【倫理選挙特別委員会】河井買収事件/説明は果たされていない/政党助成制度の廃止を

 自民党の河井克行元法務大臣・案里夫妻の選挙買収事件に関連し、政党助成制度の廃止を呼びかけました。

 河井事件は、自民党本部から交付された政党助成金が買収の原資との疑いがあります。このことについて、岸田文雄総理大臣は「監査を経て報告書が出され、説明が果たされている」と答弁しています。

 私は、政党助成法では政党助成金の使途等報告書の監査は、領収書の保存や、報告書に収支が表示されているかを見るに過ぎないことを確認。また、国会議員政治団体の「政治資金監査」も、収入は監査対象にはならず、領収書の改ざんがあっても調査権限がなく、違法支出など支出の妥当性を評価するものではないことを確認し、このような監査をもって、適正に処理されているとか、説明がされていると言えるのかと迫りました。

 金子恭之総務大臣は「現状の制度でしっかり対応している」と強弁しました。

 また、私は、1995年の政党助成制度導入以降の交付総額と受け取った政党数を質問。

 総務省選挙部長が「約8540億円、45政党」と答えたのに対し、「消えていった政党が37もある」と指摘。

 政党助成制度の導入し企業・団体献金は禁止するとしていたが、2020年の企業・団体献金や政治資金パーティー収入が200億円にも上る実態を示し、こうした“2重取り”は厳しい批判が寄せられても仕方がない。わが党は、参院に政党助成法廃止法案を提出した。廃止の検討を各党に呼びかけたいと主張しました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年3月10日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 第3号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今日は、選挙買収と政党助成金の問題について質問をいたします。
 河井元法務大臣が有罪となった選挙買収事件について、河井夫妻の陣営に対し、自民党本部から一億五千万円が提供され、そのうち一億二千万円が政党助成金でした。これが買収の原資になったのではないかという疑惑はいまだに明らかになっておりません。
 二月二十八日の参議院の予算委員会で、我が党の井上哲士議員が、公判での供述調書を示して、運動員買収の原資が、克行氏の自民党広島県第三選挙区支部から案里氏の広島県参議院選挙区第七支部に振り込まれた四千五百万円であり、この四千五百万円は党本部からの政党助成金であることを指摘をしました。
 その際、岸田総理は、政党助成金からは支払われてはいないという昨年九月の自民党本部の説明を引用して答弁しました。そして、公認会計士、税理士等の監査を経てこうした報告書が出されているわけでありますので、説明が果たされていると認識しておりますと述べました。
 監査を経ているというのが説明責任を果たしているという指摘をしておるわけですが、そこで、総務省に確認します。政党助成金における使途等報告書の監査について、政党助成法施行規則では、監査事項はどういうふうに規定しておりますか。
○森政府参考人 お答え申し上げます。
 政党交付金使途等報告書に係る監査事項について、政党助成法施行規則第二十条は、会計帳簿、領収書等及び残高証明等が保存されていること、会計帳簿には政党交付金に係る収支の状況が記載され、政党の会計責任者が当該会計帳簿を備えていること、使途等報告書は、会計帳簿等に基づいて収支の状況が表示されていること、領収書等を徴し難かった支出の明細書は、会計帳簿に基づいて記載されていることと規定をしております。
○塩川委員 今お答えがあったように、会計帳簿や領収書などが保存されているか、収支が報告書に表示をされているかといった外形的なことを確認しているにすぎません。これで説明が果たされているとはとても言えないものです。
 この政党助成金の使途等報告書の監査の問題だけではありません。河井夫妻が代表を務めた自民党の支部は国会議員関係政治団体でもありますので、政治資金監査も行われておりました。
 二〇〇七年の法改定で国会議員関係政治団体がつくられた際、プロの目を通すといって、弁護士、公認会計士、税理士の登録政治資金監査人によって政治資金監査を受ける制度が設けられました。この監査のマニュアルを作ったり、監査人の登録や研修を行っているのが政治資金適正化委員会であります。
 この政治資金適正化委員会が作った政治資金監査マニュアル、政治資金監査に関するQアンドAでは、記載漏れ、領収書などの改ざん、収入の監査や使途の妥当性の判断についての記載もあります。
 この政治資金監査に関するQアンドAでは、収入の記載漏れが発見され、支出についても記載漏れがあり、会計責任者は収支報告書を訂正しなかった場合、政治資金監査報告書ではどのように記載すべきかという問いに対して、このQアンドAではどのように答えておりますか。
○植村政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のQアンドAの記述、7―三「収入・支出の記載漏れ」になります。
 収支報告書に支出の記載漏れがあり、会計責任者に指摘したにもかかわらず、収支報告書を訂正しなかった場合、法定の監査事項を確認できなかったものとして、別記にその旨を記載することが考えられますとあり、さらに、なお、政治資金監査は支出のみを対象とし、収入はその対象としてはいませんと記述しております。
○塩川委員 収入は対象とはしていないということで、収入に記載漏れがあったとしても、監査の対象ではないということであります。
 同じくQアンドAでは、「翌年への繰越額と現金預金残高とが一致しているかを確認する必要があるか。」との問いに対し、どのように答えておりますか。
○植村政府参考人 お答えいたします。
 同じくQアンドAの1―三「繰越額と現金預金残高」でございますが、「政治資金監査は支出のみを対象としていますので、翌年への繰越額の確認は求められていません。」と記述をしております。
○塩川委員 翌年の繰越額も監査の対象ではないということであります。
 同じくQアンドAでは、「明らかに記載が訂正又は消去された痕跡のある領収書等がある場合は、政治資金監査上、どのように取り扱えばよいのか。」との問いに、何と答えておりますか。
○植村政府参考人 お答えいたします。
 QアンドAの5―二十八「領収書等の改ざんの形跡」になりますが、「政治資金監査は、外形的・定型的に行われるものであり、登録政治資金監査人は、第三者に対する調査や資料要求を行う権限を付与されていません。そのような中で、明らかに記載が訂正又は消去された痕跡のある領収書等がある場合は、政治資金監査の信頼性を確保する観点から、当該領収書等が真正なものであることを会計責任者等に確認することとなります。」と記述をしております。
○塩川委員 外形的、定型的に行われるという政治資金監査であって、改ざんの形跡があっても、会計責任者に確認をするだけで、調査権限はないという仕組みであります。
 同じく、QアンドAでは、「政治資金監査の結果、政治団体に係る支出とは判断できない支出が分類されている場合、どのように対処すればよいのか。」との問いには、どのように答えておりますか。
○植村政府参考人 お答えいたします。
 同じく、QアンドAの1―五「使途の妥当性の判断」でございますけれども、「政治資金監査は、政治資金の使途の妥当性を評価するものではありません。これは、政治資金の透明性の向上を図りつつ、同時に、政治活動の自由の確保の要請にも応えるべく、国会における議論の結果、外形的・定型的な監査とすることで合意されたものです。」と記述をしております。
○塩川委員 政治資金監査は、政治資金の使途の妥当性を評価するものじゃないんだというふうに述べているわけです。
 今読み上げてもらいましたように、収入、繰越残高についても監査の対象外で、権限はない。領収書が改ざんされていても、調査する権限はない。調査対象の支出でも、おかしな支出、違法な支出であっても、使途の妥当性を評価するものではない。
 大臣にお尋ねしますが、こういった国会議員関係政治団体の政治資金監査制度は監査と言えるものなのかと率直に思いますが、大臣の認識を伺います。
○金子(恭)国務大臣 塩川委員にお答え申し上げます。
 今お答えしておりますとおり、政治資金監査は、支出の状況について外形的、定型的に確認を行うものですが、これは、政治資金の透明性の向上を図りつつ、同時に政治活動の自由の確保の要請にも応えるべく、与野党間の大変真摯な御議論の結果、今の制度になったものと承知をしております。
 いずれにしましても、政治資金監査の在り方に関することについては、各政党、各政治団体の政治活動の自由と密接に関連していることから、各党各会派において御議論いただくべき問題と考えております。
○塩川委員 今言ったような監査を踏まえて報告書が出されているので、説明が果たされていると言ったのが岸田総理なんですよ。
 でも、今言ったようなやり方で、本当に説明責任が果たされていると言えるのか。こういった監査をもって、適正に処理されているとか、ましてや説明はされているということは言えないんじゃないですか。疑惑は全く晴れていないと思いますが。
○金子(恭)国務大臣 先ほども申し上げましたように、与野党間の大変真摯な御議論の結果、今の制度になっております。現状の制度として、しっかりと対応しているものだと思います。
○塩川委員 岸田首相、自民党としてのこの問題についての説明責任は全く果たされていないということを改めて強調しておきます。
 しかも、河井夫妻の選挙買収事件だけではありません。自民党京都府連によるマネーロンダリングの疑惑の問題もあります。国会議員が、自らの選挙前に、京都府連を迂回して区議、市議に一人当たり五十万円を渡していたという疑惑であります。
 政治と金をめぐる重要な問題は、入りの問題であります。企業・団体献金の全面禁止、政党助成制度の廃止が、国民の政治不信を払拭する上で不可欠だと我が党は述べてまいりました。
 数字を確認します。一九九五年、政党助成制度導入以降、二〇二一年まで、政党交付金の総額は幾らになっているでしょうか。また、これまでに交付金を受け取った政党の数は幾つになるでしょうか。
○森政府参考人 お答え申し上げます。
 政党助成制度が創設をされました平成七年分から令和三年分までの二十七年間の政党交付金の交付総額、一千万円以下を四捨五入いたしますと、八千五百四十億円となっております。
 また、政党助成制度が創設された平成七年分から令和三年分までに政党交付金を受け取った政党は、四十五政党でございます。
○塩川委員 これまでに、八千五百四十億円、四十五政党ということでした。
 二〇二一年に政党交付金を受け取っている政党、そして、各党がこれまでに受け取った政党交付金額は幾らになるでしょうか。
○森政府参考人 お答え申し上げます。
 各党、二〇二一年に政党交付金を受け取っている政党がこれまでに受け取った政党交付金の総額、交付累計額につきましては、一千万円以下を四捨五入いたしますと、自由民主党四千八十九億円、公明党六百八十三億円、社会民主党三百七十四億円、立憲民主党百八億円、日本維新の会八十四億円、国民民主党二十九億円、れいわ新選組四億円、NHK受信料を支払わない国民を守る党四億円となっておるところでございます。
○塩川委員 自民党は、制度導入以来、これまでに四千八十九億円を受け取っているということで、全体の半分近くを占めております。この八千五百億円という巨額の税金を四十五の政党で山分けをしてきました。しかも、この間に消えていった政党が三十七もあるわけであります。
 日本共産党は、政党助成金を受け取っておりません。それは、支持する政党を持たない国民にも一律に献金を強制するものであり、思想信条の自由を侵すものだからであります。
 この政党助成金制度の導入をめぐって、当時、そもそも政党が税金に依存していいのかという議論が、導入を進めた側からもありました。政党助成金を入れるとしても、税金なのだから過度に依存しないようにしよう、上限を決めようという議論があり、細川総理と河野自民党総裁の合意では、上限は四割とすることになりましたが、法制化する際になって、この歯止めも、三分の二を上限ということで後退をいたしました。ところが、さらに、制度が施行された九五年十二月には、この歯止めさえも完全に削除する法改正が行われました。
 こうして、政党が幾ら税金に依存しようとも問わないという内容に変えてしまったという経緯があります。
 現状はどうか、お尋ねします。直近の二〇二〇年分で、各党の収入に占める政党交付金の依存率は何%でしょうか。
○森政府参考人 お答え申し上げます。
 直近の令和二年における各政党本部収入総額に占める政党交付金の割合を割合の高い順に申し上げますと、令和二年九月十一日に分割により解散した国民民主党八七・二%、日本維新の会八〇・二%、令和二年九月十四日に合併により解散した立憲民主党七七・〇%、自由民主党七一・七%、令和二年九月十五日に設立された立憲民主党五五・一%、NHK受信料を支払わない国民を守る党五三・五%、社会民主党四六・九%、令和二年九月十一日に設立された国民民主党三七・五%、れいわ新選組三六・一%、公明党二四・八%となっております。
○塩川委員 今お示しいただきましたように、各党とも政党助成金の依存の割合が高い。資金のうち、政党助成金が七割、八割を占める。まさに国営政党、官営政党と言われても仕方がありません。
 当初は、政党助成金の総額について五年後に見直しという規定もありましたが、何らの見直しもないまま、制度導入以降、一度も総額が減らされたことはありません。
 大臣にお尋ねしますが、元々、税金に過度に依存しないようにしようという趣旨というのが、政党助成金を導入する側の中でも議論がされてきた問題であったわけであります。今の現状というのは、率直に言って、これでいいのか、余りにも依存し過ぎる事態ではないのか、このことが問われていると思うんですが、大臣の認識を伺います。
○金子(恭)国務大臣 お答え申し上げます。
 政党助成制度は、政治改革について議論を積み重ねた結果、政策主体、政党本位の政治を目指すとの理念の下、政党の政治活動の経費を国民全体で負担していただくものであり、民主主義の発展に重要な意義を持つ制度であると認識をしております。
 一方で、政党の運営の当否は、最終的には選挙を通じた国民の審判に委ねるべきところであることから、政党がその運営においてどの程度政党交付金に依存するかの選択については、政党の自主性に委ねるのが適当であると思います。
 以上です。
○塩川委員 政党とはどうあるべきかというのが問われていると思います。
 政党は、憲法に保障された結社の自由、そして資金の上でも自前、自立してこそ成り立つものと言えます。自立しないで政党と言えるのか。その点でも、やはり、主権者の国民にその財政も依拠する、これが結社の自由を踏まえた政党の活動の基本だということが問われていると思います。
 そういう点でも、税金で党財政を賄うということになれば、やはり次第に国民の感覚、市民の感覚から離れていく、麻痺をして庶民の痛みが分からなくなる、こういうことも問われてくるのではないのかということを指摘をしなければなりません。
 もう一つ指摘をしなければいけないのが、四半世紀前に、リクルート疑獄などで金権腐敗政治の横行に国民的批判が高まり、企業・団体献金を禁止しようというのが国民の要求でした。
 当時、細川総理は、政党助成金の導入を求めつつ、政治腐敗事件が起きるたびに問題となる企業・団体献金については、腐敗のおそれのない中立的な公費による助成を導入することなどにより廃止の方向に踏み切ると、企業・団体献金の廃止を述べておりました。ところが、廃止するとしていた企業・団体献金はどうなったのか。
 確認しますが、政界全体の政治資金収入のうち企業・団体献金額、政治資金パーティーの収入額は、直近でそれぞれ幾らでしょうか。
○森政府参考人 お答えを申し上げます。
 令和二年分の総務大臣届出分と都道府県選挙管理委員会届出分を合計した全国分の収入額のうち、法人その他の団体からの寄附は八十億八千九百万円、政治資金パーティー収入額は百二十七億四百万円となっておるところでございます。
○塩川委員 政治資金パーティーも多くは企業、団体という実情もありますので、いわば二百億円に上るような金額が今なお行われている。このほかにも、政治団体からの寄附などもある。コロナ禍で減ったとはいっても、大変な金額であります。
 政治改革によって、政治家個人に対する企業・団体献金を禁止をしましたが、政党と、党の財布である政治資金団体が受け取るのは禁止をしませんでした。党支部は、政治家個人のいわば財布のように使われることになりました。これが今のような事態を招いております。
 大臣にお尋ねしますが、政党助成金も受け取る、企業・団体献金も受け取る、こういう二重取りが行われているような状況というのは、国民から厳しい批判が寄せられても仕方がない事態ではありませんか。これこそ改めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○浜田委員長 金子総務大臣、時間が来ておりますので、手短にお願いいたします。
○金子(恭)国務大臣 先ほどから申し上げているように、政党助成制度とかあるいは政治資金の問題については、これまでも与野党、各党各会派で御議論いただいております。しっかりと、そういう意味では、今後とも御議論いただきたいというふうに思います。
○塩川委員 企業・団体献金はきっぱり禁止をする。我が党は、参議院に、政党助成法の廃止法案も提出をしております。是非とも、こういった問題を是正をする、広く各党にも呼びかけて取り組んでいきたい、このことを申し上げて、質問を終わります。