【内閣委員会】子どもの意見表明権を認めない文科省/子どもの権利条約の観点が欠落

 審議中のこども家庭庁設置法案、こども基本法案に関連して質問し、髪や下着の色まで指定する理不尽な校則の大本にある子供の意見表明権を認めない文部科学省の姿勢を批判しました。

 私は、「先生に囲まれ無理やり髪の毛に黒スプレーをかけられた」など、日本共産党プロジェクトチームが行った校則の実態調査の結果を紹介し、あまりにおかしいのではないかと質問。

 文科省は「合理的な範囲で校則を定められる」と答弁。

 私は、髪型や服装は人間の尊厳にかかわり、どう尊重するかが教育現場で抜け落ちていると指摘。国連子どもの権利委員会は2010年に日本政府に子どもの意見表明権を尊重するよう勧告をしたのに、政府は、校則の制定は「生徒個人に関わる事項とはいえず、意見を表明する権利の対象となる事項ではない」としていることについてただしました。

 文科省は、「意見表明権の対象としていない」と認めつつ、「校則の見直しに生徒が関わることは、校則を守る意識の醸成につながるなど教育的意義がある」と述べました。

 私は、子どもの意見表明権は、子ども自身に影響を及ぼす全てのことについて自由に意見を述べる権利だと強調し、子どもの権利条約批准時に当時の文部省が出した通知が、意見表明権に触れていないなど、子どもの意見表明権を認めない文科省の姿勢は一貫していると主張。

 子どもの権利条約の観点が欠落していると批判しました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年4月27日 内閣委員会 第22号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今日は、最初に、与党提出のこども基本法案の提出者に御質問いたします。
 前回もお聞きした点ですけれども、こども基本法案と、子どもの権利条約、学校教育との関係についてであります。
 本会議で、こども基本法は学校教育も包含するのかという私の質問に、提出者の木原稔さんは、教育施策は憲法と教育基本法を頂点とする教育法体系の下で行われるものであることから、こども基本法には学校教育の内容に踏み込んだ規定を設けることはしなかったと答弁しました。
 一方で、先日、金曜日の質疑の答弁では、鈴木さんでしたか、子供施策の定義上、教育施策は子供施策に含まれる、子どもの権利条約の四原則に定めた本法案の子供施策に関する基本理念も学校教育に及ぶと言います。
 こども基本法は学校教育の内容に踏み込まないけれども、こども基本法の基本理念は学校教育に及ぶと言います。違いがよく分からないんですが、説明をいただけますか。
○木原(稔)議員 先日の本会議での私の答弁に対しての御質問をいただきました。
 御紹介いただいたとおり、子供施策の定義上、教育施策は子供施策に含まれることから、児童の権利に関する条約の四原則について定めた本法案の子供施策に関する基本理念もまた、当然、学校教育にも及ぶこととなるということを答弁させていただきました。
 その中で、じゃ、学校教育の内容は何かということとなると、学校教育における教育課程に関する事項のことであります。すなわち、学校教育法では、小学校、中学校、高等学校などの各段階について、それぞれ、教育の目的とそして目標というものが掲げられておりまして、これらに従って文部科学大臣が学習指導要領を定めることになっております。
 こうした事項について、まさに憲法と教育基本法を頂点とする教育法体系の下で行われるものであることから、こども基本法案の中で、学校教育の内容、換言すると、学校教育のカリキュラムに踏み込んだ規定は置かなかったということになります。
 以上です。
○塩川委員 学習指導要領、カリキュラムについては、こども基本法は踏み込まないということであります。そういうことでいいんですよね。
 その学習指導要領には、現状、子どもの権利条約については一言も書いていないということなんですが、この点は、それでいいのかなと思うんですが、いかがですか。
○木原(稔)議員 例えば、児童の権利に関する条約の発効をした際に、随分前ですけれども、平成六年に文部科学省が通知を出しておりまして、その通知は、一部ですけれども、ちょっと読み上げると、「学校教育及び社会教育を通じ、広く国民の基本的人権尊重の精神が高められるようにするとともに、本条約の趣旨にかんがみ、児童が人格を持った一人の人間として尊重されなければならないことについて広く国民の理解が深められるよう、一層の努力が必要であること。」とされているんですね。
 学校教育の内容自体は、先ほど申し上げたように、憲法と教育基本法を頂点とする教育法体系の中で定められているというところでありますけれども、その教育法体系の中でも、今申し上げた通知のように、児童の権利条約に関する条約の趣旨がこれまでも考慮されてきたところであり、そうした意味において、学校教育の内容に及ぶというふうに言えるのではないかなと私は理解しております。
○塩川委員 いや、説明がちょっともうひとつよく分からないんですけれども。
 もう一つの、この前の委員会での答弁ですけれども、子供施策の定義上、教育施策は子供施策に含まれる、子どもの権利条約の四原則に定めた本法案の子供施策に関する基本理念も学校教育に及ぶとあります。このこども基本法に掲げた子どもの権利条約の理念は学校教育に及ぶということなんですけれども、学校教育の内容にも及ぶということでいいんですか。
○木原(稔)議員 学校教育の内容には、だから、そこには踏み込まなかったという答弁をさせていただいたところでありまして。
 例えばですけれども、教育に対する何が内容で、何が内容でないかというところでいうと、これは事前に通告いただいていないですけれども、例えば、各学年に応じて、教科には教科書というものがあって、教科書というのは教科書検定制度というものがあります。例えば教科書検定の内容にまで、どの教科書を採択すべきだとか、この文章の記述はよくないとか、まさにこれは教育内容そのものでありますけれども、そういったことに踏み込むのではない。
 また一方で、例えば文部科学省が既にやっている政策でいうとGIGAスクール構想などがありますが、あれは、内容というよりも、教育の質の向上といいますか、ICTの発達した社会の中で、リモートでいかに子供たちにしっかりと教育していくか、また、このコロナ禍において学校の教育の質をいかに担保していくか。まさに、内容ではなくて教育支援そのもの。
 これは仮定の話ですけれども、もしGIGAスクール構想を文部科学省がやっていなかったとしたら、そうすると、私どものこども基本法などを通じて、憲法の二十六条の子供が教育を受ける権利、これを担保するために、質の向上を踏まえて、こういったGIGAスクール構想などを文部科学省に対して勧告をするというようなこともあるかもしれない。
 つまり、内容と内容でないものというのは、今具体例を例えば申し上げましたけれども、そういったことであります。
○塩川委員 子どもの権利条約の理念は学校教育の内容には及ばないという御答弁、学校教育の内容に、学習指導要領のことも例示としてお話がありました。
 この間、生徒指導提要の改訂作業が行われていまして、そこの中に、子どもの権利条約、四つの一般原則も書き込まれています。これについては、教職員のみならず、保護者、あるいは関係者、そして児童生徒についてもその理解が必要だとなっているわけであります。
 だとしたら、まさに権利の主体である児童生徒が子どもの権利条約について学ぶということが必要じゃないのか。そういった点で、学習指導要領が、現状、子どもの権利条約に触れていないというのはいかがか。今のこのこども基本法案のたてつけでいえば、そこについては踏み込まない、及ばないということになる、それでいいのかということなんですが。
○木原(稔)議員 こども基本法の「目的」の中には、「この法律は、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、」ということを、こども基本法の中にはしっかり児童の権利に関する条約の精神のことをうたわせていただいており、そういった今回の基本法を通じて、今回設置されることとなるこども家庭庁を通じて、その理念をしっかりとこども家庭庁の中で実現していただくということになっていくのだというふうに理解しております。
○塩川委員 率直に言って、まさに子供の権利を保障するといったことを考えたときに、その権利が何たるものかということを学ぶ機会なしには、それを自らのものとすることができないわけであります。自らの権利を学ぶということは、他者の権利を学ぶということであります。子供の権利を学ぶということは、大人にも権利がある、そのことの中で子供自身の成長も保障されるということだと思います。そういう点での、このこども基本法案のたてつけについては、これでいいのかということは率直に思わざるを得ません。
 何か一言ありますか。
○木原(稔)議員 私どもとしては、既存の教育法体系があり、そしてその横に、このこども基本法という、また別の子供に関する基本法という一つの体系ができ、それがお互いにグラデーションするところもありますが、何よりも、こどもまんなか社会の中で、子供にとって一番よい環境は何かということを追求していくために、こういったこども基本法案を作らせていただいたところであります。
○塩川委員 グラデーションというお話がありましたけれども、そうすると、教育基本法、教育法体系とこども基本法というのは、グラデーションはあるけれども一定のすみ分けをしているということですかね。
○木原(稔)議員 すみ分けということが正しい使い方かどうかはちょっと今すぐに判断できませんが、でも、ある意味、教育の内容に関することなのか、それとも教育支援に関することなのか、そういう意味でいうと、教育ということではつながっているという意味で、すみ分けということも言えるのではないかなと思います。
○塩川委員 教育法体系に、この子どもの権利条約の基本理念、四つの原則などが本当に及ぶのかといった点についての懸念があるということを申し上げておきます。
 それで、それとの関係で、文科省にお尋ねいたします。校則の問題であります。
 我が党は、校則問題のプロジェクトチームをつくっておりまして、この間、中高生や保護者の方や教職員にアンケート活動を行ってきております。三千人の声を寄せていただきまして、「校則に言いたい! 中高生・親・教師三千人の声」、こういった本も出して、その中身について紹介をしているところであります。
 たくさんのアンケートを寄せていただきました。やはり、校則の問題で多かったのが、一つは頭髪関係と服装の関係であります。
 頭髪関係では、先生に囲まれて無理やり髪の毛に黒スプレーをかけられたとか、先生に前髪を切られたとか、なぜツーブロックが駄目なのかなど、そういう声も寄せられていますし、服装関係では、靴下の色とか長さを指定をするとか、スカートの長さを指定をするとか、下着の色を指定をするとか、こういった話というのは、大臣、率直におかしいと思いませんか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 学校におきましては、その教育目標、教育目的を達成するために、必要かつ合理的な範囲内におきまして校則を定めることができる、こうされているというふうに承知をしておりますけれども、その校則の中身につきましては、絶えず、時代の状況ですとか社会の情勢、あるいは、子供たち、保護者の意向、地域の状況など、そういったものを踏まえながら、積極的に見直しをしていくということが大切かというふうに考えております。
○野田国務大臣 ちょっと通告でなかったので、個人的な意見になるかもしれませんが。
 私自身は、すごく厳しい校則の下で、小学校、中学校、高校を送りました。今、息子は本当に自由に、下着の色も靴下も関係ない公立の小学校に通っています。
 ただ、前回ここで議論になったときに、髪の毛を黒くするという、なぜそういうことをしなきゃいけなかったのかなというと、かつては、色の違いでやはり差別とかいろいろなことがあっちゃいけないので、配慮としてみんなと同じにしたという話もエピソードとして聞きましたが、うちの息子の場合はちょっと茶色いので、でも、やはり健康とか様々な育ちを考えたときには、これはちょっと我が家では厳しい話だな、そこはする必要はないんじゃないかなというような話をさせていただきました。
 それぞれ学校が責任を持って取り組んでいるので、子供の意見を聞いて、しっかりと、子供が本当に学校を楽しく過ごせるような、そして子供をしっかり守れるような校則というのを是非御検討いただければと願います。
○塩川委員 やはり、子供の生育過程もあるでしょうし、体調や健康状態なんかの影響も当然あったりするわけです。その上で、髪型とか服装というのは、やはりその人の基本的人権そのもの、ライフスタイルと深く関わるものだから、人間の尊厳に関わるものだ、ここをどう尊重するかということが教育の現場では求められていると思います。
 それで、子どもの権利条約の第二十八条第二項には、締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って適用されることを確保するための全ての適当な措置を取ると、校則の問題についても触れております。これを踏まえ、子どもの権利委員会の日本政府への勧告では、学校は児童の意見を尊重する分野を制限をしている、児童が学校において自らに影響を与えるあらゆる事柄について意見を十分に表明する権利を促進するための取組を、締約国、日本政府が強化することを求めておりました。
 しかしながら、この子どもの権利条約の日本政府の報告を見ると、学校においては、校則の制定、カリキュラムの編成等は、児童個人に関する事項とは言えず、第十二条一項で言う意見を表明する権利の対象となる事項ではないとしております。
 子供の意見表明権とは、子供自身に影響を及ぼす全てのことについて自由に意見を述べる権利があるということであります。校則の制定は子供に影響を及ぼす事項そのものであり、意見表明権の対象となることは明らかではありませんか。
○淵上政府参考人 児童の権利に関する条約に関します平成二十年、平成二十九年の我が国の政府報告におきましては、校則の制定に関して、学校においては、校則の制定、カリキュラムの編成等は、児童個人に関する事項とは言えず、第十二条一項で言う意見を表明する権利の対象となる事項ではないというふうにされておりますけれども、同じくこの報告書は、これに続きまして、しかし、児童の発達段階に応じて、校則の見直しに当たり、アンケートの実施や学級会、生徒会での討議の場を設けるなど、必要に応じて、児童の意見を尊重した学校運営を実施している旨の記述がされているところでございます。
 文部科学省としましては、校則の内容は日々の教育指導に関わるものでございまして、校則の制定や見直しの過程で児童生徒自身が関与するということは、自ら校則を守ろうとする意識の醸成につながり、身近な課題を解決するなどの教育的な意義があるというふうに考えておりますので、昨年六月の事務連絡におきましても、校則の趣旨や見直しの必要性などについて周知をいたしますとともに、先導的な取組事例をお示しをしているところでございます。
○塩川委員 十二条第一項をどういうふうに受け止めるのかという問題だと思うんです。
 例えば、ユニセフの子どもの権利条約ハンドブックでは、第十二条の子供の意見表明権について、このように紹介しています。子供は自分に関係のあることについて自由に意見を表す権利を持っています、その意見は子供の発達に応じて十分考慮されなければなりませんと述べています。
 子供の関わることについては、子供は自由に意見を表すことができる、関係者は子供の意見に耳を傾けよと求めているのが子どもの権利条約です。しかしながら、校則に係る子供の意見表明権を認めない文科省の立場というのが一貫をしている。
 そもそも、先ほど木原さんも紹介された一九九四年の事務次官通知の中に、校則は学校の責任と判断において決定されるべきもの、意見を表明する権利については、必ず反映されるということまでを求めているものではないとしていますが、ここには、子供は自分に関係のあることについて自由に自分の意見を表す権利を持っているということが触れられていないんです。
 自分に関係のあることについて、とにかく自由に自分の意見を表す権利を持っているということがこの意見表明権の第十二条ですけれども、何で事務次官の通知にはこの肝腎なことが触れていないんですか。
○淵上政府参考人 お答え申し上げます。
 児童の権利に関する条約の第十二条第一項に関しましては、先ほども申し上げましたように、校則の制定、カリキュラムの編成などにつきましては、児童個人に関する事項とは言えないので、十二条一項で言う意見を表明する権利の対象となる事項ではないというふうに解しているところでございますけれども、ただ、他方、校則の運用、見直しなどにおいて、子供たちの意見を聞くといったようなことは、先ほども申し上げましたとおり、教育的な意義も有するものでありますので、そうした取組をすることは望ましいというふうに考えているところでございます。
○塩川委員 校則について、子供が自由に意見を表す権利があるという子どもの権利条約の観点が欠落しているんじゃないのかということを申し上げて、質問を終わります。