【倫理選挙特別委員会】立候補・選挙運動に異常な規制/参政権の保障へ見直し必要/意見表明

「しんぶん赤旗」12月13日・5面より

 選挙運動などをテーマに、7日の衆院倫理選挙特別委員会で自由討議が行われ、日本共産党から塩川鉄也議員が会派を代表して意見を表明しました。

 塩川氏は、日本の公職選挙法が立候補や選挙運動にさまざまな規制を設けているのは、民主主義や国民の参政権の保障という観点から重大な問題だと指摘しました。

 巨額の供託金が被選挙権の行使を妨げているとして、供託金の引き下げや廃止を提起。若者の政治参加を保障する上で被選挙権年齢の引き下げも必要だと強調しました。

 選挙運動を行える期間が定められ、それ以外は禁止されているのも国際的に見ればまれな制限だと見直しを要求。選挙運動規制があっては有権者が十分に政策を比較できないと指摘しました。

 日本のように戸別訪問を禁止している国はほとんどないと戸別訪問禁止の廃止を求めました。

 選挙期間になると候補者氏名が入ったビラ、ポスターが極端に減る配布規制を見直し、候補者討論会が行えるようにするべきだと主張。国民が主権者として自らの代表を選び、政治に積極的に参加していくため、選挙に気軽に多面的に参加できるよう公選法を抜本的に見直す必要があると強調しました。

 また、塩川氏は有権者の投票機会を奪わないように、激減している投票所を増やし、投票時間の繰り上げは行わないようにすべきだと強調。選管が投票箱を持って施設や自宅などに出向く「巡回投票」も提案しました。

私の意見表明・発言は、以下の通りです。


 日本共産党を代表して、意見表明を行います。

 日本の公職選挙法は、立候補や選挙運動にさまざまな規制を設けています。民主主義や国民の参政権の保障という点で、重大な問題です。選挙権、参政権は、国民主権・議会制民主主義の根幹をなすものです。民主主義の土台を決める選挙制度は、国民の参政権にかかわる問題であり、十分な議論と国民の合意を得ていくことが必要です。

 この間の選挙制度改革において、一部の政党で談合し多数の力による押し付けが行われてきており、わが党は、全党全会派参加の下での協議とともに、主権者国民に開かれた議論を行うことを求めてきました。今回の自由討議はその1歩だと思いますが、当委員会に委員がいない少数会派も含め、継続的に議論ができるよう要望します。

(1)選挙運動の自由の拡大
 国民の参政権は、候補者を応援し投票する権利だけでなく、自ら候補者となり政治に参加する権利も当然含まれています。

●被選挙権年齢の引き下げ
 2016年の参院選から、18歳以上の若者も投票と選挙運動を行えるようになりました。しかし、18歳からの投票と選挙運動だけにとどまり、被選挙権の引き下げは盛り込まれませんでした。

 選挙権と被選挙権は一体として考えるべきであり、若者の政治参加を保障する上でも被選挙権の引き下げが必要です。

●供託金の引き下げ、廃止
 巨額の供託金制度が、「カネを持っている人でなければ選挙に出られない」立候補阻害要因として、主権者国民の被選挙権の行使を妨げていることは、明らかです。

 2020年には、自民党などが、町村議会議員選挙に供託金を導入しました。現在、町村議のなり手不足が深刻となっているにもかかわらず、立候補に新たなハードルを設けるというのは筋が通りません。

 そもそも供託金制度は、成り立ちそのものが民主主義に逆行する時代遅れの制度です。

 また、国際的に見て、こんなに高い供託金を取っている国はありません。制度そのものがない国が多く、廃止した国や、制度があっても数万円です。

 巨額の供託金は引き下げ、廃止へ進まなければなりません。

●選挙運動期間の見直し
 日本は、選挙運動を行える期間が定められ、この期間以外は、選挙運動が禁止されています。これは国際的にみても稀な制限です。本来、「選挙運動」は「政治活動」の一部であり、日常的に行うものです。選挙運動期間の見直しが必要です。

●選挙運動規制の見直し 戸別訪問、ビラ・ポスター、候補者討論会
 そもそも、選挙運動規制があっては、有権者が十分に政策比較できるとは言えません。
 誰が立候補し、どのような公約を出しているのか、有権者に候補者情報がきちんとわたることが必要です。そして、有権者が、自分がいいと思った候補者の支持を周囲に広げていく活動が保障されなければなりません。

 日本のように戸別訪問を禁止している国はほとんどありません。日本では立候補者だけでなく、支持者による戸別訪問も禁止されており、有権者と戸口で質疑や討論することもできません。「戸別訪問の禁止」は廃止しなければなりません。

 2013年の参院選からは、インターネットを利用した選挙運動が可能となり、WEBやSNSを利用して、投票を訴える選挙運動ができるようになりました。一方、実社会では、選挙期間になると候補者氏名が入ったビラ・ポスターが極端に減るといった配布規制をはじめ、立会演説会の禁止など、従来と変わらない規制や禁止規定が依然として残っています。ビラ・ポスターの規制を見直し、候補者討論会などが行えるようにする必要があります。

 国民・有権者の自由な選挙活動を妨げている規制をなくし、国民が主権者として、自らの代表を選び、政治に積極的に参加していくため、選挙に気軽に多面的に参加できるよう、公職選挙法を抜本的に見直す必要があります。

(2)投票機会の保障、投票環境の整備
 国民の参政権行使を保障するには、投票機会の保障が不可欠であり、これなしに選挙権の保障はありません。

 また、投票や開票に不正があっては、選挙無効になりかねず、ひいては選挙権を行使できなくなることになります。選挙権行使の保障と選挙の公正性の確保を同時に追求し、投票機会を最大限保障することが必要です。

●投票所を増加、閉鎖時間の繰り上げをやめさせる
 この25年間で、投票所は6770箇所も減り、3分の1の投票所が閉鎖時間を繰り上げ20時前に投票を締め切っています。

 期日前投票が増えているからと言って、選挙当日の投票環境を後退させたままでよいとはなりません。有権者の投票機会を奪わないよう、投票所そのものを増やし、閉鎖時間の繰り上げを行わないようにする必要があります。

●投票機会の保障 学生らの住民票移動の周知徹底
 国政選挙は選挙権年齢以上の日本国民が選挙権を有しているにも関わらず、投票できない事態が生じています。この間、一部改正をはかりましたが、今後も、不在者投票、在外投票、洋上投票など、投票機会の保障をはかる必要があります。

 住民票を異動せずに遠方に進学している大学生らの投票が認められないことが問題となっています。住民票異動の周知徹底は当然であり、当時の総務大臣も「周知したい」と表明しました。選挙権を保障する立場から、選挙権を有していても権利行使できない事態を解消するための協議を、各党に呼びかけます。

●障害者の投票環境の改善 バリアフリー化、巡回投票など
 また、障害をもつ方、高齢の方が「投票所が遠い」「バリアフリー化されていない」などの理由で投票所へ行きにくいという問題もあります。外出が困難な有権者の投票行動を制約させることがないよう、投票環境の改善をすすめる必要があります。

 コロナ禍のような感染症拡大時においても、感染者を含めすべての有権者の投票権を保障することが、大原則です。自民党などは、2021年にコロナの「特例郵便投票」法を押し通しましたが、知っている者だけが使える制度と言わざるを得ない状況であり、問題の多い制度です。感染症拡大のリスクを減らし、投票権を保障する方法を考えなければなりません。

 日本共産党は、選挙管理委員会が立会人と一緒に、投票箱を持って車に乗り、施設や自宅など要望がある場所に行くことで投票ができる「巡回投票」を提案します。この方法であれば点字投票や代理記載も可能とすることができます。

●経費と従事人員の確保
 この間、選挙管理委員会の開票不正、選挙執行上のミス増加、現憲法下でなかったことが立て続けに起こっています。選挙の正当性・公正性を担保するためにも、管理・執行・啓発にかかる経費と選挙事務に従事する人員は十分に確保すべきです。

(3)選挙制度改革
 選挙運動の課題を考える際、選挙制度そのものを切り離すわけにはいきません。

 民意を正確に反映した国会での徹底した議論を通じて、国の進路を決めることこそが、国民主権の議会制民主主義です。

小選挙区制の廃止、比例代表中心の選挙制度へ
 現行小選挙区制の最大の問題は、第1党が4割の得票で6割~8割の議席を獲得し、半数に上るいわゆる「死票」を生み出すことです。

 民意と議席に著しい乖離を生み出す小選挙区制は廃止すべきです。

 「私たちの声が届く国会を」との国民の声にこたえ、参政権の点からも、選挙制度を抜本的に見直し、多様な民意が正確に反映される比例代表を中心とした選挙制度にすべきです。

●定数削減反対
 国会議員定数のあり方は、国民の代表をどう選ぶかという選挙制度の根幹をなす問題です。

 定数削減によって、国民の代表で構成される国会の政府監視機能が低下することは明らかであり、切り捨てられるのは主権者・国民の声です。「理由も根拠も見いだせず、これ以上の削減は難しい」という2016年の結論を無視し、定数を削減するなど、断じて許されません。

 以上、意見表明を終わります。


【政治資金(政治とカネ)】

 選挙運動と「政治とカネ」の問題は、切り離せません。

 先月、前の寺田稔総務大臣が、選挙や政治資金の収支報告における領収書偽造の疑惑、地方議員らに報酬を支払った疑惑などにより、更迭となりました。安倍政権時には、河井元法務大臣夫妻の大規模選挙買収事件、安倍総理の「桜を見る会」前夜祭の有権者買収疑惑が発覚しており、選挙犯罪である「買収」の問題を放置することは許されません。

 寺田前大臣は、亡くなった方を後援会の会計責任者として記載していた違法行為、身内への資金の還流や脱税の疑惑なども発覚しています。空白領収書の問題は、岸田総理の選挙収支でも発覚しています。プロの目を通すとして導入された「政治資金監査」制度が、まったく意味をなさないことを証明しています。収支報告書は、そのまま、速やかに公開すればいいのであって、「政治資金監査」制度は必要ありません。

●パーティー券購入も含め企業・団体献金の全面禁止
 秋元担当副大臣のカジノ汚職事件、吉川農水大臣の鶏卵汚職事件など、カネの力で政治を歪めた問題が後を絶ちません。

 そもそも、企業の政治献金は、本質的に政治を買収する賄賂です。国民が、自ら支持する政党に寄附することは、主権者として政治に参加する権利そのものです。選挙権を持たない企業が献金することは国民主権と相いれず、国民の参政権を侵害するものです。

 1990年代の「政治改革」は、「廃止の方向に踏み切る」といいながら、「政党支部への献金」「政治資金パーティー券の購入」という二つの抜け道により、企業・団体献金を温存してきました。巨額の政治資金パーティー収入は、献金に比べ、名前や金額を公表されにくく透明度が低いことも問題です。

 寺田氏の後を継いだ松本剛明総務大臣の資金管理団体が、会場の収容人数を大幅に上回るパーティー券を販売し、「寄附」隠しの疑いがもたれています。事実を明らかにしようとしない松本大臣の姿勢は、前任者に引き続き、大臣の資質が問われます。

 政治の歪みをただし、国民主権を貫くためにも、企業・団体献金の全面禁止がどうしても必要です。パーティー券購入も含め企業・団体による寄附の禁止、分散寄附の禁止、収支報告書公開の迅速化、罰則の強化などを行うべきです。

●政党助成金廃止
 国民は、自らの思想、政治信条に従い、支持政党に寄附する自由と権利をもっており、政治資金の拠出は、国民の政治参加の権利そのものです。これに反するのが政党助成制度であり、「思想・信条の自由」や「政党支持の自由」を侵かす、憲法違反の制度です。

 90年代の「政治改革」において、「企業・団体献金の廃止」と引き換えという名目で導入しましたが、現在も「企業・団体献金も、政党助成金も」”二重取り”が続いています。95年の法施行以降、国民に1人当たり250円を負担させ、毎年約320億円もの税金が、日本共産党以外の各政党にばらまかれています。

 重大なことは、この制度が、きわめて深刻な形で「政党の堕落」をまねいていることです。多くの政党が運営資金の大半を政党助成金に依存し、政党助成金目当てに新党の設立と解散が繰り返されてきました。

 政党は、国民の中で活動し、国民の支持を得て、国民から「浄財」を集め、活動資金をつくることが基本です。税金頼みの「官営」政党では、カネへの感覚が麻痺し、庶民の痛みがわからなくなっているのです。

 民主主義を壊すきわめて「有害」な税金の使い方である政党助成制度は、廃止するしかありません。

 以上、発言を終わります。

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