第180 通常国会 2012/1/24~2012/9/8 日付:2012-05-23 |
消費税を価格に転嫁できない中小事業者の実態を示し、事業者が自己負担による納税を強いられる消費税増税はやめるしかないと主張した。
全国商工会連合会など中小4団体の調査では、小規模事業者ほど価格転嫁が困難(図)となっている。小売業者は勤労者所得の減少・デフレ下で消費者に転嫁できず、下請け事業者は立場が弱くて親事業者に要求できない実態だ。価格に転嫁できない事業者が納税できずに、税金の新たに発生した滞納の約半分を消費税が占めるまで苦しめられている。
野田佳彦首相は「下請けの方が結局、自己負担せざるをえなくなっている」と認めざるをえかった。
事業者が自腹を切って納税するしかないというのは消費税の根本的な欠陥だ。
しかし、野田首相は「乗り越える課題がある」というだけで、岡田克也副総理は「裁判で争える」などと開き直った。
ことの本質がわかっていない。消費税制度に根本的な欠陥があるから価格転嫁問題は解決できない。消費税増税はやめるしかない。
政府は「いろいろ対策をとる」というが、消費税導入から20年以上たっても価格転嫁問題は解消されていない。一例として、公正取引委員会のアンケート調査も下請けが自由に回答できないやり方であることだ。しかも、是正にあたるべき公正取引委員会からOBが大手メーカーなど業界団体に天下っている問題がある。自動車公正取引協議会、全国家庭電気製品公正取引協議会、首都圏不動産公正取引協議会に5代以上続けてOBが天下っている。監督する立場の役所から監督される業界に天下っている。これでは下請け事業者に対する優越的地位の乱用を是正する立場にたてない。
【質問ダイジェスト】転嫁できない消費税/根本的欠陥あらわ
消費税の納税義務者は事業者であり、転嫁できなくなれば自らの利益を削って納税するしかありません。規模の小さい事業者ほど転嫁できないという全国商工会連合会などの調査を示すと、野田首相は「実態としてはある」と認めざるをえなかった。
価格転嫁については、不況下で小売業者が消費者に転嫁できない場合と、弱い立場の下請け業者が親会社に要求できない場合がある。消費税率を5%に上げた1997年でも勤労者の可処分所得や消費支出は上昇傾向だったのに、転嫁できない小売業者が多数だった。その後、可処分所得も消費支出も減り続けているではないか。
所得が減少
塩川 消費税を価格に転嫁したら消費者が逃げてしまう。
安住淳財務相 例えばヒット品目は売れる(他党議員から失笑)。
塩川 国民の所得が減少しているときに転嫁できないことは明らかだ。
次に、元請けと下請けの問題を取り上げた。親会社から発注を継続してもらうために価格転嫁を求めることは不可能なのが実態だ。ほかの税金に比べて消費税の滞納が増加している実態(グラフ)を示して迫った。
塩川 転嫁できていないのに払えといわれたら誰が負担するのか。
財務相 事業者に納めてもらうことになる。
塩川 事業者が自腹を切ることになる。
政府も全国商工会連合会が主張するとおり転嫁できない分を自ら利益を削って納税することになることを認めざるをえなかった。
民主党の聞き取り調査で全国建設労働組合総連合が「事業者自身の負担で納税せざるをえない」ことは「消費税制度が抱える根本的な問題」と述べている。
野田首相は「転嫁できるかという課題がある」などと人ごとのような答弁。
下請け事業者に対する値引き強要が常態化し、実態上転嫁ができないという問題だ。事の本質がわかっていない。消費税に根本的欠陥があるから価格転嫁問題は解消できない。消費税増税はやめるしかない。
政府は「Gメンをふやす」(財務相)など対策を強めるというだけ。塩川氏は、消費税の根本的欠陥から転嫁問題は消費税導入後24年たっても解決されないと強調。政府の対策の一つとして、公正取引委員会の調査ではほぼ100%が転嫁「できている」としていることを示した。
官と民の癒着
あまりにも実態とかけ離れている。公取の調査は、親事業者が出した下請け企業のリストをもとにしたもので、下請け企業は正直に答えにくいもので限界がある。
下請けいじめを是正できない構造的問題として、公取から業界団体への天下りがあると強調。自動車工業会会長が会長を務める自動車公正取引協議会など三つの公益法人の専務理事に、5代続けて天下りしているのが実態だ。
公取のOBの老後を業界団体に保証してもらっている。その担い手はトヨタであり日産だ。大手メーカーに肩入れせざるをえない。
公取の竹島一彦委員長は「政府が決めたルールにもとづいてやっている」と正当化。
民主党は天下り禁止法案まで出していたのに、政権について天下りが行われている。官と民との癒着によって行政がゆがめられていることが問題だ。