【予算委員会】火山観測・研究者足りぬ/高齢化が深刻

 12人の死傷者を出した草津白根山の本白根山をはじめ、日本には111の活火山があるのに、火山の観測・研究に従事する「火山の主治医」(研究者)が足りない――火山の主治医の高齢化と若手研究者が不足している実態を告発しました。
 
 火山観測は、気象庁とともに大学の観測所が大きな役割を担っています。1月23日の噴火の第一報を入れたのは、東京工業大学の野上健治教授でした。野上教授ら火山の主治医が何人いるか、うち40歳未満は何人かと質問。
 
 文部科学省は、2016年時点で45人、うち40歳以下は7人だと説明しました。
 
 現場で苦労されている研究者からは「実際の数はもっと少ない」「顔ぶれが変わらず、高齢化を突き進んでいる」との意見が出されている。111の活火山があるのに、大学における火山の主治医が数十人。しかも後継者の若手がいない。火山の観測・研究体制が掘り崩されている大問題だ。
 
 林芳正文科相は「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」で人材育成をしていると答えました。
 
 火山の研究にかかわる就職口はあるのか。火山研究を志そうとしてもどうにもできないのが実態だ。
 
 林文科相は「政府の各関係機関などに、なるべく、できる範囲で年齢構成に偏りがでないような取組を促していきたい」と答えました。
 
 有珠山噴火の際に北海道大学有珠火山観測所が大きな役割を果たし、死傷者ゼロだった。一方、国立大学の法人化後、東大と北海道大の火山観測所の常駐・常勤の人員がゼロになっている。
 
 小此木八郎防災担当相は「主治医・専門家の育成は一つの課題。今後協議・研究する」と答えました。
 
 予算で示せ。そもそも国立大学法人化後の運営費交付金の削減が、人件費削減につながり、民間資金獲得が困難な基礎研究である火山研究体制にしわ寄せとなっている。
 
 文科省は「各大学の研究者の体制、一人一人の年齢構成について調査し、報告する」と答弁ました。
 
 

 


「議事録」

<第196通常国会 2018年02月09日 予算委員会 9号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょう、私は、草津白根山の噴火災害、火山観測研究体制についてお尋ねをいたします。
 草津白根山の噴火におきまして亡くなられた方、被害に遭われた方々に、お悔やみとお見舞いを申し上げます。
 最初に、気象庁長官にお尋ねをいたします。
 現地で草津白根山の研究、監視、観測活動に従事をしてきた野上東工大教授は、噴火前にあるはずの兆候がない噴火だった、火山観測の哲学が覆されたと述べております。
 政府としては今回の噴火についてどのように評価をしているのか、お尋ねをいたします。

○橋田政府参考人 まず初めに、このたびの草津白根山の噴火によりまして、訓練によりお亡くなりになられた自衛官の方の御冥福をお祈り申し上げるとともに、被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
 ただいまお尋ねのありました草津白根山でございますけれども、一月の二十三日、本白根山の鏡池付近で噴火が発生いたしました。鏡池付近から一キロ以上離れた場所で噴石の飛散が確認されたほか、北東に八キロ離れました群馬県中之条町で降灰が観測されております。この噴火は、噴出物の調査の結果から、水蒸気噴火である可能性が高いと考えられております。
 先ほど委員御指摘のように、この草津白根山の噴火におきましては、近年活動が活発な白根山の湯釜付近ではなく、有史以来噴火のなかった本白根山付近で発生いたしました。また、火山性地震や地殻変動に、噴火の兆候と言えるような特段の火山活動に変化がないまま発生したというものでございます。
 火山噴火予知連絡会におきましては、当面は同程度の噴火が発生する可能性があると評価しておりまして、気象庁といたしましては、本白根山の鏡池付近からおおむね二キロの範囲で、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒するよう呼びかけているところでございます。
 気象庁及び関係機関では、新たに監視カメラを設置いたしまして本白根山の観測体制を強化するとともに、現地に職員を派遣しております。関係機関及び地元の地方公共団体、研究機関と密接に連携して、対応に万全を期してまいりたいと考えております。
 また、今回の噴火の監視、観測を踏まえまして、噴火の態様につきましてはよく検証してまいりたい、このように考えております。
 以上です。

○塩川委員 噴火の兆候がないまま、そういった説明がありました。実際、熱とかガスとか温泉とかといった噴火の兆候がない、地震計が置いてあってもわからなかったんじゃないのか、こういうことが言われております。
 誰も想定していなかったもの、だからこそ、この想定外の事態を踏まえた火山の監視、観測、研究体制の強化が必要であります。
 気象庁にお尋ねしますが、草津白根山については、東京工業大学の火山観測所が草津町にあり、常時観測、研究の拠点となっております。気象庁への噴火の第一報も東工大の野上教授でありました。草津白根山の監視観測体制は、このような大学研究者の観測、研究活動なしには成り立たないのではありませんか。

○橋田政府参考人 お答えいたします。
 まず、気象庁でございますけれども、火山の観測監視体制は、全国五十の常時観測火山におきまして……(塩川委員「草津白根のを聞いているんだから、草津白根の話」と呼ぶ)
 草津白根におきましても同様に、地震計や傾斜計、GNSS、監視カメラ等の観測機器を設置しておりまして、二十四時間体制で監視をしているところでございます。
 また、これらに加えまして、ただいま御指摘ありましたように、大学等の研究機関が整備した観測点も活用しているところでございます。
 また、火山活動の評価を行うに当たっては、噴火予知連絡会の枠組みによりまして、東京工業大学を始めとする火山の観測、研究に携わっておられる火山の専門家からの知見の提供を得ながら評価を行っているというところでございまして、引き続き、これら火山噴火予知連絡会あるいは火山防災協議会の枠組みにより、大学等の火山の専門家とよく連携いたしまして、火山の監視、警報等の発表に万全を期してまいりたい、このように思っています。

○塩川委員 今回の草津白根の場合でも、噴火の現場に真っ先に駆けつけたのは気象庁じゃないんですよ。この東工大学の野上教授が真っ先に駆けつけて、実際の避難者への対応も含めて対応されておられた、このようにお聞きをいたしました。
 ですから、今答弁にもありましたけれども、気象庁は気象庁でしっかりとした監視観測体制をやってもらいたいけれども、現実は、大学のさまざまな調査の観測点におけるデータも必要だし、火山専門家の知見の提供が求められている。これは、草津白根山に限らず、全国の火山においても同様だと思うんですが、いかがですか。

○橋田政府参考人 お答えいたします。
 先ほどお答えいたしましたように、全国につきましても五十の常時観測火山にそれぞれ気象庁として観測網を置きまして観測体制を整備してきているところでございまして、やはりそれぞれの地域の大学の専門家とよく連携をして、観測、情報の提供等を行っております。

○塩川委員 気象庁だけではなく、やはり大学のこういった観測、研究というのが大きな力となっている。日本には百十一の活火山があるわけで、そのうち五十カ所が常時観測火山ともなっています。大学が提供する知恵と情報なしには日本の火山噴火の監視観測体制が回っていかないというのが現状であります。
 そこで、防災担当大臣にお尋ねいたしますけれども、火山活動の評価をする政府の、気象庁のもとに置かれている火山噴火予知連絡会の石原和弘会長がマスコミのインタビューに答えて、長期的な視野に立った観測体制や人材育成の必要性を強調しておりました。
 そこでは、火山と研究者の関係は患者と主治医に例えることができる、一人の患者を長年診察してきた医師であれば、ちょっとした変化から患者の異変に気づきやすい、火山も似ており、長年その山を見続けてきた研究者であれば、ちょっとした変化から噴火の兆候をつかみやすいと述べ、例えば有珠山噴火は、それまでの噴火の周期よりも十年ほど短かったが、地震発生の推移を分析するなどして予測につながったと指摘をしております。
 大臣にお聞きしますけれども、このように有珠山噴火の際の適切な避難対応、これはやはり有珠山の主治医がいたからではないか。この点について、どのようにお考えでしょうか。

○小此木国務大臣 有珠山におきましても、御嶽山の噴火もございました。さまざまな中で、今気象庁もお答えをいたしましたけれども、今回も課題が残されたとは思います。
 そこで、今、私といたしましては、御嶽山の噴火後、中央防災会議のワーキンググループでの報告を踏まえて、気象庁が、観測機器の増設や火山の監視・警報センターの設置とともに、職員を増員するなどの監視観測体制の強化を行い、文部科学省が、大学、研究機関等と連携した火山研究、人材育成の総合プロジェクトによる研究体制の強化を行ってきたと承知しています。
 また、私ども内閣府では、関係機関同士の連携強化により、監視観測、調査研究体制の強化を図るため、火山防災対策会議を設置し、政府一体となって体制強化を進めてきたところでもあります。
 今委員がおっしゃった、専門家のそういった見立て、治療といいますか、そういったものは、今後も更に専門家の意見も聞きながら、私たちは目を向けていく、考えていく、強化に努めるということは必要であると思います。

○塩川委員 有珠山の主治医のことについても、専門家の意見も聞きながらというお話にもありますように、やはり本当に避難体制をつくる上で大学の火山観測所の役割が大きかったということも、こういうところにも示されていたわけです。
 ところが、石原予知連会長は、近年は各地の火山から主治医がいなくなりつつある、御嶽山もその一つだったと述べております。
 そこで、林文科大臣にお尋ねをいたします。
 火山の観測研究体制を担う研究者が足りないということがこの間強調され、死者・行方不明者が六十三人に上りました御嶽山噴火の教訓でも指摘をされておりました。このように、火山における主治医がいなくなりつつある、こういう実態というのを大臣は承知しておられますか。

○林国務大臣 今先生からお話のありました、平成二十六年の九月に発生した御嶽山の噴火を踏まえた報告書において、火山研究体制の強化に向けて実施すべき取組というのが指摘をされております。
 そこに指摘に至る経緯で、やはり必ずしも十分に中長期的な火山噴火予測に関する研究等が行われていない、現時点ではその成果が防災、減災に十分生かされていない、こういう指摘があったところでございますので、これを踏まえてしっかりとやっていかなければならないという認識を持っておるところでございます。

○塩川委員 研究者自身が非常にいなくなっている、主治医がいなくなりつつあるという問題が問われているわけです。
 ですから、その辺でちょっと文科省に確認しますけれども、大学において、火山の主治医、つまり常時火山活動のモニタリング、研究をしている、そういう研究者の人は何人いるんでしょうか。その年齢構成についてですけれども、四十歳未満はそのうち何人か、それについて答えてもらえますか。

○佐伯政府参考人 お答え申し上げます。
 火山における観測点の維持管理に携わるとともに、火山噴火現象の解明や火山噴火予測について研究を行っている大学の研究者につきまして調査を行いましたところ、平成二十六年四月時点の人数は四十七名でございました。このうち、四十歳未満の研究者につきましては五名であったと承知しております。

○塩川委員 活火山、百十一あるんですよ。常時観測というところでも五十。そんな中で、もちろん気象庁ですとか国の研究機関にも専門家の方がいらっしゃいますけれども、実際に地域の大学で主治医として活動してこられたこういった大学の研究者の方の数が、これは文科省のカウントの仕方ですけれども、四十七人しかいない。しかも、その年代構成を見ると、四十歳未満の若手の人というのはわずか五人。これ、大丈夫なのかということを率直に思わざるを得ません。
 そもそも、この調査の日付、平成二十六年四月時点のものですよね。四十七人と答えた、四十歳未満が五人という。だから、もう四年前の話なんですよ。もう四年シフトしているわけですよね。だから、もっと年齢が上がっているというのが現状だということになります。こういう人たちの顔ぶれがかわらずに高齢化を突き進んでいるというところが一番の問題だということを言わざるを得ません。
 ちょうどきょうの毎日新聞でもこの問題を取り上げておりまして、「火山専門家の“高齢化”も課題だ。」。
 文科省の地震火山専門官はということで、文科省の地震火山専門官の言葉として、五十代が多く、十年たてば第一線から引退する人が続出をする、人数が更に減り、火山監視が困難になると危機感をあらわすとあります。
 ですから、こういった教員のデータ、当然文科省は持っているわけですから、四年前の話じゃなくて今の数字を出してもらえますか。年齢構成についても、こういった、いただいているのは十歳刻みのものですけれども、教員のデータは当然文科省は持っているんだから、一人一人が何歳かということも含めて、きちっと明らかにしてもらえますか。

○佐伯政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども、なかなか完全な調査、行き届いていない点がございますが、今現在持っておる数字で確認いたしますと、その後調査した結果で、平成二十八年の四月一日時点の数字でございますが、四十五名というものがございます。このうち、先ほど先生から御指摘のありました四十歳以下の研究者につきましては七名と若干ふえている状況でございます。

○塩川委員 それも含めてちゃんと年代構成、それぞれの年齢で改めてきちっと出してもらえますか。それをちょっと答えてください。

○佐伯政府参考人 それでは、現在ございませんので、また追って調べて、先生の方に御報告申し上げたいと思います。

○塩川委員 ですから、高齢化の事態が深刻だと。若手が五人だろうが七人だろうが、もう決定的に少ないのは明らかなんですから、そういった構成がどうなっているのかというのを政府がしっかりと把握しなければ、日本の火山の観測研究体制そのものが大きく掘り崩されかねないような大問題なんだ、こういう認識を文科省が持っているのか、政府が持っているのかというのが問われているんじゃないのか。実態もつかまないままこういう事態が推移するということは、断じて許されないということを申し上げておきます。
 火山の研究者の方にお話をお聞きすると、こういう火山活動とか噴火予知に求められているのは、いつ、どこで、どれくらいの規模で、どのような噴火が起きるのか、こういったことに加えて、いつまで続くのか、こういう要素が非常に重要だと。このいつまで続くのかというのが地震と決定的に違うところなんだ、こういう話もしておられました。
 このような五つの要素を把握するために、噴火発生時に現場で観測をどういうふうにやるのか、そのデザインもできて、観測装置を設置し、火山活動をモニタリングできる人が、いわば主治医に当たるような研究者の方であります。
 現場で一体何が起きているのかをきちんと解釈をできる人、現地で研究活動することができる研究者は限られている。実際には、そういった方々が、四十七人、四十五人とかというんじゃなくて、十六人くらいじゃないのか、そういう声もあるわけです。五年、十年したら二人しか残らないなどという話も聞いた。
 文科大臣にお尋ねしますが、百十一の活火山があるのに、大学における火山の主治医が数十人でしかない、後継者の若手がおらず、高齢化が進んでいる。若手がおらず、高齢化が進んでいる、こういう事態を放置していいのか、この点についてお尋ねします。

○林国務大臣 先ほど申し上げました、委員からも取り上げていただきましたこの報告書にもそう指摘がございましたので、特に、重点二十五火山というのが示されておりますが、これを中心に、大学、防災科学技術研究所等に設置された観測点のデータを活用しつつ、大学等において火山研究が進められております。
 また、その指摘も受けまして、平成二十八年度から、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト、これを開始しております。このプロジェクトにおきまして、報告書で御指摘がありました、噴火の先行現象の解明、それから噴火の可能性の評価手法の開発に資する研究を進めておるところでございます。
 今まさに御指摘のありました大学における火山研究者が中心となって、火山ガスであるとか火山噴出物の分析、研究、またレーダー衛星による火山観測技術の研究、こういったものを実施しております。
 こういった取組によって、火山の観測研究体制の強化に取り組んでまいらなければならないと思っております。(塩川委員「人材の方はどうですか、人材育成」と呼ぶ)
 申し上げましたように、これは人材育成も含んだ総合プロジェクトでございますので、これをしっかり進めて、委員から御指摘のあったように、若手の育成というのも、これは次世代でございますので、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

○塩川委員 今、次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトのお話がありました。二つの事業があると。
 一つは、観測、予測、対策の一体的な火山研究の推進というお話ですけれども、これは、火山の観測、予測、災害対策技術の開発であって、メーカーと大学の研究連携、こういう点では重要だと考えますけれども、しかし、主治医である火山研究者の基礎研究資金に手当てをするというわけではない。
 また、人材育成の方についても、理学にとどまらず、工学、社会科学等の広範な知識と高度な技能を擁する火山研究者の育成、確保というもので、これはこれで重要だと思いますけれども、しかし、先ほど来から指摘をしているような火山の主治医を直接ふやすものにはなっていないと思う。
 その点は、大臣、いかがですか。

○林国務大臣 もちろん、こういうことを通じて人材の裾野を広げていくということが大事であるということでございますが、その中で、委員が先ほどからおっしゃっている主治医ですね、こういう方、こういう主治医になってもらえるような方をこういうものを通じて育成、確保してまいらなければならない、こういうふうに思っておりまして、当面五年間で八十人から百六十人へ確保数をふやしていこうという目標を立てて取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

○塩川委員 八十人から百六十人、五年間でふやすというんですけれども、それは、先ほど言ったように、工学とか社会科学とかの連携のそういう広がりの中ですから、いわゆる先ほど言っているような、大学関係者でいえば四十七人とか四十五人に相当するよりも対象を広げての話なんですよ。そういう意味でも、まさに主治医に当たるような人がどれだけふえるのか、見通しがあるのか。
 しかも、八十から百六十という目標を掲げたとしても、就職口はあるんですか。就職口というのはしっかりと見通すことができるんですか、大学とか研究機関とか。それはどうですか。

○林国務大臣 各研究機関それから各大学、それぞれ独立行政法人であったり、また国立大学法人であったりということでございますので、それぞれ決めた計画に基づいて運営をしていただいております。
 そういう中で、なるべくできる範囲で、委員からも御指摘がありましたけれども、こういう世代における人数構成というものが過度に偏っていかないような取組というのを我々も促していければ、こういうふうに思っておるところでございます。

○塩川委員 いや、できる範囲じゃ困るんですよ。そうじゃなくて、やはり本当に、四十歳未満が一桁のような状況で、もう放置できないんじゃないのか。具体的にどうふやすのかという計画こそつくるべきなんですよ。それがないというのが今の現状というのは、極めて深刻だと言わざるを得ません。
 二〇〇〇年の有珠山噴火の際にその活躍が注目をされた、北海道大学有珠火山研究所で活動されたのが岡田弘北大名誉教授であります。
 一九七七年に有珠火山観測所が設立され、この年に有珠山の噴火がありました。ハザードマップ作成のために危険区域の事前調査をしようとしたところ、ここは観光地だから、危ない火山と言わないでほしいと地域住民から拒絶されたという経緯もあった。
 しかし、その後、十勝岳や、また雲仙岳の噴火などもあり、それまで拒絶をしていた観光業の人たちが火山観測所を訪ねてくるようになりました。災害の経験を学び、災害に備えよう、そういう意識改革が進み、それが試されたのが二〇〇〇年の有珠山噴火です。
 前兆を捉え、私たち科学者と行政、マスコミ、地域住民が連携して事前避難に取り組みました、観測したデータから、どんな危険があるのかを的確に伝え、それを住民たちが理解して行動できました、だからこそ、居住地域での噴火にもかかわらず死傷者ゼロの成果が得られましたというのが、あの有珠山の噴火だったわけであります。
 極めて重要な北大の有珠火山観測所の果たしてきた役割、地域と一体となってこういうことを行ってきた、このことに我々は本当に今学ぶ必要があると思います。
 そこで、このような重要な役割を果たしてきた大学の火山観測所の人員についてお尋ねをいたします。
 最初に、この北海道大学の有珠火山観測所における常駐している常勤の方、常駐常勤の方の人数について、大学の国立大学法人化前の二〇〇三年度と今年度の数字を示してもらえますか。

○義本政府参考人 お答えいたします。
 北海道大学の有珠火山観測所につきましては、法人化前の平成十五年度につきましては常勤が四名でございます。平成二十九年度におけます同有珠火山観測所につきましては、常勤一名と非常勤の職員二名の合計三名の配置となっているところでございます。

○塩川委員 法人化前では四名だったのが現在は一名ということですが、しかし、この一名というのは本当に常勤の方なんでしょうか。私がホームページでこの有珠火山観測所を見ましたら、三人の方のお名前があって、確かにその非常勤の方もあるんですけれども、特任准教授という方を常勤とカウントしているんでしょうか。

○義本政府参考人 お答えいたします。
 先ほど答弁いたしました常勤のカウントにつきましては、北海道大学に調査した結果でございまして、そのような形での報告をいただいたところでございます。

○塩川委員 いや、だから、大学任せにしないで、あなたが調べなさいよ。
 この有珠の火山観測所のスタッフの資料はありますよ、ホームページを見れば。その中に、有珠の方は三人いる。特任准教授と研究支援推進員と事務補助員です。事務補助員の方と研究支援推進員というのは非常勤の方です。特任准教授というのも有期雇用の方ですよ。この方は定年退職後で勤められている方で、もちろん実績もある、経験もある、そういう先生がおつきになっているんですけれども、有期雇用じゃないですか。そんなことも確認していないんですか。

○義本政府参考人 お答えいたします。
 雇用形態といいますか、大学の方に対しては、その勤務している状況について、常勤か非常勤かということでお尋ねして回答をいただいたものでございます。

○塩川委員 だから、何で文科省で調べないんだよ。文科省として実態をつかむかということが問われているんじゃないですか。こういうように、私がホームページをあけてみたってすぐわかる話なんですよ。何でそんなことも調べられないのか。文科省は何をやっている役所なのか、まさに問われているんじゃないでしょうか。
 ですから、もちろん、仕事をされておられる方は、経験もお持ちで実績もお持ちの方、しかし、雇用形態は有期雇用なんですよ。常勤の方じゃないんです。そういった常勤がどんどんどんどん減らされて、今、有珠火山観測所でもゼロというのが実態だということであります。
 じゃ、東大はどうですか。

○義本政府参考人 お答えいたします。
 東京大学につきましては、三つの観測所を持っておりまして、そのうちの浅間火山観測所につきましては、平成十五年度につきましては常勤一名、平成二十九年度については配置はゼロでございます。また、伊豆大島観測所につきましては、平成十五年度及び平成二十九年度、いずれも配置はゼロでございます。さらに、霧島火山観測所につきましては、平成十五年度は常勤一名、平成二十九年度の配置はゼロになっているところでございます。

○塩川委員 全部ゼロなんですよ。もちろん、無人化も進めましょうと。実際に、いろいろ観測データなどが大学などに送られるという事情はあるでしょう。しかし、主治医である以上は、現場に行って実態がリアルにつかめるかどうかというのが大きい。有珠の話だってそうだったじゃないですか。そうなっていないというところに今の深刻な事態があるということをやはり受けとめてもらわないと困る。
 文科大臣に重ねてお尋ねしますけれども、この石原火山予知連会長も、火山の近くに常時置かれた大学の観測所には、研究者や観測機器を動かす技師らを合わせても全国に三十人弱しかいない、今のままでは近い将来対応できなくなるかもしれないと述べています。こういった深刻な事態を放置するのか。

○林国務大臣 先ほど申し上げましたように、そういう実態があるということは今の数字でも示されておるわけでございますので、先ほど御答弁申し上げましたいろいろなプロジェクトを使って、しっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。

○塩川委員 余りにも大学の火山観測研究体制の実態が見えていないと言わざるを得ません。
 先ほどのプロジェクトも、このプロジェクトそのものについての役割はあるでしょう。しかし、主治医となるような方々をふやすような予算措置あるいは人員配置、こういうことには実際のところなっていないというのが現状であります。
 ですから、就職口はどこですかと言っても、ぜひふやしてくださいというのは言うかもしれないけれども、実際に、こことこことここでふやします、そういう話というのはどこからも出てこないじゃないですか。八十人を百六十人にふやすなんて話も、その中身そのものについても、実際の就職口というのはどこに示されているのか。どこに示されているんですか。

○佐伯政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、具体的なポストまでなかなか特定することは困難でございますが、特に大学におきましては、火山研究と人材育成を実施することで、将来の火山の監視や噴火予測への貢献が期待される研究成果を創出するとともに、火山研究者の輩出に貢献していると承知してございます。
 そういう意味では、研究者の個人の関心ですとか、どういった研究内容かということとまさに一致してといいますか、それとかみ合わせての今後の人材育成ということが求められているというふうに承知してございます。

○塩川委員 コンソーシアムの受講者の進路選択の自由があるみたいな話を言うけれども、いや、いいんですよ、ちゃんと火山の研究にかかわるような就職口が示されれば選択のしようもあるじゃないか。何にもないのにこういうプロジェクトとかをやっても、現場は、実態は動かない、高齢化が進むだけ。これが、今の文科省や政府がやっていることじゃないか。これで本当に日本の火山観測体制、監視体制が大丈夫なのか、こういうことが厳しく問われるわけであります。
 防災担当大臣に伺います。
 このように、お聞きになって、率直にお答えいただきたいんですが、火山の主治医となる研究者が少ない、若手の就職口もないままでは、高齢化が進むだけで、日本の火山防災対策が成り立たなくなるんじゃないのか、深刻な危惧を覚えるわけですけれども、この点について防災担当大臣としてはどのように受けとめておられますか。

○小此木国務大臣 我が国では、関係省庁、研究機関等が各機関の特徴を生かし、監視観測、調査研究等を行いながら、常々その強化を図っていかなきゃならないという意味において前に進めてきたところと存じますけれども、今委員の指摘されている主治医という専門家、これの育成というものも一つの課題であろうかと思います。
 何ができるか、そして何をしなければならないか、具体的な対策を、先ほど私申し上げました火山防災対策会議等におきましても、そういうことについてもしっかりと協議、研究をしながら進めてまいりたいと思います。

○塩川委員 主治医の育成の必要性についてお話しされました。それを予算で示してくださいよ。
 予算ではっきり示すということこそ今問われているわけで、具体的に大学では、そういう予算措置、運営費交付金がどんどんどんどん削られる、そういうもとで、人件費も削らざるを得ないんですよ。研究資金をとろうなんていっても、火山での競争資金なんかはどこからもらえるのか。だから、基礎研究に対してのしっかりとした資金の手当てがない限りは、日本の火山の観測研究体制は拡充強化されていかないんですよ。
 この間、大学の法人化以降に大学の観測点整備のための国の予算がつかなくなった。そもそも、国立大学法人化、運営費交付金の削減が人件費削減につながり、民間資金の獲得が困難な基礎研究である火山観測研究体制にしわ寄せとなってあらわれています。大学で就職口がなく、ましてや民間に就職先はないんですから、火山研究を志そうとしてもどうにもできないというのが今実態で、このような仕組みを抜本的に見直すべきだ。
 文科大臣、そういう措置、ぜひとってもらえませんか。

○林国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、火山研究者の人材育成というのは重要な課題である、こういうふうに認識しております。
 先ほどのプロジェクトでございますが、複数の大学がコンソーシアムを構築して、火山学を体系的に学ぶことのできる教育プログラムを提供するということで、広範な知識と高度な技能を有する火山研究者の育成を推進しておるわけでございます。
 それぞれの研究所、それからそれぞれの大学において、しっかりとこうして育成された人材を活用していただくように、我々もしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

○塩川委員 全くそういう思いが伝わってこないということを言わざるを得ません。
 草津町の住民の方は、火山があるから温泉がある、このようにおっしゃっておられます。山岳地域の国立公園のほとんどというのは火山があるわけで、急峻な地形や荒涼とした風景、溶岩台地や大草原など、火山独特の景観が観光地になっています。海外の旅行者の方にとっても、日本の自然景観の人気スポットは火山のお釜と温泉であります。
 火山は、地域社会、地域経済を支える役割を果たしてまいりました。一方で、火山は災害をもたらす。住民の安全のためにも、地域の振興策としても、火山防災対策に全力を挙げるべきだ。そのためのしかるべき予算をしっかりと手当てするということを強く求めて、質問を終わります。