【内閣委員会】こども家庭庁設置法案に「子どもの権利条約」なし/権利条約を正面に据えよ

 こども家庭庁設置法案と与党提出のこども基本法案について質問し、子どもの権利条約を正面に据えることが必要だと主張しました。

 私は、子ども・若者育成支援推進法や児童福祉法には「子どもの権利条約の理念(精神)にのっとり」という文言が規定されている。それなのに、「こどもまんなか社会」を目指す司令塔をうたうこども家庭庁設置法案に、子どもの権利条約の文言がないのは何故か、と質問。

 野田聖子少子化担当大臣は、「(閣議決定した)基本方針で明記している」と答弁。

 私は、閣議決定ではなく、法律で理念を据えることは当然の前提だと強調し、これまでのこども施策に関わる法律より後退したと言わざるを得ないと批判しました。

 私は、文科省が検討作業をしている生徒指導提要の改定試案には、子どもの権利条約の4原則(「生命、生存及び発達に対する権利」「子どもの最善の利益」「意見の表明・尊重」「差別の禁止」)が扱われており、同条約の理解は、教職員だけでなく、児童生徒・保護者・地域にとっても必須としていると確認したうえで、学習指導要領には「子どもの権利条約」の文言があるのかと質問。

 文科省は、ないことを認めました。

 私は、権利の主体である児童生徒の側が、子どもの権利条約そのものを学ぶ機会を位置付けないのはおかしいと追及。

 文科省は「広く周知し理解してもらうことが大切だ」としか述べませんでした。

 私は、学校教育に子どもの権利が及ばないことになりかねないと批判。

 野田大臣は「こども家庭庁の設置で穴の無いよう取り組んでいけると信じている」と述べました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年4月22日 内閣委員会 第21号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 こども家庭庁設置法案、それから与党提出のこども基本法案について質疑をいたします。
 一九九四年に批准をされました子どもの権利条約が日本の法制度にどのように位置づけられてきたかについて確認をしたいと思います。
 野田大臣にお尋ねしますが、条文に子どもの権利条約が盛り込まれた最初の法律は二〇〇九年の子ども・若者育成支援推進法と承知していますが、それでよろしいでしょうか。
○野田国務大臣 子ども・若者育成支援推進法においては、法律の目的として、児童の権利に関する条約の理念にのっとり、他の関係法律による施策と相まって子ども・若者育成支援施策を推進することとしております。
 児童の権利に関する条約の原則についても、法律の基本理念として、子供、若者が健やかに成長すること、個人としての尊厳が重んぜられ、不当な社会的取扱いを受けることがないようにするとともに、その意見を十分に尊重しつつ、その最善の利益を考慮すること等を明記してあります。
○塩川委員 今、子どもの権利条約の理念にのっとり、また四つの原則に則した部分の記述のところを紹介いただきました。
 そもそも、子どもの権利条約のこういう規定について法律に盛り込んだのがこの子ども・若者育成支援推進法ではないかと承知しているんですが、その点、確認したいと思うんですが、よろしいですか。
○野田国務大臣 そうです。
○塩川委員 一九九四年に批准された子どもの権利条約ですが、国内法の中に規定として盛り込まれたのがこの二〇〇九年の子ども・若者育成支援推進法が最初ということであります。
 ただ、今御説明いただいて、いわゆる四つの一般原則が法律の条文に盛り込まれているという趣旨でお答えいただいたのかなと思ったんですが、内閣府のホームページにあります子ども・若者育成支援推進法の説明資料を見ますと、いわゆる四つの原則については、第二条の差別の禁止、第三条、子供の最善の利益、第十二条、子供の意見の尊重は位置づけられておりますが、第六条の生命、生存及び発達に関する権利というのがホームページ上の説明資料では位置づけられていなかったんですが、そこはどういうことか分かりますか。
○笹川政府参考人 お答え申し上げます。
 子ども・若者育成支援推進法、これは第一条で「児童の権利に関する条約の理念にのっとり、」というふうに明言しておりますので、私どもといたしましては、これに尽きるというふうに思っております。ありがとうございます。
○塩川委員 子どもの権利条約の理念にのっとりと第一条であるから、そういう中で四つの原則は包含をしているという御説明ということであると思いますが、ただ、ホームページを見ますとそういった記載になっていないものですから、その点は何らか見直す必要は、お考えはありませんか。
○笹川政府参考人 お答え申し上げます。
 検討させていただきます。ありがとうございます。
○塩川委員 子どもの権利条約、その四つの一般原則とされています差別の禁止、差別のないこと、子供の最善の利益、子供にとって最もよいこと、生命、生存及び発達に対する権利、命を守られ成長できること、そして子供の意見の尊重、意見を表明し参加できることといった内容について、四つの原則としているわけであります。
 子ども・若者育成支援推進法は、「児童の権利に関する条約の理念にのっとり、」と目的に書き、四つの原則を掲げているということでありました。
 この子ども・若者育成支援法は、当初の法案には、つまり、閣法で出されているわけですけれども、麻生政権のときでしたが、閣法で出されたときには、子どもの権利条約は記述をされておりませんでした。修正協議の中で盛り込まれたということですけれども、そういうことでよろしいでしょうか。
○野田国務大臣 そうです。
○塩川委員 当時、自公政権が提出をした当初の法案、閣法、青少年総合対策推進法案には、子どもの権利条約の記述はありませんでした。
 青少年特別委員会で修正協議も行われて、野党の修正案提出者の民主党の吉田泉委員が修正の趣旨を述べておられますけれども、そこでは、憲法及び児童の権利条約の理念を反映させることとし、日本国憲法及び児童の権利条約の理念にのっとる旨を明示するとともに、子供、若者について、尊厳を重んじる、差別的取扱いを受けない、意見の尊重、最善の利益を考慮などの理念を明記することとしていると述べています。
 子どもの権利条約を位置づけることを求める市民と野党の働きかけによって盛り込まれたものということであります。
 こういった子ども・若者育成支援推進法は、権利条約の理念にのっとり、四つの原則も踏まえているわけですが、法律に書き込めばいいという話じゃなくて、実際それがどう実践されるのかという点で、この法律がやってきたことについての検証ということも行う必要がありますが、まずは出発点として、権利条約の様々な理念、一般原則、これをしっかりと国内法に位置づけるということは極めて重要であります。
 そういう点で、次に、児童福祉法についてお尋ねをいたします。
 この児童福祉法において、子どもの権利条約の内容というのはどのように盛り込まれているか、四つの一般原則は位置づけられているのか、この点についてお答えください。
○岸本政府参考人 お答えいたします。
 児童福祉法では、第一条におきまして、「児童の権利に関する条約の精神にのつとり、」との文言が明示的に盛り込まれているところでございます。
 その上で、同条におきまして、全て児童は、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉をひとしく保障される権利を有すること、また、第二条におきまして、全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならないことについて規定しておりまして、御指摘の四つの一般原則の要素を含んでいるものというふうに考えております。
○塩川委員 第一条に、児童の権利条約の精神にのっとりとあり、この第一条部分、それから第二条部分で、成長及び発達、あるいは意見の尊重、最善の利益等々、四つの一般原則に係る要素を包含をしているということですが、ただ、差別の禁止という文言そのものはここの条文上はないわけですけれども、そこはどこでどのように読むということなんでしょうか。
○岸本政府参考人 お答えいたします。
 差別の禁止という文言ではございませんが、先ほど御説明申し上げました第一条の条文の中に、「その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」というふうに書いてございまして、これが、差別なくひとしく扱われなければならないという考え方を盛り込まれているというふうに考えているところでございます。
○塩川委員 児童の権利条約の精神にのっとり、そういった趣旨にそもそも差別の禁止ということが想定される、含み得るということでよろしいですか。
○岸本政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のような点に加えまして、文言としてそれを、「等しく保障される」というふうに書いていることで更にそういった趣旨を強調しているものというふうに考えているところでございます。
○塩川委員 児童福祉法におきましても、子どもの権利条約の精神にのっとりとあります。また、その条文を通じて四つの一般原則の要素を包含をしているというお話でありました。
 そこで、こども家庭庁設置法案についてですけれども、このこども家庭庁設置法案において、子どもの権利条約の内容はどのように盛り込まれているんでしょうか。この四つの一般原則はどのように位置づけられているのかについて、大臣、御説明ください。
○野田国務大臣 お答えします。
 昨年末に閣議決定したこども家庭庁の創設の考えを示した基本方針では、今後の子供政策の基本理念として、全ての子供の健やかな成長、ウェルビーイングの向上を掲げ、児童の権利に関する条約にのっとり、全ての子供が生命、生存、発達を保障されること、子供に関することは常に子供の最善の利益が第一に考慮されること、子供は自らに関係のあることについて自由に意見が言え、大人はその意見を子供の年齢や発達段階に応じて十分配慮すること、そして、全ての子供が個人としての尊厳が守られ、いかなる理由でも不当な差別的取扱いを受けることがないようにすることといった基本原則をいま一度社会全体で共有し、必要な取組を推進することが重要としています。
 これを踏まえて、設置法案では、こども家庭庁の任務として、子供の年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本として明記し、子供の健やかな成長及び子供のある家庭における子育てに対する支援や、子供の権利利益の擁護に関する事務を行うことを規定し、児童の権利に関する条約の四つの原則の趣旨を踏まえた内容としています。
○塩川委員 この任務のところで、「こどもの年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、」というところが子どもの権利条約に係る部分ということで御紹介になったわけですけれども、ただ、この質疑で確認しましたように、子ども・若者育成支援推進法においても児童福祉法においても、子どもの権利条約の理念にのっとり、子どもの権利条約の精神にのっとり、こういったことがうたわれているんですが、このこども家庭庁設置法にはないんですよね。それはどういうことなんでしょうか。
○野田国務大臣 こども家庭庁設置法の、任務、第三条の中で、例えば、児童の権利に関する条約の四つの原則の、生命、生存及び発達に関する権利としては、「こどもの健やかな成長及びこどものある家庭における子育てに対する支援」ということになりますし、子供の最善の利益ということであれば、「その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、」とありますし、そして、子供の意見の尊重というのは、「こどもの年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、」とありますし、差別の禁止については、「こどもの権利利益の擁護に関する事務を行うことを任務とする。」ということで、四つの原則をしっかり入れてあります。
○塩川委員 先行するほかの法律においては、子どもの権利条約の精神にのっとり、子どもの権利条約の理念にのっとりとあるんですが、それがこのこども家庭庁設置法案にないのはなぜなんでしょうか。
○野田国務大臣 こども家庭庁設置法でありますので、その他の法律とは若干意を異にしている、御理解いただけると思います。
○塩川委員 ただ、先ほども、基本方針で、子どもの権利条約にのっとり子供の権利を社会全体で共有しましょうというお話をされているわけです。その際に、やはり国がこういった組織をつくるのであれば、その大原則として子どもの権利条約の理念にのっとりということがまずは掲げられるというのが筋だと思うんですけれども、そう思いませんか。
○野田国務大臣 繰り返しになりますけれども、こども家庭庁をつくる組織の法律の中身になりますので。でも、それはしっかり踏まえた上で、この任務の中に取り入れているというふうなことで進めているところです。
○塩川委員 ですから、子どもの権利条約にのっとり、子供の権利をしっかりと保障するということがこどもまんなか社会というのであれば、まずはしっかり法律の上でも位置づける必要があるんじゃないですかと。単なる組織の法律だから入れないというのはそもそもおかしな話であって、子どもの権利条約の理念にのっとりということを掲げるのはある意味当然じゃないかなと思うわけですが。
○野田国務大臣 繰り返しで恐縮ですけれども、これは設置法、こども家庭庁設置法で、そのこども家庭庁の中には、今委員がお話しされた子ども・若者育成支援推進法が所管されることになるので、そこはしっかりと担保されることになります。
○塩川委員 いや、それは、その中に含まれるということでしょうから。
 じゃ、こども家庭庁設置法と子ども・若者育成支援推進法との関係はどういうふうになるのか。
○野田国務大臣 こども家庭庁設置法は、あくまでも組織の在り方、任務がどういうものかということをお示しする法律で、条約の理念というのは、子ども・若者育成支援推進法のような理念法の中で書かれるということで、法律の性質の違いというか、役所をつくるための、設置するための内容の法律案ということでございます。
○塩川委員 だって、こどもまんなか社会、そういう社会をつくる上での司令塔をつくるというわけですよね。司令塔のときに、何を目標に、何を掲げてやるかという大原則というのがあるわけじゃないですか。そういったときに、もちろん憲法は当然そうでしょうけれども、国際法であります条約としての子どもの権利条約の理念にのっとりというのが掲げられるのがそもそも筋なんじゃないのかと思いますが、改めて、いかがですか。
○野田国務大臣 それに関しましては、昨年の閣議決定されたこども家庭庁の創設の考えを示した基本方針の中でしっかり明記されているということです。
○塩川委員 だから、閣議決定の基本方針で明記しても、法律で明記しなくてどうするんですか。まさに国会を通じて、審議を通じて、国民の皆さんに、まさに権利利益について関わるような法律にしていくわけですから、そういったときに、やはり法律の中に、子どもの権利条約の理念にのっとりということをしっかり据えるというのは当然の前提だと思うんですけれども、基本方針に書いたから、閣議決定でいいんですという話は違うんじゃないですか。
○野田国務大臣 何度も繰り返しになりますけれども、新しい組織をつくる、設置の在り方、任務とか、そういうことを記している法律で、その前提が、先ほど申し上げた閣議決定している基本方針の中で、児童の権利に関する条約にのっとってそういう設置をするということで、御理解いただければと思います。
○塩川委員 だって、そもそも、こどもまんなか社会をつくる、その司令塔といったときに、どういう理念を掲げてやるのかといった際に、まずはそこを、子どもの権利条約の理念にのっとりとうたうというのは当然過ぎる前提じゃないのか。違いますか。
○野田国務大臣 それについては、先ほど申し上げたように、任務の中にしっかりと権利条約の四原則は入れてあるということであります。
○塩川委員 四原則といっても、そう読めるのかというのは率直に思いますけれどもね、そこは。
 今まで、説明にあったように、子ども・若者育成支援推進法とか児童福祉法というのは、まずは、子どもの権利条約の理念にのっとり、子どもの権利条約の精神にのっとりというのがあるから、そこで四つの原則を担保しているという説明をしているじゃないですか。
 そういう点でも、子どもの権利条約の理念にのっとりと書いているということが、まさに基本となる理念を基にして子供施策を行うということになるんですから、そこを書くのは当然の前提、当たり前のことだと思うんです。改めて、いかがですか。
○野田国務大臣 基本方針でしっかりと、児童の権利に関する条約にのっとりということで、四原則をしっかり、児童の権利条約とうたわなくてもその中身をしっかり担保しているところが任務というところに当てはまると思います。
○塩川委員 閣議決定している基本方針には子どもの権利条約にのっとりと言っているのに、何で法律に、作るときにそれを入れなかったんですか。
○野田国務大臣 入れていないのではなく、任務規定にあります。
○塩川委員 だから、子どもの権利条約という文言がないですよねということを言っているんです。
○野田国務大臣 任務規定の中に四原則がしっかり書き込まれているので、その必要はないということです。
○塩川委員 いやいや、ですから、それで本当にそう読めるのかという話をしているわけで、ほかの、前の二つの法律の説明では、子どもの権利条約の理念にのっとり、精神にのっとりというのがあるからそれで担保しているという話であって、担保されないんじゃないですかということですけれども。
○野田国務大臣 先ほどの法律は理念法ですから、基本理念をしっかり書かれて、私たちは、その基本理念をしっかりと、四原則を任務の中に書き込んでいるということです。
○塩川委員 じゃ、子供施策の理念法というのはどこにあるんですか。
○野田国務大臣 先ほど委員がお話しされた子ども・若者育成支援推進法です。
○塩川委員 子ども・若者育成支援推進法が、子供施策全体をカバーしているという法律なんですか。
○野田国務大臣 それも含めて、これがまずは、子どもの権利条約、先ほど御説明されたとおりで、子供の政策の一つの法律となります。他にもいろいろ議員提案等々あるわけですけれども、それもやはりこども家庭庁が包含して、総合的に調整をかけて政策を遂行していくと。
○塩川委員 包含するのはこども家庭庁の方なんですから、子ども・若者育成支援推進法が包含しているわけじゃないわけで、そういう点でも、子どもの権利条約が位置づけられていないというのがこども家庭庁設置法の実態ではないのかということになりますと、これまで子どもの権利条約を掲げてきた法律に比べても、率直に言って後退しているんじゃないですかということを言わざるを得ません。
 子どもの権利条約があっても、貧困やいじめや虐待、自殺などの子供の現状が深刻なわけであります。でも、その権利保障をきちっと法律に規定することすらしないというのでは、そのような保障も、行うということにつながらないということを言わざるを得ません。
 そこで、与党提出のこども基本法についてお尋ねいたします。
 本会議で、こども基本法は学校教育も包含するのかという問いに、提出者の木原稔議員は、教育施策は憲法と教育基本法を頂点とする教育法体系の下で行われるものであることから、学校教育の内容に踏み込んだ規定を設けることはしなかったと答弁をいたしました。
 それを聞いて思ったのは、このこども基本法と教育基本法との関係というのはどうなるんでしょうか。教育施策は憲法と教育基本法を頂点とする教育法体系の下で行われる、学校教育の内容に踏み込んだ規定は設けなかったと。このこども基本法案と教育基本法との関係について少し説明をいただけませんか。
○鈴木(隼)議員 お答えいたします。
 子供に対する教育は、現行法上、憲法及び教育基本法を頂点とする教育法体系の下で行われており、これはこども基本法案が成立しても変わるものではないと考えております。
 子供の健やかな成長を支えるというこども基本法案が成立すれば、子供に対する教育においても子供の成長を中心に考えるという理念が明確となります。そして、これは、教育基本法一条に定める教育の目的に掲げる、心身ともに健康な国民の育成という目的と通ずる理念であると考えております。
○塩川委員 学校教育の内容との関係で、教育基本法とこのこども基本法案は、すみ分けというんですか、重なりがあるのか。その考え方はどうなっているんですか。
○鈴木(隼)議員 こども基本法案につきましては、子供施策を包含するものとして定めることとしています。一方で、そういう意味では、学校教育につきましても、法律の定義上、子供施策と位置づけることはできます。ただ、教育の内容につきましては、教育基本法を基とした法体系の中で検討されているものであるというふうに考えております。
○塩川委員 学校教育の内容については教育基本法というお話です。それで、教育施策は憲法と教育基本法を頂点とする教育法体系の下で行われるものであることから、こども基本法には、学校教育の内容に踏み込んだ規定を設けることはしなかったとしました。
 こども基本法の基本理念には、そもそも法案にも憲法と子どもの権利条約の理念にのっとりとうたい、基本理念の一号から四号で、いわゆる四つの原則に則しての規定が行われている、つまり、権利条約を理念として掲げている、それがこども基本法案という御説明であるわけですけれども、そうしますと、学校教育の内容を、こども基本法についてその規定を設けるということにならないとすると、こども基本法の基本理念に掲げている子どもの権利条約、そしてその四つの原則が学校教育には及ばないということになりはしませんか。
○鈴木(隼)議員 お答えいたします。
 本法案における教育施策の位置づけは、御指摘の本会議における答弁のとおりでございますが、先ほど、子供施策の定義上、教育施策は子供施策に含まれるものとなっております。したがいまして、児童の権利条約の四原則を定めた本法案の子供施策に関する基本理念もまた学校教育に及ぶこととなります。
○塩川委員 これは実際に現状がどうなっているのかということですけれども、大臣にお尋ねしますが、こども家庭庁設置法案の所掌事務には学校教育は入っていないということでよろしいですよね。
○野田国務大臣 入っておりません。
○塩川委員 子どもの権利条約を掲げる与党提出のこども基本法案と、こども家庭庁設置法案は、学校教育に関与しないということです。
 そこで、教育施策については子どもの権利条約の理念も反映されるという趣旨の御説明があったんですが、学校教育の内容については踏み込まないという答弁だったわけであります。そうしますと、文科省の、学校教育における子どもの権利条約に係る施策がどうなっているのか、この点を確認したいと思います。
 文科省にお尋ねしますが、子どもの権利条約について、教育施策にどのように位置づけて取り組んでいるのかについて御説明をください。
○岡村政府参考人 お答えいたします。
 文部科学省では、これまで、児童の権利に関する条約を踏まえ、人権教育の推進や、児童生徒が安心して学べる環境の整備などに取り組んでまいりました。具体的には、教育委員会の担当者を対象とする各種会議等を活用し、毎年度、条約の内容等の周知を含めた人権教育の推進に努めております。
 このほかにも、文部科学省におきましては、児童の権利に関する条約の趣旨も踏まえて、例えば、虐待や自殺防止のための相談体制の整備、いじめ防止のための取組の促進、学校における体罰をなくすための取組強化、教育費負担軽減に関する取組等を進めております。
 引き続き、条約の趣旨を踏まえ、これらの取組を進めてまいります。
○塩川委員 人権教育の推進をしている、子どもの権利条約の趣旨を踏まえて子供の権利保障についての様々な施策を行っているという御説明でした。しかし、それが学校教育の内容として本当に反映されているのか、子どもの権利条約そのものについてどうなっているのかということです、一般的に人権教育とかということではなくて。
 現在、文科省で作業中の生徒指導提要改訂試案では子どもの権利条約が扱われていると承知をしております。この生徒指導提要というのはそもそもどんなものなのかについて簡単に御説明をいただけますか。
○淵上政府参考人 文部省が作成しております生徒指導提要といいますものは、学校における生徒指導を行うに当たっての基本的な考え方などをお示しをしているものでございます。
○塩川委員 学校運営についての基本的な考え方を示すということで、要するに生徒指導に生かそうということですけれども、これはこれまでどのように活用されてきたかを説明してもらえますか。
○淵上政府参考人 生徒指導提要につきましては、現在の生徒指導提要は平成三十年に作成したものでございますけれども、この作成に当たりましては、有識者の方々を協力者として作成協力者に委嘱をして、その委員の先生方の御意見を受けながら作成をしているという状況でございます。
○塩川委員 平成三十年、前回作成をした生徒指導提要について、その中には子どもの権利条約に係る記述というのは入っていたんでしょうか。
○淵上政府参考人 失礼しました、先ほど平成三十年と申し上げましたが、現在の生徒指導提要は平成二十二年のものでございました。
 それで、お尋ねの、その中に児童の権利に関する条約に関する内容が盛り込まれているかということでございますが、現在の生徒指導提要には盛り込まれていないところでございます。
○塩川委員 それで、今検討作業中の生徒指導提要の改訂試案では、子どもの権利条約はどのように扱われているんでしょうか。
○淵上政府参考人 現在、生徒指導提要の改訂のための協力者会議で改訂に向けた検討を行っていただいているところでございますけれども、この協力者会議の場におきまして、委員の先生方から、児童の権利の理解を深めるため、児童の権利に関する条約について盛り込むよう御意見がございました。
 これを踏まえまして、本年三月の同会議においてお示しをしました改訂試案におきましては、児童の権利に関する条約の四つの原則などについて盛り込んだものを御提示をしているところでございます。
○塩川委員 四つの原則を盛り込んだものを提示をしているということです。
 済みませんが、この生徒指導提要の改訂試案で、教職員の児童の権利に関する条約についての理解を促すという、児童の権利条約に関する、条約についての規定ですけれども、この改訂試案を見ますと、児童生徒の基本的人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育が行われることが求められますということで、四つの原則を紹介しています。この四つの原則の該当部分を読み上げてもらえますか。
○淵上政府参考人 本年三月の協力者会議にお示しをしております改訂試案の四つの原則の該当箇所でございます。
 1差別の禁止。児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
 2児童の最善の利益。児童に関する全ての措置を取るに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
 3生命・生存・発達に対する権利。生命に対する児童の固有の権利を認めるものとし、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。
 4意見を表明する権利。児童が自由に自己の意見を表明する権利を確保する。児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮される。
 こうした文言が現在盛り込まれているところでございます。
○塩川委員 今御紹介いただきましたように、この生徒指導提要の改訂試案では、子どもの権利条約の四つの原則について、こういう形での記載が行われています。
 その後に続く文面で、この四つの原則を踏まえて、「いじめや暴力行為は、児童生徒の人権侵害であるばかりでなく、進路や心身に重大な影響を及ぼします。教職員は、いじめの深刻化や自殺の防止を目指す上で、児童生徒の命を守るという当たり前の姿勢を貫くことが大切です。また、安全・安心な学校づくりは、生徒指導の基本であり、同条約の理解は、教職員、児童生徒、保護者、地域にとって必須だといえます。」と述べております。
 文科省にお聞きしますが、この子どもの権利条約の理解は、教職員、児童生徒、保護者、地域にとって必須ということですね。
○淵上政府参考人 平成六年に、児童の権利に関する条約を受けまして文部科学省として発出をした通知の中にも、「児童の人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育が行われなければならないことは極めて重要なことであり、本条約の発効を契機として、更に一層、教育の充実が図られていくことが肝要であります。このことについては、初等中等教育関係者のみならず、広く周知し、理解いただくことが大切であります。」というふうに述べているところでございまして、こうした考え方に立っているところでございます。
○塩川委員 この提要の改訂試案にあるように、子どもの権利条約の理解は、教職員、児童生徒、保護者、地域にとって必須だと考えているということでよろしいですね。
○淵上政府参考人 繰り返しになりますが、初等中等教育関係者はもちろん、それ以外の方々についても、広く周知し、理解いただくということが大切なことというふうに考えております。
○塩川委員 教職員の理解だけじゃなくて、やはり児童生徒の理解が必須だということで。
 それでは、必須とされている児童生徒に子どもの権利条約の理解を促す教育はどうなっているのか。学習指導要領には、子どもの権利条約の文言は記載されているんでしょうか。
○淵上政府参考人 お答えする前に、先ほど平成六年文部科学省がと申し上げましたけれども、平成六年文部省がでございました。失礼いたしました。
 お尋ねの、学習指導要領に子どもの権利条約の文言が規定されているかということでございますけれども、学習指導要領上、児童の権利に関する条約という文言は明記されておりませんけれども、関連する記載といたしましては、例えば、中学校の社会科、公民的分野におきまして基本的人権の尊重、中学校技術・家庭科の家庭分野におきまして幼児の生活と家族に関すること、また、高等学校公民科において人間の尊重と平等、個人の尊重、高等学校家庭科において、子供の生活と保育に関し、生涯にわたって家庭、家族の生活を支える福祉の基本的な理念などを扱うことを規定しております。
 さらに、高等学校の家庭科の学習指導要領の解説におきましては、児童の権利に関する条約などに示された児童福祉の理念について触れることなどが記述をされているところでございまして、こうしたことを踏まえて、関連の教科書におきましても記述が見られるところでございます。
○塩川委員 いろいろ人権に係るような教育があるというんですけれども、そもそも、子どもの権利条約の理念、また四つの一般原則、これそのものについては明記されていないという話でした。
 子どもの権利条約の理解は児童生徒にとっても必須というんですから、学習指導要領に子どもの権利条約の理念や四原則がないというのは不自然かな、位置づけたらいいのではないかと思うんですが、いかがですか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 学習指導要領は教育課程の大綱的な基準でございますので、個別の、例えば児童の権利に関する条約などといった個別の文言については余り盛り込むことになじまないものでございますけれども、ただ、今申し上げましたように、中学校や高等学校の関係教科の中に関連する記述がございまして、例えば、中学校の家庭分野につきましては、全ての教科書におきまして、児童の権利に関する条約、また四つの権利の内容が盛り込まれているところでございますし、令和四年度から高等学校で使用されております全ての家庭科の教科書、これは必修科目でございますけれども、ここにおきましても児童の権利に関する条約に関する記載があるということでございまして、こうした教科書の記載を踏まえて各学校において取り扱われているところでございます。
○塩川委員 国際条約として子供の権利の一般原則を定めている子どもの権利条約は、共通の子供の権利に係る原則ですから、そういうのをしっかり学ぼうというのは、子供の権利を保障する上でも極めて重要だと思います。
 教職員の方には、生徒指導提要も活用して、今後、子どもの権利条約を理解した生徒指導を行うよう求めるわけですね。それなのに、権利の主体である児童生徒の側に、子どもの権利条約そのものを学ぶ機会を位置づけようとしないのはおかしな話じゃありませんか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 繰り返しになりますけれども、中学校の社会科ですとか技術・家庭科、また高等学校の公民科あるいは家庭科といったところで関連する内容については学ぶこととなっておりますので、そうした内容を通じて、子供たちは人権に関する教育をしっかり学ぶこととなっているというふうに承知をしております。
○塩川委員 大臣、お尋ねしますが、所管外と言わずに、感想ということでも結構ですから、今言った点ですよね。
 学校におきまして、子どもの権利条約が非常に重要だ、これを学ぶことは必須だということを今度の生徒指導提要でうたっている。そういう際に、教職員の側は、このような生徒指導提要も活用して、子どもの権利条約を理解した生徒指導を行うとしているのに、権利の主体である児童生徒の側が子どもの権利条約そのものを学ぶ機会を位置づけようとしないというのはおかしい話じゃないかなと思いますが、いかがでしょうか。
○野田国務大臣 文科省が取り組んでいる、所管外ですけれども、こども家庭庁の立場からすると、子どもの権利条約と書いていないからとおっしゃったけれども、四原則はしっかり任務の中に書き込んであるので、そこを発信していくのは私たちの役所ですから、当然、子供政策全般を担う、総合調整をやる立場からすると、私たちの方からしっかり発信をしていく、子供にも、やはり子どもの権利条約を学ぶ、学んでもらう機会をつくっていくというのは私たちの立場だと思います。
○塩川委員 子供が一番時間を過ごすのが学校教育の現場、学校になるわけです。そこにおける子供の権利をどう保障するかというのは一番問われていることであって、今ずっとお聞きしましたように、このこども家庭庁設置法には、残念ながら、子どもの権利条約の理念にのっとりということが入っていないということがありましたし、学校教育については、こども基本法案についてはその中身を含まないというお話でもありました。
 そうしますと、学校教育に子どもの権利条約が及ばないということになりかねない、こういった事態というのは、これは子供の権利保障という観点からいっても極めて重大だと言わざるを得ませんが、改めて、一言、いかがでしょうか。
    〔委員長退席、平委員長代理着席〕
○野田国務大臣 そういうこともございますので、こども家庭庁を設置して、文科省の取組、また様々子供に関わる取組を総合調整して、私も、今日、塩川委員がおっしゃってくれたので、生徒指導提要の中身について知り得ることができたわけで、こども家庭庁ができることによって、そういうことの穴がないように取り組んでいけると信じています。
○塩川委員 終わります。