【内閣委員会】失敗が明らかなPFIの即刻中止を

 PFI法改定案を賛成多数で可決。共産、れいわが反対しました。

 私は、「公でやるべき仕事を民間任せにするPFIは即刻中止し、きちんと公で責任を持って行うべきだ」と強調し、反対しました。

 私は、問題が相次ぐPFI刑務所について質問。国内に4つあったPFI刑務所は、2つがすでにPFIの手法をとっていないことを指摘。「公権力の行使を伴う刑務所にPFIの手法を用いたのは失敗ではないか」と質しました。

 岡田直樹担当大臣は、「事業目的によっては必ずしも PFI 手法を活用しない場合がある」と否定できませんでした。

 また、私は、法案について破たんが明らかなPFI延命のため出されたものだと批判。民間事業者の意向で実施方針に定められた公共施設の規模や配置を変更可能とする措置や、国が出資する官民ファンド(PFI推進機構)を延長し、PFI事業者を支援することは、一括発注による経費抑制や民間資金の活用などこれまでの政府の説明とも逆行するものだと指摘。

 PFIの優位性は「看板倒れ」ではないかと質したのに対し、岡田大臣は「その認識はない」と認めませんでした。


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「議事録」(質疑)

<第210臨時国会 2022年11月18日 内閣委員会 第9号>

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 PFI法改正案について質問をいたします。
 事業の実施から二十数年間。PFI事業についての検証が必要であります。
 法務省に、PFI刑務所についてお尋ねをいたします。
 会計検査院は、昨年五月、「国が実施するPFI事業について」という報告書をまとめています。
 サービス購入型の六十五事業のうち、三十年度末時点において維持管理、運営業務が開始されていた五十七事業について、モニタリングにより確認された債務不履行の発生状況を見ると、同種の債務不履行が繰り返し発生していて、債務不履行の年間の発生件数が多くなっているものが見受けられたと述べています。その事例として、島根あさひ社会復帰促進センターが挙げられています。
 PFI刑務所がうまくいっていないことを会計検査院が指摘をしておりますが、法務省は承知しておりますか。
○小山政府参考人 お答え申し上げます。
 承知しております。
○塩川委員 PFI刑務所である島根あさひ社会復帰促進センターのトラブルについて、会計検査院の報告書は、わざわざ囲みにして紹介もしているわけであります。
 元々法務省は、刑務所の事務について、捜査や裁判とともに一連の刑事司法手続を構成するもので、国家刑罰権という主権の行使に直接関わるものであることから、民営化はなじまないとしていたのではないでしょうか。
○小山政府参考人 お答えいたします。
 平成十四年度の総合規制改革会議では、民間参入の拡大によります官製市場の見直しといったような観点から議論がなされまして、刑務所の事務についても議論の対象になされたものと承知しております。
 民営化を始めとする官から民への事務の移管を検討するに当たりまして、法務省といたしましては、刑務所の事務は捜査や裁判とともに一連の刑事司法手続を構成するものでございまして、国家刑罰権の実現という、まさに主権の行使に直接関わるものであるということから、民営化や包括的な業務委託にはなじまないと考えておりました。
 しかしながら、一方で、刑務所の幅広い業務を検討してまいりますうちに、被収容者の身体、財産を直接侵害する実力行使や、被収容者に対して直接義務を課したり又は権利を制限したりといった処分等を行う事務、こういうものの、権力的でおよそ民間委託にはなじまない事務を除きました、それ以外の事務につきましては、民間への委託も可能であると整理したところでございます。
○塩川委員 公権力の行使であっても、被収容者への実力行使や権利制限、受刑者処遇などを除き、守秘義務やみなし公務員をかけることによって、施設の整備や収容監視、職業訓練、信書の検査補助、矯正教育、健康診断といった公権力の行使は民間委託できることとしたという話であります。
 法務省は、今年六月、PFI事業に関する有識者会議報告書をまとめております。その中では、国職員が刑務官としての基礎的技能を向上させることの難しさについて、どのような課題があると述べていますか。
○小山政府参考人 お答えいたします。
 今御指摘の報告書につきましては、有識者会議において取りまとめられたものでございます。この報告書におきまして、官民協働の施設であります社会復帰促進センターでは、一般の刑事施設と比べて、刑務官としての基礎的技能の向上を図ることが難しい面があるとされております。
 具体的には、被収容者と接する際の状況に応じた立ち位置や、各種検査や被収容者の監視を行う際の着眼点といった基礎的技能、これを、一般刑務所におきましては勤務を通じて身につけてまいりますところでございますが、社会復帰促進センターでは相当程度の業務を民間事業者が行っておりますため、これらの技能の向上を図ることが難しい面があると指摘されているところでございます。
○塩川委員 公権力行使のうち、施設の警備や収容監視などの業務について、PFI事業者の民間職員が担っているということになります。
 ですから、PFI事業によって公権力の行使に係る業務が国と民間に分割されたことによって、国職員が刑務官としての基礎的技能を向上させることが困難となっているということですね。
○小山政府参考人 お答えいたします。
 PFI手法を活用した官民協働刑務所に限らず、矯正職員の基礎的技能の向上というのはなかなか難しい点がございます。官民協働刑務所だからといって、それに限って難しいということはなかなか一概には申し上げられないのではないかと思っておるところでございます。
○塩川委員 いや、でも、この報告書は、官民協働の施設でPFI刑務所について、今述べたような、基礎的技能の向上を図ることが困難となっていると。つまり、公権力の行使について、国の職員がやる部分とPFIによって民間職員がやる部分と切り分けられているために、結果として国の職員の基礎的技能の向上が困難になっている。
 PFI事業だからこそではありませんか。
○小山政府参考人 御指摘のような点につきましては、報告書でも述べられているとおりでございます。
 ただ、先ほども申し上げましたように、いずれの施設がどのような難しさを持っているかということは個々それぞれでございまして、職員によっても、難しい方、そうでない方、いろいろございますので、総体的に職員の技能というのは高めていく必要があっているところかと思っております。
○塩川委員 国と民間で業務の切り分けを強いるPFI事業が、国職員の基礎的技能向上の妨げとなっているということであります。
 我が党は、そもそも施設警備や収容監視などの公権力の行使を営利企業が担うことには反対であります。こういったPFI事業の問題点が改めてはっきりとしたということです。
 そこで、PFI手法を活用してきた喜連川社会復帰促進センターや播磨社会復帰促進センターについて、事業期間終了後、PFI手法を継続しなかったのはなぜでしょうか。
○小山政府参考人 お答えいたします。
 喜連川社会復帰センター及び播磨社会復帰促進センターにつきましては、本年の三月末をもちましてPFI事業が終了となり、本年四月から、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律に基づく民間委託事業を開始しております。
 これらのPFI手法を活用した事業を開始するに当たりまして、受刑者に対する職業訓練の実施や収容状況を監視するといった権力性の弱い業務につきまして、構造改革特別区域法によって特例措置を設けて、民間委託を行うこととしております。
 その後、平成二十一年五月に、この特区法に規定する特例措置が廃止されまして、同時に、公共サービス改革法に同様の特例措置が設けられたことによりまして、これらの業務を民間委託する場合につきましては、公共サービス改革法を根拠といたしまして行うこととされております。
 令和四年四月から開始いたしました両センターの民間委託事業におきましても、職業訓練の実施など権力性の弱い業務を引き続き実施するに当たりましては、新たに公共サービス改革法を根拠として民間委託を行うこととしたものでございます。
○塩川委員 公共サービス改革法については、地域限定の特区をやめて、市場化テストの導入で刑事収容施設の民間委託を全国展開するもので、公権力行使を民間業者が全国の刑務所で行うことを可能にするもので、我が党は反対をしたところであります。
 それを踏まえた上で、報告書の中でも、引き続き公権力の行使に係る業務を委託する場合には公共サービス改革法を活用することとなる、今の答弁のとおりですけれども、公権力の行使に係る業務を委託する場合にはPFI事業は実施できないとしているのはなぜなんでしょうか。
○小山政府参考人 お答えいたします。
 冒頭の御質問に対するお答えと重なってまいりますけれども、刑務所の事務というのは、捜査や公判とともに一連の刑事司法手続を構成するものでございまして、国家刑罰権の実現という、まさに主権の行使に直接関わるものであるということでございます。ここの直接関わるものにつきましては、PFI事業になじまないと考えておるところでございます。
○塩川委員 大臣にお尋ねします。
 PFI刑務所というのは、もうまずいということで、今後はやらないという話ですよね。国としては、今、アクションプランにおいても、過去十年間の事業規模目標二十一兆円を、今後十年間で三十兆円とする計画を立てております。活用対象の拡大も掲げております。それなのに、一度実施をしたPFI刑務所はもう行わないということは、このPFI刑務所については、これはもう失敗だった、うまくいかなかった、問題があったということをお認めになりますか。
○岡田国務大臣 お答え申し上げます。
 事業の実施にどのような手法を用いるかについては、やはり実施事業の目的や内容に鑑みて、最終的には、事業の実施主体である国や地方公共団体等が判断すべきものと考えております。このため、事業目的によっては、必ずしもPFI手法を活用しない場合がある。
 一方で、PFIのような民間の創意工夫や資金を活用することは、場合によっては有効な手段の一つと認識しておりますので、引き続き、こうした、ケース・バイ・ケースでありますが、PFIのメリットや効果等の周知、優良事例の横展開、案件形成の支援等に取り組んでまいりたいと考えております。
○塩川委員 刑務所についてPFI事業というのはまずかった、なじまないということはお認めになりますか。
○岡田国務大臣 刑務所PFI事業は、公権力の行使を伴う施設の警備や収容監視等に係る委託業務について、構造改革特別区域法に委託の根拠を設けることでPFI事業として実施していたわけであります。
 しかし、当該規定が廃止されたことから、事業期間が終了したPFI事業については、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律、略して公共サービス改革法に基づき、公権力の行使を伴う業務の民間委託を実施していると承知いたしております。
○塩川委員 PFI事業でやっていたものを継続するということも当然可能だったのに、わざわざPFIというのは取りませんということを決めたということですから、うまくいっていないということを認めたということでもあります。PFI推進が様々な矛盾を拡大することを認識すべきであります。
 最後に大臣、民間資金、経営能力、技術的能力を活用するというのがPFI事業だとしてきましたが、今回の改正を見ても、民間資金どころか、国の資金を活用する仕組みを延長するものであります。また、民間の経営能力、技術的能力の活用どころか、実施方針を事業者の都合で変更できるようにするなど、PFIの優位性はそもそも看板倒れではありませんか。
○岡田国務大臣 お答え申し上げます。
 PFI推進機構、国と民間のそれぞれ百億円の出資により、民間投資の呼び水として質的、量的に民間資金を補完するとともに、事業の形成に必要なノウハウや人材の提供を行う存在として設立されました。今後、老朽インフラの更新需要等に応えるため、民間の資金やノウハウを活用できるPFIのニーズが見込まれることから、機構の出融資機能などを一層活用していくことは欠かせないと考えております。
 また、実施方針の変更手続の創設は、社会経済情勢が変化した場合において、運営事業の効率的、効果的実施のために必要な工事等を可能にするものであり、PFI法の趣旨である民間ノウハウの活用の観点から、運営権者によって提案することを位置づけたものであります。この改正によって、事業開始時には予見されなかった事態への対応が可能となるなど、より効率的、効果的な事業を実施できることとなり、引き続き、民間資金、経営能力、技術的能力を活用した施設の運営が実施されることとなります。
 看板倒れという認識は持ってございません。
○塩川委員 公共が果たすべき仕事は、民間任せでなく、公務が担うべきだということを申し上げて、質問を終わります。

「議事録」(反対討論)

<第210臨時国会 2022年11月18日 内閣委員会 第9号>

○塩川委員 日本共産党を代表して、PFI法改正案に対して反対の討論を行います。
 PFIは、法施行後二十年以上が経過する中で、民間事業者の相次ぐ経営破綻などの問題事例を生み出してきました。今回の質疑で取り上げたPFI刑務所を始め、様々な問題点があることや、低コストで質の高いサービスを提供するとの触れ込みが全くの幻想であったことを、会計検査院の報告でも指摘しています。まさにPFIの破綻は明らかです。
 そうした状況にもかかわらず、岸田内閣は、PFIを新たな資本主義の中核とし、デジタル田園都市国家構想の推進力と位置づけ、今後十年で三十兆円の事業規模を目標に推進していくとしています。
 PFIの延命と推進を図るために出されたのが本法案であり、到底容認できるものではありません。
 本案は、コンセッション事業において、実施方針で定められた公共施設の規模や配置を、事業途中であっても、民間事業者からの提案で変更可能としています。
 営利を目的とする民間事業者の意向を反映させるためのものであり、公共施設管理者が実施方針で条件づけた政策目的が損なわれ、施設としての公共性が一層形骸化する懸念があります。
 また、株式会社民間資金等活用事業推進機構、いわゆるPFI推進機構の設立期限を二〇二七年度末まで延長しています。
 この間、同機構が行ってきたことは、関西空港の運営で巨額の債務を抱える関西エアポート株式会社への二百億円超の出資などです。収益の上がらないPFI事業者の延命にほかなりません。
 そもそも、民間資金を活用して公共施設の整備、運営を行うのがPFIとされており、国が出資する官民ファンドでPFI事業者を支援することは、政府のこれまでの説明とも矛盾しています。機構の延長は認められません。
 我が党は、PFIが、大企業、金融機関、ゼネコンのための新事業をつくり出すために、従来の公共分野の仕事を民間事業に明け渡すものであること、公共施設の管理運営を民間事業者に委ねることで、収益事業が優先され、公共サービスがゆがめられること、中央の大企業とその系列企業が仕事を取ることになり、地元企業の仕事が奪われることなどの問題点があるとして反対してきました。まさにその懸念が現実のものとなっており、即刻PFIをやめるべきです。
 公で行うべき仕事を民間任せにすべきではありません。きちんと公で責任を持って行うべきだと述べて、討論を終わります。