【内閣委員会】子ども関連法案/子どもの権利擁護機関の設置と予算と人の抜本的拡充こそ

 こども関連法案について政府の姿勢をただしました。

 私は、政府が進める子どもデータベースについて、国は一元管理しないというが、自治体には情報を一元的に管理する仕組みを作るのかと質問。

 デジタル庁は、自治体が行う実証事業の計画の中には「一元管理という文言がある」と認めました。

 私は、さらに、自治体の情報管理システムの制度設計に国が関与するのかとただすとデジタル庁は「他の自治体へ横展開できるよう課題を整理する」と述べ、国が関与することを認めました。

 私は、行政機関が保有する個人情報は、公権力を行使して取得されたり、申請・届け出に伴い義務として提出されたりしたもので、目的外利用は禁止されていると強調。市民は個人情報の一元管理を拒否できるのか。どのような情報を収集、分析、対応策を行ったのか、本人が要求すれば開示するのかと質問。

 デジタル庁は、拒否や開示ができるとは答えず、歯止めも示しませんでした。

 私は、子どもの個人情報が「デジタルタトゥー」と言われるように刺青のように刻み込まれ、ラベリングされることを危惧する指摘もある。個人情報が本人の不利益になる利用がされないという保証があるのかが問われていると批判しました。

 私が、貧困、虐待、いじめ、不登校、自殺など子どもが置かれた深刻な実態について認識を質すと。

 岸田文雄首相は、「深刻に受け止めている」と答弁。子どもの貧困率が悪化していることや、OECD諸国との比較で子ども関連の支出が少ないことを認めました。

 私は、自民党政治が引き起こした問題が浮き彫りになったと指摘。こども家庭庁の設置は子どもの権利委員会の勧告を踏まえた措置かとただすと。

 岸田首相は「主体的に判断した」と述べるだけでした。

 私は、子どもの権利条約に基づいた施策を進める姿勢がないと批判。子どもの権利を擁護する子どもコミッショナーの設置と、予算と人の抜本的拡充こそ必要だと訴えました。

  岸田首相との質疑

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「議事録」

<第208通常国会 2022年5月13日 内閣委員会 第25号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今日は、子供のデータ連携、子供データベースについてお尋ねをいたします。
 デジタル庁にお聞きしますが、国が一元的に子供の情報を管理するデータベースを構築することは考えていないと述べておりますけれども、自治体が一元的に情報管理をする、そういう仕組みをつくるということはあるんでしょうか。
○内山政府参考人 お答えいたします。
 今、子供に関する情報データ連携によりまして、困難を抱える子供たちを早期に発見してニーズに応じたプッシュ型の支援につなげること、これが重要と考えておりまして、関係府省とともに、デジタル庁では、副大臣プロジェクトチームで検討しております。
 これに関しまして、デジタル庁では、関係省庁と連携をしまして、七自治体において実証事業を行うこととしております。個人情報に配慮の上、地方公共団体で、教育、保育、福祉、医療等の子供に関するデータを分野を超えて連携することで、真に支援が必要な子供や家庭における個別のニーズに応じたプッシュ型の支援を実施する際の課題等を検証したいと考えてございます。
 この実証事業におきまして、七自治体が参加しているわけでございますけれども、プッシュ型の支援につなげる目的の範囲内で、それぞれの自治体において、分散している情報を集約した上で分析するところもあるというふうに承知をしているところでございます。
○塩川委員 分散している情報を集約するところもあるということですが、今例にも挙げております実証事業の自治体の取組について、デジタル庁が出している自治体の実証事業計画概要を見ますと、東京都の昭島市や愛知県のあいち小児保健医療センターの計画概要に子供データの一元管理とあるのは、そのとおりですね。
○内山政府参考人 お答えいたします。
 今御指摘のありましたように、今出していただいている提案段階の計画には、一元的にという文言が、昭島市や愛知県の計画に書かれていることは御指摘のとおりでございます。
 ただ、これはまさに、これから事業の取組を進めていく上で、それぞれの自治体において、個人情報にも配慮しながらどのように扱っていくかというのは、これからそれぞれの自治体で検討を進めていただくものというふうに考えてございます。
○塩川委員 自治体レベルにおいては、子供データの一元管理、こういう方向で進めるということになっております。
 その場合、自治体の情報管理システムのこのような制度設計に国も関わっていくということでよろしいでしょうか。
○内山政府参考人 デジタル庁では、地方公共団体におきます住民記録あるいは介護保険といった基幹業務システムについて、国が定める標準仕様書に準拠したシステムに移行する統一、標準化の取組を進めているところでございます。
 こうした取組を踏まえながら、先ほどの子供に関する各種データの連携による実証事業につきましては、システムの制度設計等につきましては、当然、自治体が提案した事業計画に基づいて取り組むものとしてございます。ただし、今後、他の自治体へも横展開できますように、国といたしましても、本実証事業を通じまして、データ項目の標準化、データの相互運用性の確保、転居等における情報連携等の課題に関して、参加自治体とともによく整理をしてまいりたいというふうに考えています。
○塩川委員 横展開できるようにということで、自治体の子供データの一元管理に国も関与をしていくということになります。
 この子供データベースなどで扱われる行政機関の個人情報は、それぞれの行政目的に基づき収集、保有しているものです。目的外利用は原則禁止です。それは、公権力を行使をして取得をしたり、申請、届出に伴い義務として提供する、そういう意味でも非常に慎重に扱わなければならない、そういう情報だということであります。任意で出しているわけじゃない。
 そういう点でも、副大臣会議でも、住民税の所得データを直接使用することは地方税法で原則禁止とされている、また、学習成績はセンシティブな情報だ、個人の資質や能力に関わるので学校外への共有については相当な抵抗感がある、こういう意見も出されているところであります。
 このような子供データの連携に関して、個人情報の保護に配慮と言っておりますけれども、何を行うのか、本人同意というのは取るのか、市民は行政による個人情報の一元管理を拒否できるんでしょうか。
○内山政府参考人 今、実証事業、まさに取り組んでいるところでございます。
 実証に参加する自治体が安全に安心してこの実証事業に取り組めるということが大事だと思っていまして、そういう意味では、連携するデータ項目、それとか、連携する目的は何か、あるいはデータを連携する部署、どの部署からデータを出してどの部署で受け取るのかといったようなこと、そして、データ連携に関する責任を負う部署はどこか、あるいは、個別の支援を最終的には目的としているわけでございますけれども、データを分析する過程では仮名、匿名加工ということも考えられないかといったようなこと、こうしたような個人情報保護に配慮する観点から、必要なことについて、実証に参加する自治体とともに、参加自治体に共通するようなことがないか、今後、早急に整理をしていきたいというふうに考えてございます。
○塩川委員 ビッグデータでの仮名化、匿名化の話は別途あるんですけれども、個人の、子供のデータが一元的に管理をされる、そういう際にこういったことについて拒否できるのかといったことについてのお答えはありませんでした。
 また、お尋ねしますが、どのような情報を収集しているか、収集した情報でどのような分析、対応策を行っているのか、こういったことについて、本人の要求があれば開示をする、こういう仕組みというのを考えるんでしょうか。
○内山政府参考人 それぞれの自治体のデータの扱い方につきましては、今実証に参加している自治体につきましても、それぞれ自治体の持たれている個人情報保護の審議会への諮問、あるいは個人情報保護条例の改正などの対応もされながら対応しているというふうに承知をしています。
 そうした意味で、先ほど、様々なデータを例えば一時的に分析のために収集をするということはあり得るというお答えをしましたけれども、それについて、それを一元管理というのかというのもございますし、そうした先生御懸念のようないろいろな御心配についても、これから実証事業の中でよく整理をさせていただきたいというふうに思ってございます。
○塩川委員 具体的な歯止めについての方向性も示されていないということであります。
 教育のデータ、子供データベースが、デジタルタトゥーと言われるように、非常に、入れ墨、刻み込まれてしまう、嫌なラベリングとなるような可能性、危惧という声というのもあるわけです。
 個人情報が本人の不利益になるような利用がされないという保証があるのかということが問われています。本人が望まない個人情報がどういう扱いになるのか明らかにされていない、そういう中で進んでいるということに強い危惧を覚えるものであります。個人情報で求められているのは、個人情報の利活用に突き進むことじゃなくて、自己情報コントロール権を始めとしたプライバシー権の拡充こそ必要であります。
 大臣にお尋ねいたします。
 困難を抱える子供たちのために求められているのは、子供施策の予算の抜本的拡充と人員体制の強化であります。基本方針にあるデジタル基盤を整備して行うプッシュ型の支援というのは、子供施策の現場の専門職員を増やさず、逆に人減らしのツールにならないのかという懸念も覚えるわけですが、この点、いかがお考えでしょうか。
○野田国務大臣 お答えいたします。
 昨年末に閣議決定した基本方針において、待ちの支援から、必要な子供や家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換すること、子供に関する教育、福祉等のデータ連携を進め、支援に活用することを掲げています。
 今、支援が必要な子供や家族ほど、SOSを発すること自体が困難であったり、相談支援の情報を知らないなどの課題があるわけです。施設型、来訪型の支援に来ることを待っていては、支援が必要な子供や家族にアプローチすることは難しいと私は考えています。
 そのため、地方自治体において、関係部局に分散管理されていることが多い子供に関する教育、福祉等のデータを連携させて、支援が必要な子供を発見し、プッシュ型の支援、アウトリーチ型の支援につないでいくことが必要であると考えています。その際、教育や福祉等のデータは国民究極のプライバシーであり、個人情報保護法令との整合性に加えて、国民の意識に沿った検討が必要だと考えています。
 こども家庭庁において、現在デジタル庁で実施している調査研究や実証事業の成果も踏まえつつ、個人情報の扱いやガイドライン等の策定も含めて、国民の理解を得ながら、データ連携の在り方についてしっかり検討を進めてまいります。
○塩川委員 お答えはありませんでした。
 やはり、教職員やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、児童相談所職員など、子供に関わる専門職員を本当に増やすべきだ。この間、文科省がやっているようなSCやSSWについては目標を達成できなかったという経緯もあります。そういった点でも、自治体への財政支援もしっかり行うことを含めて本格的に前進をさせる、こういった取組こそ行うべきだ。それにふさわしい国の財政措置を求めて、質問を終わります。


<第208通常国会 2022年5月13日 内閣委員会 第25号>(岸田首相との質疑)

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 こども家庭庁設置法案について、岸田総理にお尋ねをいたします。
 今、子供の貧困は約七人に一人、一人親世帯の半分が貧困状態であります。二〇二〇年度では、虐待の相談件数は二十万件、不登校も二十万件、いじめの認知件数は五十一万件に上り、いずれも大幅に増加をしています。十代の死因で自殺が最多を占めるのは、G7で日本だけ。
 総理、子供の置かれている現状が深刻だという認識をお持ちですか。
○岸田内閣総理大臣 昨日ですが、現場の第一線で、子育てを含め、社会の様々な方々の支援を行っている民生委員、児童委員の皆様方と車座対話というのを行わせていただきました。その中で、今、新型コロナ禍の中、子育て世帯が孤立をしている、また、児童虐待、いじめ、さらには子供の貧困など、子供をめぐる課題が一段と複雑化している、そして多様化している、こうした様々な具体的な例を挙げて、指摘を受けてきました。
 こうした状況を考えますときに、人は国の礎でありますので、様々な深刻な状況、これはあってはならないことであると深刻に受け止めている次第であります。
○塩川委員 深刻に受け止めているということですが、子供の相対的貧困率、直近の二〇一八年で一三・五%ですが、しかしながら、この貧困率を明らかにしている最初の年となっている一九八五年は一〇・九%です。つまり、この三十年余りで子供の相対的貧困率は、一〇・九から一三・五、改善どころか悪化しているというのが実情ではありませんか。その認識をお持ちですか。
○岸田内閣総理大臣 子供の貧困率、今手元に資料がありますが、平成二十七年で一三・九%、平成三十年が一三・五%、国民生活基礎調査ということであります。こうした数字、これは重く受け止めなければならない数字であると認識をいたします。
○塩川委員 さらに、今、コロナ禍で、格差の拡大が強く懸念をされている。まさに貧困と格差が拡大をする、こういう中での子供の貧困の深刻さというのが改めて問われているときであります。
 三十年のこの経緯を見ても、相対的貧困率が改善どころか悪化をしたままだ、そこにそもそも、自民党政治の下、長期間放置をしてきたということが問われていると思います。
 その期間に、子どもの権利条約の取組もあったはずであります。子どもの権利条約の批准から約三十年、子どもの権利条約の批准に当たって、政府は、子どもの権利条約の内容について、現行国内法制によって既に保障されているとしてきました。そのことが、OECD諸国の中でも子供関連の社会支出が少ないなど、子供施策の遅れを生み出してきたのではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 少子化対策あるいは子育て世帯への支援など、子供に関する施策については、これまでも政府として様々な取組を進めてきました。保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化、高等教育の無償化、あるいは、地域社会による子育て支援、多子世帯への支援を含む経済的支援、あるいは不妊治療の保険適用の開始などの妊娠、出産への支援、こうした様々な取組を進めてきたところです。
 そして、我が国の家庭関係社会支出の対GDP比、二〇一九年度で一・七三%、これは、米国の〇・六一%は上回るものの、OECD平均二・一との比較においては低い、こうした指摘があるのは十分承知をしています。
 いずれにせよ、これまでのこうした取組をしっかりと大事にしながら、今後とも、昨年策定した、こども政策の新たな推進体制に関する基本方針、これに基づいて政策を充実させていきたいと考えております。
○塩川委員 OECD諸国の中でも子供関連の社会支出が少ないということをお認めになった、そこに、自民党政治の果たしてきた問題、このことが浮き彫りとなっているということを正面から受け止めるべきであります。
 児童扶養手当の問題も先日取り上げましたが、母親の就労の大半が非正規雇用、低賃金となっている現状があるのに、就労による自立支援を名目にして、児童扶養手当の減額や一部支給停止規定を設けるなど、子育て世帯支援に逆行することを行ってきた、このことへの責任が厳しく問われていると思います。
 そういった点で、こども家庭庁設置法案において、子どもの権利委員会の勧告を踏まえて行った措置というのはあるんでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 児童の権利委員会から、二〇一九年の政府報告審査の総括所見として、条約の実施に関連する全ての活動を調整するための調整機関の設置要請などの勧告があったこと、これは承知しておりますが、他方で、今回のこども家庭庁設置法案については、少子化が深刻化し、また、児童虐待、いじめ、子供の貧困など、子供をめぐる課題は一段と複雑化する中で、我が国として、こどもまんなか社会の実現に向けて専一に取り組む独立した行政組織が必要である、こうしたことを主体的に判断したものであると思います。
 いずれにせよ、児童の権利条約については、その趣旨も踏まえて、政府として、子供政策、主体的に進めていきたいと考えております。
○塩川委員 勧告は承知しているけれども、こども家庭庁の設置は主体的に判断したものだ、つまり、子どもの権利条約に基づき子供施策を進める、こういう姿勢が感じられないということがうかがえるわけであります。子どもの権利条約の内容について、現行国内法制によって既に保障されているという政府の立場が変わっていない、その点が問われているということを指摘しなければなりません。
 だからこそ、政府から独立した立場で政府を監視、評価するとともに、子供の意見表明を代弁をし、個別の事案の相談・救済機関として、いわゆる子供コミッショナー制度が必要だと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。
○岸田内閣総理大臣 子供コミッショナーにつきましては、先ほども議論がありました。また、これまでも委員会で様々な議論が行われてきたと承知をしております。
 政府としては、こども家庭庁を創設することによって子供の権利利益の擁護に取り組んでいく方針でありますが、その際に、第三者機関であるこども家庭審議会等で、子供やあるいは子育て当事者、また有識者等の意見もしっかりと承り、公平性、透明性を確保しつつ、権利利益の擁護を図りながら、最善の利益を実現できるよう政策を進めていきたいと思います。
 あわせて、子供コミッショナー、子供の意見をしっかりと聞く、こうした観点から申し上げるならば、審議中の児童福祉法改正案においても、意見表明等支援事業、こうした新たな事業を設けることで対応していきたいとも考えております。
 以上です。
○塩川委員 コミッショナー制度についての取組の話はありませんでした。
 国連子どもの権利委員会は、独立した監視機関の仕組みについて、子供の権利を促進し、保護するものとして、条約締約国の中核的な義務として位置づけられている、このことも参考人質疑の中で参考人から述べられていたことを重く受け止めるべきであります。
 子供は権利の主体ではありますけれども、大人と同じような自己決定権が認められているわけではありません。だからこそ、自由に意見を表明し、反映される権利を保障する仕組みとして子供コミッショナーというのは必要不可欠ではないのか、このことを改めて総理に問いたいと思いますが、いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、子供コミッショナーについては様々な議論が行われてきました。
 しかし、子供の声をしっかり聞くべきではないか、こういった指摘は大変重要な指摘だと受け止めた上で、その子供の声を、そして子育て世帯等当事者の方々の声をしっかり受け止める仕掛けとして、こども家庭審議会ですとか、あるいは児童福祉法改正案における意見表明等支援事業を新設するなど、こうした取組を政府としては用意をしていきたいと考えております。
○塩川委員 子供の意見表明権を保障する子供コミッショナーの設置、そして、子供を支える予算の抜本的拡充と、そのための人員の大幅増員、このことを強く求めて、質問を終わります。