【議院運営委員会】会計検査院検査官候補の所信聴取と質疑

 会計検査院の検査官候補者である田中弥生検査官に対する質疑。

 会計検査院が行った東京オリパラ大会やPFI事業の検査では、国の施策の問題点を指摘している。

 一方、国交省統計の二重計上を見過ごしたこと、独立機関でありながら国の定員合理化計画に従う中で調査官の定員が減少しているのは問題だ。


塩川氏「統計法基づく役割を」/仁比氏「予備費の検査に問題」/衆参議運委/検査官任命で質疑

「しんぶん赤旗」1月29日・Web版国会質問より

 衆参議院運営委員会は26日、田中弥生検査官の任命同意に関する質疑をそれぞれ行いました。日本共産党の塩川鉄也衆院議員は、国土交通省による統計の書き換え問題を取り上げました。

 塩川氏は、同問題で共産党の宮本岳志衆院議員が昨年2月の総務委員会で、会計検査院は国交省の二重計上を分からなかったとしているが、「分からなかったということですむのか」と指摘したことを示し、「どう受け止めるのか」とただしました。

 田中氏は、「特定の統計調査の集計方法が、統計にどういう影響があったのかという分析はしておらず、二重計上は把握していない」と答えました。

 塩川氏は、統計法は「公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報」と規定しているとして「同法に基づく行政目的が達成したかどうかまで踏み込むことが会計検査院の本来の役割」と述べました。

 仁比聡平参院議員は、使い道があらかじめ決められていないにもかかわらず巨額が計上されるようになった予備費について質問。積算根拠も明らかにしていない、国会への説明も非公開などの問題点をあげ、「財務省は、予備費は当初予算、補正予算に溶け込んで執行されているとまで述べている。執行されている予備費の検査はできるのか」と質問。田中氏は、「区分管理されたものを検査している」などと答弁。仁比氏は、「区分管理は一部にすぎず、大問題だ。これを繰り返せば憲法や財政民主主義を没却するものだ」と主張しました。


「議事録」

<第211回通常国会 2023年1月26日 議院運営委員会 第3号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 「公的統計の整備に関する会計検査の結果について」に関連して、国土交通省による統計の書換え問題について、まずお尋ねします。
 我が党の宮本岳志議員が総務委員会において、国土交通省の側から二重計上とは明確に言っていないが、会計検査院としてはそれでごまかされてよいのかという問題は残る、合算処理に限らず、まさに欠測値の補完措置を行っていたことは既に国土交通省から回答されているわけであり、会計検査院は分からなかったということで済むのかと指摘をしました。
 この指摘にどうお答えになりますか。
○田中参考人 統計に関する御質問と承りました。御質問ありがとうございます。
 本検査は、五十の基幹統計を含む二百九十八の統計を対象に検査を行いました。計画に基づいて集計が行われているのかということに主に注目をして、この二百九十八について横断的に検査を行った次第です。
 したがいまして、特定の統計調査の集計方法が統計そのものにどういう影響があったのかというような統計処理に関する分析については行っておりません。したがいまして、二重計上になっていたことについては把握しておりません。
 しかしながら、過去の調査周期、つまり、一月ごとに集計をしなければいけなかったものを、三月分、三月目のところにまとめて集計するなどの状況につきましては、検査報告の中で掲記をしている次第です。
○塩川委員 統計そのものの役割から出発して考えたときに、統計法は、公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報と規定をしております。統計のゆがみは放置されてはなりません。
 統計法に基づく行政目的が達成したかどうかまで踏み込むことが会計検査院の本来の役割だとの指摘もありますが、どう受け止めますか。
○田中参考人 国土交通省が、私どもの指摘を受け、また一連の事件を受けまして、現在、集計方法の見直しをしている最中でございます。見直しの処置を講じておりますので、それを見守っていきたいと存じます。
○塩川委員 東京オリパラ大会検査報告書についてお尋ねします。
 オリパラ大会経費の中で国が負担した経費が三千六百四十一億円であり、組織委員会が公表した経費よりも約二千八百億円も多かったことを明らかにしました。オリパラ組織委員会の報告では国費がどのように使われたのかが分からないというずさんさもあらわになったわけです。
 そのため、会計検査院は、国が政府保証を行うような大規模イベントについては、国の負担経費やイベント全体の経費の総額をあらかじめ明らかにする仕組みの整備を求めましたが、国はどのような対応をされたでしょうか。
○田中参考人 東京オリンピック・パラリンピックに係る検査報告を昨年十二月に国会に提出させていただきました。
 この報告の中で、国の決算情報を確認できなかったため、それを開示すること、また、国が政府保証を行うような大規模イベントについては、経費の総額をあらかじめ明らかにするように所見を述べております。また、その仕組みについても、今御指摘ありましたけれども、所見に述べております。
 会計検査院としては、同じようなイベントが行われた場合に、我々の所見が反映されるのかどうかについて、フォローアップをしていきたいと存じます。
○塩川委員 オリパラ組織委員会をめぐっては、高橋元理事の贈収賄事件ですとか、また、五輪テスト大会独禁法違反の疑いなど、問題が山積をしております。民間団体に国費を入れた以上、国はその部分をしっかりと把握する必要がある、国にはその部分について取りまとめる枠組みをつくる責任があるのではないか、このことを改めて求めることが必要だと思いますが、その点はいかがでしょうか。
○田中参考人 まず一つは、大会組織委員会に渡された国費につきましては、共同事業とパラリンピックの事業については一部国の補助金が入っておりまして、これは検査をしておりますが、掲記に値するような内容については見当たりませんでした。
 また、おっしゃるように、所見においては、今後は、国がオリパライベントに投じた資金を明確にして、決算の状況を明確にして、これを開示することということを申し上げております。
○塩川委員 会計検査院は、憲法に基づき、会計検査院法において、内閣に対し独立の地位を有するとされています。国会の検査要請に的確に応えるためにも、専門人材の増員は欠かせません。
 しかし、近年では、調査官等の定員が増えるどころか削減をされております。これでは、実地検査などを始めとした取組、国会や国民の要請に応えることが困難となるのではないか。行政機関と同様の定員合理化計画を会計検査院も実施していることは独立性を損なうものではないでしょうか。
○田中参考人 会計検査院の独立性と、また人員確保に関する御質問と承りました。
 まず、独立性について申し上げますと、私どもは、憲法に根拠を置き、また会計検査院法第一条において内閣から独立とありますけれども、具体的には、事務総局の人事権の独立、また規則制定権を持っておりまして、さらに二重予算制度というものを設けて、これで我々の独立性というものを担保しております。
 また、人員につきましては、優秀な人材を確保するということは私どもにとっても大事な課題ではあります。ただ、昨今の行政機関の動向を見ますと、やはり協力をしていく必要があるというふうに認識しております。ですから、まずは、私どもの検査の体制、計画の作り方、あるいはより効率的な業務運営、ここを工夫することによって生産性を高めていきたいと存じます。
○塩川委員 この数年間ずっと二桁の増員要求をされているわけですけれども、プラスになるどころか、マイナスになっているわけですね。それがやはり業務に大きな差し障りがあるんじゃないか、この点についてはいかがでしょうか。
○田中参考人 欲を申し上げれば、人員はあった方がいいのですけれども、ただ、今申し上げたように、様々な業務の仕方、あるいは、検査につきましても、例えば、実地検査に行かずに在庁でデータを扱う、あるいはオンラインを使ったリモート検査を行うなどして、時間を少し圧縮、節減いたしまして、以前より、より効率的な検査ができるようになっております。
 そういう意味で、何とか今の人員でもよい検査をしてまいりたいと存じます。
○塩川委員 終わります。ありがとうございました。