【内閣委員会】経済安保準備室長の懲戒処分/徹底調査を

 経済安全保障法制準備室長を事実上更迭された藤井敏彦氏の懲戒処分について、過去に遡った徹底調査を求めました。

 私は、藤井氏が大企業経営幹部向けのビジネススクール「不識庵」の師範として9年間も違法に兼業を続け、多くの企業と秘密裏に関わっていたことは重大だと指摘。

 不識庵のゼミ生で日立製作所の水事業部門の担当部長だった社員が、国家安全保障局に出入りしていたとの報道をあげ「経済安保法案では、基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度を創設しようとしており、その対象の一つが水道事業だ。法案に影響を及ぼす癒着はなかったのか」とただしました。

 内閣官房は「個社の利益の反映が可能な条文構造ではない」などと弁明しました。

 私は2016年ごろから自民党の甘利明議員を中心にしたルール形成戦略議員連盟などが経済安保の骨格をつくり、藤井氏も深く関わってきたことを指摘。

 小林鷹之経済安保担当大臣は「法案の準備が本格化したのは昨年」と問題を矮小化しました。

 私は直近3年間だけではなく、事業者の便宜をはかることがなかったのかを過去に遡って調査すべきだと求めました。


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「議事録」

<第208通常国会 2022年3月11日 内閣委員会 第8号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 今日は、藤井敏彦元国家安全保障局内閣審議官、経済安保法制準備室長の懲戒処分に係る報告書をめぐる問題について質問をいたします。
 最初に、官房長官にお尋ねいたします。
 この藤井氏については、多数の非違行為が明らかとなりました。このような多くの違反行為があったにもかかわらず、経産省や防衛装備庁、国家安全保障局において、周りのスタッフの人は、上司含めて、何にも気づかなかったんでしょうか。
○松野国務大臣 塩川先生にお答えをさせていただきます。
 藤井氏の不識庵における違法な兼業は二〇一三年から行われていましたが、今般明らかになりました。この間、経済産業省、防衛装備庁、国家安全保障局在任中、藤井氏の違法な兼業に気づかなかったことは、結果として大変遺憾であります。
 内閣総理大臣から国家安全保障局長に対し、また、経済産業大臣から経産次官に対し、厳重に注意をしたところであります。
 政府としては、今後、国家公務員の服務指導を更に徹底してまいりたいと考えております。
○塩川委員 気づかないというのは、にわかに信じ難い話であります。
 今回、国家安全保障局が主体となって調査ということですけれども、当然のことながら、元々は経済産業省の人間でありますし、防衛装備庁でも官房審議官を務めていた。
 経済産業省や防衛省では、これはちゃんと調査したんでしょうか。
○片岡政府参考人 お答え申し上げます。
 経済産業省におきましても、国家安全保障局と同様に、藤井氏本人に対する聴取を始めまして、関係者への問合せ、関係者から提供いただいた情報の内容確認などを行っております。
 当該調査の中で、経産省在籍時に、兼業につきまして、四年間で総額約八百十万円の報酬を受けていました。また、少なくとも二十件の講演や執筆を行いまして、総額約三百八十万円の報酬などを受け取りながら、国家公務員倫理法第六条に定める贈与等報告書の提出を行っていなかったということが確認されてございます。
 加えまして、これら講演につきまして、経済産業省の内規で定める、職務に関連する内容について講演する場合の上司への確認行為、これを行っておらず、また、講演を行っていた依頼先の中には利害関係者が一社含まれていたところ、当該利害関係者から依頼のあった講演については所定の事前の承認を得ていなかったということを確認してございます。
○川崎政府参考人 お答えいたします。
 防衛省、防衛装備庁といたしましては、藤井氏が防衛装備庁に在籍した期間における公用タクシー券の利用状況の確認、部外発表手続の確認、贈与等報告書の確認など、必要な調査を行いました。
 その結果、藤井氏が必要な兼業手続を経ずに報酬を受けて兼業を行っていたことや、贈与等報告書の提出を行っていなかったことが認められましたので、その調査結果を経済産業省に通知をいたしました。
○塩川委員 防衛装備庁の官房審議官なんかも当然所掌のところがあるわけですけれども、例えば、そういったところではどういった事業者との関わりがあったのか、こういった問題などについては、直接調べるということは聞いておりません。兼業届とか、あるいは贈与等報告書の範囲の話であって、この点でも徹底した調査が必要だということを言わなければなりません。
 それで、大企業経営幹部向けのビジネススクールであります不識庵におきまして、藤井氏が師範として関わった企業との関係についてお尋ねをします。
 兼業は九年間も続けていたのに、なぜ三年間に限った調査なんでしょうか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 今般の藤井氏をめぐります調査の中心は、国家安全保障局在任中の藤井氏の行動にあったというふうに考えておりました。このことから、藤井氏が国家安全保障局に在任をしておりました期間、すなわち令和元年の十月から今までということを念頭に、直近三年間の調査を行ったということでございます。
○塩川委員 いや、国家安全保障局に限る必要はないわけですよ。
 この九年間にわたって不識庵において師範をしていた、そういった中では、ゼミ生というのは名立たる大企業の経営幹部の皆さんですから、どういった関係だったのかといったことについて、便宜供与とかがなかったのかということなどは、過去に遡って調べる必要があるんじゃないですか。防衛装備庁や経済産業省とか、何で調べないんですか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、今般の藤井氏をめぐる調査の中心は、国家安全保障局在任期間中であったというのは事実でございます。そういった中におきまして、国家安全保障局を中心とした調査を行ったということも事実でございます。
 不識庵という会社から様々な情報を自発的にいただくという中での調査でございましたので、私ども、直近の三年間という、藤井氏が国家安全保障局にいた期間を中心の調査をさせていただいたということでございます。
○塩川委員 国家安全保障局の時代に限る必要はないんですよ。
 非違行為があったというんだったら、その全体はどこまで影響を及ぼしたのかということについて、過去に遡ってちゃんと調査を行え、今の調査じゃ極めて不十分だということを指摘をしておきます。
 それで、出された資料の中に、電機メーカーA社についての文書も出ております。この電機メーカーA社というのも、この藤井氏が師範をしていた相手方のゼミ生に、相手方に含まれているということでよろしいでしょうか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 藤井氏と関係のございました、直近三年間での関係のございました二十社につきましては、不識庵の方から自発的な提出ということで二十社の名前をいただきました。その二十社の名前、私ども承知をしております。
 他方で、当該企業等は本件に関して法令違反を行っているということではございません。企業の名前を明らかにすることによりまして当該企業の経済活動に不利益を及ぼすおそれがあることから、当該企業の同意のない形で企業名を明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 また、御指摘の電機メーカーA社ということでございますが、この電機メーカーA社がこれら二十社に含まれるかということにつきましても、同様にお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
○塩川委員 出発点は週刊誌報道で調査を始めているわけですよ。そういった中で、この電機メーカーA社社員の国家安全保障局への出入りに関する調査結果も行っているんですよね。
○室田政府参考人 御指摘の週刊誌の報道は、週刊文春、本年二月二十四日号のことかと思います。私どもも、その週刊誌については読みました。そして、調査に当たりまして参考にさせていただいております。
○塩川委員 週刊文春で出ている、このいわゆる電機メーカーA社について、国家安全保障局への出入りがあったといったことについての調査なわけですよね。そのときに、こういった企業が、不識庵における師範をしていた藤井氏の下のゼミ生だったかどうかというのを報道されているわけですよ。
 電機メーカーA社がここで言っているような二十社の中に入るのかどうかというのは、週刊誌報道を踏まえた調査であれば、当然答えることができる話じゃないですか。もう一回。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 二十社の内訳、企業名につきましては、先ほども申し上げましたとおり、企業名を明らかにすることによりまして当該企業の経済活動に不利益を及ぼすというおそれがあるということで、差し控えさせていただきたいと思っております。
 他方で、塩川先生御指摘の点でございます先ほどの週刊誌報道、私どももきちんと読ませていただいております。それを基にした調査を行っているということでございますので、週刊誌の報道の内容と私どもの調査の内容が全く関係ないということまで申すつもりはございません。
 他方で、A社につきましては非常に積極的に協力をいただきまして、そのおかげで調査が進んだということもございます。そういった中におきまして、A社を含めまして、二十社に入るかどうかを別にいたしましても、様々な企業さんからの調査、いただいております。その調査の協力ということを踏まえましても、当該企業さんの経済活動に不利益を及ぼすという観点から、企業様の同意がない形で政府として企業名を発表させていただくということは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
○塩川委員 それはおかしいじゃないですか。積極的に協力するような立場であれば、やはり、名前を出して潔白を証明する、そういうのが本来求められる話であるわけです。かえって、こういうふうに隠すと、何かやましいことがあるんじゃないかという話になるじゃないですか。
 少なくとも、この電機メーカーA社について、国家安全保障局への出入りをしているといった企業として週刊誌報道されている。そういう企業の社員が、この藤井氏の師範としてやっている不識庵におけるゼミ生だったという報道がされているんですから、この二十社の中に電機メーカーA社が入るということははっきりしているんじゃないですか。
○室田政府参考人 お答え申し上げます。
 A社の社名が何であるかということにつきましては、繰り返しになりますけれども、A社の同意なく開示をするということは私ども差し控えなければならないと思っております。
 他方で、再三の御質問をいただいておりますので、委員長からの御指示があれば、A社と相談をさせていただきたいというふうに思います。
○塩川委員 じゃ、現段階でA社に、明らかにしてもいいよというやり取りはしていないということなんですか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 A社とは連絡を取りながら国会への対応をさせていただいております。
 現時点におきましては、A社側から、A社の名前を公表することは差し控えてほしいというふうな要請を受けております。
○塩川委員 週刊誌報道で出されているように、電機メーカーA社がゼミ生だったというのは報道されているわけですから、その事実関係の確認という最低限の話ですから、それすら答えられないで、何でまともな調査をやったと言えるのか、このことが厳しく問われているところであります。
 この出されている資料の中で、電機メーカーA社の業種分類、この業種分類でありますけれども、電機メーカーA社が二十社のうちに入っていると認めないから、ちょっと分類ということでは聞けないということですけれども、週刊誌報道で出されている名称というのは日立製作所ですよ。そういったときに、直接のゼミ生だった方が、上下水道分野や治水、利水分野などを領域とする水事業部の担当部長だという話であります。
 ということになると、経済安保推進法案においては、まさに基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度の創設に関わる対象事業、対象分野の一つが水道事業であるわけで、率直に言って、法案に影響がなかったと言えるのかと思うんですが、いかがですか。
○三貝政府参考人 御質問にお答え申し上げます。
 まず、法案においては、特定の個社の利益を反映した規定ではなく、またそういった法文構造にはなっておりません。
 まず、本法案におきましては、個別具体の事業者を規律する箇所は基幹インフラパートではございますけれども、規律対象となる具体的な事業者は、法案の成立後に、まず政令で対象事業を絞り込み、また、閣議決定される基本方針を踏まえ、省令で指定基準を定めた上で、指定基準に該当する事業者を個別に指定することとしております。
 個社の利益を反映することが可能な条文構造にはなっていないことは申し上げます。
○塩川委員 重要設備の供給者や維持管理等の受託業者に該当するような場合であれば、当然、経済安保推進法の影響を受けるわけです。自分の会社、自分の事業がどんな影響が与えられるのか先回りして情報を得たい、対策も取りたいといったことというのは当然起こり得る話であって、法案に影響を及ぼすような癒着がなかったと言えるのかどうかというのは個別に見ないと分からないんじゃないですか。そういう調査はしたんですか。
○室田政府参考人 お答えを申し上げます。
 個別の調査という意味で申しますと、A社が訪問をした際の話題につきましては調査をいたしております。その際の調査の結果として申し上げますと、経済上の諸課題というようなことであったということで、これは報告書にも書かせていただいております。
 具体的なところをもう少し申し上げさせていただきますと、経済、経営の情勢におきまして、藤井氏が個人的に専門にしておりますCSR、企業の社会的責任の話題でありますとか、あるいはESG、環境、社会、ガバナンスと経営の関係ですとか、そういったことについての藤井氏の知見を得るということが話題の中心だったというふうに私ども確認させていただいております。
 いずれにいたしましても、その時期、本年の二月から四月にかけての時期は、まだ法案の作業は全く本格化しておりませんで、法案がどういう中身になるかということも全く分からない状況でございましたので、そもそも物理的に法案の内容について話をすることはできない状況であったというふうに考えておりますし、実際に我々が確認したところで、法案の内容が話されたということはないということを確認させていただいております。
○塩川委員 法案について言えば、その骨格の議論というのはずっとその前からやっているわけですよ。二〇一六年ぐらいから、これは、自民党の中でも議員連盟もできて、ルール形成戦略議員連盟などを始めとして、甘利議員を中心にこういった議論が行われてきたわけですよね。この文書の中でも、多摩大学のルール形成戦略研究所、ここにおいても、國分教授との関係でも文書が出ていますけれども、藤井氏の関わりも出ていますし、また、甘利議員はこの研究所の顧問も務めておられる、そういう経緯というのがあるわけですよね。
 その辺は小林大臣はよく御存じだと思うんですが、甘利大臣が早い時期から経済安保法制の取組をしてこられ、それとの関係で藤井氏もその実務にも関わってきた、そういった関係ということはよく御存じですよね。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
 まず、今、ルール形成戦略研究所、多摩大学の話が出ましたので申し上げますと、藤井氏につきましては、この多摩大学のルール形成戦略研究所の客員教授を無報酬で務めていたものと承知しています。また、多摩大学のホームページによれば、甘利議員はこの研究所のシニアフェローを務めているとのことでございます。また、國分教授は、自民党の経済安全保障対策本部及びその前身である新国際秩序創造戦略本部においてアドバイザーを務めていると承知をしております。
 今回の法制との関係で申し上げますと、法案につきましては、藤井氏は、準備室の一員として、国家安全保障局や法制準備室の幹部とともに、自民党の経済安保対策本部と必要に応じてやり取りを行っていて、今、甘利議員はその本部の座長を務めておりますので、法制全般について説明や意見交換を行っております。
 法案につきましては、この準備室が、経済団体などはもとより、甘利議員に限らず、与党の部会のメンバーなどを中心に、様々な方との説明、意見交換を重ねて策定したものでございます。
 こうしたやり取りというのは、議会制民主主義のプロセスの下では当然行われるべきものでございますので、藤井元室長を含めて、甘利議員に対する説明や意見交換もその一環として行われたものであると考えております。
 先ほど政府参考人からの答弁にありましたとおり、この法制が本格化したのは、まさに昨年の十月頃から加速をしまして、法制の準備室が立ち上がったのは昨年の十一月でございますので、そういう時系列の下で捉えていただけたらと考えます。
○塩川委員 小林大臣も関わってこられているからよく御承知だと思いますけれども、やはり甘利議員中心に、この自民党のルール形成戦略議員連盟や新国際秩序創造戦略本部、こういうところがまさに経済安保の骨格をつくってきているわけですよ。そういうときに深く関わってきたのが藤井氏であるわけで、それが様々な事業者の便宜を図るような、そういったことがなかったのかを過去に遡ってしっかりと調べるべきだ。こんな不十分な調査では納得いかない。引き続き徹底調査を求める。さっき言っていたような、是非A社についてはしっかりと明らかにしていただきたいということも求め、質問を終わります。