様々な課題に対しまして、関係省庁と連携しながら、関連施策を推進するとともに、法制度の検討作業を行ってきたということでございます。
○塩川委員 七つの班の名称を教えてもらえますか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 総括・調整班、政策第一班、政策第二班、政策第三班、戦略企画班、情報班、それに最後、経済班でございます。
○塩川委員 経済班以外のそれぞれの班のおおよその仕事の中身というのを簡単に説明してください。
○室田政府参考人 お答え申し上げます。
 ちょっと、突然の質問ですので、おおよその感じになりますけれども、お答えを申し上げます。
 総括・調整班は、局の官房事項、局の取りまとめ、国家安全保障会議の事務等を行います。政策一班は、米国との関係、欧州諸国との関係、豪州、インド等の関係、そういった地域についての外交・安全保障政策を扱います。政策二班は、中国、ロシア、韓国、北朝鮮、モンゴルとの関係についての外交・安保関係を扱います。政策三班は、その他の地域、例えば中東でありますとかアフリカでありますとか、そういった地域との外交・安保関係について扱います。戦略企画班は、例えばでございますが、今議論している三文書、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防といった安全保障政策の戦略的な企画立案を行います。情報班は、インテリジェンス部門との調整を行います。経済班につきましては、先ほど御答弁で申し上げたとおりでございます。
○塩川委員 終わりますけれども、今回の経済安保の法案の中に内閣法の改正も含まれまして、国家安全保障局の事務に国家安全保障に関する外交政策、防衛政策及び経済政策の基本方針の策定、こういったことが入ってきます。そうしますと、外交政策、防衛政策に加えて経済政策も一体的に企画立案、総合調整する。
 そういう中で、この藤井氏がどういう役割を果たしていたのか、便宜供与があったのか、なかったのか、こういった問題についてしっかりと明らかにするということが求められていることを申し上げて、質問を終わります。