【内閣委員会】政府は、専門家に意見具申の機会与えないと批判

 政府が感染症対策の司令塔と位置付ける「感染症危機管理統括庁」の新設などを盛り込んだ新型インフルエンザ特措法改正案について、「司令塔機能の強化というが、この間の政府のコロナ対策の検証こそ必要だ」と述べ、専門家の意見に耳を傾けない姿勢は問題だと主張しました。

 私は、「安倍政権での全国一斉休校、アベノマスク配布を決める際に当時のコロナ感染症対策専門家会合で議論したのか」と質問。

 後藤茂之内閣府新型コロナ担当大臣は「議論はなかった」と答えました。

 続けて私は、「菅政権のGoToトラベル延長、岸田政権の濃厚接触者の待機期間短縮を決めた際に、コロナ対策分科会に諮問したのか」と質問。

 後藤大臣は「諮問していない」と認めました。

 私は、分科会の設置根拠である政令には、分科会の所掌事務として「総理に対し意見を述べること」が書かれていないと指摘し、このことが分科会が意見具申できない理由なのではないかと質問。

 内閣官房は、「分科会にはインフル特措法に基づき提言を出す権限がある」と答弁しました。

 私は、尾身茂分科会会長が22年8月に専門家有志の緊急提言を出した際に「分科会開催は政府が決める。場がないのでこの場で示した」と、述べていることを紹介し、「専門家が分科会を開きたいと言っているのに開いていない。こういう現状こそ正すべきだ」と強調しました。

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「議事録」

<第211回通常国会 2023年3月10日 内閣委員会 第5号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 新型インフル特措法、内閣法改正案について質問をいたします。
 政府の司令塔機能強化といいますけれども、そもそも、この間の政府のコロナ対策がどうだったのかという検証が必要であります。
 政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は、専門家の意見を聞くプロセスを経ずに政策を決めるケースがあったと述べておりますが、この指摘をどう受け止めておられますか。
○後藤国務大臣 新型コロナウイルスはその性状を急激に変化させることなどから、状況に応じて、感染拡大防止と社会経済活動のバランスが取れた効果的な対策を講じることが重要でありまして、このためには、幅広い分野の専門家の科学的知見やエビデンスに基づく検討が極めて重要であると考えています。
 このため、これまでも、コロナ対策分科会を始め様々な場面において、感染症や経済などそれぞれの専門的立場から知見を伺った上で、それらを踏まえて政府として必要な判断をし、責任を持って対策を講じてきたところでございます。
 他方、新型コロナ対策の検証を行った昨年六月の有識者会議の報告書においては、次の感染症危機に向けた中長期的な課題の一つとして、エビデンスに基づいてウイルスの特性に応じた科学的、合理的対策などを行うための意思決定プロセスについて一層の明確化、体系化を図る必要があるとの指摘をいただいておりまして、こうしたことについては我々も重要なことだというふうに考えております。
○塩川委員 専門家の意見を聞くプロセスを経ずに政策を決めるケースがあったという尾身会長の指摘をどう受け止めるかという点についてのお答えはありませんでした。
 専門家の科学的知見を軽視をし、政権の都合を優先した政策が推進されてきたのではないのか、こういうことが問われているわけです。
 お尋ねしますが、二〇二〇年の二月末、当時の安倍首相が全国の小学校、中学校、高校の休校を要請した際に、当時設置をされておりました政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議では議論がされたんでしょうか。
○後藤国務大臣 新型コロナ対策のための小学校、中学校、高校及び特別支援学校等における一斉臨時休業の要請については、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議において、当時は、推進会議の前身ですが、議論はされておりません。
 しかしながら、令和二年二月二十四日に開催された同会議において、これから一、二週間が急速な拡大に進むか収束できるかの瀬戸際との見解が示されまして、また、新型コロナの拡大の防止のために迅速な対応が必要であることという御指摘を踏まえて、一斉臨時休業の要請を行うことを同月二十七日に政府対策本部において決定したものと認識をいたしております。
○塩川委員 一、二週間が瀬戸際と。その場合、ではどういう施策がふさわしいのかといった点について、全国休校がいいのかという点についての専門家の意見を聞く、そういうことが行われていないという点が問われているわけです。
 次に、二〇二〇年の四月に政府対策本部で、突然、全世帯への二枚ずつの布マスク、アベノマスク配付を打ち出した際に、このコロナウイルス感染症対策専門家会議では議論がされたんでしょうか。
○後藤国務大臣 マスクについては、令和二年三月九日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で示された専門家の見解において、クラスター発生のリスクを下げる効果があるとされたところであります。
 一方、当時はマスクの需給が逼迫しておりまして、多くの国民が市中でマスクを全く手に入れることができない状況であった。このような状況の中で、マスクの需給の逼迫を解消し、国民の健康を守るために、同年四月に厚生労働省において、布製マスクを国民全体に配付することとしたものでありまして、これは尾身会長が御自身でお話しをされているように、配付すること自体について相談はなかったというふうに申し述べられているとおりであります。
○塩川委員 今お話があったように、専門家会議で議論がなされていなかった、そういったことこそ検証を行う必要があるということを併せて申し上げておきます。
 専門家会議は、感染実態の状況分析や三密回避対策などを提言し、貢献してまいりました。これらの提言が反映をされ、政府対策本部決定の基本的対処方針ともなっています。この専門家会議の意見も聞かずに、政府は全学校閉鎖やアベノマスク配付を打ち出したわけであります。
 しかも、政府は、二〇二〇年の六月には、政府対策本部直属だった専門家会議を廃止をし、平時対応の新型インフルエンザ等対策有識者会議の下の新型コロナウイルス感染症対策分科会へと変更してしまいました。その背景には、この専門家会議が、感染症対策として、行動変容を促す意図から、政府に経済的な補償の要請を求めるなど、官邸の意向に沿わない提案を行ってきたことがあり、専門家会議を政府対策本部から遠ざけようという意図があったのではないのかということを私も当時指摘をしたところであります。
 続いて、その後、二〇二〇年の十二月、菅政権は、翌年の一月末が期限となっているGoToトラベルキャンペーンについて、六月末まで延長する閣議決定を行いました。その際に、政府はコロナ対策分科会に諮問したんでしょうか。
○後藤国務大臣 GoToトラベル事業については観光庁において実施された事業でございますけれども、御指摘の延長については観光戦略実行推進会議において決定したものであると承知しております。本決定について、新型コロナウイルス等感染症対策分科会には諮っていない。
 今先生からお尋ねの件については、尾身会長から、事前に御相談がなかったものとして御指摘を受けている案件でございまして、そのことについては率直に認めますけれども、実際に、専門家の皆様に多くの実際の対応については御相談もさせていただいてきたということも併せて申し添えさせていただきたいと思います。
○塩川委員 転機となるような時期の施策がどうだったのかという点でも、GoToトラベルキャンペーンの延長というのは、まさに年末年始で大きく感染が拡大する、そういう時期のものであって、そういうときに、尾身会長自身、当時、分科会にそういう諮問はありませんと国会でも答弁をしておりました。尾身会長は、私どもは今の感染状況のときは中止した方がいいということを再三申し上げてきたと述べていることも指摘をしておきたいと思います。
 最後、もう一つ、二〇二二年の七月、岸田政権は、濃厚接触者の待機期間を七日間から最短三日間に短縮をしました。その際に、コロナ対策分科会の意見を聞いたんでしょうか。
○後藤国務大臣 御指摘の濃厚接触者の待機期間の短縮については、感染症法に基づく措置でありまして、厚生労働省において、令和四年七月二十二日に決定したものです。
 新型コロナウイルス感染症対策分科会においては、濃厚接触者の待機期間の短縮について事前にお諮りすることはしてはおりませんけれども、この取扱いについては、感染が急拡大している中で、感染拡大防止対策としての在り方を検討すべきとの専門家等からの提言、それから、厚生労働省の助言組織であるアドバイザリーボードにおける専門家等の意見、そうしたものを十分に伺った上で、公表する際に、専門家の皆さんと共有しながら取りまとめたという認識でおります。
○塩川委員 濃厚接触者の待機期間の短縮といった点については、専門家の皆さんからもそういう検討が必要だという話はあるわけですけれども、それが最短の三日間でいいかどうかということこそ、きちっと検討する必要があるわけで、コロナ対策分科会の意見を聞いていないということでいえば、そういう点での政権としての政治判断がそこにあったということです。
 アベノマスクや全校の休校、GoToの延長、濃厚接触者の待機期間の短縮など、専門家会議やコロナ対策分科会の意見を聞いていない事例を紹介をしました。これは、専門家の科学的知見を軽視をし、政権の都合を優先した政策が推進されてきた、こういうことを示すものではありませんか。
○後藤国務大臣 政権の都合というのが何をお示しになっているのかは私にはよく分かりませんけれども、政権にとって最も大事だったのは国民の命と暮らしを守ることであり、そのことは国民から最も政府が信頼される一番の道だったというふうに思っております。
○塩川委員 GoToの延長がどうだったかということもしっかりと検証すべきだということを申し上げておきます。
 それで、専門家が科学的知見を踏まえてコロナ対策の提案を行える制度的保障が必要ですけれども、現状はどうなっているか。新型インフル特措法第七十条の二で、有識者会議としての新型インフルエンザ等対策推進会議が設置をされております。この特措法第七十条の三で規定している対策推進会議の所掌事務は何かについてお答えください。
○後藤国務大臣 意見を述べたことがあるかという御質問でありますか。(塩川委員「七十条の三そのものが所掌事務として何を規定しているかということですね」と呼ぶ)ちょっとお待ちください。
 どうも失礼しました。新型インフルエンザ等対策推進会議の所掌事務については、特措法七十条の三第一号におきまして、第六条第五項の規定により内閣総理大臣が政府行動計画の案を作成しようとするときに内閣総理大臣に、十八条四項の規定により政府対策本部長が基本的対処方針を定めようとするときに政府対策本部長に、それぞれ意見を述べることとされております。また、特措法第七十条の三第二号において、これらの意見を述べることのほか、新型インフルエンザ等対策について調査審議し、必要があると認めるときは内閣総理大臣又は政府対策本部長に意見を述べることも所掌事務とされております。
○塩川委員 そのような所掌事務のある対策推進会議ですけれども、この七十条の三の第二号の方で、新型インフルの感染症対策について、必要があると認めるときは政府に意見を述べることができると規定をされています。このように、対策推進会議が必要があると認めるとき政府に意見を述べる、この規定を使って対策推進会議が政府に意見を述べたことというのはあるんでしょうか。
○後藤国務大臣 これまで、特措法七十条の三第二号の規定に基づいて新型インフルエンザ等対策推進会議が内閣総理大臣又は政府対策本部長に意見を述べたことはありません。
○塩川委員 この対策推進会議自体は何回ぐらい開かれているんでしょうか。
○柳樂政府参考人 この対策推進会議というのは、親会議である対策推進会議と、その下に各種分科会がそれぞれ設置をされているということでございます。
 合計の数字、今直ちに持っておりませんが、非常に頻繁に開かれておりまして……(塩川委員「親会議の話」と呼ぶ)親会議につきましては、分科会の決定でもって迅速に意思決定をしていくという観点から、二つの分科会、いわゆるコロナ対策分科会と基本的対処方針分科会、それぞれが分科会として最終決定をすることができるという位置づけにありますので、親会議そのものは一回開催しているということでございます。
○塩川委員 法律で規定されている対策推進会議は一回しか開いていない。議長を選んで、会議の運営規則を定めただけで、それも持ち回りだったわけであります。
 今御説明のように、その下に子の会議があるということで、基本的対処方針の分科会ですとかコロナ対策分科会等々、分科会が設定をされているわけです。
 それで、先ほど大臣の答弁をいただいたように、第七十条の三の第二号の規定を使って、対策推進会議が必要があると認めるとき政府に意見を述べる、こういうことは行っていないということでありました。子の会議も含めて、この規定に基づいて意見を述べたということはあるんでしょうか。
○後藤国務大臣 先ほど、意見を述べたことがないというふうに申し上げたつもりでありました。
 今、政府参考人の方からも申し上げたように、新型インフルエンザ等対策推進会議の下に、基本的対処方針分科会、新型コロナウイルス感染症対策分科会、これは頻繁に会合を開いておりまして、そういう意味では、厚生労働省に置かれておりますアドバイザリーボード、それから新型コロナウイルス感染症対策分科会は今回コロナの対応においてフル回転をしていただいていると思っています。
○塩川委員 親会議の下に子の会議があって、基本的対処方針分科会ですとかコロナ対策分科会が頻繁に開かれていますと。その点でいえば、基本的対処方針に対して、変更する際には意見を述べるということもありますし、また、必要があれば、政府としてコロナ対策分科会の開催を求めるということもあるわけであります。
 ただ、このような、分科会の方から政府に対して、まさに必要だということで意見を述べるということができるのかという問題なんですけれども、やった事例はないという答えなんですが、例えば、二〇二二年八月にコロナ対策専門家有志の緊急提言がありました。その際に、なぜ今提言なのか、政府のコロナ分科会で議論するのが筋ではないかというマスコミの質問に尾身氏は、分科会開催は政府が決める、その場がないので今日この場で示した、このようなことを言い、また、ほかの方からも、分科会で議論してほしかったと述べています。
 このように、分科会のメンバーの方々が分科会を開いてほしかった、分科会で議論してほしかったといったときに、つまり分科会メンバーで政府に意見を述べたいということを求めたときに、なぜ分科会を開くことができなかったんでしょうか。
○後藤国務大臣 私は、そのときの事情のことについては、御通告も特に私は承っていなかったので、そのときの事情について、どういう状況であったのかは分かりません。
 できる限り、委員の先生方が議論をしたいとおっしゃるときには議論をしていただくことが筋だろうというふうに思っておりますけれども、今の御指摘については、その事実の状況等について私は今承知しておりません。
○塩川委員 事務方でも結構なんですが、分かれば教えてもらえますか。
○柳樂政府参考人 御通告がないので、今この場で直ちに正確に政府として申し上げることはできません。
○塩川委員 お聞きしているのは、法律上は、対策推進会議が必要があると認めるときには政府に意見を述べるという規定があるんですけれども、それが活用されていませんよねという話をしているわけなんです。
 その際に、今言ったように、具体の、昨年の八月の段階で、分科会が意見を述べたいと言ったのに開かれない、なぜこんなことになるのかというのは、この分科会を置くことを規定をしている政令に差し障りがあるんじゃないのかということを私は指摘をしたいと思っています。
 分科会について定めた新型インフル特措法の政令では、分科会の所掌事務は、会議の所掌事務の一部を担うとされています。政令においては、分科会の所掌事務として、必要があると認めるときは政府に意見を述べるという規定が記載されていないということですよね。
○柳樂政府参考人 分科会の規定はございますけれども、それぞれ分担を規定しているだけでございまして、分科会の権限が推進会議本体よりも小さくなっているとか、そういうことはございません。
○塩川委員 法文の方では、インフルエンザの対策について調査審議し、必要があると認めるときは総理又は本部長に意見を述べることとあるんですけれども、政令の規定ぶりを見ると、例えばコロナ対策分科会の規定のところには、調査審議することしか書いていないんですよ。必要があると認めるとき総理、本部長に意見を述べるというのは落ちているんですよね。そういうことですよね。
○柳樂政府参考人 繰り返しになりますけれども、政令で所掌事務と書いてありますのは、各分科会における分担を定めているだけでございまして、分科会単体で推進会議としての行為はできるということでございます。
○塩川委員 ですから、分担は分担なんだけれども、もちろん、だから、基本的対処方針分科会は基本的対処方針についての意見と、そっちの方は入っているわけですから。コロナ対策分科会には入っていないわけですよね。
 そういう分担は分かりますよ。だけれども、第七十条の三の第二号にある調査審議、これはどこにも書いてあるんだけれども、必要があると認めるときには総理、本部長に意見を述べるという規定は、法文にはあるのに、政令の所掌事務には書いていないでしょうということを聞いているんです。
○柳樂政府参考人 繰り返しの御答弁になって大変恐縮でございますが、各分科会の規定はそれぞれの分科会間の分担を決めているだけでありまして、各分科会自体が、法律に基づく、推進会議の規定に基づく権限、例えば提言であれば提言を出すことができるということでございますので、政令で調査審議しか書いていないから法律に基づく推進会議の権限が行使できないということではございません。
○塩川委員 必要に応じて政府に提言ができるということで読めるという話ですから、そういう点では大いにこれを活用されてしかるべきなんだけれども、そういう状況になっていないわけです。分科会を開こうというにも開かれないという現状があるんですから、そういう現状こそ正す必要があるということを言わなければなりません。
 そういう点でも、専門家が自らの科学的知見に基づいて政府に意見を述べるという場や機会が欠落しているのではないのか、制度面でも科学的知見に耳を傾けないような仕組みになっているのでは問題だということを述べておきたいと思います。
 あわせて、新設する国立健康危機管理研究機構、日本版CDCの関係ですけれども、ここで、対策推進会議の所掌事務にある、対策推進会議は必要があると認めるときは総理又は政府対策本部長に意見を述べるという規定と同様の事務を持つんでしょうか。厚労省の方でお答えください。
○浅沼政府参考人 お答えいたします。
 感染症等に関する科学的知見の基盤、拠点となる新たな専門家組織、いわゆる日本版CDCを創設するため、国立健康危機管理研究機構法案及び国立健康危機管理研究機構法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案を今国会に提出いたしました。
 これらの法案におきまして、機構が統括庁に対して迅速に質の高い科学的知見を提供し、政策決定に役立てることができるよう、平時から科学的知見を統括庁や厚生労働省に報告するとともに、パンデミック時には、インフル特措法に基づき、政府対策本部長の招集を受けて政府対策本部で意見を述べることができることについて、規定を盛り込んでいるところでございます。
 なお、機構におきましては、平時から統括庁や厚労省との間で感染症に関する情報提供や意見交換等を積極的に行うことにより、これら組織と密接に連携できるようになりますので、そうした体制の整備等に取り組んでまいりたいと考えております。
○塩川委員 研究機構法においては、このインフル特措法改定案の部分の規定で、政府対策本部長は必要があると認めるとき本部会議において機構に意見を述べさせることができるというもので、主語は本部長。機構が意見を述べるという事務は規定されていません。機構法案の方では、機構は省令で定めるところにより業務の実施状況を総理及び厚労大臣に報告するものとするとあるだけで、具体的に意見具申の規定まで触れた中身にはなっていないわけです。
 そういう点でも、政府に対して専門家がコロナ対策の提案を行う、そういった制度的保障が担保されていないと同時に、実際に、そういった制度があるとされていたとしても、それが機能していないという点でも政府の姿勢が問われるということを指摘しておくものです。
 それから、こういった会議体についてなんですけれども、五類への見直しを行う五月八日以降、コロナ対策の提案という役割を担ってきたコロナ対策分科会は継続するんでしょうか。
○後藤国務大臣 こうした子の会についても、当分の間、まだコロナウイルスの状況の見極めが必要でありますから、そのまま存続をさせます。
○塩川委員 厚労省にお尋ねします。
 五類への見直しを行う五月八日以降、コロナ感染症の分析と評価という役割を担ってきた厚労省のアドバイザリーボードは継続するんでしょうか。
○鳥井政府参考人 お答え申し上げます。
 新型コロナの感染症法上の位置づけが変更された後のアドバイザリーボードの開催につきましては、その時々の新型コロナの感染動向等を踏まえて判断していくこととなると考えております。
○塩川委員 やはり科学的知見に基づいた施策の具体化こそ必要であって、恣意的な運用を行う歯止めになるような対応が求められている、そういう点で、それを伴わないような司令塔機能の強化ということでは、市民の権利侵害や、感染症対策に逆行する施策となる懸念が拭えないということを指摘しておきます。
 次に、司令塔機能としての統括庁の位置づけについてなんですけれども、内閣に置かれている復興庁、デジタル庁と統括庁はどのように違うんでしょうか。
○後藤国務大臣 復興庁やデジタル庁は、内閣に直接設置され、内閣補助事務、これは行政各部の総合調整と、分担管理事務、例えば復興一括交付金の配賦だとかシステムの管理だとか、こうした二つの、内閣補助事務、分担管理事務の双方をつかさどることとされています。
 統括庁は、国政全般の総合戦略機能をつかさどる内閣官房に置かれまして、内閣補助事務のみをつかさどる点で、復興庁やデジタル庁とは異なるというふうに考えております。
○塩川委員 次に、内閣府に置かれている消費者庁や金融庁と統括庁はどのように違うんでしょうか。
○後藤国務大臣 消費者庁や金融庁は、内閣府の外局として置かれまして、大臣からは独立的な位置づけで、自らの名前において行政事務の実施を行う組織とされているものと認識いたしております。
 統括庁は、このような独立的な位置づけではなくて、内閣総理大臣を直接に補佐、支援する機関である内閣官房に置かれ、内閣官房が有する最終、最高の総合調整権を行使し、内閣総理大臣や官房長官を直接助ける組織であるという点で、消費者庁、金融庁とは異なるものです。
○塩川委員 次に、内閣官房に置かれている内閣人事局と統括庁はどのように違うんでしょうか。
○後藤国務大臣 内閣人事局と内閣感染症危機管理統括庁は、いずれも内閣官房に置かれて、内閣官房長官に直属する組織である点では同じではありますけれども、統括庁は、厚生労働省の医務技監が庁の幹部に充てられ、厚生労働省との一体性を有する特殊な組織であること、所掌事務上も、特措法に基づき、地方公共団体まで含めた強力な総合調整及び指示の権限を有していること等におきまして、内閣人事局とは組織、事務の性質が異なるものと考えております。
○塩川委員 そこで、統括庁の名称なんですけれども、例えば統括庁を英語名称で言うとどういう表記を考えておられるんでしょうか。
○後藤国務大臣 お尋ねの内閣感染症危機管理統括庁の英語名称については、現時点では決まっておりません。
○塩川委員 デジタル庁、復興庁とか消費者庁、金融庁、これはそれぞれエージェンシーがつくわけですよね。つまり、執行機関として、いわゆる分担管理事務、独立して行うといった機関になるわけですけれども、統括庁の場合にはエージェンシーという言葉は当てはまるんでしょうか。
○後藤国務大臣 今申し上げたみたいに、英語名称について、現時点では決まっておりません。
 統括庁を設置するまでの間に、国民や諸外国から見て統括庁の役割が分かりやすく説明できるような名称にするべく、今後検討してまいりたいと思います。
○塩川委員 いわゆる庁がつくところというのは、分担管理事務になっているわけですよ。だけれども、統括庁は、分担管理事務はない、内閣補助事務のみというのが先ほどの答弁でもありました。その場合に、庁という名称をつけると非常に混乱を招くことになりはしませんか。
○後藤国務大臣 統括庁は、行政各部の感染症危機への対応を統括し、司令塔機能を担う組織として設置することとしています。こうした組織の役割をより的確に表現するために、昨年六月の政府対策本部決定において司令塔機能を創設することとした趣旨を推し進めるとともに、各府省の外局などの既存の庁とは区別する観点からも、内閣危機管理の統括庁という名称としたものであります。
○塩川委員 既存の庁とは区別すると。別に、庁という言葉をつけなければ区別する必要もそもそもないわけですよね、違うと言っているわけですから。
 お話がありましたけれども、昨年六月のコロナ対策本部決定では、内閣官房に新たな庁を設置する、内閣感染症危機管理庁を置くと、庁の名称を使っていたんですけれども、今回の法案では統括庁となっています。どういうことでしょうか。
○後藤国務大臣 いろいろ検討する中で、今も申し上げたんですけれども、組織の役割をより的確に表現するためには、昨年六月の政府対策本部決定において司令塔機能を創設することとした趣旨を推し進めるとともに、各府省の外局などの既存の庁と区別する観点からも、内閣感染症危機管理統括庁という名称にさせていただいたということです。
○塩川委員 今は統括庁、昨年六月は内閣感染危機管理庁ということですけれども、そもそも、岸田総理が二〇二一年の総裁選で掲げていたのは健康危機管理庁だったんです。この二一年総裁選で岸田総理が看板政策に掲げた健康危機管理庁というのは、どこに行ってしまったんでしょうか。
○後藤国務大臣 御指摘の総裁選挙における政策等については、政府としてお答えすることは差し控えたいと思います。
 ただ、いずれにせよ、内閣感染症危機管理統括庁は、昨年六月に取りまとめられた新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議の報告書において、次の感染症危機に備え、危機に迅速的確に対応するための司令塔機能を強化し、一元的に感染対策を指揮する体制が必要であることが指摘され、そうした指摘を踏まえて、感染症危機対応における司令塔組織として内閣感染症危機管理統括庁を設置することとしておりまして、統括庁が司令塔機能を発揮しまして、国民の命、健康の保護と経済活動の両立を図りながら、感染症危機に迅速かつ的確に対応することが可能となるものと考えております。
○塩川委員 ですから、庁はエージェンシー、執行機関、分担管理事務を担うというのがあるのに、岸田総理が総裁選でも危機管理庁と言ってしまったから、結局、そこをこだわらざるを得なくて、統括庁と、表記から何だかよく分からない組織になったというのが実態なんじゃないでしょうかね。そう思いませんか。
○後藤国務大臣 統括庁は、各省庁の対応を強力に統括して、政府全体を俯瞰した総合的な視点で感染症危機管理を推進するために、各省より一段高い立場で国政全般の総合戦略機能を担う内閣官房に、総理、官房長官が直轄する恒常的な組織として設置するものとして、統括庁ということになっております。
○塩川委員 総理の看板政策の名前だけは残したいというところが背景にあると思うところであります。
 最後に、この間議論もされてきている内閣法の第十二条第二項第十五号、内閣官房の所掌事務のところの「法律」についてですけれども、今回、インフル特措法が入るということですけれども、現行の法律で既に対象となるというものというのはあるんでしょうか。
○後藤国務大臣 内閣官房が所掌することとなるものは、現時点では、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく事務のみです。
○塩川委員 ほかに同じような規定を持つ法律には、同じような組織法、設置法ではどのようなものがあるのかについて御説明いただけますか。
○柳樂政府参考人 お答えします。
 各府省の設置法におきまして、御指摘の内閣法第十二条第二項第十五号の規定と同様に、法律に基づいて○○省に属せられた事務というふうに規定されているものがございます。
○塩川委員 内閣府の設置法などでも、法律に基づきということで、どんな法律が対象になるかということについては、内閣府の方に問い合わせたところ、網羅的に整理したものはないという話であります。
 非常に不分明なところでありまして、こういう規定があることによって内閣官房の機能が肥大化するんじゃないのかといった懸念が生じるということを申し述べて、質問を終わります。