関東地方の主な米軍・自衛隊施設に関する2023年度概算要求について

 関東地方の主な米軍・自衛隊施設に関する2023年度概算要求の内容が明らかになりました。いくつかのポイントを記すと

1)予算に関する防衛省の情報開示が後退している。これまで防衛省概算要求パンフレットに記載していた事業ごとの金額が、今回は記載されなくなった。

 これに合わせて、米軍・自衛隊施設に関する概算要求についても、従来は金額を書面で提出していたのに、今回は口頭で説明するのみとなった。

 年末の国家安保戦略3文書改定を踏まえて「5年以内の防衛力の抜本的強化を図る」ため、概算要求段階では金額を示さず事業項目だけを表示する「事項要求」が多数掲げられていることが背景にある。

 大軍拡の実態を覆い隠そうとするもので看過できない。

2)引き続き空自入間基地に関する予算要求が大きい。
(1)C-2輸送機関連。施設整備費として、誘導路の改修(6億円)、燃料貯蔵施設の新設(25億円)、整備格納庫の新設(23億円)、整備場の新設(15億円)、火薬庫の新設(2億円)、C-2対応のフライトシミュレーター、消音装置設置のための調査工事費2千万円を計上。1機のC-2取得費に256億円。

(2)滑走路側と災害対処拠点地区を結ぶため、西武池袋線をアンダーパスする地下連絡道路の整備に5億円。

(3)電子作戦部隊(航空戦術教導団電子作戦群)の強化。電波情報収集機(RC-2)1号機の機体構成品の取得18億円。3号機の搭載装置の取得47億円。1号機はすでに配備。今後の配備予定は、2017年度に2号機、2018年度に3号機。

(4)宇宙設置型光学望遠鏡(CDA衛星)関連施設の設計に係る経費5千万円を計上。入間基地は、宇宙作戦群のある府中基地の近傍であり、衛星地上局を設置するスペースがあるためという。

詳細は以下の通りです。

(1)2023年度概算要求について

1.米軍施設(横田飛行場、所沢通信施設、大和田通信所、厚木海軍飛行場)に係る概算要求額とその内容
横田飛行場提供施設整備 歳出ベース15億6000万円 契約ベース67億7500万円
消防署の老朽更新、倉庫(給油機器)、整備用格納庫(C130)の老朽更新、ユーティリティ(給水・給電・給汽)。
厚木海軍飛行場提供施設整備 歳出ベース8億3900万円 契約ベース21億6200万円
汚水排水施設(調査)、雨水排水施設(調査及び工事)、車両工場改築、ユーティリティ(給電・給水)。
所沢通信施設及び大和田通信所に関係する経費は要求していない

 

2.陸自駐屯地(朝霞・大宮・相馬原・新町・吉井・宇都宮・北宇都宮・勝田・土浦・霞ヶ浦・古河・朝日・習志野・木更津)及び空自基地(百里・熊谷・立川・横田・府中・入間)における「施設整備費」に関する概算要求額とその内容
朝霞駐屯地 約5億円
構内排水設備の整備(公共下水接続の工事)。
北宇都宮駐屯地 24億円
学生訓練教場の老朽更新14億円。ボイラー施設の老朽更新10億円。
勝田駐屯地 2億円
隊舎改修(空調)。ボイラー施設の老朽更新2億円。
土浦駐屯地 (*)
車両整備場の新設に伴う調査。
霞ヶ浦駐屯地 11億円
ボイラー施設の老朽更新。
習志野駐屯地 33億円
降下塔の整備29億円。ボイラー施設の老朽更新4億円。
木更津駐屯地 約76億円
陸自オスプレイ機体整備用格納庫の新設。
百里基地 「事項要求」
熊谷基地 2億円+「事項要求」
浴場の新設。
横田基地 1億円
局舎等の改修(部隊機材入れ替えに伴う空調・電気等)。
府中基地 「事項要求」

府中基地の概算要求地元説明資料

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入間基地 約86億円+「事項要求」

誘導路の改修6億円・燃料貯蔵施設の新設25億円・整備格納庫の新設23億円・整備場の新設15億円・火薬庫の新設2億円(いずれもC2関連)。局舎等の改修(*)。地下連絡道の整備(滑走路と災害拠点施設を結ぶアンダーパスの道路)5億円。調査工事(C2関連のフライトシミュレーター・消音装置)2千万円。

◀入間基地の概算要求地元説明資料

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大宮駐屯地、宇都宮駐屯地、新町駐屯地、吉井分屯地、宇都宮駐屯地、古河駐屯地、朝日分屯地、立川基地はなし。
なお、金額欄の(*)は、防衛省が「予定価格が類推されることから提示不可」としたものを指す

 

3.陸上総隊隷下の部隊(司令部および司令部付隊、第一空挺団、第一ヘリ団、中央即応連隊、特殊作戦群、中央特殊武器防護隊、対特殊武器衛生隊、国際活動教育隊、中央情報隊、システム通信団、水陸機動団、電子作戦隊)及びその他の主な部隊に係る概算要求額(装備品等)とその内容
陸上総隊司令部及び司令部付隊(朝霞)
計上事業なし
第一空挺団(習志野) 「事項要求」
第一ヘリ団(木更津) 「事項要求」
中央即応連隊(宇都宮) 「事項要求」
特殊作戦群(習志野) 「事項要求」

中央特殊武器防護隊(大宮)
計上事業なし
対特殊武器衛生隊(三宿) 約0.1億円
生物剤対処用衛生ユニット用消耗品。
国際活動教育隊(駒門)
計上事業なし
中央情報隊(朝霞)
計上事業なし
システム通信団(市ヶ谷) 166億円
システムネットワーク管理機能の整備(5年分)。
水陸機動団(相浦) 「事項要求」
電子作戦隊(朝霞) 「事項要求」
大井通信所(ふじみ野市) 6100万円
保全警備システムの保守整備300万円、通信所警戒監視要員(役務)の確保3600万円。施設の整備2100万円。
防衛医科大学校(所沢) 約158億円+「事項要求」
患者医療費39億円、学校機能維持費61億円、インフラ整備費(医学生舎建替え等)29億円、医療備品整備27億円、防衛医学研究センター0.3億円。
航空医学実験隊(入間) 約2.5億円
航空医学用器材等の維持費2.4億円。航空医学用消耗品の取得0.1億円。
航空機動衛生隊(小牧) 0.5億円
人体型の高度救急処置シミュレーターの取得、更新。
航空戦術教導団電子作戦群(入間) 66億円
電波情報収集機(RC-2)1号機の機体構成品の取得18億円。3号機の搭載装置の取得47億円。
陸自化学学校(大宮) 284万円
学校教育に必要な消耗品、教材等の経費。