公益法人法・公益信託法改正案を全会一致で可決しました。両改正案は、相次いだ公益法人による不正を背景にガバナンス強化や透明性の向上を図り、さらに公益活動に取り組みやすくするために財政規律の柔軟化や行政手続の簡素化などを図るものです。
私は、政府は法人への立ち入り検査の重点化を図るとしているが、「現行の3年に一回行われている定期検査はどうなるか」と質問。
内閣府の北川修公益法人行政担当室長は「頻度については再検討していく」と答弁しました。
私は「監督体制を後退させるべきではない」として現行の頻度を維持するよう求めました。
現在内閣府では2655の公益法人を監督し、検査要員は63人にとどまっています。今後公益信託の監督を含め行政需要の増加が見込まれることから、職員の増員が必要ではないかと提起。
事務の効率化に言及しただけの加藤鮎子内閣府匿名担当大臣に対し、私が重ねて増員を求めると、「どうしても必要となれば要求をしていきたい」と応じました。
私は、公益信託の受託者や管理人に対する報酬が不当に高額なものとならないよう求めると、加藤担当相は「ガイドラインなどで対応する」と答えました。
「議事録」
第213回通常国会 令和6年5月10日(金曜日) 内閣委員会 第14号
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
公益法人法、公益信託法について質問をいたします。
行政庁による監督について、まずお尋ねをいたします。
内閣府が監督をする公益法人は現在幾つか、また、検査に当たる職員数は何人なのか、この点についてお答えください。
○北川政府参考人 事実関係でございますので、私からお答え申し上げます。
内閣府では、令和六年五月一日現在、二千六百五十五法人の公益法人を所管しております。また、立入検査に当たる職員は、これは公益認定の審査業務等を兼務はしておりますが、令和六年四月一日現在で六十三人となっております。
○塩川委員 立入検査に従事する職員は、兼務ではありますけれども六十三人。これは二千六百五十五の法人との関係で立入検査を行うということになります。
そこで、現行の立入検査の考え方について、政府として示しているものがあると聞いております。都道府県に対しても同様なことについて対応方を求めるといった趣旨についての案内もされているということですが、現行の立入検査の考え方について説明をしてもらえますか。
○北川政府参考人 申し上げます。
現行の立入検査は、公益法人全体のガバナンス向上を促す観点から、おおむね三年を目途に全ての法人に対して行っております。
○塩川委員 おおむね三年を目途に全ての法人に対する立入検査が一巡するスケジュールで実施する、こういったことが考え方の文書では書かれているということでよろしいですか。
○北川政府参考人 委員おっしゃるとおりでございます。
○塩川委員 ガバナンスの向上を促すということで、全ての法人に立入検査を行うんだ、それは三年に一回のローテーションでということなんですけれども、このように、三年に一回、全ての法人に対して立入検査を行う、そうする理由、趣旨は何なのかについてお答えいただけますか。
○北川政府参考人 現行の公益法人制度は、二〇〇六年に、旧民法に基づく制度から、新しく、公益認定基準や認定委員会という枠組みの下の新しい制度として発足いたしました。
ですので、新しい制度の周知徹底、定着を全法人に対して促していくという観点から、おおむね三年を目途に全ての法人に対する立入検査を行っておるものでございます。
○塩川委員 新しい制度の周知徹底という趣旨で、三年に一回、全ての法人に対する立入検査と。あわせて、この間、過去、公益法人の不祥事が多数発生したことを踏まえれば、三年に一回、全法人への立入検査を行うということは重要な活動だと思います。
そこで、この間の委員会での政府答弁では、今後について、行政の事後チェックは今よりも実効的な強化を図っていくということですけれども、今後どのようなことを対応するのか。この点、説明してください。
○北川政府参考人 お答え申し上げます。
今般の制度改革では、公益法人の透明性やガバナンスを向上させるとともに、行政もしっかり事後チェックをしていく、こういうふうに総合的に取り組んでいこうとするものでございます。
行政の事後チェックについて、具体的には、これまで、申し上げたとおり、一律的に、定期的な立入検査ということを重視しておりましたが、今後は、より重点化を図りまして、透明性の向上を前提として、内外からの通報を活用しまして、不適切事案の端緒をつかんだ法人に対しては、より機動的、集中的に立入検査等を行い、勧告、命令、認定取消しなどの監督措置を不適切な法人には果断に実施してまいるという、めり張りづけを強化していく考えでございます。
○塩川委員 透明性、ガバナンスの強化を法人の方に求めるということは、当然、今回の措置としてもあるわけですし、それに併せて行政の事後チェックも行うということですけれども、その際に、これまでの一律の事後チェックはもうやらないんだ、重点化を図るということで、不適正事案の端緒をつかんだ法人に対して機動的、集中的な立入検査を行うという説明なんですけれども、ということは、今行っている三年に一回という立入検査は今後は行わないということでしょうか。
○北川政府参考人 立入検査も、めり張りづけを強化していく方向で考えておりますが、これまでやってきたような定期的な立入検査も、それなりに公益法人の全体の底上げには有効でありますので、これをやめるということはございません。ただ、注力する割合というのを、少しめり張りを強化していった方がいいと考えております。やめるわけではございません。
○塩川委員 現行、内閣府が出している立入検査の考え方の文書では、先ほど確認したように、おおむね三年を目途に全ての法人に対する立入検査が一巡するスケジュールで実施する、全ての法人に三年に一度の立入検査を行うということを掲げているわけですよ。
これは引き続きやるということでよろしいですか。
○北川政府参考人 機械的に三年に一巡するという、その頻度につきましては、重点化の方向で考えたいと思いますが、その重点化の考え方としましては、各法人において、不適切事案の発生するリスクに応じて、頻度や検査の内容にめり張りを立てて立入検査を実施していくことを考えております。
定期的な検査というのをゼロに、廃止するというわけではございません。めり張りをつけていくという考えでございます。
○塩川委員 定期的な検査をなくすわけじゃない、めり張りをつけるというんですけれども、それは、三年に一回を、四年に一回とか五年に一回とかにするという趣旨なんですか。
○星野委員長 北川室長、明確に御答弁ください。
○北川政府参考人 申し訳ございません。
お答え申し上げます。
三年を、五年なのか六年なのか七年なのかというところは、私ども、認定委員会においてもまだ明確に定められてはおりませんが、頻度というのは再検討してまいる考えでございます。
○塩川委員 三年に一回について、それが頻度が下がる、五年か七年かみたいな話をするんですけれども。
でも、先ほど答弁の中で、元々、三年に一回の立入検査というのは、新しい制度の周知徹底のためということをおっしゃっているわけですよ。今回、法改正するわけです。新しい制度を行うんですから、だったら、今回の法改正を踏まえた新しい制度の周知徹底を図るという点で、従来どおり三年に一回の頻度でやるので構わないんじゃないかと思うんですが。
○北川政府参考人 お答え申し上げます。
今回の改革による新しい制度を周知徹底、定着させていくための普及啓発活動や、法人に対する支援ということは、立入検査とは別の形で支援策は講じていって、普及啓発を図っていこうと考えております。
○塩川委員 立入検査そのものは書類が大変だというのは、泉田さんなんかの質問にもちょっと紹介されていましたけれども、そうはいっても、やはり法人に対してしっかりとガバナンスを発揮してもらいたい。本当に国民にとっての公益を果たせるような、そういった対応を行う上で必要な監督を行うことというのが求められているわけですから、そういう点でも、三年に一回の頻度というのは、その中身についていろいろ検討するとしてみても、全法人に対しての働きかけという機会はあってしかるべきではないかな。それが七年に一回とかになると、今回の趣旨でさえ十分徹底されるのかということを考えざるを得ません。
現場でやり取りする中で周知徹底を図るという方が、よりリアルでというふうに思うわけですが、その点が非常に、法人側のガバナンスの強化、透明性の向上を図ってもらうんだということで、何か監督体制が後退するような印象にしか取れないんですけれども、そうは思いませんか。
○北川政府参考人 今回の制度改革では、行政による事後チェックもしっかりやっていく、強化していくという方向性がございますので、実効的な監督の体制というのが後退するものとは考えておりません。
○塩川委員 ちょっと問題がありそうなところはきちっと見るというのは当たり前の話であって、そういうところに必要な人手を図るということと同時に、全法人に対して、貴重なアドバイスの機会という点も含めたこういう立入検査というのはあってもいいのではないかという思いでおります。
いずれにせよ、今後、こういう法改正、制度改正によって公益法人の数が増える、また公益信託の数も増えるということが見込まれているわけであります。必要な監督体制を図るということについては、そのためのマンパワーの確保も必要ではないのか。
そこで、加藤大臣にお尋ねいたしますが、今後、公益信託も新たに担当することになります。そういう意味では、公益法人、公益信託を所管をする、そういう部局の体制において職員の増員も必要ではないのかと考えますが、大臣、お答えください。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、公益法人、公益信託の信頼性を確保する上で、行政庁が実効的な監督を行うことは不可欠であります。
内閣府におきましては、公益法人と公益信託に係る業務が一元化されることに伴う合理化や、DXの推進等による事務の効率化、こういったものを図りつつ、必要な体制整備が行われるよう、しっかりと取り組んでまいります。
○塩川委員 その必要な体制整備がどういうものかをお聞きしたいんですが。
○加藤国務大臣 繰り返しになりますけれども、公益法人と公益信託に係る業務が一元化されることに伴う合理化、一元化していくことによって合理化をしていくということでありますし、また、DXをしっかり推進をしていくことで事務の効率化、これを図ってまいります。
そういった合理化や効率化をまず図っていくことで、しっかりとした体制の整備が行われるように取り組んでいきたいと考えております。
○塩川委員 二〇二三年の骨太方針の文章では、「公益社団・財団法人制度を改革するため、」「関連法案の提出とともに体制面を含め所要の環境整備を図る。」とあるんですよ。
今の話だと、合理化、効率化の話ばかりなんですよね。体制面での環境整備という場合に、必要に応じてやはり増員を図るということだってあり得るわけですけれども、そういうことは行わないということなんでしょうか。
○北川政府参考人 大臣も申しましたが、合理化一辺倒というわけではなくて、やはり今回の制度改革で行政需要が増大する要素もございます。新しい公益信託に係る行政、監督の体制、人員というのは必要となってきます。それを、私どもも、組織の自己努力によって合理化で圧縮できる分には努めつつも、どうしても必要な増員というものがあれば、これは政府部内で調整して、しかるべく要求して調整してまいりたいと考えております。
○塩川委員 必要な要求があれば増員を図るということを政府内で検討していきたいと。大臣もそれでよろしいですよね。
○加藤国務大臣 むしろ応援をいただいているというふうに受け止めております。
合理化、効率化をしっかり図った上で、どうしてもやはり必要ということになりましたら、要求をしていきたいと考えております。
○塩川委員 あわせて、行政庁として、国だけではなくて、都道府県、自治体の方もあります。こういった自治体の方においても、当然、行政需要が増大するということが見込まれるわけですので、大臣に重ねてお尋ねしますが、国の体制強化を図るとともに、自治体の体制強化のための地方財政措置を行う、こういうことを是非とも財政当局等に求めていくことが必要ではないかと思いますが、この点、どうでしょうか。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
公益法人、公益信託の信頼性を確保する上で、国、地方を通じて実効的な監督を行うことは不可欠であります。
地方公共団体におきましても、同じく、公益法人と公益信託業務が一元化されることに伴う合理化、また、DX推進等による事務の効率化を図りつつ、必要な体制の整備を進める必要があると考えております。
内閣府として、地方公共団体の取組をしっかりと支援していきたい、このように考えております。
○塩川委員 是非、財政需要に見合う必要な地方財政措置を図る、こういう点で取り組んでいただきたいと思っております。
重ねて加藤大臣にお尋ねしますが、公益信託について、今般の制度の見直しで信託財産や受託者の範囲を拡大することで、公益法人やNPO法人が美術品や歴史的建造物の維持管理を行うなど、多様な公益信託が生まれることを想定していると大臣は答弁をされております。
法務省の法制審信託法部会の議論で、想定される信託事務の具体例として、美術館の運営や留学生向け学生寮の運営が挙げられておりますが、このような財産を信託する委託者は誰を想定しているのか。この点についてお答えください。
○加藤国務大臣 お答えを申し上げます。
想定をされる委託者の例としましては、具体的には、美術品の収集家が、自分の死後も美術品が散逸しないよう、ノウハウを擁する人を受託者として一般に展示する公益信託を設定するですとか、相続人がおらず、自分では活用することができないアパートを持つ高齢者が、不動産会社を受託者として学生寮として活用する公益信託を設定する、こういった例が考えられます。
○塩川委員 不動産を公益信託できるようにするということで、今言ったような、美術品の収集家の方がそれを今後も活用できるような仕組みにならないか、また、高齢者の相続人のいない方における信託財産としての住居の提供、活用の仕方とか、こういうことが想定をされるということであります。
そこで、最後に、公益信託において、様々な税の優遇措置も行われることになっております。公益信託において、受託者や信託管理人の報酬が不当に高額なものとならないような支払い基準というのを定めるべきではないのかと考えますが、大臣からお答えをいただきたいと思います。
○加藤国務大臣 お答え申し上げます。
公益信託に係る報酬が、当該公益信託の経理の状況その他の公益事務の内容等を考慮して、不当に高額なものとならないための支払い基準を定めているかを、行政庁において判断をいたします。信託報酬が不当に高額かは、信託事務の種類や内容、受託者の職務の内容、それから当該信託の規模などの事情を考慮していく必要がございます。
今後、公益法人の報酬規制も参考にしつつ、具体的な基準の内容は、ガイドラインなどでできる限り明確化をしてまいります。
○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。