【本会議】こども家庭庁設置法案審議入り/子どもの権利侵害を推し進めてきた自民党政治を問う/憲法と子どもの権利条約の実現を

 政府提出のこども家庭庁設置法案と与党提出のこども基本法案が衆院で審議入りし、質問しました。

 私は、子どもの貧困、虐待、不登校、いじめ、自殺など子どもの権利侵害は深刻だと指摘。

 国連子どもの権利委員会からも、日本の子どもの社会支出がOECD加盟諸国平均より低いとの指摘や、貧困根絶のための資源配分を求める勧告が出されていること、また、教育についても高度に競争的な学校環境がいじめや不登校、自殺などを助長している懸念、教育制度の見直しを求める勧告が出されてきた。なぜ、この勧告を放置してきたのかと質問しました。

 岸田総理は「新型コロナの中で、少子化が深刻化し、子どもをめぐる課題は複雑化している」と原因をコロナにすり替え、「必要な取組は行ってきた」などと述べました。

 私は、憲法の基本的人権やこどもの権利条約の4原則「生命、生存及び発達に対する権利」「子どもの最善の利益」「子どもの意見表明・尊重」「差別の禁止」があるにも関わらず、自民党政治が教育でやってきたことは何か、と追及。教育基本法を改悪し、国家介入、愛国心や競争・管理教育を押し付けてきたと批判。

 権利条約批准時には、条約に反して、子どもの意見表明権を軽視する文部省通知(94年)まで出してきた。憲法と4原則を放置するだけでなく逆行してきたのが自民党政治だ。こうした政治が深刻な事態を招いたという反省はあるのかと迫りました。

 岸田首相は、生徒たちが主体的に取り組めるよう生徒指導や学習支援を行ってきた、校則は学校の責任、と述べ、深刻な現状に対する反省はありませんでした。

 私は、法案には子どもの権利条約という文言や、4原則の規定がなく、子どもの権利を保障するための独立した権利機関の設置もない。子どもの権利侵害を解決することにはならないと述べました。

 また、与党提出のこども基本法案の基本理念に4原則を盛り込むとしている一方で「子どもの養育は家庭が基本」としていることについて、子どもを守り育てるのは社会の責任であるということが、憲法と権利条約の精神だと強調。

 強調されるべきは国の責任で家庭への手厚い支援を行うことだとただしました。

 提出者である自民党の木原稔衆院議員は「養育は家庭が基本だとの認識を明記した」と答えました。

 私は、こども基本法案は教育も包含するのか、と質問。

 木原議員は「教育は、憲法と教育基本法を頂点とする教育法体系のもとで行われるものであるから、教育内容に踏み込んだ規定を設けなかった」と答え、こども基本法案は、教育内容に及ばないことを認めました。

 私は、あまりに少なすぎる子ども関係予算と子どもの権利を支える人の問題について「予算と人の確保こそが、子どもを支える活動をしている方たちの一番の願いだ。これにこたえず、組織を一本化するだけでは、問題の解決にはならないのではないかと強調しました。


衆議院TV・ビデオライブラリから見る


質問の要旨は以下の通りです

 私は、日本共産党を代表して、政府提出のこども家庭庁設置法案及び与党提出のこども基本法案について質問します。

 まず、子どもの実態をどう見るか。

 今、子どもの貧困は約7人に1人、ひとり親世帯の半分が貧困状態です。2020年度では、虐待の相談件数は20万件、不登校も20万件、いじめの認知件数は51万件にのぼり、いずれも大幅に増加しています。10代の死因で自殺が最多を占めるのはG7で日本だけです。

 総理。子どもの現状が深刻だという認識はありますか。

 国連子どもの権利条約を批准してから約30年、何故ここまで深刻なのか。政府はこれまで何をしてきたのですか。

 子どもの権利委員会からも、日本の子どもの社会支出が OECD 平均より低いことや貧困率が高いことへの深い懸念が出されています。貧困を根絶するための適切な資源配分を求める勧告とともに、労働の規制緩和等が賃金削減、賃金格差をもたらしていると指摘されています。

 また、教育については、高度に競争的な学校環境が、いじめ、精神障害、不登校、中途退学、自殺を助長している可能性があるとの懸念とともに、その悪影響を回避するため学校及び教育制度を見直すよう勧告が出されています。

 政府がこの勧告を放置してきたのは何故ですか。子どもの権利を大きく侵害してきたという認識はありますか。

 憲法は基本的人権を保障し、子どもの権利条約は「生命、生存及び発達に対する権利」、「子どもの最善の利益」、「子どもの意見の表明・尊重」、「差別の禁止」の4原則を掲げています。

 それなのに、自民党政治が教育で行ってきたことは何か。

 子どもが一番長い時間を過ごす学校で、学習内容の詰め込みを強化。「強制的な力」によって生徒を「服従」させることを推奨するような「生徒指導の手引き」を出し、管理教育を推進。子どもの権利条約の批准時には、条約に反するような94年文部省通知を発出。安倍政権下で、全国一斉学力テストの導入など、競争・管理教育を一層強化。さらに教育基本法を改悪して、教育への国家介入、愛国心や競争・管理教育を押し付けてきました。

 憲法と4原則を放置してきただけでなく、これに逆行してきたのが自民党政治ではありませんか。こうした政治が、今の深刻な事態を招いたという反省はあるのですか。

 これを改めるというなら、子どもの意見表明権を軽視し、理不尽な校則の温床となっている94年文部省通知は、ただちに撤回するべきではありませんか。

 今こそ、憲法の基本的人権と子どもの権利条約を実現する政治への大転換が必要です。

 法案がそうなっているのか問いたい。まずは子どもの権利に関わる問題です。

 政府は、こども家庭庁が、子どもの権利を保障し、健やかな成長を社会全体で後押しする「こどもまんなか」社会を目指す司令塔としています。では、こども家庭庁設置法案に、子どもの権利条約という文言や4原則の規定がないのは何故ですか。

 こども家庭庁は、子どもの権利条約に基づくものではないのですか。権利委員会の「勧告」は一元的な組織を求めていますが、何故、(こども家庭庁には)教育が含まれていないのですか。

 子どもの権利を保障するための独立した監視機関の設置もありません。

 これでは、新たな縦割りをもたらすだけで、子どもの権利侵害を解決することにはならないのではありませんか。

 閣法と合わせて出された与党提出のこども基本法案について質問します。

 「こども施策」の基本理念に子どもの権利条約の4原則を盛り込むとしています。

 それならば何故、基本理念に「子どもの養育は家庭が基本」と書き込むのですか。虐待や貧困など、家庭の中で苦しむ子どもたちが少なくありません。この規定は、苦しむ子どもや保護者をさらに追い詰め、一層孤立させることになります。

 子どもを守り育てるのは社会の責任であることが、憲法と子どもの権利条約の精神であり、強調されるべきは国の責任で家庭への手厚い支援を行うことではありませんか。

 こども基本法は、学校教育も包含するのですか。法案の目的に、幼児教育に関する規定はありますが、初等から高等教育の規定がないのは何故ですか。また、「こども大綱」に教育が含まれていないのは何故ですか。

 さらに基本理念に、「教育基本法の精神にのっとり教育を」とあります。この規定について衆院法制局は、「教育は教育基本法が基本であることを示すため」と説明しています。

 子どもの権利条約と矛盾する改定教育基本法が基本ということは、つまり、小学校、中学校、高校、大学の教育では、4原則は保障されないということになりませんか。

 次に、あまりに少なすぎる子ども関係予算と子どもの権利を支える人の問題です。

 国際的に見て最低水準の子どもに対する支出を抜本的に増やすことが必要です。

 例えば、野党が求めてきた給食費の無償化、医療費の無償化を行うのですか。

 また、貧困に苦しむ子どもや家庭に対し児童手当や児童扶養手当の抜本拡充を行うべきではありませんか。

 野党が求めてきた保育士や学童保育指導員の大幅な処遇改善を行うのですか。児童福祉の専門職員等の配置基準を改善するのですか。

 非正規が増加している教職員は、正規を基本とするのですか。

 予算と人の確保こそが、子どもを支える活動をしている方たちの一番の願いです。これにこたえず、組織を一本化するだけでは、問題の解決にはならないのではありませんか。

 以上、質問を終わります。