【内閣委員会】秘密保護法拡大法案/身辺調査=適性評価/個人情報根こそぎ調べる

 秘密保護法拡大法案(重要経済安保情報法案)で規定する「セキュリティ・クリアランス(適性評価)」は、機微な個人情報を根こそぎ調べ上げるものだと批判しました。適性評価は、政府が秘密を扱う資格者を認定する制度。

 私は、法案の適性評価は秘密保護法の運用基準を参考にして行われることを確認。秘密保護法の適性評価では、対象者が提出する質問票は30ページにも及びます。

 私は調査内容について質問。内閣官房は、海外渡航歴や躁うつ病などの精神疾患の治療歴、借金や家賃の滞納・クレジットカードが停止されたことはあるかなどの経済状況などが対象となることを認めました。

 私は、警察を含む「公務所」、医療機関などの「公私の団体」に照会して必要な事項の報告を求めることも出来ることを指摘し、警察や公安調査庁、医療機関などに対し照会を行うことは対象者に通知されるのかと質問。

 内閣官房は「本人への通知がなければ本人は知らない」と答え、通知が義務でないことを認めました。

 私は、秘密保護法の運用基準では、適性評価の調査後も、対象者が秘密を漏えいする疑いがある時には、事業者に速やかに政府に報告させる仕組みになっていると指摘。「上司から継続的に監視されることになる」「二重三重に調査がかけられる仕組みだ」と批判しました。

 内閣官房は「報告を求めるのは人事管理の範囲内のものだ」と釈明しました。

 私は「収集された大量の個人情報について削除のルールはあるのか。個人情報が政府に溜まり続けるのではないか」と追及。

 高市大臣は「適性評価の実施後、10年間は保存しておくことが必要だ」と答弁。

 私は照会を受けた警察側で保存する場合はどうかと迫ると、内閣官房は「公文書管理法などに基づき適切に廃棄される」と答えました。

 私は「大川原化工機事件に反省すら示さない政府に、不信感が募るのは当然だ」と強調しました。

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「議事録」

第213回国会 令和6年4月3日(水曜日) 内閣委員会 第7号

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今日は、最初に適性評価の調査について質問をいたします。

 高市大臣にお尋ねしますが、今回の法案では秘密保護法と同様に適性評価を行うことになりますが、今回の法案における適性評価に当たっては、秘密保護法で作られている運用基準、これに倣って作るものなのかどうか、その点についてお答えください。

○高市国務大臣 本法案に基づく適性評価につきましては、第十二条から第十六条において、その実施に関する手続を定めております。十八条において、その実施について統一的な運用を図るための運用基準を有識者の意見を聞いて作成し、閣議決定することとしております。

 委員お尋ねの運用基準を作成するに当たってでございますが、先行制度である特定秘密保護法の運用基準を参照しながら、この法案が重要経済安保情報を我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者に提供し共有する制度であることに鑑み、有識者会議最終取りまとめでも指摘されておりますとおり、民間事業者に分かりやすいものとなるように検討してまいりたいと思っております。

○塩川委員 特定秘密の運用基準を参照しながらという話でございます。

 そこで、現行の特定秘密保護法での運用基準に即して、それを踏まえて今回の法案ではどういうふうに考えるかということでお尋ねしたいと思うんです。

 運用基準に基づく適性評価の調査方法について、特定秘密において本人が提出をするという質問票は三十ページにも及ぶわけですけれども、こういった質問票については大体同様のものをこの法案でも求める考えということでよろしいでしょうか。

○飯田政府参考人 お答えをいたします。

 今御質問がありました質問票と申しますのは、適性評価のための調査において、重要経済基盤毀損活動を始めとする七項目の調査事項があるわけですけれども、それらについて、その調査事項を確認するために更に少し細目を設けまして質問を構成しているところでございまして、この質問票につきましても、特定秘密保護法と同様に、運用基準の中でどのようなものにするのかについて、有識者の意見をお聞きしながら、明確なものを今後策定していきたいというふうに考えております。

○塩川委員 この質問票においては、調査対象者の方への質問として、海外渡航歴についてはどのようなことを記入するようになっているんでしょうか。

○飯田政府参考人 お答えいたします。

 特定秘密保護法の例を申しますと、質問票には、職務上の出張を除き、過去十年以内に海外に居住又は渡航したことがある場合には、その国や都市の名称、期間、目的を記載することを求めているものと承知をしております。

 本法案におきましても、重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項として、特定秘密保護法の例も参照しながら、質問票の中で確認する事項について運用基準の中で明確にすることを想定しております。

○塩川委員 過去十年の海外渡航歴を記載するというのを求めているということでよろしいですか。

○飯田政府参考人 今お答えしたとおり、過去十年ということでございます。

○塩川委員 精神疾患についてはどのようなことを記入するんでしょうか。

○飯田政府参考人 精神疾患につきましても、先ほど申し上げた調査項目七つの項目の一つでございまして、それらについて、具体的な病名、ちょっと今手元にございませんけれども、具体的な病名も例示をしながら、場合によっては医療機関に確認をしていただいて記載を求めるということになっております。

○塩川委員 質問票を見ますと、過去十年以内に、統合失調症、躁うつ病、薬物依存症、アルコール依存症その他の精神疾患に関し、治療又はカウンセリングを受けたことがありますかと。こういう質問項目ということでよろしいでしょうか。

○飯田政府参考人 今手元にございますので申し上げますと、精神疾患に関し、治療又はカウンセリングを受けたことがあるか記載しますが、治療又はカウンセリングを受けたことがあるとの事実だけをもって、特定秘密を漏らすおそれがないと認められないと直ちに判断されることはありません、必要な場合には、医療機関に照会した上で、具体的な症状や治療の経過、再発の可能性等を踏まえ、特定秘密を漏らすおそれがないかどうかを判断いたしますといったような記述もございます。

○塩川委員 適性評価の実施について対象者に告知を行う告知書にも、必要な場合には、医療機関等に照会した上で、具体的な症状や治療の経過、再発の可能性等を踏まえ、特定秘密を漏らすおそれがないかどうか判断されますとありますが、これはそのとおりでよろしいですか。

○飯田政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘のございました告知書と申しますのは、適性評価を実施するに当たって、まず、今御指摘のあったような事項も含めて、適性評価がどのように行われるかということを評価の対象者の方に告知をして、その上で、その内容について十分御理解をいただいた上で適性評価の実施についての同意書などをいただきます。その上で、同意いただいた方につきましては、先ほど質問がございました質問票への記入をお願いをする、そういう流れになっております。

○塩川委員 その告知書には先ほど申し上げたことが書かれているわけであります。

 質問票においては、信用状態その他の経済的な状況に関して、どのような質問を行っているでしょうか。

○飯田政府参考人 質問票におきまして、信用状態その他の経済状況としては複数の項目がございます。

 まず第一に、借入れの状況ということでございまして、住宅、車両又は耐久消費財の購入を目的としたもの、教育のためのもの、クレジットカードを使用した商品等の購入に伴うもののほか、それ以外の項目としては、過去十年以内に国税等を滞納している又は滞納したことがありますかといったような事項でありましたり、あるいは、過去十年以内に自己破産をしたことがありますか、あるいは、過去十年以内に支払いの不備等の問題によってクレジットカードの使用を停止されたことがありますか、あるいは、過去十年以内に民事執行手続を受けたことがありますか、あるいは、過去十年以内に賃金、給付金、資産を差し押さえられたことがありますか、こういったような事項が明記をされているところでございます。

○塩川委員 かなり詳細に質問項目が及んでいるわけであります。

 若干省略されましたが、国税だけではなくて社会保険料や家賃の滞納状況も質問項目にあるということですね。

○飯田政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございましたとおり、過去十年以内に国税や保険料、家賃等の支払いが滞納しているかどうかという記載事項もございます。

○塩川委員 これは、対象者に対する質問票と同時に、上司等による、その周辺の方々に対しての調査も行うということで、上司等による調査票を出してもらうとなっているわけですけれども、この上司等による調査票にはどのような調査項目があるんでしょうか。

○飯田政府参考人 お答えいたします。

 特定秘密保護法における、上司等に対して提出を求める調査票ということでございますけれども、先ほど申し上げました七つの調査事項のそれぞれについて、例えば、特定有害活動及びテロリズムとの関係につきましては、評価対象者が特定有害活動やテロリズムを行ったこと、又はこうした活動を支援したことが認められますかという事項が記載がございまして、これに対して該当すると認められる場合はチェックをつけていただく、そしてその内容を御存じであれば記載していただくという形の調査票になっております。

○塩川委員 対象者の周囲の方、上司などがその素行についてチェックをするということが調査票の中身となっているということであります。

 こういった調査の内容に調査機関の側で疑問が生じた場合には、何を行うことになっているんでしょうか。

○飯田政府参考人 お答えをいたします。

 特定秘密保護法では、質問票や調査票に記載された事項について疑問点が生じたときは、必要に応じまして、これは特定秘密保護法の規定に基づく権限ということでございますけれども、適性評価を実施している行政機関が評価対象者の上司等に対して質問を行ったり、現在又は過去の勤務先に人事に係る情報の報告を求めたり、あるいは評価対象者本人の方との面接を行ったり、公務所又は公私の団体に対して照会を行うことを必要に応じ行うとされております。

○塩川委員 疑問が生じた場合に調査機関が必要に応じて行うこととして、本人に対する面接、あるいはその上司や同僚その他知人への質問を行う、そういうのとともに、現在の所属企業だけではなくて過去に働いていた会社も含めて人事管理情報の報告を求めるということも今答弁であったところです。あわせて、公務所、公私の団体への照会ということです。

 調査内容に疑問が生じた場合に、上司等への質問、また、現在及び過去の所属企業に対して人事管理情報の報告、本人に対する面接、それでも疑問が解消されない場合に公務所、公私の団体への照会ということですけれども、この公務所、公私の団体への照会には警察や医療機関、金融機関への照会も入るんでしょうか。

○飯田政府参考人 お答えいたします。

 特定秘密保護法では、公務所や公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めたりするわけでございますが、これについては、先ほど申し上げました告知書で本人にあらかじめ知らせて、書面により同意を得ることとしております。当該告知書には、照会先として医療機関と信用情報機関を例示していると承知をしております。

 また、今御質問に警察とあったかと思いますが、警察に対する照会も公務所ということで実施することはあり得るというふうに承知をしておりますが、実際に照会をしているかどうか、何を照会しているかは調査に支障を及ぼすおそれがあるというふうに聞いておりまして、私としてのお答えは差し控えるべきものと承知をしております。

○塩川委員 こういった公務所、公私の団体への照会を行う際に、そのことは本人に通知はされるんでしょうか。

○飯田政府参考人 私は特定秘密保護法の担当ではございませんので、詳細については承知をしておりませんけれども、告知書において公務所照会を行うということはお知らせした上で、本人の同意をいただいているというふうに認識しております。

 個々のケース、あるいはそれぞれのときに実際に御本人に通知をしているかどうかということについては、申し訳ございません、承知をしておりません。

○塩川委員 そこは事前にお願いしていて、秘密保護法の担当が答えるのか、今回の法案の担当の方が答えるのか、それはそちらの判断でということで答弁者で指定されたわけですから。

 この点、ちょっと、本人に知らせるのかどうかというのは、事前にもお伝えしている項目ですけれども、はっきり答えてもらえますか。

○飯田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、照会の実施に当たってどこの公務所に照会をするかということについては、一つ一つお伝えすることについて、これはケース・バイ・ケースで判断をしているものというふうに認識をしております。

 それから、先ほど、実際に照会をするかどうか、何を照会しているかは、調査に支障を及ぼすおそれがあるケースもあるというふうに認識をしておりますので、それら全てについて御本人に通知を必ずしもするものではないというふうに認識をしております。

○塩川委員 今、曖昧ですけれども、ケース・バイ・ケースといっても、本当に伝えることになっているのかどうか、そこはちょっと改めて返事が欲しいと思います。

 それから、警察などについては何を照会しているのかも含めて明らかにできない、お答えを差し控えたいということですから、そうしますと、警察や公安調査庁に対して照会を行ったような際に、そういったことについては、本人はそういう問合せがあったということは何も分からないということなんでしょうか。

○飯田政府参考人 公務所を、行った場合について、本人に通知をしなければ本人は御存じないものというふうに思います。

○塩川委員 もう一回ちょっと答えてほしいんですが、本人に通知をしなくてもよいと。

○飯田政府参考人 公務所への照会についてはケース・バイ・ケースであろうというふうに申し上げました。その上で、本人にその旨を通知をしなかったということであれば、本人としては御存じないものというふうに認識しております。

○塩川委員 自分が知らないところでいろいろ照会、調査も行われるということになるわけであります。

 そうしますと、警察や公安調査庁に対して照会を行ったような場合に、警察や公安調査庁側に照会の記録というのは残ったままなのか、削除をされるのか、この点はどうでしょうか。

○飯田政府参考人 お答えを申し上げます。

 特定秘密保護法におきまして、警察や、今公安調査庁とおっしゃいましたでしょうか、に対する照会が実施されることはあり得るというふうに承知をしておりますが、実際に照会をしているかどうか、何を照会しているかにつきましては、お答えを差し控えたいと思います。

 その上で、一般論として申し上げますと、行政機関でございますので、照会を受けた行政機関側に照会が記録されるということはあろうかというふうに思っております。

○塩川委員 そういう点では、調査の中身が記録をされるということであります。

 それから、秘密保護法においては、適性評価の当事者には誓約書を書いてもらうことになります。その誓約書の中には、事情の変更があった場合に、どのような事情変更があったかを申告することが書かれておりますが、今回の法案でも同様の措置を取るということでよろしいでしょうか。

○飯田政府参考人 特定秘密保護法におきましては、誓約書を適性評価の対象者の方に書いていただいているわけでございますが、その誓約書の中に、特定秘密保護法の運用基準を引用いたしまして、運用基準の中に掲げる事情について変更があった場合には申告をするといったようなことが書かれているというふうに認識をしております。

 今回の法案におきましても、こうした誓約書をいただくことも想定されるわけでございますけれども、今後、有識者の意見をお聞きしながら、その内容、手続について明確にし、それを運用基準として作成してまいりたいというふうに考えております。

○塩川委員 三十ページに及ぶ質問票で、書いた後、事情の変更がありました、そういうことについては報告してくださいと誓約書にあります。そうした場合に、事情の変更があった場合には調査をやり直すということになるんでしょうか。

○飯田政府参考人 お答えをいたします。

 適性評価を受けられて、特定秘密を漏らすおそれがないと認められた方について、事情変更があったために自己申告があった場合の対応でございますけれども、その対応は、基本的には、まさに事情変更の内容に応じて行政機関において判断されるものというふうに認識しております。

○塩川委員 いわば政府による継続的な監視という仕組みになっております。

 それから、対象者、従業者の方が所属する適合事業者において、適合事業者が対象者に対する疑いを生じさせる事情があると認めたときは速やかに政府に報告するということになっているのではありませんか。

○飯田政府参考人 特定秘密保護法の運用基準におきましては、適合事業者は、従業者について、特定秘密を漏えいするおそれがないと認めることについて疑いを生じさせる事情があると認めた場合には、速やかにこれを契約先の行政機関における当該特定秘密に係る特定秘密管理者に報告することと定めているところでございます。

○塩川委員 そうなりますと、その対象者、従業者の方がホルダーとなったような場合であれば、上司から継続的にチェックをされる、上司から継続的にいわば監視をされる、こういうことになるのではありませんか。

○飯田政府参考人 お答えをいたします。

 適合事業者に事情変更があった場合に報告するということは、これは通常の事業の運営あるいは人事の管理の中で知り得た場合にお願いをしているということでございまして、適性評価を受けられて、特定秘密を漏えいするおそれがないと認められて、特定秘密の取扱いの業務に従事している方を常時監視するといったようなことを上司の方々あるいは適合事業者に要請するものでも、あるいは義務づけるものでもございません。

○塩川委員 疑いを生じさせる事情があると認めたときには、人事で知り得た場合等といいますけれども、そういった疑いを生じさせる事情があるということについては、これは、でも、継続的にチェックをするということにはなるんですよね。

○飯田政府参考人 お答えをいたします。

 どのような事情変更について報告を求めているかということの例示でございますが、例えば、罪を犯して検挙されたこと、懲戒処分の対象となる行為をしたこと、情報の取扱いに関する規則に違反したこと、違法な薬物の所持、使用など薬物の違法又は不適切な取扱いを行ったこと、こういったことの事情変更でございますので、常時監視を要請するようなものではございません。

○塩川委員 こういった調査票の項目に沿って、疑いが生じる事情があった場合についてはそれをチェックするということですから、それは五年、十年というスパンで継続的にチェックを行うという仕組みにはなるわけであります。いわば二重三重に調査がかけられる仕組みになっております。

 有識者会議最終取りまとめには、信頼性が確認された後又は信頼性の確認手続中に本人側の事情変更があった場合に、信頼性の確認、評価を行う各行政機関や調査機関がこれをタイムリーに把握できるよう、本人からの自己申告の仕組みを確保するとともに、信頼性が確認された後に各行政機関と本人とのコミュニケーション等により継続的に状況を把握する仕組みについても検討していくべきとありますけれども、これはどのような仕組みをつくるということなんでしょうか。

○飯田政府参考人 お答えをいたします。

 適性評価のための調査というのは、まさに適性評価調査の時点でのみ行われるものである一方で、これが特定秘密の場合であれば五年、あるいは今回の重要経済安保情報の場合であれば十年という期間を設定していることでございまして、有識者会議の取りまとめは、その間に事情変更があって、今回のケースでいえば重要経済安保情報、あるいは委員の方々には特定秘密についても念頭にあったかと思いますけれども、そこで、情報漏えいのおそれがないとは認められない状況になる状況というのは情報保全制度の趣旨に照らして適当ではございませんので、今委員から御指摘のあったような指摘をいただいたところです。

 具体的な仕組みについてでございますけれども、適性評価の実施後に先ほど申し上げたような事情変更があった場合には、評価を行った行政機関の長に、もちろん事前の同意を求めるわけでございますけれども、自己申告することを誓約書で求めること、あるいは、先ほどの上司の方の対応として、行政機関の職員や適合事業者の従業員について一定の事情変更があったことを知った場合には、評価を行った行政機関の長に対する報告を求めることなどを想定しております。

 いずれにいたしましても、今後、有識者の意見を聞いて検討を行います運用基準において、この重要経済安保情報の適性評価の実施を含めた運用について検討する中で、しっかりと内容について検討してまいりたいと考えております。

○塩川委員 十年間継続的に状況を把握する仕組みということですから、十年間継続的に調査、監視をするという仕組みをつくるという話であります。

 大臣にお尋ねします。

 適性評価は本人の同意が前提ということですけれども、働く労働者の側は調査を拒否すれば不利益を受けるおそれがあり、事実上の強制となるのではないのか、このような懸念があります。不利益取扱いに対する規制策はあるんでしょうか。また、個人情報の目的外利用を禁止する実効性ある対策はあるのか、罰則を設けるなど、どういう対応を考えているのか。お答えください。

○高市国務大臣 企業において、もしも上司の方が適性評価を受けることを求めた場合におきましても、それに同意しないことが許されるような状況が実質的に確保されるということが重要だと考えております。

 そのためには、適性評価を受けることに同意しなかった事実の目的外使用を禁止する十六条二項の実効性を担保するということが重要です。禁止の趣旨を事業者及び本人の双方に十分説明して理解を得るということとともに、行政機関が十二条三項による同意の確認をする際に、同意は任意であるということを説明して、さらに、強要などを受けていないかを確認するということを考えております。

 さらに、同意をしなかった方が、その後、これを理由として不利益な措置を受けることがないよう、今後策定する運用基準などにおきまして具体的な禁止事項を明示すること、禁止の遵守を契約などでも求めること、本人が不利益取扱いを受けたと考えた場合に相談できる窓口を設けることなどの措置を検討していく予定でございます。

 これらを通じて、事実上の強制ということにならないようにしてまいります。

○塩川委員 不利益取扱いとならないように契約等で担保するという話ですけれども、この件についての罰則というのはないんですよね。

○高市国務大臣 不利益取扱いの禁止の規定の違反に罰則というものは法定しておりませんけれども、この実効性を担保するために、先ほど申し上げましたように、運用基準で不利益な取扱いを明示すること、禁止規定の遵守を行政機関と適合事業者との契約などでも求めるといった措置を取ることを考えております。

 以上でございます。

○塩川委員 実効性ある対策を取れる保証を認めることはできません。

 冒頭の質疑の中で旅行先などについても調査対象となっておりますけれども、このような旅行先や交友関係なども調査対象となっているということで、そういった調査において、やはり私生活に制約を受けることになるのではないのかという懸念があるんですが、その点についてはどうですか。

○飯田政府参考人 お答えいたします。

 御質問は適性評価を受けた後の対応だというふうに認識をしておりますけれども、適性評価を受けて重要経済安保情報あるいは特定秘密、そういったものを取り扱うこととなった方に対して海外渡航等に関しての注意喚起をするということはあり得るわけですけれども、この法案の制度の下で、今御指摘のあった、例えば旅行先を制限するといったような私生活上の自由を制限することはございません。

○塩川委員 こういった個人情報が収集、集積していくわけですけれども、大臣にお尋ねします。こういった収集された大量の機微な個人情報については、削除のルールというのはあるんでしょうか。個人情報が政府にたまり続けていくことになりはしないのか懸念があるんですが、その点はいかがですか。

○高市国務大臣 適性評価のために収集した個人情報につきましては、後に事情変更の自己申告などがあった際に再評価を実施すべきかどうか判断する際に用いたり、他の行政機関による適性評価に供される可能性がありますので、適性評価の実施後十年間は保存しておくことが必要だと考えております。これは、調査を受けられる側の負担軽減にもつながることであると思っております。

 ただ、機微な個人情報でもありますので、いたずらに長期にわたって保管することは適当ではございません。先ほど申し上げた一般的な保存期間十年のほかに、適性評価への不同意に関する情報の保存期間など、十年よりも短い保存期間が設定できるケースについても、運用基準などで適切なルールを定めることを予定いたしております。

 ですから、収集した機微な個人情報を制度の趣旨から見て不必要に長い期間保有するようなことは考えておらず、御指摘のような懸念は生じないと思っております。

○塩川委員 保存期間十年ということですけれども。

 収集された個人情報が例えば公文書管理法上の公文書として取り扱われる、そういった扱いでの管理基準、廃棄のルールもあると思うんですけれども、ただ、個別の情報が例えば収集、集約されることによって、文書という形ではなくてエクセルのデータとかに転換をしていくといった先、例えば警察などにそういう情報が収集されるような場合においても、それは削除されるんでしょうか。

○飯田政府参考人 まず、適性評価を行いました行政機関における文書の保存につきましては、先ほど大臣から答弁申し上げたとおり、基本は十年ということでございますけれども、個別、個々のケースについて運用基準の中で明確にしていくことを想定しております。

 もう一つは、先ほどの御質問と関連して、公務所照会などを行った場合の文書なり情報の取扱いというふうに受け止めておりますけれども、そういった情報につきましても、もし情報が記録されているということでございましたら、これは当然のことながら、公文書管理法や個人情報保護法などに基づいて適切に廃棄されるものというふうに考えております。

○塩川委員 本人も分からないところで情報が渡される、照会もされる、それが実際どうなっているかもよく分からないというときに、一般論的に公文書管理法や情報公開法と言われても納得いくものではありません。調査項目が多岐にわたるという点では、プライバシーの侵害、人権の重大な侵害ということが起こり得るということを強く危惧するものであります。

 こういった経済安保に関わっては、大川原化工機の事件がありました。経済安保の名の下に、長期勾留された相談役が亡くなるなど、人権じゅうりんの違法捜査が行われたわけであります。

 こういった、検察が公訴取消しをした冤罪事件を政府は反省しているんでしょうか。

○飯田政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の事案については承知をしておりますけれども、刑事事件の捜査あるいは公判の在り方については所管外でございますし、あるいは現在も訴訟が係属中ということでございますので、お答えは控えさせていただきます。

○塩川委員 検察が公訴取消しをした事件なんですよ。立件しても維持できないということで自ら取り下げるといった案件について、そのことについて政府としての反省の言葉がないんですよ。これはやはり、国民の皆さん、特に当事者の大川原化工機の関係者の皆さんにとってはとても納得のいくものではない、こういう不信感が大きくなるのは当然じゃないでしょうか。

 大臣、その点についてはどのように受け止めておられますか。

○高市国務大臣 当該事件において、お亡くなりになった方がいらっしゃいます。適切な治療が受けられなかったという、御遺族の悔しい、そして悲しいお声も伺っております。

 しかしながら、捜査の在り方そしてまた司法案件そのものは所管ではございませんので、また係争中のものでございますので、私の立場からこれについて申し上げることは控えさせていただきます。

○塩川委員 政府としての反省もないまま、経済分野全般への秘密指定の体制拡大が更に同じような事件を引き起こすんじゃないのか、こういう強い危惧を覚えるんですが、その点についてはいかがですか。

○高市国務大臣 今回の法案におきましては、何が重要経済安保情報であるのか、その要件をしっかりと法律案に書き込んでおります。これは、諸外国の例と比べましても、今回の法律案に書き込んである様々な要件というのは詳しいものでございます。

 それから、もう一つは、ちゃんとそれが重要経済安保情報であるということが表示される、これは絶対の条件でございます。

 そして、しかも、自らその情報を取り扱うということについて希望された適合事業者の方と契約を結んだ上で、その適合事業者の従業者の方で、御本人の同意を得た上で調査を行って、この情報を取り扱っていただくということでございます。

 だから、何が重要経済安保情報なのか全く分からないとか、判断がつかないとか、御本人がそれを理解しないまま取り扱うというようなことが起こるようなものではございません。

 また、外為法の方は所管外でございますけれども、明確な法律案だと思っております。

○塩川委員 重要インフラ、サプライチェーン、大きく広がるわけですから、そういう懸念は拭えないということを申し上げて、質問を終わります。