【内閣委員会】日本学術会議/自主性・独立性はアカデミーに不可欠/任命拒否の撤回を

 日本学術会議に関する問題を取り上げ、同会員選考時に自主性・独立性を守ることの徹底や、菅政権以降の会員6人の任命拒否の撤回を求めました。

 私は、各国のアカデミーの設置において不可欠の要件の一つが会員選考における自主性・独立性だと強調。学術会議による「各国アカデミー等調査報告書(2003)」では、各国アカデミーにおける会員の選出方法について、どのように指摘しているか質問しました。

 学術会議事務局は「各国アカデミーは、ほぼすべての機関において、そのアカデミー内の会員により推薦・選出される方式を採用している」と答えました。

 私は、内閣府が提出しようとしている日本学術会議法改正案では、会員以外の者で構成される選考諮問委員会を新たに設置することになっていると指摘し、「学術会議の会員候補者選考や選考の規則を定めるときに同委員会に諮問する仕組みだ。諮問委員会は誰が選ぶのか」とただしました。

 後藤茂之経済再生担当大臣は、詳細は検討中だとし「諮問委員会の委員は、学術会議会長が任命することを想定している」と初めて明らかにしました。

 私は、法案には、学術会議に対いて政府等と問題意識や時間軸を共有すること求める規定が盛り込まれていると指摘し、これまで軍事研究を否定する立場をとってきた学術会議を改造する狙いなどを指摘する声を真摯に受け止めよと追及。

 後藤大臣は「今回の見直しにおいて、独立性に変更を加える考えは一切ない」と答えたのに対し、私は「学術会議の独立性をいうのなら、6人に任命拒否を撤回すべきだ」と強調しました。

 後藤大臣は「すでに決着済みだ」と述べるのみでした。

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「議事録」

<第211回通常国会 2023年2月10日 内閣委員会 第2号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今日は、まず最初に後藤大臣に、日本学術会議をめぐる問題について質問をいたします。
 菅政権以降の政権が行ってきた、学術会議が推薦する会員六人の任命拒否には、厳しい批判の声が寄せられてきました。任命拒否は直ちに撤回をすべきであります。
 それなのに、この六人の任命拒否をそのままにして、今国会提出予定の学術会議法案では、選考諮問委員会の設置や、会員以外による推薦を盛り込む法案を提出しようとしていることは極めて重大であります。アカデミーの独立性を侵害するものと言わざるを得ません。
 日本学術会議は、各国のアカデミーの設置形態について分析をし、その不可欠の要件として、学術的に国を代表する機関としての地位、そのための公的資格の付与、国家財政支出による安定した財政基盤、活動面での政府からの独立、会員選考における自主性、独立性の五点を挙げています。このような要件は、アカデミーの独立性に不可欠であります。
 そこで、今回、政府の介入でクローズアップされたのが、会員選考における自主性、独立性の問題です。日本学術会議は、現会員による会員の選出、コオプテーションを基本とすることが適当だと述べてきました。この方式は、海外の多くのアカデミーで採用されている標準的な会員選考方式だと指摘をしております。
 学術会議事務局にお尋ねします。
 日本学術会議の各国アカデミー等調査報告書では、各国アカデミーにおける会員の選出方法についてどのように指摘しておりますか。
○三上政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘の各国アカデミー等調査報告書は、日本学術会議の国際協力常置委員会が、各国のアカデミーについて、設置の根拠、会員の人数、任期、選出方法、機能、予算等について調査を実施し、平成十五年に取りまとめたものと承知しております。
 会員の選出方法につきまして、同報告書では以下のとおり指摘しているところでございます。
 「各国アカデミーは、ほぼ全ての機関において、そのアカデミー内の会員により推薦・選出される方式(コオプテーション)を採用している。これは、アカデミー会員は学術上高い評価を得た者で構成されているべきであり、会員選出の判断はアカデミー会員のみによって可能であるという考え方に基づくと理解できる。」
 以上でございます。
○塩川委員 今説明がありましたように、各国アカデミーは、アカデミー内の会員により推薦、選出される方式、コオプテーションを採用しています。
 後藤大臣にお尋ねしますけれども、このようなアカデミー内の会員により推薦、選出される方式というのは、民主的な国家のアカデミーにおいては不可欠の要件ではありませんか。
○後藤国務大臣 今、コオプテーション方式のお話はさせていただいたとおりであります。
 そういう意味で、日本もコオプテーション方式を取っておりますし、今検討を、より国民の皆さんに理解され続ける学術会議であるためにどういうふうに考えていくのがよいのかという検討においても、このコオプテーション方式を前提として、より国民に理解されるという透明な仕組みをというふうに考えております。
 先ほどのお話の中で、世界の学術会議、アカデミーと日本の学術会議が非常に違いますのは、世界のアカデミーの中で、独立した民間団体ではなくて政府の組織そのものであるのは日本の学術会議だけでございます。
○塩川委員 アカデミーの独立性のポイントとして、今言ったような会員選考における自主性、独立性と同時に、五つの要件ということも冒頭申し上げました。そこがやはり肝腎で、国を代表する機関としての地位を与える、そのための公的資格の付与、国家財政支出による安定した財政基盤、そして、活動面での政府からの独立に加えて、会員選考における自主性、独立性、この点で共通をしているという点が各国のアカデミーの特徴だということが重要であります。
 日本もコオプテーション方式を取っている、コオプテーションを前提として考えていくという話がありましたけれども、今回、政府が、日本学術会議の在り方についての方針の策定に当たって、各国のナショナルアカデミーの在り方についての調査を行っていると聞いております。そこでの会員選出方法については、どのような調査結果だったんでしょうか。
○後藤国務大臣 御指摘のとおり、内閣府におきましては、昨年、米国、英国、ドイツ、フランスの四か国のアカデミーの在り方について調査を実施したところでございます。
 ナショナルアカデミーの設置形態には、それぞれの歴史的経緯を踏まえた多様性がありまして、アカデミーが国の機関であり、会員が公務員であるとされているのは、主要先進国のアカデミーの中では日本だけであると認識をいたしております。
 調査の内容については、今まだ、現在確認中という状況でありまして、詳細まで申し上げられない状況ではありますけれども、アカデミーが日本の特殊法人のような組織であるフランスにおいては、会員について大統領の認証が行われております。それ以外の、アカデミーが民間の団体である国においては、国は会員の選考に関与しておりませんけれども、私的な団体の会員選考が会員によって行われるのは当然のことであるとも考えられると思います。
○塩川委員 コオプテーションを基本とするかどうかというのはその設置形態で問われているとなると、それ自身が世界標準から外れることになりかねないということを指摘をしておきます。
 そういった調査については、すぐ公表してもらえますか。
○後藤国務大臣 今申し上げたとおり、政府の発表する調査ということでございますので、正確を期して、現在確認をしているところでございます。
○塩川委員 是非直ちに出していただいて、それで議論に付していくということこそ、政府の行うべき姿勢だということを申し上げておきます。
 内閣府が示しています学術会議改正法案の概要では、会員及び連携会員以外の者で構成される選考諮問委員会を新たに設置をし、学術会議が会員候補者を選考するときや選考に関する規則を定めるときは、事前に同委員会に諮問する仕組みを導入するという話であります。
 この選考諮問委員会というのは誰が選ぶんでしょうか。
○後藤国務大臣 詳細については検討中ではございますけれども、委員は、科学や科学の研究環境などについて広い経験と識見を有する者について、一定の手続を経て会長が任命をする、学術会議会長が任命することを想定をいたしております。
 学術会議は国費で賄われる国の機関として独立して職務を行うことから、国民から理解され信頼される存在であり続けるためには、運営の透明化にとどまらず、活動を担う会員、連携会員の選考についても、国民の目から透明かつ厳格なプロセスで行われることが必要であるということで、選考諮問委員会を諮問者として置くことについて検討中でございますけれども、その会長は、今申し上げたとおり、学術会議の会長でございます。会員を選考するのは会長でございます。
○塩川委員 選考諮問委員会は誰が選ぶのかと。
○後藤国務大臣 もう一度申し上げます。
 選考諮問委員会の委員は、学術会議の会長が選びます。
○塩川委員 その際に、政府、総理大臣などの関与というのはどうなるんでしょうか。
○後藤国務大臣 今、詳細についてまだ確定をしているわけではありませんけれども、今のところでは、一定の手続は考えておりますけれども、国側がその諮問委員の任命に関わるという、そういう前提で議論をしておりません。
○塩川委員 一定の手続ということを含めて、政府側の関与というのはどうなのかといったことについて不透明なままであれば、これは理解が得られないということにもなります。そういう点でも、学術会員に対して真摯に説明も行っていく、そういったことこそ必要であると考えます。
 選考諮問委員会による会員選考への関与自身が総理大臣による任命拒否の正当化につながるのではないか、こういった懸念の声もあるわけですから、そういった声を真摯に受け止めていく必要があると思います。
 改めて、各国アカデミーが採用している、アカデミー内の会員により推薦、選出される方式が民主的な国家のアカデミーにおいて不可欠の要件だ、この点をゆるがせにはできない。その点で、選考諮問委員会がどういう位置づけになるのかといった点について、ここに口を挟むようなものになっては決してならないということを重ねて申し上げておきます。
 それと、法案は、日本学術会議に対して、政府等と問題意識や時間軸を共有することを求めています。
 この点について学術会議は何点か指摘をしておりますけれども、学術には一国に限定されない普遍的な価値と真理の探求という独自の役割があり、これには一国単位の利害には左右されずに、知の探求を通じて人類全体に奉仕するという意味が含まれている、また、政策決定に当たって学術は、政治や経済の観点からは抜け落ちかねない重要な知見を提出する可能性を有している、これらの知見は、必ずしも政府と問題意識を共有しないところからも得られるはず、さらに、中長期的な観点から物事を考える学術と、短期的な判断を常に迫られる政治的意思決定との間で、時間軸を共有できない場面が生じるのはむしろ当然だと指摘をしています。
 こういった指摘を真摯に受け止めるべきではありませんか。
○後藤国務大臣 まず最初に申し上げるのは、問題意識等の共有というのは、政府等との結論の共有を求めているというわけでは決してないということであります。
 その上で、政府としては、学術会議が国費で賄われる国の機関であって、政府等への科学的助言を公務として行うことを役割とする機関である以上は、受け手側の問題意識や時間軸や現実に存在する様々な制約等を十分に踏まえながら審議等を行っていただく必要もあると考えておりまして、結果的にそれが学術会議の科学的助言の実効性を上げることにもつながるのではないかということも申し上げております。
 また、学術会議においても、課題設定等に当たって、多方面の関係者と十分な対話、意見交換を行いながら進めていくことの重要性を自ら十分に認識されて、文書にもされておられます。このような対話機能の強化に向けての学術会議の取組を後押しするため、必要な枠組みを整備していきたいということを申し上げている次第でございます。
 いずれにしても、学術会議に対しては、その独立した活動と何ら抵触することではないということについても、一層丁寧に御説明し、十分に御意見を聞きながら検討を進めるよう心がけてまいりたいと思います。
○塩川委員 政府のこういった対応について、法案の内容についても、厳しい批判の声が寄せられているわけです。学術会議は国益のためではなくて、真理を探求し人類に貢献するために存在をする、その認識の上に独立性が担保されるべきといった意見や、軍拡を急ぐ政府と時間軸と問題意識を共有したら学術会議の本来的な存在意義がなくなるという指摘や、これまで軍事研究を否定する立場を取ってきた学術会議を改造する狙いがあるのではないのか、こういう指摘に対して真摯に受け止める必要がある。
 学術会議による懸念事項、また、このような批判の声に耳を傾けて、アカデミーの独立性を侵害する懸念のある法案については、立ち止まって再考すべきではありませんか。
○後藤国務大臣 まず、個別の問題について、一つずつ御指摘についてお答えするべきではないということかもしれませんけれども、軍事的な国家を目指すということでもありませんし、我々、アカデミアに軍事研究を求めるつもりも一切ありません。
 デュアルユースの問題で、例えば、先端科学技術が将来軍事転用される可能性をしっかりと識別できる議論が今できるのかどうかとか、そういったことについては我々としても意見があるわけでありますけれども、そうしたことは、逆に、学術会議の方が、先端的分野においてはそういう議論はもう現実的に技術的にできないということを会長が発表されておられますし、そのことについては同じ方向だと思っております。
 いずれにしても、総会や声明において様々な御意見、御懸念が示されていることはよく承知しておりますから、しっかりと受け止めさせていただきたいというふうに思います。
 そして、学術会議の独立性について申し上げれば、今回の見直しにおいて、独立性に変更を加えるという考えは一切ない、三条をしっかりと守った運営をしていく、そのことは改めて申し上げたいというふうに思っています。
 学術会議においても、今回、より良い役割発揮に向けてに基づいて進めておられる改革があるわけですけれども、改革の必要性や方向性については、政府と問題意識は共有されているというふうに思っています。学術会議における改革の成果を着実にしっかりと法律に取り込むことで、今後、安定的な運用を担保しつつ透明性を確保する、そういう趣旨で法案を提出するということが必要であるというふうに考えております。
○塩川委員 この間、学術会議をめぐる政府の対応として、政府方針が出され、法案の作業が進められている、これについて懸念や再考を求めるという学術会議の声があるわけであります。これこそ真摯に受け止めていくべきだということを申し上げておくものです。
 アカデミーの独立性の侵害、これが何を招くのかがやはり問われているわけであります。
 ロシアでは、二〇一三年に、プーチン政権の下、ロシア科学アカデミー改革法案が突如として提出をされて、科学アカデミー幹部会や研究所等が反対を表明したものの、同法が成立をする。その後、二〇二二年のアカデミー総裁選挙を始め、繰り返し、ロシア科学アカデミーに対する政府の介入がありました。
 佐藤学東大名誉教授は、アカデミー、学問の自由の侵害が戦争へと突き進む一歩だったと指摘をしています。そういう点でも、学術会議への介入が軍事への科学技術動員の動きと軌を一にするのではないのか、そういう危惧の念というのが強くあるということを正面から受け止めて、こういった介入をきっぱりとやめるべきだと。
 学術会議の独立性を言うんだったら、六人の任命拒否こそ撤回をすべきであります。直ちに任命をという声を求めている学術会議のその声に応えて、学術会議の独立性を口にするんだったら、この六人の任命拒否、直ちに撤回をして、任命をすべきではありませんか。
○後藤国務大臣 政府としては、この任命問題については、これは既に総理の権限を行使して決着済みだというふうに考えております。
○塩川委員 この任命拒否がそのままという点で、政府への信頼がそもそも失われているんですよ。そういう点でも、学術会議の独立性を言うのであれば、この任命拒否を直ちに撤回をして、六人の任命を行えということを強く求めておきます。