【内閣委員会】学校給食の無償化を国の施策で

 自治体による学校給食費の無償化を国の施策で行うべきと求めました。

 私は、文部科学省が2017年度に行った給食費無償化実施状況調査の結果について質問。

 文科省は、全国1740自治体のうち小・中学校両方で無償化を実施している自治体は76団体だと答えました。

 私は、完全無償化の自治体が、群馬県では調査時の8から14団体へ、山梨県では2から11団体に大きく増えていると強調。5年間で前進しており、実態を踏まえた対策が必要だとして実態調査を求めました。

 文科省は「現時点で調査する予定はない」と答えました。

 私は、「小・中学校の給食は義務教育の性質上、無償が適当だ」と主張。岸田文雄総理が子ども予算を倍増すると掲げたことにも触れ、「どういう施策を増やすのか」と質問。

 野田聖子少子化担当大臣は「給食費も含め、自殺や貧困など子どもの問題が顕在化した」と認めながら、「額や期限ありきではない」、給食費については文科省の取り組み、との答弁にとどまりました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年4月20日 内閣委員会 第20号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今日は、まず学校給食費の無償化についてお尋ねをいたします。
 文科省に幾つか事実関係を確認の上で、野田大臣に子供関係予算の問題についてお尋ねをしたいと思っております。
 二〇一七年度の学校給食費の無償化等の実施状況というのを文科省が調査を行っております。その中で、小中学校とも無償化をしている自治体数及びその割合が幾らか、また、その他何らかの助成制度を実施をしている自治体数及びその割合について明らかにしていただきたい。うち群馬県における無償化等の実施状況がどうなっているのかについても併せてお答えください。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の平成二十九年度に文部科学省が全国千七百四十自治体を対象に行いました実施状況の調査によりますと、小学校、中学校とも無償化を実施している自治体が七十六自治体、四・四%、小学校のみ無償化を実施している自治体が四自治体、〇・二%、中学校のみ無償化を実施が二自治体、〇・一%、一部無償化、一部補助を実施している自治体が四百二十四自治体、二四・四%となってございます。
 また、この調査で、群馬県三十五自治体の状況につきましては、小学校、中学校とも無償化を実施している自治体が八自治体、県内での割合は二二・九%、一部無償化、一部補助を実施している自治体が十三自治体、同じく県内の割合は三七・一%、無償化等を実施していない自治体が十四自治体、四〇・〇%という状況でございます。
○塩川委員 この学校給食費の無償化の実態調査を行うきっかけが何だったかについて教えてもらえますか。
○淵上政府参考人 平成二十九年度当時におきまして、その時点で、これまで文部科学省として、学校給食の無償化の全国状況ですとか、あるいはその導入の狙い、課題等を承知していないという状況がございましたので、その実態を把握するために調査を行ったというふうに承知しております。
○塩川委員 その前の年に経済財政諮問会議で議論になった、学校給食費の無償化が議題に上がった、それとの関係での調査ではないんですか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のございました平成二十八年の経済財政諮問会議で民間議員の方々から給食無償化の提案があったということは承知をしておりますけれども、そのことが直接この調査につながっているとは認識しておりません。
○塩川委員 民間議員の提案があって、その翌年に調査をしているということであります。
 それで、二〇一七年時点で完全無償化の自治体は全国で四・四、その他何らかの助成制度を実施している自治体数は二四・七%です。四分の一は何らかの助成を行っているんですが、これは二〇一七年時点で、今はかなり進んできているんですよね。
 群馬県で学校給食費の無償化の運動に取り組んでいる市民団体の方とも懇談をいたしました。この間、各自治体にも働きかけを行う中で、その数も増えていて、二〇一七年時点では、完全無償化が八自治体の二二・九、何らかの助成措置を行っているのが十三自治体で三七・一、合わせて六割の自治体ではそういう何らかの助成を行っているということですが、現在、群馬県では、三十五市町村中、八割以上の二十九自治体が学校給食費助成制度を実施をし、そして四割の十四自治体が完全無償化になっています。大きく前進をしております。文科省はこういう実態を御存じでしょうか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 群馬県教育委員会に確認をいたしましたところ、令和三年九月一日時点で群馬県教育委員会が行った調査によりますと、県内三十五自治体のうち、小中学校とも無償化を実施している自治体が十二自治体、一部無償化、一部補助を実施している自治体が十六自治体というふうに聞いているところでございます。
○塩川委員 助成の仕組みがいろいろバージョンがあるものですから、そういうのを広く捉えると私が紹介したような数字になりますし、昨年の調査以降にも前進しているということもありますので、お話ししたような状況になっているわけであります。
 ほかにも、山梨県なども大分進んでいまして、二〇一七年時点では、完全無償化というのは二自治体、七・四%でしたが、現在は、完全無償化の自治体は二十七自治体中の十一自治体ということで、四割を超えると。大きく前進をしております。
 このように、実施自治体が増加をしているわけです。文科省として、改めて学校給食費の無償化等の実施状況について調査をする考えはありませんか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、平成二十九年度には、当時、文部科学省として、無償化の全国状況、あるいはその導入の狙い、課題等を承知していないという状況におきまして、その実態を把握するために調査を行ったところでございます。
 この調査においては、無償化等の状況のみならず、無償化に至った経緯、無償化を開始した目的、無償化による成果、無償化実施前後の課題等について把握をしたところでございます。
 文部科学省といたしましては、この調査におきまして必要な情報を把握をいたしまして、また、各給食実施者にもその情報を共有したところでございまして、現時点におきまして、これ以上の調査を網羅的に把握するという予定はないところでございます。
○塩川委員 五年間で実態がかなり前進をしているということはリアルに捉える必要があると思います。そういう点でも、五年もたっているわけですので、調査も行って、その実態を踏まえた対策に生かすということが必要だと思います。
 この学校給食費の無償化の問題ですけれども、少し古い話になりますが、一九八一年の四月の衆議院の文教委員会で、我が党の栗田翠議員が、一九五一年のユネスコの第十四回国際公教育会議、学校給食及び衣服に関する各国文部省に対する勧告第三十三号を紹介をしました。
 これへの文部省答弁は、この勧告の中で、学校給食について、その意義、役割の重要性が述べられている、これらは、やがて一九五四年に学校給食法ができます、それへの大きな刺激となったと受け止めているというものでした。
 つまり、学校給食法はユネスコ勧告に刺激をされて制定をされた、こういう経緯でよろしいでしょうか。
○淵上政府参考人 御指摘の昭和五十六年の衆議院文教委員会におきまして、当時の政府委員が、今委員が御指摘されましたような御答弁をされたことは承知をしております。
○塩川委員 学校給食法というのがユネスコの勧告に刺激をされて制定をされたということであります。
 そのユネスコ勧告には、義務教育ではできる限り家庭に補充的な出費を負わせるべきではないとしていることは承知をしておられますか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の、一九五一年に当時のユネスコと国際教育局におきまして採択をされました学校給食及び衣服に関する各国文部省に対する勧告第三十三号におきまして、義務教育においてはできる限り家庭に補充的出費を負わせるべきではないとされております。
 あわせて、同勧告におきましては、学校給食の完全無償が不可能な場合には父母による財政的負担が考慮される、その場合の負担は給食材料費を超える額とすべきではないと考えられるともされていると承知をしております。
○塩川委員 いずれにせよ、保護者の負担を軽減するという趣旨が述べられているわけで、その点でも、学校給食の無償化というのは大きな課題ということになります。
 学校給食は、学校給食法により、食育を行う教育課程の中に位置づけられております。小中学校の給食は、義務教育の性質上、無償化というのが適当ではありませんか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 学校給食は、栄養バランスの取れた食事の提供により子供たちの健康の保持増進を図るとともに、食に関する指導を効果的に進めるための生きた教材としても大きな意義を有しており、その推進は非常に重要だと考えております。
 一方で、学校給食費の無償化につきましては、学校の設置者と保護者との協力により学校給食が円滑に実施されることが期待されるとの学校給食法の立法趣旨に基づき、各自治体において地域の実情に応じて御検討いただくことがふさわしいと考えております。
 なお、家庭の経済状況が厳しい児童生徒の学校給食費につきましては、生活保護による教育扶助や就学援助により支援を実施しているところでございます。
○塩川委員 義務教育の中における、まさに食育という教育課程に位置づけられている学校給食ですので、そういう意味でも、義務教育の性質上、無償化が適当だ、そういう点でも、この学校給食法の規定そのものを見直す必要がそもそもあるんじゃないのかというのが、今ではないのかということを訴えたいと思います。
 この学校給食費の無償化、先ほども言いましたように、二〇一六年の経済財政諮問会議でも議論になりました。民間議員から学校給食費無償化の提案があったということです。これはどういう趣旨で行われ、それに対して文科省としてはどのように対応したのかについてお聞きします。
○淵上政府参考人 御指摘の平成二十八年三月の経済財政諮問会議におきまして民間議員の方から学校給食費無償化の提案があったことについては承知をしておりますけれども、最終的に、同年六月に取りまとめられました経済財政運営と改革の基本方針二〇一六におきましては、学校給食関係の記載は盛り込まれていないものと承知をしております。
 いずれにしましても、文部科学省といたしましては、学校給食費の無償化につきましては、先ほど申し上げました学校給食法の立法趣旨に基づきまして、各自治体において地域の実情に応じて御検討いただくことがふさわしいと考えております。
○塩川委員 国政においても、政府内でもそういった検討も行われ、国会でもそういう議論もこの間行われてきているところであります。学校給食費の無償化に踏み出すときだ、そのための必要な法制度の整備を行うことが求められているということを申し上げます。
 それで、小中学校の学校給食費の無償化に必要な財源、額としては幾らぐらいを推計しているのか、お答えいただけますか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 ちょっと今手元に正確な数字がないのでございますけれども、今現状、小学校、中学校の保護者の方が負担している食材費につきましては、およそ四千億程度だったかというふうに承知しております。
○塩川委員 学校給食がないところもありますので、そういったところでも実施、そこの無償化ということで考えれば、経済財政諮問会議の民間議員の無償化の提案の際に出されている数字では、約五千億円という試算も出されているところであります。そういった金額です。
 そこで、野田大臣にお尋ねしますけれども、岸田総理は子供予算の倍増を掲げております。この倍増で何をやるつもりなのか、どういうメニューを増やすのか、そこの点についてはどのようにお考えなんでしょうか。
○野田国務大臣 まず、額とか期限ありきではないと思っています。ようやくこの国会で子供政策、こども家庭庁設置法案、様々、基本法の法案の審議に入りまして、ややもするとこれまで主流になかった子供周りの、給食費もそうですけれども、そういうものの問題が顕在化してきました。特に、このコロナによって見えてきた数字は、やはり、子供の自殺が増加している、子供の貧困が増えている、一人親が苦しんでいる、虐待も増えている、不登校も増えている等々、実際に数字が見えてきています。そういうものにしっかりと寄り添って、誰一人取り残さない施策をするために必要なお金をしっかりつけていくというのが、これからの、私たちが今からやるべきことだと思っています。
○塩川委員 額や期限の問題ではないと言いますが、額は倍増しようと言っているわけですから、それをいつまでにというところがなかなか出てこないというのがこの間の議論でしたけれども。
 その場合、何を増やすとか、新しいメニューはこれを増やすとか、そういうのがやはり示され、議論される必要があるんだと思うんですけれども、そういう中に学校給食費というのも無償化という形で位置づけるというのは当然あり得ると思うんですが、そういう選択肢として排除されない、そういう課題ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○野田国務大臣 先ほど文科省が答弁したように、そもそも文科省でお答えいただくべきことですけれども、まずは、やはり地方自治体の取組、今先生が御紹介されたような、そういうことを好事例として、こどもまんなか、子供のために何ができるかということを進めていただきたいと思います。
○塩川委員 そういう際に、国のイニシア、それは、ですから、法制度上の担保も当然ですけれども、財政上の支援もしっかり行う、こういうことを是非とも具体化をしていくときだと思っています。
 この間、そういう意味でも、無償化を実施している自治体の首長さんなどは、やはり地域振興のためということで取り組むとか、あるいは義務教育だからこそ無償にするんだということを訴えるとか、子育て世帯支援として行うという、地域の実情を踏まえた学校給食費の助成制度、無償化制度を実施しています。
 ですから、もちろん、自治体が先頭に立って住民の皆さんと一緒に実現をしていくという取組の課題ではあるわけですけれども、その際に、それを大きく前進させる上でも国の取組が必要だ、国の政策として学校給食費の無償化制度、助成制度を実施するときではないのか。このことについて、大臣として、改めて一言いかがでしょうか。
○野田国務大臣 重なるかもしれませんけれども、やはり子供政策、こどもまんなかということで、特に我が国は、少子化による人口減少が静かなる有事、国難と皆さんが議論される中、やはりそれをしっかり支えていくような、実現できるようなものをしっかり取り組んでいかなきゃならない、そんなふうに考えています。
○塩川委員 学校給食費の無償化は、住民の皆さんの運動を力に市民と自治体の共同の取組で前進をさせてきたものです。是非、先ほど言ったような、義務教育の無償化、子育て世帯の支援、地域振興策、少子化対策など多様な課題に応える取組でもありますので、国の予算にしっかりと位置づけるべきだということを申し上げておきます。
 残りの時間で、子どもの権利条約関連についてお尋ねします。
 子どもの権利条約の原則などが書かれた法律が幾つかありますけれども、一番早いのが子ども・若者育成支援推進法だと思いますが、それにおいて、子どもの権利条約はどのように盛り込まれているか、いわゆる四つの一般原則は位置づけられているのか、この点についてお答えください。
○野田国務大臣 子ども・若者育成支援推進法においては、法律の目的として、児童の権利に関する条約の理念にのっとり、他の関係法律による施策と相まって、子ども・若者育成支援施策を推進することとしております。
 また、児童の権利に関する条約の原則についても、法律の基本理念として、子供、若者が健やかに成長すること、個人としての尊厳が重んぜられ、不当な社会的取扱いを受けることがないようにするとともに、その意見を十分尊重しつつ、その最善の利益を考慮することと明記してあります。
○塩川委員 次に、児童福祉法、この間、改正も行われております。子どもの権利条約の内容はどのように盛り込まれているか、四つの一般原則は位置づけられているのか、この点についてお答えください。
○川又政府参考人 児童福祉法におきましては、第一条におきまして、「児童の権利に関する条約の精神にのつとり、」という文言が明示的に盛り込まれております。
 その上で、同条において、「全て児童は、」「適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」、第二条におきまして、「全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。」と規定されておりまして、御指摘の四つの一般原則の要素を包含していると考えております。
○塩川委員 時間が参りました。こども家庭庁設置法がどうなるかはまた次にお尋ねします。
 終わります。