【内閣委員会】保育士等の賃上げ限定的/2割以上の自治体が手を挙げず/国の責任で将来にわたって交付税措置を

 岸田政権が看板政策として掲げる保育士や学童保育指導員などの給与を賃上げする処遇改善事業において、事業の活用に手を挙げない自治体が多数生じている問題を追及しました。

 私は、処遇改善事業の2021年度の申請状況について、申請をしていない自治体が、保育所等では376自治体(全自治体の2割近く)、学童保育では642自治体(全自治体の4割近く)に及ぶこと。また、申請をしている自治体でも公立施設を対象としているのは、保育所等では474自治体(全自治体の3割未満)、学童保育では338自治体(全自治体の2割未満)に留まっていることを確認。政府の評価を質しました。

 山際大志郎担当大臣が、22年度も申請ができるとして、現段階の評価は早いと答弁。

 答弁に対し私は、申請は21年度中に賃上げを実施したことが要件となっていることから、今後の申請は限定的だと指摘し、公立ではあまりに少ないと思わないかと追及。

 山際大臣は「他の公務員とのバランスを考えたうえで判断された可能性がある」などと述べるだけでした。

 私は、賃上げを進めるためには自治体の事情も踏まえた改善が必要だとして、自治体からヒアリングをせよと強調。

 山際大臣は「検証は必要」としつつ、「今はヒアリングをする段階ではない」と答えました。

 私は、自治体からは来年度以降の交付税措置に不安の声が上がっているとして、将来にわたって国の責任で保障せよと主張しました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年4月8日 内閣委員会 第17号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今日は最初に、保育士、学童保育指導員の賃上げ政策の進捗状況についてお尋ねをいたします。
 月額三%、九千円の賃上げを図るという保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業の申請状況ですけれども、申請しなかった自治体数、申請した自治体数、申請した自治体数のうち公立施設を対象に含めて申請した自治体数がそれぞれ幾つかをお答えください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 今般の保育士等の処遇改善に係る補助金でございますけれども、三月四日までに保育所、幼稚園等について申請があった市町村数、千四百五市町村となってございます。全市町村の数が千七百四十一でございますので、その時点で申請がなかった市町村数は三百三十六となっております。また、公立保育所について申請があった市町村数は四百七十四市町村となっております。
○塩川委員 全市町村のうち申請自治体は約八割です。二割近くが申請をしておりません。公立施設の申請は全自治体の三割に届かない。七割以上の自治体が申請していないということであります。
 続けて、放課後児童支援員処遇改善臨時特例事業の申請状況についても、同様に、申請しなかった自治体数、申請した自治体数、うち公立施設を対象に含めて申請した自治体数が幾つかを教えてください。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 放課後児童支援員等の処遇改善に係る補助金につきましては、同じく三月四日までに放課後児童クラブについて申請がありました市町村数で申し上げますと、千九十九市町村となっております。全市町村の数は千七百四十一でございますので、申請がなかった市町村数は六百四十二となっております。また、公立の放課後児童クラブについて申請があった市町村数は三百三十八市町村となっております。
○塩川委員 申請自治体数が全体の六割。四割近くが申請をしておりません。公立施設の申請は全自治体の二割に届かないということで、八割以上の自治体が申請していないということです。
 保育士や放課後児童支援員、それぞれ、都道府県別の特徴がどうなっているとかは分かりますか。
○藤原政府参考人 先ほどお答え申し上げました申請状況に係る市町村数でございますけれども、その時点までの令和三年度分の申請があった市町村数をお答え申し上げたわけです。
 この交付金の申請につきましては、市町村から国に対する申請につきましては、令和四年度に三年度分も含めて交付申請を行うことも可能としており、今後、追加で申請をする市町村もあるというふうに見込んでおります。
 このため、現時点で都道府県ごとの市町村数ですとか特徴について申し上げることは難しいかなというふうに考えております。
○塩川委員 現時点での都道府県別の実施自治体、都道府県別でいいですから、実施自治体の一覧表というのは、後でいいんですけれども、出していただけますか。
○藤原政府参考人 都道府県ごとの市町村数をというふうなお尋ねでございました。
 以前から御説明申し上げておりますように、この交付金の取扱いについて、例えば概算による申請も可能であるということ、それから四年度に三年度分も含めて交付申請を行うことも可能というふうな柔軟な取扱いをしております。
 こうした柔軟な取扱いをしているがゆえに市町村の状況は様々ございまして、概算による交付申請を行っている市町村もあれば、一定の時期までに各保育園等から補助金の申請があったものについてまず国に交付申請をし、残り分はまた改めてというふうな市町村もあれば、四年度に追加で国に申請しようというふうな市町村、様々あるように承知をしております。
 こういうふうな状況でございますので、三月四日の時点での申請状況について都道府県別の市町村数をお示しするということは差し控えたいと思っておりますが、まずは、四年度に三年度分も申請をするということができることになっておりますので、そちらの方の手続について、しっかり周知なり行っていきたいというふうに考えております。
○塩川委員 現時点の数字の確認をしたいので、その数字だけでも出してもらえないですかね。
○藤原政府参考人 今後、令和四年度の交付申請の受付を開始することとしておりまして、その申請が出そろうと考えられるのが五月末ぐらいかなというふうに考えております。四年度の交付の要綱を発出をし、その上で申請期限を設定をして、最終的な申請数の数が判明をするのが五月末頃までかなというふうに思っておりますので、おおむねそういった時期を想定をして、最終的な状況については何らかでお示しできるように考えていきたいというふうに思っております。
○塩川委員 現時点でもそういう数字を出してほしいというのは、重ねて要望をしておきます。
 それと、今後増えるという話もありましたけれども、今後増えるような事例というのは、どういう条件のところで増えるということになるんですか。
○藤原政府参考人 先ほどの御答弁の若干繰り返しになって恐縮ですが、今回のこの申請、市町村から内閣府に対する交付金の申請につきましては、概算の申請もオーケーですよというふうな取扱いですとか、それから、三年度と四年度に分けて申請をする、そのことも可能ですというやり方、それから、三年度は見送り、四年度にまとめて交付申請を行うというふうな市町村、様々お考えがあるやに聞いております。
 そういう意味では、四年度にまとめて申請をしようという市町村も残っているというふうに承知をしておりますので、そういった状況も踏まえて、全体としてどうなるかということをしっかり見ていきたいと思っております。
○塩川委員 実際、令和四年度も可能だという話ですけれども、その場合でも、私立施設でいえば、二月分からの賃金改善を年度内に実施をしている必要がある。それから、公立施設の場合には、二月からの賃金改善を行う条例案等を年度内、令和三年度内に議会に提出していることが要件なんですよね。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、四年度にまとめて交付をするという柔軟な取扱いを認めておりますけれども、その前提としては、今般の経済対策、三年度の二月、三月分の改善を行っていただく、あるいは公立においては、時間がかかりますので、条例等を出していただくというふうなことを要件としているということは事実でございます。
○塩川委員 ですから、公立の場合でも条例案が昨年度内に措置されているという条件なんですよ。だから、今後増えるという見込みはないじゃないですか。そうですよね。
○藤原政府参考人 網羅的に私どもはその市町村を把握をしているわけではございませんけれども、三年度までに条例等を出されている中で、四年度において申請を考えるというふうなところもいらっしゃるとは聞いております。
 ただ、最終的にどういうふうな状況になるのかということがまだ把握はできておりませんので、四年度の申請の状況をしっかり踏まえる、また、四年度の申請について、できるということをしっかり周知をしていきたいというふうに考えております。
○塩川委員 民間の場合は、二月から賃上げをやっているということが前提ですから、そういうところは申請の対象になるわけですよ。公立の場合でいえば、昨年度内に条例等の手当てをするということですから、そういうところも当然申請ということがはっきり見えているわけで、今後増える見込みというのはない、実質はもうここで区切りという状況です。
 大臣にお尋ねします。
 政府は、経済対策として、こういった保育士などケア労働者の賃上げのための措置を行いました。こういったケア労働者の賃上げの施策が、率直に言って保育士や学童保育支援員というのが、実施状況というのが非常に限定的、公立の場合には本当に少ないといった、こういう取組の現状についてはどのように評価をしておられますか。
○山際国務大臣 これは、今、参考人の方からお話をさせていただいたとおりだというふうに認識しておりますが、まだ四年度に入って受付をしているというところでございますので、現段階で最終的な評価をするというのは少し早い、このように我々としては受け止めております。
○塩川委員 今言ったように、でも、自治体の場合では条例の手当ての話も当然出てくるわけで、それは今後増えるといっても本当に例外的な事例の話だと思うんですよ。そういうときに、答弁にもあったように、保育士の場合で公立での申請は三割に届かない、学童保育でいえば二割に届かない。公立の場合については余りにも少ないと思いませんか。
○山際国務大臣 これは、先生御理解いただいた上で御質問いただいていると思うんですが、やはり公立の場合は、身分が公務員ということになりますので、他の公務員、他の職種の公務員とのバランスというものも考えた上でこういう判断がされているという可能性は十分あると思います。
 だからこそ、一義的には各自治体の御判断にお任せをして申請をしていただきたいということをこれまでもやってまいりましたし、また、この制度の説明というものの努力はこれまで累次にわたって当局の方からしてきた上でこういう形になっているというふうに理解しております。
○塩川委員 そういう点でも、自治体の取組、それぞれに事情があるんだろうけれども、そういった事情も酌んで、更なる手だて、工夫をするということが必要じゃないか。賃上げを図るという点では、我々は当然それを求めているところですし、そういった点で何が課題かという話を自治体に対してヒアリングをする、そういったことは是非やってもらいたいと思うんですが、そこはどうでしょうか。
○山際国務大臣 実際には、今御答弁申し上げましたように、各自治体とのコミュニケーションというのはこれまでも図ってきたわけですね。その上で、今こういう状況になっている。
 ただし、岸田内閣として目指しているものは、やはり、公的部門にお勤めの皆様方の賃金を上げていくということをまず呼び水にして、日本の社会全体の賃上げを目指していこうということでございますから、当然、その効果というものに関して、どの程度あるかという検証は日々やっていかなきゃいけないと思っておりますし、その文脈から見たときに、必要なものがあるならば当然それはやっていかなきゃいけないと思ってございます。
 今この段階では、ヒアリングのようなものをする段階ではないと私たちは判断しておりますけれども、効果等々に関しては見ていきたいと思います。
○塩川委員 是非、現状で聞いてもらった方が今後の課題に生かせると思います。その点を求めるとともに、やはり、財政上の措置についての懸念というのはあるわけで、十月以降の地方交付税措置の話がありますけれども、来年度はどうなるのか、そういう不安だってあるわけです。賃上げに必要な財源について、交付税措置を維持していくとか、そういった国の責任でしっかり対応する、こういうことこそ必要じゃないかと思うんですが、財政措置についてはどうでしょうか。
○山際国務大臣 十月以降に関しましては、これも議員御案内のとおりでございますけれども、全世代型社会保障制度をどう考えていくかという文脈の中で、その問題意識というものはもう専門家の皆様方から提示されておりまして、やはり公的部門に働いていらっしゃる方々、特に介護士さんであるとか保育士さんであるとか、今の放課後児童クラブで働いていらっしゃる方も含めてですけれども、こういう方々が、全体の平均の賃金から比べたときにまだ賃金が低い状況にあるということ、これはもう問題として提起されておりますから、それを、二〇二〇年代という言葉が使われておりましたけれども、二〇二〇年代というのも、既に二〇二二年ですので、あと七、八年の間に集中的にその差を埋めていくということはやっていかなくてはいけないということは、もうこれは専門家の皆様方から御指摘されていることですから、それを踏まえて、十月以降の制度というものはしっかりと考えて、改正していくということになると思います。
○塩川委員 自治体に対する国の財政措置など改善も行って、対応が前に進むように、国のイニシアを取っていただきたいと思います。
 山際大臣、ありがとうございました。
○上野委員長 山際大臣におかれましては、御退席をお願いいたします。
○塩川委員 残りの時間で、デジタル庁の組織体制についてお尋ねします。
 数字の確認ですけれども、四月一日現在のデジタル庁の職員総数、また、うち民間の出身者数、そのうち常勤と非常勤の人数がどうなっているのか。まず、それをお答えいただけますか。
○山本政府参考人 お答えいたします。
 令和四年四月一日現在におきましてのデジタル庁の職員の数は約七百名となってございます。そのうち民間出身者の数は約二百五十人となっておりまして、うち常勤職員が二十七名、その他は非常勤職員となってございます。
 以上でございます。
○塩川委員 民間出身者の人数について、常勤、非常勤の別で、グループごとの数字というのは分かりますか。
○山本政府参考人 お答えいたします。
 恐れ入ります。グループごとの数字でございましょうか。
 グループごとの非常勤職員の数につきましては、四月一日現在での精査は、ちょっと今お答えをできるほどに精査できておりませんので、今担務の関係もございますので、御理解いただければ大変幸いでございます。
○塩川委員 是非、後で結構ですので、その数字をお願いします。
 それから、民間出身者の常勤職員が二十七名というお話がありました。昨年九月のデジタル庁発足時には一人、今年の一月一日時点では十人と承知をしております。
 この二十七人の選考採用方法ごとの内訳が分かるでしょうか。
○山本政府参考人 お答えいたします。
 令和四年四月一日現在におきます民間出身者の職員、常勤職員二十七名でございまして、採用形態は、デジタル監、内閣により任命されておりますけれども、これが一名、選考採用、任期付職員として採用している者が六名、あと官民交流によりまして受け入れておりますのが二十名、以上でございます。
○塩川委員 デジタル監を除いた任期付が六人、官民人事交流が二十人ということですけれども、こういった選考採用方法を取った理由というのは何でしょうか。
○山本政府参考人 お答えいたします。
 個別の採用についてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じますけれども、基本的な考え方として、必要な職種、また人物を見て、また、官民交流であれば派遣元の御意向とも調整をしながら、適切な採用形態を取っておるものでございます。
○塩川委員 官民人事交流法に基づく官民人事交流ですけれども、デジタル庁の状況を報告が出ていますから見てみますと、例えば、自動運転のロードマップの作業である官民ITS構想・ロードマップ関連業務の仕事に自動車メーカー出身の方が就いている例などがあります。そうなりますと、こういうロードマップにおいて、自動車業界サイドのルール作りにならないだろうかといった懸念も浮かぶんですが、こういった点については、大臣はどのようにお考えですか。
○牧島国務大臣 委員御案内のとおり、デジタル庁では、全ての職員を対象に、入庁に際し、コンプライアンス基本方針に沿って行動すること、職務上知ることのできた秘密を漏えいしないこと、利益相反行為は行わないことなどについて定めた誓約書の提出を求めております。
 こうしたしっかりとしたコンプライアンスに基づいて、日々、それぞれ、デジタル庁の職員が業務に当たらせていただいているというふうに理解をしております。
○塩川委員 ただ、官民人事交流で見ても、交流元企業の業務に従事することや、交流元企業に対する許認可等の業務を行う官職に就くことは禁止をされているわけです。
 当該企業や業界団体の関わるルール作りなど企画立案の官職に就く規制はないわけで、やはり企画立案、ルール作りというところが一番の肝ですから、そこに関係業界、事業者の方が関わるというのは、ルール作りにおいて、特定の事業者、業界に有利な作業にならないのかといった懸念というのはあると思うんですが、その点についてはどうですか。
○上野委員長 牧島デジタル大臣、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
○牧島国務大臣 はい。
 私どもは、有識者から構成される会議などの議事録の公表もオープンにしておりますし、こうした一つ一つの企画立案、組織としての必要性、有効性、公平性等を勘案して意思決定していくものでございます。
 職員個人の判断や考え方がそのまま制度化する仕組みにはなっていないというふうに理解しております。
○塩川委員 企画立案に関わる部門にそういった関係事業者があるというのは、ルールの妥当性そのものも疑わせるものとなる。こういった点での懸念を除くということが必要だということを申し上げて、終わります。