【内閣委員会】子ども関連法案/権利擁護の独立機関不可欠

 子どもの権利保障に必要不可欠な独立機関「子どもコミッショナー」制度の設置を避けた政府のこども家庭庁設置法案とこども基本法案の問題点をただしました。

 私は、国連・子どもの権利委員会が同機関の設置を勧告していることにもふれながら、政府による子どもの権利侵害や不作為があった場合に政府から独立した立場で政府を監視・評価する機関が必要だと強調。

 子どもの代弁者ともいわれる同機関は、子どもが自由に意見を表明し、反映される権利を保障する仕組みとしても必要不可欠だと主張しました。

 野田聖子担当大臣は「与野党の議論・提案を注視していく」「個別事案については第一義的には自治体が対応」などと答弁しました。

 私はまた、基本法案の「こどもの養育については、家庭を基本」に行うとの文言について、他の法令にも同じ文言があるのかと質問。

 提出者の勝目康衆院議員は「ない」と認めつつ、子どもの権利条約にも同趣旨の規定があると主張。

 私は、権利条約の記述は家族に対する公的支援を強調する文脈でのものだと指摘しました。

 これまでも児童扶養手当や生活保護制度の改悪など子育て支援の後退を合理化する理由として、自助努力を強いる「家庭の養育責任」が強調されてきた。子育てへの公的支援の拡充こそ求められており、『子どもの養育は家庭が基本』との規定はこれに逆行するものだと批判しました。


衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」

<第208通常国会 2022年5月11日 内閣委員会 第24号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 最初に、こども家庭庁の組織の在り方の点について、また、子供コミッショナー制度について質問をいたします。
 これまでの答弁で、大臣は、こども家庭庁は、これまで各府省において別々に担われていた子供、子育て支援や少子化対策、児童虐待などの子供施策に関する総合調整権限を一元化して、子供や子育て当事者、現場の視点に立った強い司令塔機能を発揮すると答弁をしております。
 それでは、これまでの子供施策に係る総合調整権限とはどのようなものか、これまで機能していたのか、その点についてお答えください。
○野田国務大臣 お答えします。
 これまで、子供施策に関する総合調整権限は、青少年の健全な育成や子供の貧困対策については内閣府政策統括官において、子供、子育て支援や少子化対策については内閣府子ども・子育て本部において、そして、犯罪から子供を守るための対策については内閣官房において、児童性的搾取については国家委員会及び警察庁において、また、児童虐待については厚生労働省において、それぞれ別々に担われてまいりました。
 これまでも、内閣府、内閣官房、国家公安委員会及び警察庁、厚生労働省がそれぞれの観点から取り組んできたものと承知しているのですが、今般、政府提出法案においては、これまでの少子化の対処や子供、若者育成支援に加えて、子供のひとしく健やかな成長の実現に向けた基本的な政策についての規定を新たに設けます。これによって、これまで分散していた総合調整権限をこども家庭庁の下にまとめるとともに、広く子供の成長に関わる基本的な政策全般について一元的に担うことといたします。
 また、子供や若者から意見を聞く様々な取組を行うことで、子供や若者の意見を踏まえて、行政各部の統一を図るための企画立案、総合調整を行います。
 これらによって、こども家庭庁が、常に子供の視点に立って、子供の最善の利益を第一に考え、こどもまんなか社会の実現に向けて強い司令塔機能を発揮することができると考えております。
○塩川委員 それぞれ、これまでの期間における総合調整権限のお話がありました。それはそれで、それぞれ発揮をされていたかどうかという問題があるんですよね。
 その点で、先日、幼稚園型の認定こども園に係る幼児間性暴力について、我が党の本村議員が指摘をした事例があります。それに関してですが、幼稚園型の認定こども園の所管というのはどこになるんでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 御質問ございました幼稚園型認定こども園は、御承知かと思いますけれども、認可施設である幼稚園が保育所的な機能を備えて、いわゆる認定こども園法に基づく認定を受けた施設となってございます。
 幼稚園型認定こども園につきましては、幼稚園としての認可権者である都道府県による指導助言が行われるほか、子ども・子育て支援法における特定教育・保育施設として、市町村による指導監査等が行われております。
 こういった幼稚園型認定こども園において何らかの問題事案が生じた場合には、一義的には園が適切な対応を行うということが求められるわけですが、その上で、問題事案の円滑な解決が図られるように、事案の内容や状況を踏まえて、都道府県と市町村とが、ただいま申し上げましたようなそれぞれの権限を踏まえて、連携しながら必要な対応、支援が行われているところでございます。
 一方、内閣府、国といたしましても、自治体からの求めや事案の内容や状況を踏まえまして、文部科学省と連携しながら、本件についても必要な助言等を行っているところでございます。
 引き続き、適切な助言に努めてまいります。
○塩川委員 国として、幼稚園型の認定こども園の所管というのはどこになるんですか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 認定こども園法上の認定こども園ということですので、この認定こども園法は、内閣府、文部科学省、厚生労働省の三府省の共管になってございます。
○塩川委員 三府省の共管ということです。
 今、内閣府の子ども・子育て本部の話も出ましたけれども、内閣府の子ども・子育て本部は、内閣府設置法に基づき、子供、子育て支援のための基本的な政策、少子化の進展への対処に係る企画立案、総合調整権限を持つとしております。
 この子ども・子育て本部は、幼稚園型の認定こども園についても総合調整権限は及ぶんでしょうか。
○藤原政府参考人 現在、内閣府の子ども・子育て本部における総合調整権限の対象となっておりまして、実際、本件につきましても、内閣府を中心に文部科学省ともよく協力をいただきながら、自治体からの求めに応じた助言を図っているところでございます。
○塩川委員 子ども・子育て本部が、この認定こども園に係る件についても総合調整権限が及ぶと。今、自治体等への助言という話もされたところです。
 先日、幼稚園型の認定こども園に係る幼児間性暴力について本村議員が紹介をしましたが、保護者の方は、幼稚園や基礎自治体、愛知県の関係部局、また児童相談所などに相談をしてきたと。また、国の機関では内閣府や文科省や厚労省にも被害を訴えているけれども、子供への聞き取りや事実認定、被害幼児の救済や加害幼児への対応を誰が行うのか、この点について、たらい回しになっているという指摘がありました。
 総合調整権限を持つ子ども・子育て本部が関わりながら、たらい回しにされるような事態が生じているんじゃないでしょうか。
○藤原政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のございました具体的な事案について、個別に御答弁申し上げることは差し控えたいと思いますが、現在、抽象的なお答えになって恐縮ですけれども、保護者の方に対して、保護者との面談を自治体の方から提案をしているという状況と伺っておりますし、そのことを我々も把握をしながら、適切に助言をしております。
 特に本件につきましては、内閣府を中心に、文部科学省あるいは厚労省にも連絡を取りながら、自治体への助言に努めているところでございまして、しっかりと助言を続けていきたいというふうに思っております。
○塩川委員 助言はしているということですけれども、解決はしていないんですよ。やはり、子供への聞き取りや事実認定を行う、被害幼児への救済、また加害幼児への対応、こういったことをしっかりと、誰がどういうふうにやるのか、そういう点が非常に曖昧にされている。そこで、総合調整権限があると言われても、それが発揮されているのかということが問われてくるわけであります。
 現行の子ども・子育て本部において総合調整権限があると言われるけれども、具体の事案を見たらたらい回しになっているといった場合に、今回、更に広げる格好で総合調整権限を発揮をするこども家庭庁を置くというんだけれども、そのこども家庭庁が、じゃ、ちゃんと総合調整権限というのが発揮できるんだろうかと率直に思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
○野田国務大臣 先ほどの答弁で、児童の性的搾取については国家公安委員会というのを、ちょっと、公安を抜かしてしまいましたので、訂正させてください。
 個別の案件については、今参考人が申し上げたように、差し控えますけれども、まずは、やはり一義的には地方自治体が取り組むべきことと思います。
○塩川委員 それで解決をしないから、国がしかるべき役割を果たす。そういうときに、総合調整権限がある子ども・子育て本部がちゃんと請け負うのかなと思うと、助言はしているというんだけれども解決をしていないという点では、これではやはりたらい回しのままじゃないのかという点で、総合調整権限の発揮そのものは必要な措置ではありますけれども、それで十分とするのかどうかというのがやはり問われているということであります。
 子どもの権利委員会は、この間の日本政府報告に対する勧告において、特に二〇一九年三月、第四回、第五回の日本政府報告に対する勧告で、分野横断的に、全ての活動を調整するための明確な任務及び十分な権限を有する適切な調整機関の設置を要請しています。
 大臣、お尋ねしますが、こども家庭庁は、子どもの権利委員会が勧告で求めている調整機関なんでしょうか。
○野田国務大臣 お答えします。
 児童の権利委員会から、二〇一九年の政府報告審査の総括所見において、条約の実施に関連する全ての活動を調整するための明確な任務及び十分な権限を有する適切な調整機関を設置するよう要請する旨の勧告があったことは承知しています。
 こども家庭庁は、子供の権利を保障し、誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押しするために、常に子供の視点に立ち、子供の最善の利益を第一に考え、こどもまんなか社会の実現に向けて専一に取り組む新たな司令塔として創設するものであります。
 こども家庭庁は、外務省とも連携をして、児童の権利に関する条約に基づく児童の権利委員会への対応など、条約に関する取組を主体的に進めてまいります。
○塩川委員 いや、お答えいただいていないんですが。こども家庭庁は、子どもの権利委員会が勧告で求めている調整機関に当たるのかどうか。
○相川政府参考人 お答えいたします。
 ただいま大臣からお答え申し上げましたように、児童の権利委員会からの勧告については承知をいたしておりますが、我が国政府として、こどもまんなか社会の実現に向けて専一に取り組む独立した行政組織が必要であると主体的に判断したものでございます。
○塩川委員 だから、主体的に判断しているから、権利委員会の勧告に対応したという措置ではない、そういう話であります。
 元々、権利委員会を批准する段階でも、今の、現行のままでオーケーだよということで入ってきていますから、そういう点では非常に不十分な状況でいるというのが我々としての認識であります。
 その上で、子供の権利利益擁護のための総合調整機関であったとしても、政府による子供への権利侵害があるような場合、また、政府による子供の権利侵害に対する不作為があったような場合に、政府内部の機関でこれを取り扱うのには無理があるんじゃないのか。
 先ほど本村議員の事例で紹介をしたように、総合調整権限の機能を持つ子ども・子育て本部が関わりながら、たらい回しにされるような事態が生まれているわけです。
 大臣にお尋ねしますが、子どもの権利委員会の勧告では、先ほど言ったような調整機関の設置と一体に、全ての児童及び本条約の全ての分野を対象とする評価及び監視のためのメカニズムの設置、いわゆる子供コミッショナー制度の設置を要請しております。
 子供施策の総合調整機関とともに、子供施策を評価、監視するメカニズムである子供コミッショナーがセットで置かれることで、子供の権利を保障する役割を果たすことができるんじゃないでしょうか。
○野田国務大臣 いわゆるコミッショナーについては、本委員会で、今日もそうでございますが、与野党において様々な議論や提案がなされているということでございまして、私もその議論をしっかり注視してまいります。
 政府としては、子供の権利利益の擁護を任務とするこども家庭庁を創設することにしています。こども家庭庁においては、子供の視点に立って、こども家庭審議会などで子供や子育て当事者や有識者等の意見を聞くことにより、公平性、透明性を確保しつつ、子供の権利利益の擁護を図り、その最善の利益を実現できるよう、各省庁より一段高い立場から子供政策にしっかり取り組んでまいります。
 なお、個別事案の対応については、一義的には自治体において行われるものと考えているところです。
○塩川委員 こども家庭審議会の話がありましたけれども、こども家庭審議会というのは、審議会に応じて動くところですから。やはり、自らの発意で、政府から独立して動く子供コミッショナーとは違うものだということを指摘しなければなりません。
 参考人質疑でも、国連子どもの権利委員会は、独立した監視機関の仕組みについて、子供の権利を促進し、保護するものとして、条約締約国の中核的な義務として位置づけられているという指摘があったことは大事な点だと思っています。
 大臣に重ねてお聞きしますけれども、議論を注視するというのではなくて、政府としての考えはどうなのかということを問うているわけですから。
 政府の実施をした法制度などによって子供への権利侵害があった場合や、政府による子供の権利侵害に対する不作為があったような場合に、政府内で処理するというのは、これはまともにできるのかというのが問われるわけで、政府から独立した立場で政府を評価、監視する機関というのは必要じゃないでしょうか。
○野田国務大臣 先ほどと繰り返すことが多くなりますけれども、政府としては、子供の権利利益の擁護を任務とするこども家庭庁の創設をすること。こども家庭庁において、子供の視点に立って、こども家庭審議会、これは諮問だけではなくて自ら発意することもできますので、その場において子供や子育て当事者や有識者等の意見を聞くことによって、公平性、透明性を確保しつつ、子供の権利利益の擁護を図り、その最善の利益を実現できるように、各省庁より一段高い立場から子供政策にしっかり取り組んでまいります。
○塩川委員 子供コミッショナーは、政府から独立したというところが大きなポイントですので、そういった点でも、こども家庭審議会はそれに当たるものではないということもまた明らかであります。率直にこの問題についての、政府として、大臣としての見解が示されないというのは極めて残念であります。
 それでは、与党案の提出者、また立憲案の提出者にお尋ねをいたします。
 この子供コミッショナーのことですけれども、政府から独立した立場で政府を監視、評価する機関であるとともに、子供の意見表明を代弁し、個別の事案の相談・救済機関として、いわゆる子供コミッショナー制度が必要ではないかと考えますが、お答えください。
○勝目議員 お答え申し上げます。
 一般論といたしまして、行政組織について規定を置く際には、国家行政組織、その統治機構全体の中での位置づけ、あるいはその組織の所掌事務であるとか権限であるとか、あるいは構成員、こうしたものについて十分な議論が必要だ、このように考えております。
 御質問のいわゆる子供コミッショナーにつきましては、諸外国でそのような組織を設けている国、これがあるということは承知をしておりますけれども、その機能あるいは組織形態といったものは様々であります。このいわゆるコミッショナーという言葉が何を指すのかということにつきましても、我が国国内での議論というのは熟していないんじゃないか、こういう状況であると認識をしております。
 御指摘のありました、政府を監視するというこの仕組み、機能につきましては、まさに今御審議中でありますこども家庭庁設置法案によりまして、この役所が設置された場合におきましては、担当大臣が他省庁の子供施策に勧告する、その勧告権があるわけでございまして、この権限が十分に働くかということを注視をいたしたいと思っております。
 また、具体の権利侵害の相談、救済につきましても、これは設置法案の中で、こども家庭庁の任務として子供の権利利益の擁護というのが掲げられておりますし、また、所掌事務として、虐待の防止であるとか、いじめの防止等に関する相談体制整備といったものが規定をされているわけでございます。
 こうしたことを踏まえて、こども家庭庁の事務の実施状況、こうしたものを注意深く見守っていきたい、このように考えております。
○早稲田議員 子供コミッショナーについての御質問にお答えしたいと思います。
 立憲民主党案では、国に子供コミッショナーを設置することとしております。これは、子供の権利を守るためには、政府の外側から独立した立場で子供の権利擁護の状況を監視すること、いじめなどの重大な権利侵害事案があったときに必要な調査ができること、そして、その再発の防止等のために必要な勧告ができること、これらの点が重要であると考えております。
 加えて、立憲民主党案では、より子供に身近な立場からも、その権利の擁護を図るべく、子供の権利侵害に関する救済の申立てを受けてその解決を図ること等を所掌事務とする合議制の機関を全ての都道府県に設置することを義務づけるとともに、市町村は、これを設置することができるものとしています。そして、これらの機関は、相互に連携、協力するように努めなければならないとしております。
 このように、我々の案では、国や自治体に設置された機関が主体となって、必要に応じて連携や協力を行うことで、特定の自治体にとどまらず、全国的に子供の権利の擁護を図ることが可能となると考えております。
○塩川委員 与党案におきましては、残念ながら、子供コミッショナー制度を設けるものとなっていない。議論が熟していないというお話でしたけれども、ただ、やはり、この間の権利委員会の対応などをめぐっても、条約締約国の中核的な義務という位置づけの中で、数十か国でこういった措置が行われているということは、我々としてしっかり受け止める必要があると思っております。
 立憲案におきましては、子供コミッショナーの制度を国において設置もし、さらに、合議制の機関を都道府県でも必置をして、市町村でもその対応について求めていくという点では、個別の事案の救済という点でも積極的な役割を果たすものであると思っております。
 そこで、立憲案の提出者に、もう一点、関連してお尋ねしたいんですけれども、子どもの権利条約を本当に生かしていく上で、四つの一般原則がありますけれども、やはり、子供の意見表明権をしっかりと保障するというのが要のことだろうと思っています。子供の最善の利益を保障する上でも、もちろん、差別は許されない、成長、発達を保障する、そういう権利を求めると同時に、それを進める上でも、やはり、子供の意見表明権を保障するということが基本の点だと思っています。
 子供は権利の主体ではありますけれども、大人と同じような自己決定権を持つものではありません。だからこそ、自由に意見を表明し、反映される権利を保障する仕組みとして子供コミッショナーは必要不可欠ではないかと思いますが、立憲案の提出者のお考えをお聞かせください。
○早稲田議員 ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、全ての子供について、その子供の年齢それから発達の程度に応じて、子供の意見を聞く機会及び子供が自ら意見を述べる機会を確保すること、その意見を十分に尊重することは大変重要なことだと思っております。
 児童福祉法の改正案につきましても、今度は意見表明支援ということの事業も新たに入りました。こうしたことも踏まえればなおさらのこと、この子供コミッショナーを国に、そしてまた自治体に設置をすること、この重要性が分かると思います。
 以上です。
○塩川委員 やはり、自由に意見を表明するということがあっての意見表明権という点を強調したいと思っております。
 それでは、残りの時間で、与党提出のこども基本法案について、基本理念に、子供の養育について家庭を基本として行うという条文の文言についてお尋ねします。
 他の法律で、このような条文の規定というのはあるんでしょうか。
○丹羽議員 お答えいたします。
 児童福祉法第三条の二におきまして、児童が家庭において心身共に健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援しなければならないと定めた上で、ただし書におきまして、家庭での養育がかなわない場合には、家庭における養育環境と同様の養育環境等において児童が養育されるよう、必要な措置を講じなければならないと定めているところであります。
 この条文が追加された際の審議におきましては、家庭で養育を受けるということがまず第一、基本だろうということが厚生労働大臣から答弁されており、家庭を基本という文言こそないものの、児童の養育については家庭を基本として行うという趣旨の考えがございました。
○塩川委員 家庭を基本という文言というのはないと。それは他の法律にもないということはよろしいですか。
○丹羽議員 塩川先生おっしゃるように、家庭が基本ではないということで大丈夫でございます、文言はないということで。
○塩川委員 第一というのは第一義的責任という対応でのことだと思いますけれども、子供の養育について家庭を基本として行うという法律上の文言というのはないということです。
 そうしますと、子供の養育について家庭を基本として行うという、その意味はどういうことなんでしょうか。
○丹羽議員 児童の権利に関する条約の前文におきまして、同様の記述がございます。
 家族が児童の成長及び福祉のための自然な環境であるということにされておりまして、児童は家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであるとされております。
 御質問の中の、児童の権利に関する条約及び児童福祉法と同様の考えということで考えております。
○塩川委員 でも、権利条約の前文においては、家族というのは、社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助を与えられるべき対象だ、そちらにウェートがある書きぶりですよね。つまり、家族に対する公的支援の必要性を強調する文脈での記述になっているという点がポイントだと思います。
 しかし、子供の養育について家庭を基本として行うという趣旨と、そこは大きく違うんじゃないでしょうか。
○丹羽議員 趣旨は全く変わらずに、児童が家庭において心身共に健やかに養育されるよう、児童の保護者を支援しなければならないということが、家族に対する話でございまして、ただ、それにおいても、家庭で養育を受けるということがまず第一の、基本であろうと。児童の養育については家庭を基本として行うということを前にも厚生労働大臣が述べておりまして、そういった面におきましては、家庭の環境が保たれない場合は、しっかりと制度的に国として対応していくという内容になっております。
○塩川委員 第一と基本は違うんですよ。それは第一義なのか第一次なのか、これ自身も少し、権利条約の条文上はいろいろ議論はあるんでしょうけれども、基本という用語をなぜ使っているのかという点です。
 そういう点でいうと、やはり、子供の養育は家庭が基本だということを書くことによって、虐待や貧困、ヤングケアラーなど、家庭の中で苦しむ子供が少なくない中で、この条文の規定が、苦しむ子供や保護者を更に追い詰め、孤立させるということになりはしないのか、こういう懸念というのを持つんですが、いかがでしょうか。
○丹羽議員 もちろん、児童が家庭において、最近社会的な問題にもなっておりますヤングケアラーということは委員もおっしゃられましたけれども、このヤングケアラーとか、そういったことに陥らないように、今回のこの法案の中にも、社会全体として、子供の養育、成長を見守っていくというふうな内容でございます。
○塩川委員 家庭ということで、その下で傷ついた、そういった子供たちがあるということをしっかり見る必要があると思います。
 それと、やはり、家庭の養育責任の強調というのが家庭の自助努力を強いることにつながらないのかという危惧を持つんですが、その点はどうでしょうか。
○丹羽議員 この基本理念の第三条の五にもございます、子供の養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的な責任を有するという認識の下、これらの者に対して子供の養育に関して十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難な子供にはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、子供が心身共に健やかに生育されるようにすることというふうに書いております。
○塩川委員 第一義的に、その後に社会的な支援の話が出てくるわけですけれども、その前段として基本という言葉が出てくる、その意味は何なのかというところが問われているわけです。
 私、その点で、家庭の自助努力を強いるということが問題になるということを先ほども述べましたが、これまで自民党は、例えば生活保護制度について、自助努力による生計の維持ができない者に対する措置ということを原点に実施するとして、生活保護給付水準の引下げを求め、実施してきたという経緯があります。
 児童扶養手当も同様であります。就労による自立支援を名目にして、児童扶養手当の減額や一部支給停止規定を設けるなどしてきました。
 母子家庭の母親の就労率は八割と極めて高い水準であるにもかかわらず、一人親家庭の貧困率は五割、OECD諸国で最悪水準であります。母親の就労の大半が非正規雇用で低賃金となっている現状があります。
 こういう現状をそのままにして、子供の養育は家庭が基本という規定は、母子家庭に自助努力として就労による自立を迫ることにつながるんじゃありませんか。
○丹羽議員 再度、このこども基本法の要領にもよりますけれども、基本理念におきまして、子供の養育について、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的に責任を有するという認識の下、これらの者に対して子供の養育に関して十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難な子供に対してはできる限りの支援を行うというふうにされております。
○塩川委員 これまで、児童扶養手当の改悪や生活保護制度の改悪など、子育て支援の後退を合理化する理由として、自助努力を強いる家庭の養育責任が強調されてきました。
 家庭に養育責任を迫るんじゃなくて、児童扶養手当を始めとした社会手当の抜本的拡充など、子育てへの公的支援を拡充することこそ求められている。子供の養育は家庭が基本という規定はこれに逆行するものだと指摘をして、質問を終わります。