【内閣・経済産業委員会連合審査】秘密保護法拡大法案(重要経済安保情報法案)/狙いは兵器共同開発

 秘密保護法拡大法案(重要経済安保情報法案)の背景に、次期戦闘機の共同開発国である英国からの要求があることを明らかにし、「同盟国・同志国と連携して兵器開発を推進するためのものだ」と批判しました。

 同法案は、秘密の範囲を秘密保護法の「防衛・外交・スパイ活動・テロ活動」から経済分野に拡大するもの。秘密を扱う資格者を政府が認定する「セキュリティークリアランス(SC、適正評価)」の対象も民間労働者などに大きく広がります。

 私は、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機(GCAP、グローバル戦闘航空プログラム)について、ロングボトム駐日英国大使がインタビューなどで「GCAPの成功には当事者間で防衛技術の円滑な移転ができる仕組みが欠かせない」「セキュリティークリアランスを日本の産業界に導入することを支援する」と述べるなど、防衛技術の情報保全の強化やセキュリティークリアランス制度の導入を求める発言を繰り返し行ってきたと指摘。「今回の法案は、次期戦闘機の共同開発につながる英国側の要求に応えるものだ」と迫りました。

 内閣官房は「大使の発言の詳細は承知していない」としつつ、「(本案を含む)セキュリティークリアランス制度全般を指して話したものではないか」と否定しませんでした。

 私は、今国会に提出されているGCAPを推進する国際共同機関(GIGO)設立条約にも機密情報の保護規定があると指摘。「今回の法案は、多国間連携で兵器開発を推進するものだ。殺傷兵器を他国に売る『死の商人国家』を目指すことは断じて認められない」と強調しました。

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「議事録」

第213回国会 令和6年4月2日(火曜日) 内閣委員会経済産業委員会連合審査会 第1号

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 最初に、高市大臣にお尋ねをいたします。

 今回の法案の意義として、同盟国、同志国との国際共同開発の拡大を掲げております。同盟国のアメリカとともに同志国のNATO諸国やオーストラリアなどとの国際共同開発を大きく拡大するのが今回の法案の目的の一つではないか。この点について、お考えをお聞かせください。

    〔岡本委員長退席、星野委員長着席〕

○高市国務大臣 本法案は、安全保障の裾野が経済、技術分野にも拡大する中、経済安全保障分野においても、厳しい安全保障環境を踏まえた情報漏えいのリスクに万全を期すためにも、我が国の経済安全保障上重要な情報を適確に保護、活用するための体制を確立するものでございます。

 国際共同開発に関しまして、本法案では、それが重要経済基盤の脆弱性の解消や重要経済基盤の革新的な技術に関する調査及び研究等に該当する場合には、本法案の目的にある事業者による我が国の安全保障の確保に資する活動と位置づけられることとなります。ですから、本法案や関係する国際的な枠組みと相まって、円滑な推進が図られていくと考えております。

 この法案の枠組みの下でどの国とどのような国際共同開発を進めるかという点については現時点で申し上げることは困難でございますけれども、本法案による制度整備によりまして、米国を含む同盟国、同志国との重要情報のやり取りが円滑に行われるようになり、経済安全保障分野における国際協力というものが一層推進するということを期待いたしております。

○塩川委員 同盟国、同志国との重要情報の円滑な保護、活用ということであります。

 そこで、この法案を準備する有識者会議の議論で、「おそらくアメリカに対してはそれなりの相互のやり取りがあるため、ある種の相場観があると思うが、今後の経済安全保障上の重要機微情報に関しては、アメリカだけではいけないのではないか。例えば、防衛の特定秘密保護法の話になるかとは思うが、GCAPのようなイギリス・イタリアといった国々との関係や、将来的にはAUKUSでのいわゆる新興技術を含めた技術協力だとか、そういったことに広がりが出てくることを考えると、日米間特有の理解が他国に共有されるかどうかということは考えておくべきだと思う。」このような発言がありました。

 ここで言う「日米間特有の理解が他国に共有されるかどうか」という話ですが、日米の間と、日本とイギリス、イタリア、オーストラリアとの間では、秘密保全の体制はどこが異なるということなんでしょうか。

○品川政府参考人 お答えいたします。

 本法案につきましては、一義的には我が国の情報保全制度を整備するものでございます。特定の他国との間でのみ通用する制度として整備するものではございません。

 情報保全制度につきましては、国によって法体系等の違いも含め多様でございまして、制度として完全に同一のもの、そのような同一のものとすることが求められるといった性質のものではございません。

 一般的には、この情報保全制度は、秘密情報の保護措置、信頼性の確認を含む、情報を取り扱う者の制限、漏えい時の罰則などにつきまして国内制度を整備するものでございます。

 その上で、かかる制度の運用面も併せて考慮をしつつ、諸外国それぞれから、自国が提供する、その当該外国の提供する秘密情報につきまして、自国が提供する秘密情報については、我が国、日本において実質的に自国と同等の保護が与えられているというふうに認められるようなもの、運用を含めた我が国の情報保全制度がそのようなものになるということが必要であるというふうに考えております。これは、御指摘のございました米国とはもちろんのこと、イギリス、イタリア、オーストラリアとも同様でございます。

 したがいまして、本法案が成立した暁には、制度を運用するために必要となる関係政令や運用基準、実施体制を速やかに整備をいたしまして、制度の実効的な運用を確保するとともに、我が国の制度について、運用面も含め、諸外国にしっかり説明をしてまいりたいと考えております。

○塩川委員 確認ですけれども、アメリカとの間には特別防衛秘密がありますけれども、それ以外の国との間にはありませんよね。

○品川政府参考人 お答えいたします。

 米国との間で御指摘の特別防衛秘密に関します制度があることは、御指摘のとおりでございます。

○塩川委員 アメリカとの間には、七十年にわたってこういう情報保全の取組をやってきているわけであります。そういった点で他国との差があるというのがこのような議論の背景にあると考えております。

 そこで、二〇二二年の十二月に、日本、イギリス、イタリアの首脳は、次期戦闘機の共同開発に係るグローバル戦闘航空プログラム、GCAPを発表しました。GCAPの実施に当たり、日英伊は、GCAPの管理等を三か国のために行う国際機関を設立することで合意をしております。

 毎日新聞の二月十九日のインタビューによると、ジュリア・ロングボトム駐日イギリス大使は、GCAPの成功には当事者間での防衛技術の円滑な移転と、信頼できる開発相手国や同盟国へ将来的に機体の輸出ができるような仕組みが欠かせないと述べております。次期戦闘機の共同開発に当たって、防衛技術の情報保全の強化と武器輸出、この二つを日本に求めるものとなっております。

 ロングボトム大使は、次期戦闘機の共同開発に当たって、機密技術の共同開発を促進するために欠かせないセキュリティークリアランス制度の導入に向けた議論を歓迎する発言を行っております。イギリス側は、次期戦闘機の共同開発に当たって、日本側にセキュリティークリアランス制度の強化を求めてきたのではありませんか。

○品川政府参考人 お答えいたします。

 我が国は、相手国・機関との間で相互に提供される秘密情報について受領国政府・機関が自らの国内法や関連規則に従って保護すること等を定めます情報保護協定を締結をしております。イギリスとの間でも締結をしているところでございます。

○塩川委員 防衛省でもいいですから、駐日イギリス大使が、このように、日本側にセキュリティークリアランス制度の強化を求める、こういう発言があるというのは当然承知していますよね。

○弓削政府参考人 お答えを申し上げます。

 セキュリティークリアランスに関する御質問でございますが、現在、イギリスとイタリアとの共同開発を進めている次期戦闘機は、第五世代戦闘機を超える最新鋭の戦闘機であることから、三か国による共同開発において取り扱う秘密情報につきましては、我が国では特定秘密に指定し、管理しているところでございます。

 この点、新たなセキュリティークリアランス制度におきましては、その対象となる重要経済安保情報は特定秘密を含まないものと承知しておりまして、次期戦闘機の共同開発におきまして、民間企業の従業者は特定秘密を取り扱うため、新たなセキュリティークリアランスの対象にはならないというふうに認識しているところでございます。

 他方、次期戦闘機の共同開発に必要な特定秘密を民間企業が取り扱うに当たりましては、その従業者に対しまして特定秘密保護法に基づく適性評価を実施しておりまして、適切なクリアランスを付与しているところでございます。

○塩川委員 では、何でイギリス大使が日本にセキュリティークリアランスを求めているんですか。

○品川政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのイギリス大使の発言が、どの時点で、どの文脈でなされたものかは承知しておりませんが、私どもの今提出しております本法案につきましては、昨年来の有識者会議での御議論を踏まえまして、経済安全保障分野におきますセキュリティークリアランス制度につきまして、我が国の法制度としてどこが必要かということを検討して提出させていただいたものでございます。

○塩川委員 GCAP発表の翌日の二〇二二年十二月十日の読売新聞でもロングボトム大使のインタビューがありまして、機微情報に触れる権限を与えるセキュリティークリアランスを日本の産業界に導入することを支援し、両国の協力関係を進展させていくということも述べております。

 昨年の四月二日の日本記者クラブ講演で、やはりロングボトム大使は、日本の産業界に実行可能なセキュリティークリアランスシステムを導入するための政府有識者会議の設置を歓迎しますと述べております。今の、まさに今回の法案を準備をする政府のコミッション、有識者会議の設置を歓迎すると述べているという点でも、セキュリティークリアランス導入についての発言を繰り返しておられます。

 そういう点でも、今回の法案というのが、まさに次期戦闘機の共同開発につながる、イギリス側のセキュリティークリアランスの要求に応える、そういうものになっているということじゃありませんか。

○飯田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘のございました有識者会議におきましては、いわゆる法形式についての議論をしていたものではございませんで、まさに経済安全保障分野における機微情報について、現行の特定秘密保護制度を含めてどのような形で重要経済安保情報を保護していくのか、あるいはそれを、国際的に通用するものをどうすべきかということについての御議論をいただいたものでございます。

 ロングボトム大使の発言の詳細については承知しておりませんけれども、そういった、我が国のセキュリティークリアランス制度を持つ既存の特定秘密保護制度、あるいは、有識者会議でその後検討されることとなる経済安全保障分野の機微情報に関するセキュリティークリアランス制度全般を指してお話しになっていたものではないかというふうに認識しております。

○塩川委員 民間企業にもセキュリティークリアランスを導入するために、今回、コンフィデンシャル級を導入する、そういうので対応しているのではないのかといったことが当然想定されるわけであります。

 このGCAPを管理する機関を設立するための条約がGIGO設立条約で、今国会に提出をされております。この条約には、秘密情報の保護規定があります。五十二条の(2)で、運営委員会は、情報保全に関する全ての分野において秘密情報を共通の程度で保護することを確保するとあります。

 この秘密情報を共通の程度で保護することを確保するという中身として、イギリス側の秘密情報の共有に必要な秘密保全の仕組みづくりのために今回の法案も含めた措置が求められているということじゃありませんか。

○弓削政府参考人 お答え申し上げます。

 日英伊の次期戦闘機の共同開発に係るGIGOや、これに対応する共同事業体制における秘密情報の保護の体制につきましては、現在、既存の日英、日伊、英伊の二国間の情報保護協定等を参考に、日英伊三か国で検討中でございます。

 その上で申し上げますと、三か国及びGIGOにおきまして、同等の秘密には同等の保護措置を与えられるよう検討を進めているところでございます。

○塩川委員 アメリカとの関係での特別防衛秘密というのはイギリスやイタリアとの関係にはない、そういった点についても、イギリス側からの要望が出てくる背景があるわけであります。

 今回の法案は、同盟国、同志国の多国間連携で兵器開発を推進するためのものと言わざるを得ません。

○星野委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、おまとめください。

○塩川委員 殺傷能力のある兵器を他国に売りさばくような、死の商人国家を目指すことは断じて認められないということを申し上げて、質問を終わります。