【内閣委員会】秘密保護法拡大法案が内閣委で採決/兵器の共同開発推進を告発

 「秘密の範囲」を経済分野に拡大する経済秘密保護法案(重要経済安保情報法案)等が衆院内閣委員会で、自民、公明、立民、維新、国民などの賛成多数で可決しました。日本共産党は反対しました。

 私は質疑で、「法案は、米国などの同盟国・同志国との多国間連携で兵器開発を推進するためのものだ」と告発しました。

 私は、米英豪の国々の発言を紹介。

 英国のロングボトム駐日大使は、日英伊の次期戦闘機(GCAP)について、セキュリティ・クリアランス制度は「機密技術の共同開発を促進するのに欠かせない」。

 米国のキャンベル国務副長官は「日米首脳会談で、極めて重要な防衛装備品の共同開発・共同生産を協議する」。

 オーストラリアのマールズ副首相・国防相は、極超音速兵器や無人機に適用されるAI技術の共同開発について「日本の参画に期待」。

 私は、米国防総省の「国家防衛産業戦略」が「同盟国・同志国による強固な防衛産業は、米国国防総省の統合抑止の礎石であり続ける」と掲げていると指摘、この戦略に沿って、GCAPや、それに連動する無人機、極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾(GPI)などの共同開発を推進するために「日本の民間企業の参入も踏まえてセキュリティ・クリアランスが必要となるのではないか」とただしました。

 岸田文雄首相は、GCAPは法案の対象ではないとしつつ、それ以外の「国際共同開発が一層進むことが期待される」と認めました。

 私は、防衛省のシンクタンクである防衛研究所のレポートでも「米国との安全保障分野の連携に民間企業を参画させる際に無視できないのがセキュリティ・クリアランスだ」としていると指摘。「殺傷能力のある兵器を他国に売りさばく死の商人国家を目指すことは断じて認められない」と批判し、「断固反対、廃案にすることを求める」と強調しました。

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反対討論の概要は、以下のとおりです。


 私は、日本共産党を代表して、重要経済安保情報法案に、反対の討論を行います。

 本案は、国民には何が秘密かも知らされないまま、政府が勝手に秘密に指定し、その秘密に触れただけで拘禁刑という厳罰で処罰する秘密保護法を拡大する法案に他なりません。秘密の範囲を経済分野まで拡大することで、政府が指定できる秘密を大幅に増やし、広範な民間労働者、技術者、研究者を政府の秘密保全体制に組み込むものです。

 本案がなぜ必要なのか。米国の「国家防衛産業戦略」は「同盟国・同志国の強固な防衛産業は、米国国防総省の統合抑止の礎石であり続ける」と掲げています。

 岸田政権が進める、日米の極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾GPI、米英豪の「AUKUS」との極超音速兵器や無人機、日英伊の次期戦闘機「GCAP」。こうした共同開発を進めるために、本案は、同盟国・同志国と同等の秘密保全法制を整備しようというものです。イギリスの駐日大使が、機密技術の共同開発にはセキュリティ・クリアランス制度が欠かせないと述べている通りです。

 日本の財界も、「国防省関係のビジネスで、さらなる業務獲得・円滑化のためにはクリアランスが必要」と推進しています。

 米国などの同盟国・同志国と財界の要求に応えて、兵器の共同開発・輸出を進め、日本を死の商人国家にしようというのが本案です。10日に開かれる日米首脳会談に間に合わせるために衆議院を通過させようなど、断じて許されません。

 軍事兵器の共同開発推進の下で、国民には罰則、身辺調査を押し付けます。本案が規定する秘密を扱う人への適性評価は、政治的思想、海外渡航歴、精神疾患などの治療歴、借金や家賃の滞納、家族や同居人の過去の国籍まで、機微な個人情報を根こそぎ調べ上げるものです。事情に変更があった際には報告させる誓約まで迫ります。

 本人だけでなく上司からも回答を提出させ、警察・公安調査庁や医療機関などにも本人への通知なく照会をかけます。適性評価後も、事業者に対象者を継続的に監視させる二重三重の監視体制であることが質疑でも明らかになりました。本人の同意が前提といいますが、労働者が調査を拒否しても不利益を被らないという保証はなく、事実上の強制です。
思想・良心の自由、プライバシー権を踏みにじる憲法違反そのものです。

 重大なのは、政府が、これまで防衛、外交、スパイ活動、テロ活動の4分野に限定されていた特定秘密の範囲を、運用の見直しによって拡大しようとしていることです。10年前、国民の大反対を押し切って強行した憲法違反の秘密保護法を、法改正無しに拡大するなど断じて認められません。

 このような拡大は、政府が経済安保の名の下ででっちあげた、大川原化工機事件のような冤罪事件を引き起こすのは明白であります。

 以上、基本的人権、国民主権、平和主義という日本国憲法の基本原理を根底から覆す秘密保護法の拡大であり、経済安保情報法案と合わせて断固反対です。両修正案にも反対であると申し述べ、討論を終わります。


「議事録」(対政府質疑)

第213回国会 令和6年4月5日(金曜日) 内閣委員会 第8号

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今日は、同盟国、同志国による防衛装備品の国際共同開発と今回の法案の関係についてお尋ねをいたします。

 日本とイギリス、イタリアによる次期戦闘機の共同開発に係るグローバル戦闘航空プログラム、GCAPに関連し、昨年十二月、日米両政府は、次期戦闘機と連動する無人機をめぐりAI技術に関する共同研究を実施することで合意したといいますが、これはどのような内容でしょうか。

○松本(恭)政府参考人 失礼します。

 委員御指摘のとおり、昨年十二月に、防衛省及び米国防省は、日米防衛当局間で、無人機へ適用するAI技術に係る日米共同研究に関する事業取決めに署名したところです。

 本研究は、一昨年十二月に公表した次期戦闘機に係る協力に関する防衛省と米国防省による共同発表を踏まえて実施するものであり、無人機の行動判断に適用されるAI技術について防衛装備庁と米空軍研究所が共同研究を実施するものです。本共同研究の成果として得られるAI技術については、我が方においては次期戦闘機と連携する無人機等に適用することを念頭に置いています。

 無人機と有人機の連携は今後の航空領域における活動のために極めて重要な要素であり、その実現に必要な技術として、特に進展の著しいAI技術の分野における日米の協力は、日米同盟の相互運用性や技術的優位性を確保するものであると期待しているところです。

○塩川委員 無人機の行動判断に適用されるAI技術を研究するということで、日本においては次期戦闘機と連動する無人機をめぐるAI技術ということであります。次期戦闘機に連動する無人機の開発をめぐってAI技術に関する共同研究を日米で実施するということであります。

 次に、バイデン米国大統領は、昨年十月、オーストラリアのアルバニージー首相と会談をし、日本を交えた三か国で無人機分野の協力を検討すると合意したということですけれども、その内容について承知しているでしょうか。

○松本(恭)政府参考人 お答え申し上げます。

 米国、豪州間の合意の内容につきましては我々も承知しておるところでございますけれども、具体的な詳細については、我々、詳細に承知しておるわけではございませんので、引き続き、三か国とも連携して、協議を重ねてまいりたいと思います。

○塩川委員 アメリカとオーストラリアの首脳共同声明は、戦闘機とそれに連動して活動する無人機の連携が重要になるとの認識を示し、我々の協力は相互運用性の向上と技術移転の加速を狙っていると記しているそうであります。

 これは、GCAPの次期戦闘機と連動する無人機の開発に係るAI技術の共同開発について、日米豪三か国での協力を目指すものではないのかと考えられます。

 あわせて、オーストラリアのリチャード・マールズ国防相は、共同のインタビューに、AUKUSの第二の柱である極超音速兵器やAIなどの共同開発について、将来的な日本の参画に期待と述べていますが、どのような期待をオーストラリア側はしているということなんでしょうか。

○安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 AUKUSは、一義的には米英豪三か国の協力の枠組みでございますが、先進能力分野につきましては、同盟国及び緊密なパートナーに関与する機会を模索することと承知をしておりまして、防衛省として、関心を持ってこの取組の進展を注視しているところでございます。

 その上で、今先生御指摘の報道につきましては承知をしておりますが、豪副首相兼国防相のコメントの趣旨につきまして確定的にお答えすることが困難であることにつきましては御理解を賜りたいと存じます。

○塩川委員 そういう話があるということであります。

 日米の間で、極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾、GPIの共同開発で合意をしておりますが、リチャード・マールズ・オーストラリア副首相・国防相の、極超音速兵器の共同開発について日本の参画に期待するという発言は、それを受けてのものということであります。

 いわば、GCAPにおける次期戦闘機に係る、連動する無人機のAI技術の開発とともに、GPIに関しても日米豪三か国での共同開発が想定をされているということであります。これにはイギリスも入るということもあるかもしれません。

 そこで、米国のカート・キャンベル国務副長官は、この十日に行われます日米首脳会談で、AUKUSと日本との技術協力について議論すると明らかにしておられます。

 また、キャンベル国務副長官は、三日のワシントンでのAUKUSをテーマにした講演において、極めて重要な防衛装備品の共同開発、共同生産について日米首脳会談で協議をすると述べておりますが、これはどのような内容のものでしょうか。

○濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 キャンベル国務副長官は、記者団等に対しまして、日米首脳会談でAUKUSと日本との技術協力についても協議が行われる見通しだとの趣旨の発言をした、具体的には、安全保障や技術の面で日本が大きな能力を発揮できる分野がある等ということを言ったと報じられていると承知しております。

○塩川委員 実際に首脳会談でどういうことを議論するんでしょうか。

○濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 日米首脳会談における議論の内容等につきましては決まっていないところでございまして、予断を持ってお答えすることは困難であることは御理解いただけないかと思います。

 その上で、AUKUSにつきましては、現時点におきまして日本とAUKUSとの協力について決まっていることはございませんが、我が国としては、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、安全保障、防衛面で重要なパートナーである米国、豪州、英国との間で引き続き様々な形での連携を強化し、我が国の防衛力強化に資する取組を今後とも進めてまいりたいと考えております。

○塩川委員 キャンベル国務副長官は、極めて重要な防衛装備品の共同開発、共同生産について日米首脳会談で協議するということを述べた。その中身について、今やり取りしましたように、やはり、GCAPに係る次期戦闘機と連動する無人機のAI技術の共同開発の面、それから、GPIの共同開発についても、日本、アメリカ、オーストラリア、さらに、イギリスも視野に入っているかもしれません、こういった共同開発の可能性ということも指摘をされるところであります。

 このように、次期戦闘機に連動する無人機に関するAI技術の共同開発及び極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾、GPIの共同開発について、日米豪、さらにはイギリスも含め進めることになれば、日本の民間企業の参入も踏まえ、セキュリティークリアランスが必要となるのではないでしょうか。

○品川政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のありました防衛装備品等についての開発につきましては、本法案が成立する前からあります既存の制度に基づくセキュリティークリアランスを活用していくものと理解をしております。

○塩川委員 そうなんでしょうか。

 大臣にお尋ねします。

 米国防総省は、今年一月、同盟国の軍需産業をアメリカの戦略に統合することを掲げた国家防衛産業戦略を発表しました。この国家防衛産業戦略は、同盟国や同志国の強固な防衛産業は米国国防総省の統合抑止の礎石であり続けると指摘をし、地球規模の兵器のサプライチェーンや整備拠点の確保が死活的だとして、同盟国との二国間、多国間の防衛産業の協力が掲げられております。

 このようなアメリカの国家防衛産業戦略の下、日本に対して民間企業へのセキュリティークリアランスの導入強化が求められているのではありませんか。

○高市国務大臣 アメリカの国防省が国家防衛産業戦略を公表したのは今年、二〇二四年の一月十一日でございます。

 そもそも、この法律案の検討について私が意欲を表明したのは二〇二二年の八月十日、そして、その後、総理から御指示をいただいて、有識者会議も設置して、本格的にこの法律案の準備に向けて対応を始めたのは昨年、二〇二三年の二月でございます。

 ですから、アメリカの国防省から何か言われて制度の導入を求められたという事実は全くございません。そもそも、この法律案が保護の対象とするのは、我が国の国民生活や経済活動にとって重要なインフラや重要物資のサプライチェーンの保護に関する情報でございます。

○塩川委員 防衛産業というのは重要経済基盤に当たるということでよろしいですか。

○高市国務大臣 重要経済基盤、つまり、重要な、サプライチェーンですとか重要な物資に係るものでございますけれども、デュアルユースという概念からいいますと、防衛関連企業がこれまで培ってきた知見というものを、政府が持っている情報を提供して共に研究をしていくということはあるかと思いますが、直接的に国防の用に供する装備品ということになりますと、これは特定秘密の世界に入っていくと考えております。

 本法案でそのような形のことは想定しておりません。

○塩川委員 サプライチェーンにおける防衛産業も重要経済基盤、これは否定されないわけであります。

 そういった点でも、今回の動きについて、防衛省のシンクタンクである防衛研究所の「「米国国家防衛産業戦略」を読み解く」というレポートでも、「米国との安全保障分野の連携に我が国の民間企業を参画させる際に無視できないのが、セキュリティークリアランス制度の問題である。本稿執筆中の二〇二四年一月末現在、同制度の実現に向けて法案の提出が目指されているが、防衛産業連携のいわば「共通言語」である同制度の確立と確実な普及は依然急務である。」と述べております。防衛省が、今回の法案がアメリカの国家防衛産業戦略と符合する、そういうものとしてこの確立と普及が急務だと述べているというのが、まさにこの本質を示しているのではないでしょうか。

 今回の法案は、同盟国、同志国の多国間連携で兵器開発を推進するものであります。殺傷能力のある兵器を他国に売りさばくような、死の商人国家を目指すことは断じて認められないということを申し上げて、質問を終わります。

「議事録」(総理質疑)

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 秘密保護法拡大法案について質問をいたします。

 岸田総理は、セキュリティークリアランスは、同盟国、同志国との円滑な協力のために重要と述べております。岸田政権は、イギリス、イタリアと次期戦闘機の共同開発、GCAPを進めておりますが、ジュリア・ロングボトム駐日イギリス大使は、毎日新聞の寄稿で、GCAPに関連して、セキュリティークリアランス制度は機密技術の共同開発を促進するために欠かせないと語っております。

 次期戦闘機共同開発のためにも今回の法案が必要ということではありませんか。

○岸田内閣総理大臣 現在、英国及びイタリアとの共同開発を進めている次期戦闘機の共同開発、ここで取り扱う秘密情報については、トップシークレット、シークレット、こうした二つのランクの情報として、我が国においては特定秘密に指定し、そして管理をしています。

 本法案は、コンフィデンシャル級の情報を保護の対象とする制度を創設しようとするものであり、本法案の重要経済安保情報は、その対象から特定秘密を除外しているところ、本法案が次期戦闘機の共同開発のために必要であるという御指摘は当たらないと考えています。

 ロングボトム大使の寄稿の趣旨についてお答えする立場にありませんが、本法案では、我が国の安全保障の確保に資する活動を行う事業者への重要経済安保情報の提供等について規定しており、一般的にGCAP関連以外の国際的な共同開発が一層円滑に推進されることが期待されるものであると考えています。

○塩川委員 まさに、裾野広く共同開発、共同生産を行えるような防衛産業の国際的な協力機構、その上で、民間企業へのセキュリティークリアランスが必要なのではないのか、こういう立場で、ロングボトム大使が、日本に対して民間企業に係るセキュリティークリアランスを求めてきているのではないか。その一環でこのGCAPの問題も捉える必要があるということを申し上げなければなりません。

 あわせて、来週、総理は日米首脳会談に臨まれますけれども、先ほどの質疑でもただしたところですが、アメリカのカート・キャンベル国務副長官が、この日米首脳会談でAUKUSと日本との技術協力について議論すると明らかにしたということであります。

 また、キャンベル国務副長官は、防衛装備品の共同開発、共同生産について日米首脳会談で協議すると述べたということですが、防衛装備品の共同開発、共同生産についてどのような協議を行うお考えでしょうか。

○岸田内閣総理大臣 先ほども答弁させていただきましたが、日米首脳会談については、恐らく、開催ぎりぎりまで、内容について協議、調整が続くものであると認識をしています。

 その中において、外交安全保障、経済、経済安全保障を始め、日米の連携について重要な課題が取り上げられるものであると想定はしておりますが、具体的な内容については、関係者、様々な意見や発言がある、これは承知をしておりますが、最終的にどのような会談を行うことになるのか、今の時点では具体的には確定しておりません。

○塩川委員 日本、アメリカ、それからオーストラリアの政府高官、政策担当者の発言を見ますと、例えば、GCAPの、次期戦闘機に連動する無人機に関するAI技術の共同開発、また、GPI、極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾の共同開発、これらについて、日米豪、さらにはイギリスも含め進めるという話が出ております。

 そういったことになれば、日本の民間企業の参入も踏まえ、セキュリティークリアランスが必要となってくるのではないのか、そういうことも俎上にのった議論が行われるのではありませんか。

○岸田内閣総理大臣 今の時点で具体的な内容を申し上げることはできません。

 そして、それに向けて、いろいろな関係者が様々な意見を表明している、提案をしている、これは十分承知をしておりますが、それらを会議の中でどう、取り入れるかどうか等も含めて、今はまだ何も決まっていないというのが現状であります。

 いずれにせよ、今回の日米首脳会談、国際安全保障環境が複雑化し、そして厳しさを増している中であって、日米同盟、日本とアメリカの関係、今まで以上にその存在の重要性が高まっています。その中で、日米関係の深化を確認し、そしてそれを世界に発信する、そのために重要な会議であると認識をしています。そのために必要な内容を最後までしっかり詰めたいと思います。

○塩川委員 セキュリティークリアランスに関わる法案を国会で審議をしているときに、それにつながるような首脳会談での議論が行われるかもしれない。そういったことについて何ら明らかにされずに、この法案だけ通してくれという話は、それは筋が通らないということを言わざるを得ません。

 こういった問題について、更にお尋ねしますけれども、米国防総省は、今年一月に、同盟国の軍需産業をアメリカの戦略に統合することを掲げた国家防衛産業戦略を発表しました。地球規模の武器供給網、サプライチェーンや整備拠点の確保が死活的だとして、同盟国との二国間、多国間の防衛産業の協力が掲げられております。

 こういったアメリカの戦略の下、日本に対して民間企業へのセキュリティークリアランスの導入強化が求められているのではないのか。アメリカ政府の国家防衛産業戦略に基づき、日本に対してセキュリティークリアランスの導入強化が求められているのではないのか。この点についてお答えをいただけますか。

○岸田内閣総理大臣 今御審議いただいている法案が対象とする重要経済安保情報とは、国民の生存に不可欠な又は広く我が国の国民生活や経済活動が依拠する重要な物資のサプライチェーンに関する情報であるとされています。

 これから明らかなように、本法案は、例えば米国産の武器の日本企業による生産を容易にするとか、そういったことを狙いにするものでは全くないと考えております。

○塩川委員 今年発行されました防衛省のシンクタンクである防衛研究所のレポートにおいても、米国との安全保障分野の連携に我が国の民間企業を参画させる際に無視できないのが、セキュリティークリアランスの制度の問題である、防衛産業連携のいわば共通言語であるセキュリティークリアランス制度の確立と確実な普及は依然急務であると述べているわけであります。

 今回の法案は、同盟国、同志国との間の多国間連携で兵器開発を推進するために必要な法案、殺傷能力のある兵器を他国に売りさばくような、死の商人国家を目指すことは断じて認められないということを申し上げておきます。

 こういった軍拡を進める法案は、基本的人権も侵害することになります。

 セキュリティークリアランス、適性評価の調査についてお尋ねをいたします。

 秘密保護法の運用基準を参考に作るというこの法案における適性評価の調査でありますけれども、秘密保護法による適性評価では、対象者が提出する質問票は三十ページにも及びます。海外渡航歴や統合失調症、躁うつ病などの治療歴、国税や社会保険料、家賃の滞納状況、また、家族、同居人の国籍など、機微情報の詳細な調査を行うことになります。

 本人に聞くだけでなく上司にも調査票を提出をさせ、これらの調査の内容に疑問が生じたときは、本人とともに上司や同僚、その他知人への質問を行う、それにとどまらず、現在の企業だけでなく過去に働いていた会社も含め調査を行うというものであります。

 二重三重に調査を行う仕組みということで、このような適性評価の対象者を継続的に監視するような、こういう仕組みにならざるを得ないのではありませんか。

○岸田内閣総理大臣 お尋ねのセキュリティークリアランスに関する法案における適性評価の七つの調査項目は、自発的に情報を漏えいするおそれの有無、また、他から働きかけを受けた場合に影響を排除できず漏えいしてしまうおそれの有無、また、意図せず過失により漏えいしてしまうおそれの有無、こういった観点から信頼性を確認するための必要な項目です。

 そして、これらは個人のプライバシーに関わるものであるため、適性評価の実施に当たっては、調査項目を七項目に限定しているほか、調査項目や調査の実施方法などをあらかじめ告知した上で本人の同意を得ることとし、収集した個人情報は雇用主には渡さず、また、適性評価の結果や個人情報の目的外利用を禁止するなど、法律上で配慮を行っています。

 さらに、二十一条一項には、この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害することはあってはならない、こういった規定も置いています。

 これらが運用においても政府全体できちんと担保されるよう、しっかりと対応してまいりたいと考えています。

○塩川委員 基本的な人権を侵害することはあってはならない、そういうことを規定していると言いますけれども、この仕組みの中でも、例えば警察に照会したような個人情報が消去されるんですかということについて、政府としては明言をしていないわけですよ。こういった個人情報に対しての問題、重大な人権侵害の懸念というのは拭えないということであります。

 国民に最高五年間の拘禁刑という厳罰を科し、未遂や過失、共謀、教唆、扇動、さらには取材などで秘密を取得する行為まで処罰の対象となります。

 経済安保の名の下で政府がでっち上げた冤罪事件が大川原化工機事件であります。検察が公訴を取り消したこの事件を政府はそもそも反省しているんですか。

○岸田内閣総理大臣 御指摘の点については、裁判においてまだ係争中であると承知をしております。政府の立場から、今の段階でこの事案について評価を申し上げることは控えなければなりません。

○塩川委員 裁判で現役捜査員が捏造と証言した事件ですよ。こういった問題が、経済分野全般への秘密指定の拡大によって更に同じような事件を引き起こすことになるのではないのか、こういう懸念を拭えると言えるんでしょうか。

○高市国務大臣 今回、何が対象であるかということを明確にした上で事業者に共有して、共有を受けた事業者の方々にも公務員と同様に守秘義務を負っていただく、それが今回提案している法案でございます。外為法の話とはまた別でございます。

○塩川委員 経済安保の名の下にこういった問題が生じてくるわけですから、今回の法案はそうならないということについて、しっかりとした答えというのは受け取ることができませんでした。

 基本的人権、国民主権、平和主義という日本国憲法の基本原理を根底から覆す秘密保護法を拡大するものであり、断固反対をし、廃案にすることを求めます。

 そもそも、裏金問題について、自民党ぐるみの組織的犯罪行為であるにもかかわらず、真相解明を棚上げしたまま、森元首相へ電話した中身も答えない、これでは国民に対して説明責任を果たしたと言えないのは明らかではありませんか。

○岸田内閣総理大臣 自民党としては、今日まで、今回の事案について、検察における捜査が行われ、刑事責任が明らかにされた後も、国会あるいは党において、政倫審での弁明、また党の聞き取り調査等も行われた、その中で、できる限りの事実を把握した上で、政治責任について判断をいたしました。

 しかし、信頼回復のためにはまだ道半ばであり、政治資金規正法を始めとする法改正、国会においてもしっかりとこの国会で実現することなど、引き続き政治改革について努力を続けていきたいと思います。

 自民党の信頼ということについては、強い危機感を持って、引き続き最善の努力を続けてまいります。

○塩川委員 岸田派会長、自民党総裁の処分も行わない、こんな政党、政治家に日本の政治は任せられないと申し上げて、質問を終わります。