第179 臨時国会 2011/10/20~2011/12/9 日付:2011-10-26 |
国土交通省の最高幹部による天下りあっせん疑惑で新たな証拠が浮上した。
国交省の官僚OBが所管法人を渡り歩き、高額の報酬や退職金を受け取る“わたり”の実態。内部告発をもとに小型船舶検査機構を皮切りにした二つの天下りルートを7月に告発したが、新たな5ルートには三つの特徴がある。(下表)
第一は民主党政権が解禁した官僚の現役出向を利用して公益法人に押し込む“現役出向型”。第二は天下りできず民間会社顧問などをしているOBを送り込む“顧問就職型”。第三は法人の都合でポストがなくなり、あぶれたOBを押し込む“ポスト消滅型”だ。
軽自動車検査協会への現役出向を皮切りにした天下りでは、OB6人が数珠つなぎに交代する“玉突き”人事になっている。これだけ法則的な“わたり”人事は誰かがシナリオを書かないとできない。役所ぐるみの天下りだ。
同省の調査委員会は8月に“あっせんはない”との調査結果を発表しているが、藤村修官房長官は「調べてみなければいけない。おかしいなと思えるところは排除していきたい」と答えた。
国土交通省幹部OBの“玉突き”人事 |
【現役出向型】 |
▼国交省(北陸信越運輸局長)⇒軽自動車検査協会理事⇒港湾近代化促進協議会専務理事⇒トラック協会理事長⇒日本自動車ターミナル専務⇒JR東日本常勤監査役⇒JR東日本都市開発会長 |
▼国交省(中部運輸局次長)⇒軽自動車検査協会理事⇒自動車工業会常務理事⇒軽自動車検査会理事長 |
▼国交省(九州運輸局次長)⇒小型船舶検査機構理事⇒原燃輸送株式会社 |
【顧問就職型】 |
▼三井住友海上保険株式会社顧問⇒日本物流団体連合会理事長⇒西武鉄道取締役⇒首都圏新都市鉄道社長 |
▼国際警備株式会社営業本部顧問⇒日本港運協会理事長⇒日本水先人連合会監事 |
【ポスト消滅型】 |
▼小型船舶検査機構理事(消滅)⇒海技振興センター常務理事⇒日本冷蔵倉庫協会理事長 |
▼日本自動車販売協会連合会常務理事(消滅)⇒日本民営鉄道協会理事長 |
さらに問題なのは、天下りを主導したとされる現役官僚が、今年9月に官僚組織トップの事務次官に就任したこと。それは宿利正史・国交省事務次官。前述の天下り人事はすべて、同氏が審議官時代に行われていた。同氏の主導を示す新たな証拠は――
一つは日本民営鉄道協会の役員人事。同協会の前理事長が「(宿利審議官から)後進に道を譲ってほしいといわれた」と証言しているもの。もう一つは、6月に天下り先を辞めた内部告発者の後任人事。天下り先の副会長が「会長が(国交省の)担当課長にかねてから交代要員を打診してあった」などと、同省のあっせんを認める証言をしている。限りなくクロといわざるをえない。再調査を求めた。
藤村官房長官は「(天下り先の法人の)新たな点は私が受け取り、(再調査を含めて)検討したい」と答えた。
民主党政権は各省による“あっせん”を禁止すれば、「天下り」「わたり」はなくなるといっていた。しかし、その足元で最高幹部自身が、あっせんを繰り返しているという重大な疑惑。事務次官昇格を承認した野田政権自身の責任が問われている。天下りを全面禁止すべきだ。
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なお、『東京新聞』10月27日付に「国交省天下り疑惑“新証拠”」というタイトルで、「新証拠を突きつけたのは、この疑惑を追及してきた共産党の塩川鉄也議員。‥‥‥」と紹介された。