【内閣委員会】PFI/優遇措置なしには成り立たず/制度見直せ

 民間資金を活用して公共施設の整備促進をはかる「PFI法」改定案では上下水道事業について、民間が運営する「コンセッション制度」を導入した際に自治体の財政負担を軽減する措置などが盛り込まれています。
 
 PFI法が1999年に成立して以降、法改正を重ね、PFI事業者に金融支援するファンド創設や、専門ノウハウを持つ公務員の派遣制度などが導入されてきた。PFI事業者への優遇措置のオンパレードだ。法目的で、民間ノウハウ・資金の活用で効率的に社会資本を整備するとしているが、結局は優遇措置なしには成り立たないのがPFIの実態ではないかと質問。
 
 梶山弘志地方創生担当大臣は「PFI導入にはハードルがあり、その解消のための法改正だ」と述べました。
 
 総務省によるPFIを実施した自治体アンケート調査報告(2011年)では、7割以上が「今後予定はない」と回答していた。「一度やってもう懲りた」というのが自治体の声だ。こうした声に反して政府は、PFI導入の優先的検討を自治体に求める指針を出すなど、国が目標を決めて、自治体に押し付けている。
 
 梶山大臣は「PFIの導入はそれぞれの自治体が適切に判断することだ」と述べるに留まりました。
 
 塩川議員は「国が目標を決めて、自治体などに強く要請し、優遇措置を次から次へと打ち出さないと成り立たないのがPFI事業だ。抜本的に見直すべきだ」と強調しました。
 

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「議事録」

<第196通常国会 2018年05月09日 内閣委員会 14号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 PFI法の改正案について質問をいたします。
 PFI法、一九九九年からということで、二十年近くであります。その総括といいますか、これをどう見るのかということについて、きょうお尋ねしたいと思っています。
 最初に、そもそもPFI法の目的というのは何なのか、確認します。

○石崎政府参考人 PFI法の目的に関しましては、本法の一条に「目的」として規定されてございます。読み上げさせていただきますと、「この法律は、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の整備等の促進を図るための措置を講ずること等により、効率的かつ効果的に社会資本を整備するとともに、国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保し、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」というものでございます。

○塩川委員 PFIというのは、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して公共施設の整備の促進を図る、そのことがひいては国民のサービス、国民経済の健全な発展に寄与するということであります。
 このPFI事業についてですけれども、事業数及び契約金額の推移を見ると、一九九九年からスタートをして、確かに事業数ですとか契約金額も、当初は、十年ほどは伸びていたんですが、それから下がって、二〇一〇年にかけては大幅に減少してきているわけです。こういった現状は何で生まれたのか、その辺はわかりますか。

○石崎政府参考人 御指摘のとおり、PFIに関しましては、事業制度当初、比較的順調に推移した後、二〇一〇年ぐらいにかけて件数が伸び悩んだ時期がございました。これは、どちらかというと景気自体が低迷しているという時期でございまして、比較的、PFIというよりは事業全般の件数が少なかった時期ではないかというふうに考えてございます。その後、景気の回復にあわせてPFI事業は最近は順調に伸び、昨年度は今までの最多の件数を実施方針として確保している、そういう状況になってございます。

○塩川委員 リーマン・ショックとかがあったのは確かでありますけれども、逆に言うと、公共の方は力を入れてやってきた時期でもあるわけですよね。麻生政権のかなりの大幅な補正措置なんかもあったわけで、そういう流れの中でいえば、本来PFIもふえてもよかったのかなと思っているんですけれども、必ずしもそうなっていないという状況でもあります。
 二〇一一年以降は、確かに落ち込みは底を打ったような数字にはなっておりますけれども、そうはいっても、件数は少しふえたような感じですが、契約金額にすると必ずしもふえているわけではないということであります。
 率直に思うんですけれども、二〇一一年以降に一連の法改正が行われているというのが、一方でこういった数字にもあらわれているのではないのかと思うわけですけれども、一連の法改正の内容を確認したいと思います。
 最初に、二〇一一年の法改正のポイントというのはどういうものでしょうか。

○石崎政府参考人 平成二十三年の法改正のポイントでございます。
 平成二十三年のPFI法改正におきましては、まず、PFIの事業の対象となる施設を拡大する観点から、賃貸住宅、船舶、航空機、人工衛星等を対象施設に追加してございます。二番目といたしまして、民間事業者のノウハウを十分活用するため、民間事業者による提案制度の導入を図りました。三番目、民間事業者による高度な技術提案を踏まえることを目的として、技術提案制度を導入しました。四番目としまして、利用者ニーズを反映したサービスの提供を行う観点から、公共用施設等運営方式、コンセッションでございますが、この方式を導入してございます。

○塩川委員 対象施設の拡大ですとかコンセッション方式の導入ということで、コンセッションについて言えば、民間にとって施設保有というのは非常に負担になるものですから、設備投資は行政が行って、運営でもうけるという仕組みという点で、民間が運営でもうけるところをとるという仕組みということになってくるわけです。
 平成二十五年、二〇一三年の法改正のポイントというのはどういうところでしょうか。

○石崎政府参考人 平成二十五年のPFI法改正につきましては、国の資金を呼び水としてインフラ事業への民間投資を喚起し、成長力強化を実現するために、官民連携インフラファンド、株式会社民間資金等活用事業推進機構でございますが、この創設を盛り込んでございます。

○塩川委員 PFI事業者に金融支援を行うファンドを創設ということで、国の資金を呼び水にしてという話がありました。
 そもそもPFIというのは、プライベート・ファイナンス・イニシアチブですから、民間資金をどう活用しましょうかということなんですけれども、国の資金を呼び水にしないと進まないということにもとれるわけですよね。そういった点で、これがプライベート・ファイナンス・イニシアチブと言えるのかどうかということも疑問符がつくところにもなるわけです。
 次に、二〇一五年、平成二十七年の法改正のポイントというのはどういうものでしょうか。

○石崎政府参考人 平成二十七年のPFI法改正におきましては、コンセッション事業の円滑かつ効率的な実施を図るために、専門的ノウハウ等を有する公務員を退職派遣させる制度を創設することを盛り込んでございます。

○塩川委員 PFI事業者にノウハウを持った職員を派遣する仕組みをつくったわけです。
 本来、民間資金だけじゃなくて、経営能力や技術的能力を民間が持っているからそれを活用しましょうねという話なんだけれども、いや、民間に人がいないから、公務員に退職してもらって来てくださいという話というのは、これは民間にノウハウがあると言えるのかなという話でもあるわけで、そういう点でも、お金だけじゃなくて人材も出しましょうという仕組みになってきているのが、この間の一連の法改正であるわけです。
 これ以外にも、民間空港運営法や都市公園法でPFI事業導入の措置を盛り込んでありました。また、今国会に提出をされている水道法改正案もPFI促進の法案となっております。
 お尋ねしますけれども、水道法改正案とも関連する今回の法案の改正ポイントというのはどういうところでしょうか。

○石崎政府参考人 お答えします。
 今回のPFI法の改正法案のポイントは三点ございます。
 一点が、事業主体の裾野を拡大するとともに、適正なPPP、PFI実施を促進する観点から、公共施設の管理者及び民間事業者に対する国の支援機能を強化すること。
 二番目が、国際会議場や音楽ホール等におけるコンセッション実施を円滑に行うため、公共施設等運営権者が指定管理者を兼ねる場合における地方自治法の特例を措置すること。
 三番目が、上下水道事業のコンセッション事業に先駆的に取り組む地方公共団体を後押しするため、上下水道事業に関し、地方公共団体に対して貸し付けられた地方債の繰上償還に係る補償金を免除する措置を盛り込む。
 この三点でございます。

○塩川委員 MICEなどを念頭に、コンセッションと指定管理制度を兼ねてやるような場合に議会の議決を不要とするような仕組みを導入するということと、上下水道のコンセッション方式の場合に当該自治体に対する財政支援措置を行うということです。
 大臣、伺いますけれども、冒頭、PFI法の目的にありますように、民間資金、経営能力、技術的能力を活用するというのがPFI事業だというわけですけれども、実際にやられているということは、それにそぐわないような法改正ばかりで、実際、PFIの目的が看板倒れになっているというのが実態じゃないですか。いかがでしょうか。

○梶山国務大臣 これまでのPFI法の改正については、利用料収入により費用の回収を図るPPP、PFIを推進するために、官民インフラファンドを創設しました。また、委員からこれも御指摘ありましたけれども、導入されたコンセッション制度の普及を推進するために、公共施設等運営権者への公務員の退職派遣制度を創設をしてきたところであります。
 これらの措置につきましては、官民インフラファンドは平成四十年までの時限的措置とされている、また、公務員の派遣は事業の初期段階の派遣とされているように、制度が定着するまでの一定の範囲に限った支援を行うものであります。
 公務員の派遣につきましては、現場のノウハウを知っている公務員を派遣をして、ノウハウを吸収、蓄積をしていただくということであろうかと思っております。特に、新たな事業手法であるコンセッション事業を各分野で推進するには、先行案件が事業化されることが有効と考えております。
 内閣府としては、まずはこれらの支援を行うことにより、将来にわたって、より広範なPPP、PFIの成果を確保できると考えているところであります。

○塩川委員 資金の話も、また人材の話についても、初期段階でという話ですけれども、でも、やはりもともとの目的にあるように、民間の資金や経営能力又は技術的能力を活用してというところが趣旨だったわけですから、それにそぐわない実態というのになっているんじゃないですか。
 ですから、やはり法の目的から見た場合に、看板倒れというのが実態じゃないのかと思うんですけれども、改めていかがですか。

○梶山国務大臣 将来のリスクを、財政的なリスク等も含めて、PPP、PFIを普及させていこうということでありますけれども、PFI法ができて時間がたつ中で、やはりハードルの部分があって、そういう初期の導入のハードルというものがあって、こういった改正を重ねてきたものであります。

○塩川委員 だから、優遇措置がないと成り立たないのが今のPFI事業になっているということで、そういう点でも、PFI事業者と導入を目指す自治体への優遇措置のオンパレードというのがこの間の法改正や制度実施の実態でもあります。
 PFIが、民間の資金と民間のノウハウで進めるというのが優遇措置なしには成り立たないというのがPFI事業の実態ではないのか。ですから、次々、PFI推進の優遇策を打ち出しても契約金額が伸び悩んだままというのは、ますます、やはりその仕組みのあり方として問題ではないのかと思うわけです。
 この点について言うと、例えば、ちょうど、落ち込んだときという話がありますけれども、総務省がPFIを実際に企画、実施した自治体にアンケートをとっていた。それは二〇一一年の十二月、調査結果があるわけですけれども、その調査によると、実際にやった自治体に対して、今後、PFI事業を予定していますかという問いに対して、特に予定はないという回答が七三・二%だったんですよ。つまり、一回やってみた、だけれども、二回目はもういいよという人が七割以上なんですよ。
 二〇一一年の十二月のときのアンケートですけれども、これまで企画をしたり既に実施をした、そういう自治体に、もう一回、次やりますかと聞いても、七割以上は、もう考えていない、PFIにはもう懲りたというのが自治体の声、これが実態なんじゃないでしょうか。どうですか。

○石崎政府参考人 申しわけございません。ちょっとその調査については私、今承知していないものですから、その詳細は評価をしかねますけれども、我々の感覚といたしましては、やはり、まだ一度もやったことがない、どうやったらいいかわからない、それが、我々が公共団体をヒアリング等をした際に、一番、PFIを導入する際のデメリットというか問題点、課題として認識しているところでございます。

○塩川委員 いや、このアンケートのポイントというのは、実際に企画をした、実施をした自治体に聞いているんですよ。つまり、一回やってみて、二回目やりますかという問いに対して、七割以上が、もうやる予定がありませんという答えなんですよ。これがやはりPFIの実態なんじゃないのか。自治体にすると、やってみてもう懲りた、これがPFI事業の現状じゃないですか。

○石崎政府参考人 申しわけございません。我々そういう網羅的な調査のものを見てございませんので、それについて何とも申しわけございませんが、我々が公共団体のヒアリングをしていると、やはり基本的には、一度やり、それが成功したことによって継続してやっている自治体が非常に多く見られるという部分はあるところでございます。そこの我々の感覚と、先ほど言ったアンケートの違いにつきましては、引き続き我々も分析してまいりたいと思います。

○塩川委員 それなのに、PFI事業を推進するために自治体を督励しているのが、この間の国の地方行政の施策になっています。
 二〇一四年の公共施設等総合管理計画、この中で、PFIを含む民間手法の積極的活用を自治体に要請しております。
 公共施設等総合管理計画策定指針においては、総合管理計画策定に当たっての留意事項が記載をされていて、その一つ目には、行政サービス水準の検討とあって、「公共施設等の総合的かつ計画的な管理の推進の前提として、当該団体としてあるべき行政サービス水準を検討することが望ましいこと。その上で、個別の公共施設等において提供しているサービスの必要性について検討するに際しては、当該サービスが公共施設等を維持しなければ提供不可能なものであるか」、それは民間の代替の可能性などについて、「公共施設等とサービスの関係について十分に留意することが必要であること。」と述べています。
 その上で、この指針では、公共施設等総合管理計画の検討に当たっては、PPP、PFIの積極的な活用をされたいとしているわけです。
 こういう公共施設等総合管理計画でPPP、PFIの積極的な活用を呼びかけているというのは、そのとおりですね。

○石崎政府参考人 申しわけございません、公共施設等総合管理計画の文書は今手元にございませんが、PPP、PFIに関しましては、一般的に我々としては選択肢の一つとして広く推奨しているものでございます。

○塩川委員 その後、骨太二〇一五を踏まえて、二〇一五年十二月には、多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針を出して、国や人口二十万人以上の自治体にPFI導入を強く要請しているというのも、そのとおりですね。

○石崎政府参考人 それに関しましては、二十万人以上の公共団体に対して、一定規模以上の事業をする際には、PPP、PFIの可能性がないか検討をするということを、総務省と内閣府で連名で通知をさせていただいてございます。

○塩川委員 ですから、二〇一四年に公共施設等総合管理計画の指針の中でPPP、PFIを積極的にやってくださいと言い、二〇一五年には内閣府、総務省と一体となって、国と同時に二十万人以上の自治体についてはPPP、PFIについて優先的に検討してくれという督励をするという措置をずっと行っているわけですよ。
 そういった中で、例えば、この公共施設等総合管理計画を見ると、この際に、国は、自治体が公共施設の除却を行う場合、施設を壊す場合に、地方債の起債の仕組みをつくったわけですよね。この除却に伴う地方債の起債を求めるときに、総務省が提出を求めているチェックシートというのがあって、この公共施設等総合管理計画確認リストの中には、PPP、PFIの活用を検討したかどうかということをチェックして出すようにするとなっているんですよ。
 つまり、除却の地方債の特例措置を受けるためには、PFIについて検討してくれ、それについて検討したかどうかをチェックして出せという、チェックシートを用意して督励しているんですよね。そこまでしてやるのかと率直に思うわけなんです。
 そういう意味では、一方であめを示しながら行うということを含めて、要するに、そこまでしなければ進まないのがPFI事業じゃないのというのが問われているんだと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

○梶山国務大臣 先ほど来、話もありますけれども、ある一定規模の自治体においてできるものもありますし、必要要件としてそういった条件が出てくるわけでありますけれども、それにつきまして、将来起こり得る、先ほども申しましたけれども、財政危機等に対応するために、選択肢の一つとしてこれをやっていただきたい、そして、さらに、既存のものの有効活用も含めて、そういった視点で見ていただきたいということであります。

○塩川委員 もともと「目的」にも書いているように、民間の資金、民間の経営能力、技術的能力を活用してというところが、それを持たない事業者に一連の優遇措置をやってげたを履かせているというのが今のPFI事業の実態ではないのか。
 加えて、対象となる地方公共団体に対して、公共施設等総合管理計画や、また二〇一五年の内閣府そして総務省の通知にあるように、自治体に督励するという格好で優遇措置をとって進める、そうでなければ成り立たないのがこのPFI事業だということが問われているわけで、国が目標を決めて、自治体などに強く要請し、優遇措置を次から次へと打ち出さないと成り立たないのがPFI事業で、これは抜本的に見直す必要があるんじゃないでしょうか。
 最後に一言。

○梶山国務大臣 何度も申し上げますけれども、これは、あくまでも自治体の判断でPFIを適用するかどうかということでありまして、その選択肢の一つとして、私どもも、ガイドライン、また法律等で定めているわけであります。
 それぞれの自治体が、将来の財政状況を考えながら、適切に判断されるものと思っております。

○塩川委員 優遇措置で選択を一方に偏らせるという仕組みそのものが問われているんじゃないのかということを申し上げて、終わります。