【内閣委員会】日米交渉/国民に打撃/TPP11がベースに

 関税撤廃などを盛り込んだ環太平洋連携協定(TPP)加盟11か国による新協定「TPP11」について、米国からはTPP11をベースに日米二国間協議でさらなる追加措置が求められる危険があると指摘しました。

 トランプ米大統領が「アメリカ第一」の立場から、「TPPに戻りたくない」「二国間協議がいい」と明言しているもとで、安倍首相が日米の新たな経済協議の枠組みをつくることで合意したことは、きわめて重大。日米二国間交渉のゆくえを中心にただした。

 トランプ大統領がTPPから離脱し、貿易協定は二国間交渉で進める意向を示したことで、日本の麻生太郎副総理と米国のペンス福大統領の経済対話、茂木敏光TPP担当大臣とライトハイザー通商代表部(USTR)代表の新協議機関(FFR)の創設を積み上げてきた。

 FFRで取り上げる課題は何かと質問。

 茂木担当大臣は「日米の関心事を出し合っていく。できるだけ具体的なテーマで議論したい」と答えました。

 すでに日米経済対話で、USTRが今年3月末に公表した2018年「外国貿易障壁報告書」に示された要求項目が議論され、具体的な措置もとられている。

 「外国貿易障壁報告書」では「(BSE問題は解消したとして)牛肉市場の完全な開放」を求めている。米国のBSE調査は1%未満だ。食の安全基準を犠牲にしてよいのかが問われている。国民の安全を損なうやり方は認められない。

 TPP,TPP11、日米二国間交渉が日本経済と国民生活に大打撃を与えることは必至だ。

衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」

<第196通常国会 2018年05月16日 内閣委員会 16号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 TPP整備法案について質問をいたします。
 本来であれば、二つの常任委員会に置かれた協定と整備法案ですから、しっかりと深めた議論をする上では一体の議論の場も必要なんですよ。そういったこともなしに、それぞれの委員会でそれぞれでやってというふうにはならないということはまず最初に申し上げておきますし、また、十本の法案との関係でいっても、対応する役所も五つもあるわけで、関係委員会との連合審査を含めた、複数の大臣を並べたしっかりとした議論を行うのも当たり前のことであって、こういったことについて、しっかりとした審議の場を保証しないという中での議論の進め方というのは極めて重大だということを冒頭申し上げ、徹底審議、慎重審議を行うべきことを申し上げておくものであります。
 その上で、四月の日米首脳会談において、トランプ大統領が、アメリカ第一の立場から、一方的な鉄鋼、アルミニウムの輸入制限を行いながら、TPPに戻りたくない、二国間協議がいいと明言をしているもとで、安倍総理が、日米の新たな経済協議の枠組みをつくることで合意したことは極めて重大であります。
 そこで、日米二国間交渉に関連して、まずお尋ねをいたします。
 外務省にお聞きしますが、この整備法案の本会議での我が党の笠井亮議員の質問に対して安倍総理は、米側は二国間ディールに関心を有していると承知しておりますと二回答弁をしていました。
 トランプ大統領が二〇一七年一月に大統領に就任した後、米国USTRに対して、一月二十三日付で大統領覚書、TPP交渉及び協定からの米国の離脱を発出しております。そこでは、個別の国と直接一対一、又は二国間、今後の貿易協定を交渉していく考えであると述べています。
 トランプ大統領が一対一で取引を行うと書くその政治的意図について、日本政府は具体的にどのように認識ないし分析しているのか、この点についてお答えください。

○岡本大臣政務官 今委員御指摘いただきましたように、さまざまなところで大統領はコメントしていらっしゃるので、米側が二国間ディールに関心を有していることは十分に承知をしておりますけれども、その手のうちまで私ども分析する立場にはございません。
 先ほど来議論になっておりますように、我が国といたしましては、TPPこそが日米両国にとって最善の策だというふうに考えておりますので、この立場を踏まえて今後も議論を推進してまいりたいと考えております。

○塩川委員 トランプ大統領が二国間ディールに関心を置いているということであります。
 覚書でトランプ大統領は、米国がTPP署名国として離脱し、かつ米国が永続的にTPP交渉から離脱することを指示したわけです。
 本年のダボス会議において初めてトランプ大統領から米国がTPPに参加する可能性について言及があったということですけれども、このアメリカ・トランプ大統領の立場として、日本との一対一取引、ディールというその姿勢というのは一貫しているんじゃないですか。

○岡本大臣政務官 トランプ大統領が一対一のディールということに興味を有していることは、先ほど来、認識しているということを申し上げたとおりでありますけれども、これまでの両国間の議論の中でさまざまな議論をともにしていこうというふうに合意ができておりまして、先ほど来、茂木大臣もおっしゃっておりましたけれども、その会話は二国間であっても、私どもが最も最善と考えておりますのはTPPであることは間違いございませんので、その立場を踏まえた議論をこれからも進めてまいりたいと考えております。

○塩川委員 二国間の話も出ました。二〇一七年二月十日の日米首脳会談共同声明は、米国がTPPを離脱した点に留意し、両首脳は、これらの共有された目的を達成するための最善の方法を探求することを誓約した、これには、日米間で二国間の枠組みに関して議論を行うこと等を含むとあるわけです。
 この二国間の枠組みというのには、麻生副総理とペンス副大統領の経済対話、またライトハイザーUSTR代表と茂木大臣による貿易通商問題の新協議機関、この設置は当然入るものと考えますが、それでよろしいでしょうか。

○岡本大臣政務官 この二国間の枠組みにつきましては、今委員御指摘をいただきましたように、先般の日米首脳会談で茂木大臣並びにライトハイザー通商代表との間で合意をいたしました自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、いわゆるFFRを開始するということも含まれているというふうに思いますし、加えまして、これまで議論となっておりました麻生副総理とペンス副大統領の間で行われてきております日米経済対話、もう既に昨年の四月、十月、二回行われておりますけれども、このことも含まれておるというふうに考えております。

○塩川委員 二国間の枠組みとしているものに、日米経済対話そして今回のFFRも入るということです。
 安倍総理は、二〇一六年にトランプ氏が大統領に当選するという機会で、国会ではTPPの審議を行っていたところでしたけれども、米国抜きのTPPは意味がないとしながら、二〇一七年に日米二国間枠組みを約束し、ペンス副大統領・麻生副総理の経済対話を創設し、二〇一八年でも、ライトハイザー・茂木新協議機関、FFRの創設を行ったということです。
 ことし四月の日米首脳会談でトランプ大統領が、私は二国間交渉を好むと発言をしております。トランプ氏のこのような発言の裏には、安倍総理が大統領覚書を踏まえて、いわば日本側からみずから進んで日米間協議の創設を約束してきた、そういう積み上げがあったからじゃありませんか。

○岡本大臣政務官 今御指摘のある、いわゆる麻生副総理とペンス副大統領の日米経済対話におきましても、また、先般合意されました茂木大臣とライトハイザー通商代表とのFFRに関しましても、二国間の協議ではありますけれども、決して先方が一方的に何かを押しつけるようなことではありません。
 麻生・ペンス会談におきましては、三つの大きな目的を共有して、その三つの目的というのは、貿易及び投資のルールと課題に関する共通戦略、二つ目には経済及び構造政策分野での協力、そして三つ目には分野別協力の三つの柱に議論をするということで合意をしております。
 また、先般の茂木大臣とライトハイザー氏のFFRにつきましても、これは決して、事前協議をやるですとかというような類いのものではありません、FTAの交渉と位置づけられるものでもありません。あくまでも、この場でお互い相互利益にかなうものを議論していこうということで、私どもは、その中でもTPPが最も双方の利益にかなうと考えておりますので、そのことを強調してまいりたいと考えております。

○塩川委員 私がお尋ねしたのは、結局、こういった二国間協議というのは、日本側の提案で行われているというのが経緯じゃないですか。

○茂木国務大臣 四月の日米首脳会談、私も同席をさせていただきまして、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、FFRと呼ばれているものを立ち上げることにしたわけでありますが、これは、R、レシプロカル、まさに相互が利益になるような協議をしようということで合意をしたものでありまして、どちらかから持ちかけて、どちらかが渋々受けた、こういう形ではないというものであります。
 そして、二国間でしますのは協議です、基本的に。二国間の協定をするということではない、このように今考えておりまして、先ほど来申し上げておりますように、我々は、日米両国にとってもTPPが最善であると考えておりますし、ほかのTPP参加国についても同じ思いを持っていると考えているわけであります。
 そういった中で、例えばTPP12のときも、TPP12、このマルチの交渉を進めながら、日米間は並行交渉、こういうのも行ったわけでありまして、グッドディール、いい取引をしたいという米側の思いはあって当然でありまして、そこの中でどういった交渉をしていくかということに今後なっていくと考えております。

○塩川委員 TPPの議論のときでも、マルチと同時にやはりバイでどんなことが行われていたかということに重大な関心を国民は持っていたわけであります。麻生・ペンス経済対話などは総理がみずから提案したということをおっしゃっておられたわけですし、そういった経緯というのを踏まえての動きということが言えるわけです。
 安倍総理はもちろん、米国がTPPに戻ってきてほしいと期待感を寄せている。ただ、トランプ大統領は、かなりよい条件を得る必要があるとか、多国間交渉よりも二国間交渉の方が好きだと主張して、TPPに入らないとか、ハードルを高くしているわけです。
 結局、このトランプ大統領の一対一の取引、ディールの不変の姿勢に総理の方が迎合してつなぎとめているというのが事の経緯じゃないのかということを指摘せざるを得ません。
 ことし四月の十二日に、トランプ大統領がライトハイザーUSTR代表とクドロー国家経済会議委員長に対し、米国が有利な条件でTPP復帰を検討するとのことでしたが、トランプ大統領は、TPPへ復帰しても、あるいはしなくても、日米間の協議、一対一の取引は今後も行われることになるということが言えるだろうと思っています。
 茂木大臣にお尋ねしますが、先ほどちょっとダブるように答弁がありましたけれども、ライトハイザーUSTR代表と茂木大臣による新協議の設置、FFRについて、日米経済対話との関連、またその違いというのはどういうものなのかについて御説明いただけますか。

○茂木国務大臣 FFR、これは、私とボブ・ライトハイザー通商代表の間で行われる、恐らくラリー・クドローも絡んでくるとは思うわけでありますが、日米双方の利益となるように、日米間の貿易や投資を更に拡大させ、公正なルールに基づく自由で開かれたインド・太平洋地域における経済発展を実現する、こういう目的で行われるわけでありまして、ある意味、日米経済対話、これはかなり幅広い分野を扱っておりまして、完全にそれの一部というわけではありませんが、そこの中の特定の分野にフォーカスをして協議を進める、そして、その協議の経過、結果等につきましては、適時これを、麻生副総理、ペンス副大統領のもとで行われている日米経済対話に報告する、こういう全体の枠組みになっております。

○塩川委員 先ほど岡本さんの方のお答えにもありましたように、日米経済対話は三つの柱で、貿易・投資や経済構造、また分野別の協議、そういうのに対して、FFRについては、日米間の貿易投資を更に拡大させていくという目的で、今大臣がおっしゃったように、幅広い分野の一部ということではないけれども、特定分野にフォーカスをしているという話でした。
 その結果は日米経済対話に報告をするということですけれども、そうなると、ここで、特定分野にフォーカスするとはいうんですけれども、議題、課題として、そうはいっても、関税措置や非関税措置、全分野を視野に入れて相手側の、双方と言ってもいいんでしょうか、その関心事項、つまり、関税措置、非関税措置の全分野を視野に入れた交渉のテーブルということにはなっていくんじゃないですか。

○茂木国務大臣 まさに、FFR、これから協議が始まるわけですから、そのTORにつきましては、今後、両国側で調整をしていくということになるんですが。
 若干、先ほどの私の答弁の中で具体的な分野にフォーカスをすると申し上げましたが、先ほど申し上げたように、日米間の貿易・投資、さらに、公正なルールに基づく自由で開かれたインド・太平洋地域をつくっていくためにどうしたらいいか、こういう脈絡で申し上げましたので、フォーカスの仕方が単純に日米間に限定されたもの、こういうことではないということは御理解ください。

○塩川委員 インド、太平洋という視野はあるよという話ということだと思いますが。
 そこで、取り上げるテーマの話をお聞きしたわけで、お答えになっていないんですが、例えば日米二国間で行うようなそういった協議の課題として、この間も議論になっているような自動車とか、医薬品や医療機器とか、牛肉とか食品添加物とか、金融・証券、知的財産、国民皆保険、こういうものも議論の対象になるというふうに考えてよろしいんですか。

○茂木国務大臣 具体的な議論の対象はどういう分野になってくるか。まさにこれは、今後、日本もそうでありますし、アメリカ側も、それぞれ関心を持っている項目は何なのか、こういったことを出し合う中で決まっていく、そのように考えておりまして、できるだけ具体的なテーマについて協議をしたい、こんなふうに思っておりますが、まさに今、それが進んでいるプロセス、始まったところだ、このように考えております。

○塩川委員 双方の関心を持っている項目を出し合う、アメリカ側が関心を持っている項目も出してもらうという話で、そういう点では、TPPの日米の懸案交渉で論点になっている項目も紹介したわけですが、一昨年のTPPの国会審議でも、市民団体が懸念をしているそういう課題というのも、当然のことながら、アメリカ側の関心ということであれば上がってくるという話になるわけです。
 ライトハイザー通商代表は、ことし一月のワシントンの米商工会議所の講演で、日本との経済関係について、いつかはFTAを結びたいと思うと語っていました。こうした流れを見ても、二国間協議というのは、アメリカが狙うFTAに一段と踏み込むということにならざるを得ないんじゃないかと思うんですが、この点についてはいかがですか。

○茂木国務大臣 その講演の内容を今つまびらかに私も記憶しておりませんが、時点はいずれにしてもことしの一月、まさにFFRが立ち上がる前でありますし、いつかはという問題でありますから、そういった願望をその時点においてはお持ちになったのかもしれません。

○塩川委員 これは、ですから、引き続きの関心であることには変わりがないと思います。
 答弁にもありましたように、米国側の関心を持っている項目を出し合う、そういう場としてFFRでの議論があるといったときに、米国側の要求の具体を見てみたいと思うんですが、トランプ大統領とライトハイザーUSTR代表のもとで、二〇一八年USTR外国貿易障壁報告書がことしの三月末に公表されました。一部ではありますけれども、米国の要求がリアルにわかる資料であります。
 外務省にお尋ねしますが、まず、このUSTR外国貿易障壁報告書に対して、これまで日本政府はどのように回答、対応してきたのか。このことについて説明してもらえますか。

○岡本大臣政務官 今御指摘のありました米国の報告書は、米国の一九七四年通商法に基づきまして、毎年行政府から議会に提出されているものでありまして、米国から見て、貿易相手国に対する関心事項についての報告書でございます。
 私ども、相手方の報告書でございますので、その内容につきまして、私どもが一々何か戦略を持って行動を起こすということはいたしておりません。

○塩川委員 一々行動を起こすことはないというお話でしたけれども、文書で米側に、そういった中身、回答について渡したということもありますよね。

○岡本大臣政務官 二〇一六年に、文書で先方に出したことはございます。

○塩川委員 ですから、そういうふうに回答を返しているということは現にやっているわけですよね。それはもう文書で出しているわけです。
 昨年四月に立ち上げた日米経済対話ですけれども、このUSTR外国貿易障壁報告書を踏まえて何らかの議論をしたんだと思うんですけれども、その中身はいかがですか。

○岡本大臣政務官 具体的な中身について、ここで全部つまびらかにすることはできませんけれども、米国が、我が国との貿易におきまして、自動車分野等について興味を有していることがございまして、そのことについての議論等はしているというふうに承知をしております。

○塩川委員 ですから、日米経済対話においても、このUSTR外国貿易障壁報告書を踏まえて議論を行っている、今、自動車分野でというお話もありました。
 昨年の十月においての議論では、それ以外にも、例えば、アイダホ産のポテトチップ用バレイショに対する輸入停止措置を解除する、こういうことも話し合われたと承知していますが、それでよろしいですか。

○岡本大臣政務官 議論はいたしました。

○塩川委員 具体的に措置したのではありませんか。

○岡本大臣政務官 アイダホ産のジャガイモの輸入の解禁はしております。

○塩川委員 ですから、ことしの三月に出したこの二〇一八年のUSTR外国貿易障壁報告書でも、二〇一七年、日本は、アイダホ州産のポテトチップ用バレイショに対する十年に及ぶ輸入停止措置を解除したと。これは、ですから、日米経済対話の議論を踏まえての措置ということがここにも書き込まれているということです。
 ですから、二国間のこういったディールという流れの中での日米経済対話において、このUSTRの外国貿易障壁報告書を踏まえた議論が行われ、また、具体的な解除措置なども行われているという流れというのが出てくるわけです。
 そこで、茂木大臣にお聞きしますが、そうすると、今後は、このFFRにおいてUSTR外国貿易障壁報告書に基づく対日要求の議論を行うということにもなりますね。

○茂木国務大臣 米側の関心事項、これは米側において今後示されるんだと思っております。
 その文書に書いてあることをそのまま要求されるのか、そこの中でフォーカスを絞っていろいろな議論をしたいというのか、また違ったテーマについて議論をしたいというのか、これは米側の立場だ、こんなふうに思っておりますが。
 何にしても、いわゆる協定の枠組みをつくるわけではない。さまざまな協議というのはあるわけでありますし、例えば、TPPをまとめるに当たっても、各国との間で、サイドレター、こういったものも交換しております。これは二国間のディールなんです、三国間でやることもありますけれども。こういったディールというものは当然さまざまな交渉の中で出てくるものだと思っておりますけれども、それ自体が通商の枠組みをつくるというのとはイコールではないということは御理解ください。

○塩川委員 ただ、協定までいかない過程においても当然ディールもあって、具体的な要望に応えるという流れというのがある。バレイショの話なんかは、そういうことで出てきているわけであります。
 そういう意味でも、今大臣お答えになったように、こういったUSTRの関心事項を書いた報告書の中身も当然議題に上っていくFFRになるということは、今お話しされたとおりだと受けとめました。
 そこで、具体的な、このUSTR外国貿易報告書に基づく要求と、それに対する日本政府の対応についてお尋ねしたいんですが、厚生労働省にお尋ねします。
 この報告書、日本関連部分の三番目に牛肉及び牛肉製品が挙げられています。米国の牛にはBSEの危険性があります。TPPの入場料として、二十カ月の月齢を三十カ月齢に緩めるということもかつて行われたわけですが、この報告書において、USTRは、全ての月齢の牛肉及び牛肉製品を受け入れ、市場を完全に開放するよう働きかけていくとしております。
 これは、日本政府、厚生労働省としてどのように受けとめているんですか。こういう要求を受け入れるんですか。

○宇都宮政府参考人 お答えいたします。
 今委員御指摘のように、USTRの外国貿易障壁報告書におきまして、米国は引き続き、OIEにおける米国の評価と整合させるべく、日本が全ての月齢の米国産の牛肉及び牛肉製品の輸入を認めるよう主張していると承知しているところでございます。
 厚労省といたしまして、BSE対策につきましては、国内、国外の双方でBSEが発生するリスクは低下したということで、国内の検査体制、輸入条件といった対策全般につきまして、食品安全委員会の科学的な評価結果に基づいて、必要なリスク管理措置の見直しを行ってまいりました。
 米国を含みますBSE発生国から輸入される牛肉の月齢制限撤廃につきましては、科学的に対応することが必要でございまして、昨年四月、食品安全委員会におきまして、現在、月齢条件を三十カ月齢以下としている、米国産に限らず、米国産を含む十三カ国産の牛肉につきまして、新たな知見等を踏まえた、輸入条件の月齢を更に引き上げた場合の科学的な審議を進めることとされたところでございます。
 現在、食品安全委員会におきまして、評価に必要な資料を提出した、これも米国に限りませんが、米国を含みます三カ国につきまして審議が行われてございまして、厚生労働省としては、食品安全委員会の科学的なリスク評価結果に基づいて対応していくこととしているところでございます。

○塩川委員 科学的審議というんですけれども、もともと、このTPP交渉の入場料として、二十カ月齢を三十カ月齢に緩めた。あれも、科学的な審議といっておいてやって、まともな、それが妥当な審議だったのかということがまさに根本から問われていたわけですよね。今回も、同じ理屈で同じことを繰り返すのでいいのかというのが問われるわけです。
 アメリカは、BSEの検査率は一%未満で、ほとんど検査されていません。屠畜段階でのしっかりした特定危険部位の除去もしっかりと行われていないということもされています。二十四カ月齢のBSE感染牛も出ているという話もあり、食の安全基準を犠牲にしていいのかということがやはり大もとから問われている。
 食の安全基準は、各国の独自性があって当然じゃないですか。そういうものを全部横並びにするということ自身に、やり方として、それがルールだというやり方は国民の安全を損なうものだということを言わざるを得ません。
 最後に、大臣にお尋ねしますけれども、米国抜きのTPP11というのは、日本が国際的に約束した市場開放や規制緩和の到達点であります。米国との二国間協議は、この到達点に立って、より大幅な譲歩を求める米国には、それが新たな出発点となるんじゃないのか。TPP11が規制緩和の到達点、それを土台にして、更に出発点として大幅な譲歩を求める、これが二国間協議にならざるを得ないのではありませんか。

○茂木国務大臣 必ずしも私はそのような認識を持っておりません。

○塩川委員 TPP11は、日本がTPPで国際公約をした関税撤廃と非関税障壁撤廃の到達点であります。TPP11をベースに米国からは譲歩を迫られて、また、TPP11の発効後は、再交渉条項で加盟国からさらなる措置を求められない、そういうことは断言できますか。

○茂木国務大臣 いずれにしても、我が国として、国益に反するような合意を行うつもりはございません。

○塩川委員 それで、過去、さまざまな貿易交渉においてアメリカの要求を丸のみしてきたという経緯というのは、忘れるわけにはいきません。
 このTPP、TPP11、そして日米二国間交渉が日本経済と国民生活に大打撃を与えることは必至であります。TPP交渉での、こういった譲歩した到達点をスタートとしてさらなる譲歩を重ねるような、こういったことはきっぱりとやめるということを求め、質問を終わります。