【内閣委員会】新型コロナ/緊急事態宣言/専門家判断といいながら政府が主導

 新型コロナウイルス感染症を対象に加えた改正新型インフルエンザ特別措置法について質問。

 特措法は、緊急事態宣言を出す要件について、政府が「国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれ」があり「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある」と判断した場合と定めています。

 私は「おそれがある」とはどのような状況か、と質問。

 西村康稔担当大臣は「特措法施行令6条で定めており、感染経路が特定できない場合などだ」と答弁しました。

 私は、現状でも経路が特定できない患者がいる。要件を満たしているということか、と追及。

 西村大臣は「頭を悩ませているところだ。政令を素直に読めばそういう印象を持つが、法律で全国的と生活・経済に甚大な影響を及ぼすことを要件と定めている」と述べ、要件があいまいであることを認め「専門家の意見を聞いて判断する」と繰り返しました。

 私は、専門家の意見を聞く場合に、緊急事態の要件に合致するかどうかの判断要素を政府対策本部長(総理大臣)が示すことになっているのか、と質問。

 西村担当大臣は「いろいろなデータ、材料を示しながら専門家の意見を尊重してく」と答えました。

 私は、専門家の意見を聞くお膳立ても政府が行う仕組みだ。判断の前提となるたたき台まで政府が出すとなると、政府の一存で緊急事態宣言が行われる懸念がぬぐえない、と批判しました。

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「議事録」

<第201通常国会 2020年3月18日 内閣委員会 4号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 最初に、新型インフル等特措法の改正の部分について西村大臣にお尋ねをいたします。
 やはり、私権の制限を伴う緊急事態宣言、それへの要件がどうなのかといった点というのは極めて重要な点だと思っております。そういう点でも、新型コロナウイルスの感染症の状況がどうなっていくのか、それがどういう判断で、どういった措置を行っていくのかというのをちょっと確認的にまずお聞きしたいんですが、最初に、新型コロナウイルス感染症の現状認識、今の実態、これについてはどういうふうになっているのか、この点について御説明をいただけないでしょうか。

○西村国務大臣 お答え申し上げます。
 三月九日の専門家会議におきまして、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度持ちこたえている、そういう状況であるものの、同時に、依然として警戒を緩めることはできないとの見解が示されております。その見解を踏まえて、大規模なイベントなどの自粛なりを、安倍総理から、十日間程度続けていただくようにということをお願いをしたところであります。まさに国内の急速な感染拡大を回避するために重要な時期に来ているというふうに認識をいたしております。
 あすにでも専門家会議を開いて、その後のこの自粛の成果、特に、北海道で先駆けて学校休校をやり、外出の自粛等を行っていますので、その成果がどの程度出ているのかということを検証していただいて、今の状況を御確認いただきたいと思っておりますけれども、他方で、昨日、専門家会議の方からは、緊急提言のような形で、欧米で、特にヨーロッパで感染が急速に拡大をしているという中で、入国に一定の制限を加えるべきではないかという趣旨の提言もいただいております。日本は何とか持ちこたえている状態でありますけれども、ヨーロッパで特に感染が拡大が広がっているというふうに認識をいたしております。

○塩川委員 何とか持ちこたえているけれども、警戒の手を緩めてはいけないという話ですけれども、もう少しひもといていただくとどうか。
 例えば、参議院の審議の際に、西村大臣の答弁の中で、この現状認識ということで、国内の複数地域で感染経路が明らかでない患者が発生してきている、一部地域には小規模患者のクラスターが把握され、感染の拡大のおそれがある、このように述べたというのは、まさに現状認識として述べておられたということでよろしいでしょうか。

○西村国務大臣 はい。
 さらに、クラスターの状況については、昨日十七日の十二時の時点で、クラスターの数は十三、都道府県は八でありますけれども、したがって、そういう患者が広がっているクラスターがあるということと、何人かの感染の経路がわからない人も出てきているという状況でございます。

○塩川委員 クラスターが、そういうのが広がっているということと、感染経路が明らかでない患者が発生してきて、それが複数地域で生まれてきているという状況です。
 それで、新型インフル特措法の改正では、新型コロナウイルス感染症の蔓延のおそれが高いと認めるときに政府対策本部を設置します、以降の一連の措置に進むわけですけれども、この蔓延のおそれが高いと認めるときというのはどういう状況なのかについて、改めて確認したいと思います。

○西村国務大臣 この蔓延のおそれが高いと認めるときについては、厚生労働大臣において専門家の意見を聞いて適切に判断されるというふうに考えておりますが、御指摘の、どういう状況なのかということにつきましては、先ほど申し上げたクラスターの数とか、その大きさというか広がりというか、そういったこと、それから感染経路など、感染拡大の状況を踏まえて検討がなされて、専門家がそうした検討を行い、その御意見を聞いて、厚生労働大臣において適切に判断されるものというふうに考えております。

○塩川委員 この点についても、蔓延のおそれが高いと認めるときということで、参議院、この法案の審議の際の西村大臣の答弁に、国内で相当数の都道府県で患者クラスターが確認されるなど、現状よりも更に感染が拡大をして、今後の国内での流行が抑えられなくなった状況と述べている。これが、蔓延のおそれが高いと認めるときということでよろしいですか。

○西村国務大臣 そのように答弁をさせていただきました。
 さらに、今申し上げたように、クラスターの数、その広がりとか大きさ、そして感染経路など、そうした感染拡大の状況を踏まえて専門家は判断され、そして、それを聞いて、厚生労働大臣において判断されるというふうに考えております。

○塩川委員 そうしますと、現状認識と、この蔓延のおそれが高いと認めるときというものの違いがよくわからないんですけれども、どこが違うんですか。

○西村国務大臣 まさに専門家の皆さんが三月九日にもおっしゃっているように、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度持ちこたえているという状況でありますし、これは、今後急速な拡大につながっていくのか、それとも終息していくのか、何とか持ちこたえているという状況でありますので、この点も専門家の皆さんの御意見を賜りたいというふうに考えているところであります。

○塩川委員 持ちこたえていると。
 では、持ちこたえられない状況というのはどういう状況を指しているのかが聞きたいんですが。

○西村国務大臣 感染者の数は日々ふえておりますし、クラスターの数もふえてきているところでありますけれども、専門家の御判断、九日の御判断は、それでも持ちこたえているという状況の御判断をいただきました。これはまさに、私どもが何か政治的に、恣意的に判断するべき話ではなくて、私が、これで、こう思っているという、そういうふうに答えるべき話ではなくて、専門家の皆さんに御判断いただいて、それを尊重して、それを聞いて、厚生労働大臣において判断されるべきことだというふうに考えております。

○塩川委員 蔓延のおそれが高いと認めるときという話で、参議院側の参考人質疑の議論なんかも聞いていますと、感染のリンクを追うことができない状態があちこちに生まれている、そういう状況として把握をしているんですが、それは間違いですかね。

○西村国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、クラスターがどのぐらいの数で、どういうものがどのぐらいの大きさで広がってきているのかということも大事な要素だと思いますし、それから、感染経路が追えない人が出てきて、追えない患者さんがたくさん出てきているというのは、これはもうどういうふうに広がっているか追えない状態なわけでありますから、これも、感染経路というのも大事な視点だというふうに認識をしております。
 いずれにしましても、そうしたことを踏まえて、状況、データを踏まえて、専門家において判断をされるというのが適切であるというふうに考えております。

○塩川委員 そうしますと、国内で相当数の都道府県で患者クラスターが確認されるなど、現状よりも更に感染が拡大するといった場合に、では、相当数の都道府県という、相当数が幾つぐらいなのかとかという何らかの指標があるのかどうかとか、国内での流行が抑えられなくなった状況というのはどういうことを指しているのかとか、なかなか判然としないんですが、その辺は何らか示される指標とかというのはあるものなんでしょうか。

○西村国務大臣 ここも、私どもが何か数字なり基準を設定しているわけではございません。専門家の皆様の判断、この感染の拡大のスピードがどうなっているのか。欧米の推移を見ていましても、あるところからやはり急速にふえる角度が上がって、どっとふえていくところが、今ふえている国はあります。そうではなく、持ちこたえている日本のような、横ばいから少しふえているような国もあります。
 ですので、これは、先ほど申し上げたようなクラスターの数、状況、そして感染経路、こういったものを総合的に判断されて、専門家においてそうした判断がなされ、それを踏まえて厚生労働大臣が判断していくというものであるというふうに考えております。

○塩川委員 その場合、クラスターの問題ですとか感染経路の問題のお話があったんですけれども、やはり、そうはいっても、厚労大臣がそういう事態を認定するといった場合に、状況認識として、なかなか、こうだという指標として見えてこないという場合に、政府の裁量での認定という点についてやはり懸念があるところです。
 その上で、この緊急事態の要件についてですが、政令も踏まえて、緊急事態の要件がどのようなものかについての御説明をいただけますか。

○西村国務大臣 この特措法では、緊急事態宣言の要件として、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある新型インフルエンザ等が国内で発生しというのが一つの要件で、もう一つが、全国的かつ急速な蔓延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある事態が発生したと認めるときに緊急事態宣言を発出するというふうにされております。
 そして、その具体的な要件が政令に落ちておりまして、政令、新型インフルエンザ等対策特別措置法の施行令第六条でありますけれども、二つの項目がございます。
 一つが、新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全、脳症等の症例の発生頻度が、季節性のインフルエンザにかかった場合に比して、比べて相当程度高いと認められるものであり、二番目に、新型インフルエンザ等に感染し、又は感染したおそれがある経路が特定できない場合、又は新型インフルエンザ等を公衆に蔓延させるおそれがある行動をとっていた場合その他の新型インフルエンザ等の感染が拡大していると疑うに足りる正当な理由のある場合、こういうふうにされているところであります。
 この要件に該当するかどうかの判断については、既に閣議決定しております政府行動計画におきまして、専門家で構成されます基本的対処方針等諮問委員会、専門家の集まりであります諮問委員会に諮問をして、判断をしていくということになっております。

○塩川委員 政令を引用していただいて、重篤性、感染性と二つの内容についてのお話をいただきました。
 その場合に、現状認識で、冒頭確認しましたように、国内の複数地域で感染経路が明らかでない患者が発生してきているということだったわけですけれども、国内の複数地域で感染経路が明らかでない患者が発生してきているという現状認識と、今ここで言う緊急事態の要件としての感染経路が特定できない場合というのは、一致するというか重なる認識ではないのかと思ったんですが、そこはどうなんですか。

○西村国務大臣 その点、私も非常に頭を悩ませているところであるんですけれども、政令だけを素直に読みますと、こういう感染した経路が特定できない場合が一例でもあれば、何か緊急事態宣言の要件に当たるかのように読めるわけでありますけれども、実は、法律の方の条文を読むと、全国的かつ急速な蔓延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすか、又はそのおそれがあるということで、ここに全国的かつ急速な蔓延というのがかかっておりますので、政令だけを読めば、これは直ちに緊急事態宣言にいけるんじゃないかと読めますけれども、法律の方とあわせて読めば、全国的かつ急速な蔓延になっているのか、あるいはそのおそれがあるのかというところを判断をすると。
 そのことについては、我々が何か恣意的に、政治的に判断をするということではなくて、専門家の意見を聞いて判断をするということにしておりますし、専門家の皆さんの中には、テレビでいろいろな専門家がたくさんおられます、我々が聞いている専門家会議とは異なる方もたくさんおられますけれども、意見もいろいろ割れておられるように思いますけれども、法律を素直に読めばそういう印象を持ちますけれども、しかし、全国的かつ急速な蔓延によって何か影響が及ぶ、あるいは及ぶおそれがあるというところで、専門家の御意見をしっかり聞いて、それを尊重して判断をしていきたいというふうに考えているところでございます。

○塩川委員 全国的かつ急速な蔓延というのは、では、どういう状況なのかという話がまたかぶるわけですけれども、そういう点でも、いずれの場合でも、感染のリンクが追えるか追えないかというのは重要な要素だと思うんですけれども、その程度がどこまでなのかというのがなかなか見えてこない、現状認識と蔓延のおそれが高いと認めるときと緊急事態の要件と。その点での指標というのがなかなか見えてこないということがあります。
 もちろん、重篤性の問題などについても、ウイルスの致死率の話でいえば、分母が変わると当然値も変わりますし、年齢、また、高齢であれば高いとかということにもなりますから、そのとり方でもいろいろなこともあるわけで、何をどうとるのかといったことが要件となってくるという点では、非常に曖昧だということを言わざるを得ません。
 その上で、政府行動計画の話なんですが、政府行動計画には、政府対策本部長から基本的対処方針等諮問委員会に対し、新型インフルエンザ等緊急事態の要件に該当するかどうかについて、公示案として諮問するとあります。
 これは、政府対策本部長、総理大臣が基本的対処方針等諮問委員会に諮問する公示案というのは、緊急事態措置を実施すべき期間とか区域とか概要の案を諮問するだけではなくて、この緊急事態の要件の案といいますか、緊急事態の要件の判断のための要素、これも示すということなんですか。

○西村国務大臣 委員まさに御指摘のとおり、この緊急事態宣言の発出に際しては、閣議決定をしております政府行動計画に基づきまして、そこに書かれておりますので、基本的対処方針等諮問委員会に対して、これらの要件に該当するかどうかについて、公示案として諮問するということとされているところであります。
 当然、専門家の皆さんでありますので、この公示案の策定に際しても、感染拡大の状況などを踏まえて、こうした皆さんの御意見を聞きながら原案を作成していくということになるというふうに考えております。

○塩川委員 ですから、緊急事態の要件に該当するかどうか、その要件の判断のための要素も政府対策本部長が諮問委員会に示すということですよね。

○西村国務大臣 今想定しておりますのは、いきなりどんと開いて公示案を示すというよりかは、日々状況は、もしそういう事態に近づいてくれば切迫してきていると思いますので、専門家の皆さんに集まっていただくのか、個別にお話を伺うのか、やり方はいろいろあると思いますけれども、少なくとも、専門家の皆さんの御意見も聞きながら、こういう状況になっているというデータを示し、そして、専門家の皆さんの御判断を仰ぎながら、その中で、我々が勝手に公示案をつくるということではなくて、そういったことをお示しをしながら公示案をつくっていくということになるというふうに考えております。

○塩川委員 期間とか区域と概要の案を諮問するというのはあるわけですけれども、その前段として、緊急事態に当たるかどうかという、その緊急事態の要件の判断要素、そういうのもいわば素案として提示をするということではないんですか。

○西村国務大臣 公示案の中にどこまで書き込むかというのは、まだそこまで詰めておりませんけれども、しかし、専門家の皆さんに御判断いただくための当然材料はお示しをして、そして、そこで御判断をいただくということになるというふうに思います。

○塩川委員 緊急事態の要件の判断要素について、材料ということをおっしゃいましたが、政府対策本部長、総理大臣が示すということになります。
 そうなりますと、緊急事態の公示に当たって、政治的に判断するのではなくて、専門家の判断で云々とあるんですが、しかし、前提となるたたき台の方は政府の方から出すということになると、当然、それが要素として尊重される、政府の一存で緊急事態が宣言されるといった懸念は拭えないんですが、その点はどうでしょうか。

○西村国務大臣 私たちは、緊急事態宣言をやりたいと思っているわけではなくて、できればそういう事態にはなってほしくないと思っております。しかし、本当に全国的にかつ急速な蔓延の状態が仮に進んだ場合には、これは、国民の命を、生命を守るという観点から、こうしたことも考えなきゃいけない。
 ただ、それも、もちろん、突然に来るケースもあるかもしれません、突然感染が広がるというケースもあるかもしれませんけれども、今の状況ですと、毎日何人か広がっていき、クラスターもふえていく中で、何とか持ちこたえている状況で、できれば終息に向けて何とかできないかということで全力を挙げているところでありますけれども。
 そうした状況は、今も日々専門家の皆さんにお示しも、これは厚生労働省の方からいろいろ状況についてはお示しし、そうした中で、きのうは、欧米で広がっているから、ヨーロッパで特に広がっているから、それに対して対処すべきだという提言をいただいたところでありますし、日々いろいろなデータをお見せをしながらやってきております。
 特に、緊急事態宣言を出すという段には、これは、附帯決議もいただいておりますし、我々は専門家の意見をしっかり聞いて、私権の制約につながる措置があり得るということでありますから、そうしたことも頭に置きながら、適切に判断しなきゃいけないというふうに思っているところでありますので、いろいろなデータ、材料を示しながら、やりとりをしながら、専門家の御意見をしっかりとお聞きし、それを尊重して判断をしていくということだと思います。

○塩川委員 緊急事態の要件が曖昧だということを指摘をしました。専門家の意見を聞くという場であっても、そのお膳立ては政府側が行うというスキームという点で私は疑念があるわけです。全国一律休校について安倍総理は、私の責任で判断したと述べたわけで、同じことが繰り返されるんじゃないのか、政府の裁量で緊急事態が発動される懸念があるということを申し上げておきます。
 西村大臣、ここまでで結構ですので。ありがとうございました。