第216臨時国会が28日召集されます。石破政権になって初めて実質的な論戦が行われる国会です。総選挙後、衆院での与党過半数割れとなり、国民が自民党政治に代わる新しい政治を模索、探求する「新しい政治プロセス」が始まったもとで、あらゆる局面で各党の真価が試されます。
国会 本来の姿に戻す/行政監視 国民要求を前に
国民の厳しい審判で、自公政権は衆院で「少数与党」に転落しました。国会を国権の最高機関にふさわしい熟議の場とすることが求められています。
衆院に17ある常任委員長のポストは、与党の独占状態が崩れ、政府予算案を含む国政全般を全閣僚出席のもとで審議する予算委員長を含む七つのポストが自公以外の政党に割り振られました。また、改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2以上の議席を占める状況も衆院で瓦解(がかい)し、憲法審査会長も野党がとりました。
「数の力」による質疑打ち切りや強行採決など、これまでのような審議を軽視した与党の横暴な国会運営はできません。与党が参院で少数に陥った場合と異なり、野党が結束すれば内閣不信任決議案も可決できます。予算案も法案も野党側の協力を得なければ何も決められません。
本来、議会内の多数派の支持に基づき内閣がつくられる議院内閣制のもとでは、政府提出法案や行政の動きについての野党による質疑こそ、十分に保証される必要があります。
26日には政治資金規正法改正問題で、与野党7党が出席して協議会が開かれました。日本共産党や立憲民主党などが国会の正規の場である特別委員会での開かれた協議を求めたこともあり、協議会はメディアに公開して行われました。
国会が本来の役割を取り戻し、政府・行政をチェックする監視機能を発揮し、国民の意見と要求を反映する立法を前に進める役割を果たせるかどうかが問われています。多数派の意思を形式的に追認するだけでなく、国会での徹底した審議による民主主義の発揚のチャンスです。
自民党の裏金問題の全容や新たに発覚した疑惑の解明のほか、現行の健康保険証廃止の凍結・中止、大学の学費値上げストップ、選択的夫婦別姓制度の導入など、国民要求に応え、国民とともに政治を前に動かす大きな条件が広がっています。
臨時国会で補正予算案審議とは別に予算委員会での十分な質疑を行うことや、各委員会などでの大臣所信質疑の実施は与野党合意でもあります。日本共産党は、徹底審議を貫く民主的な国会運営を他党とも連携して進めていく構えです。
企業・団体献金禁止へ/“政治とカネ”妥協許さない
自民党の裏金事件を受けた「政治とカネ」の問題は大きな焦点の一つです。すでに26日に政治改革に向けた各党協議会が開かれ、各党が改革案を提示しています。
裏金事件の全容を解明し、政治改革の根幹である企業・団体献金の全面禁止を実現できるかが問われます。
裏金事件を受けた政治資金規正法の改正が政治改革特別委員会で議論されます。総選挙で国民の厳しい審判を受けたにもかかわらず、自民党の「改革」案は企業・団体献金を存続させ、企業・団体による政治資金パーティー券の購入と政党支部を通じての献金という二つの「抜け穴」を残すもの。まったく無反省な態度です。これまでのように採決強行で逃げることはできず、12月21日までの会期内に合意が成り立つかは見いだせない状態です。
各党協議会では日本共産党をはじめ立憲民主党、日本維新の会、れいわ新選組が企業・団体献金の禁止を主張。これに明確に反対しているのは自民党だけです。日本共産党は参院に「企業・団体献金全面禁止法案」「政党助成法廃止法案」を再提出し、実現に力を尽くします。
新たな疑惑の追及と徹底的な全容解明も必要です。石破茂首相は「説明責任を果たすため、政倫審の場を含めあらゆる場を積極的に活用するよう促す」と表明しました。秘書や会計責任者に責任転嫁する形式的な弁明は許されません。
来年の参院選の改選議員らには、党公認を受けるために政治倫理審査会に出席し、形だけでも説明責任を果たす姿勢を強調したいという思惑があります。一方で、旧安倍派を巡っては、参院選の年だけノルマを免除し、改選議員が集めたパーティー券収入の全額を還流していた疑惑があり、追及の焦点となります。
また、旧安倍派では、政倫審での幹部らの説明と会計責任者の公判での証言が矛盾するなど幹部らの説明が虚偽だった疑いも浮上。さらに石破首相も旧石破派のパーティー収入不記載が2021年までの6年間で計140万円分あったことが「しんぶん赤旗」日曜版10月6日号の報道で発覚し、追及の対象です。証人喚問や政倫審での徹底解明が求められます。
大軍拡の中止を迫る/経済政策のゆがみただす
暮らしの困難への無為無策で、大軍拡には巨額の税金を使いながら暮らしの予算を切り詰める自民党政治のゆがみを大本からただし、どう転換していくかが問われます。
政府は「総合経済対策」をまとめ、その財源の裏付けとなる補正予算案を臨時国会に提出する予定です。
長期にわたる賃金の低迷に物価高騰が加わり、実質賃金が減少し続けるもと、求められているのは国民の暮らしを支え、所得を増やすことです。一時的・部分的な「物価対策」や場当たり的なバラマキではなく、国民の暮らしと経済再生に向けた抜本的かつ全面的な経済対策が必要です。
そのためには、巨額の利益を得ている大企業・富裕層への税優遇という不公正な税制のゆがみをただすことこそ不可欠です。
いわゆる「年収103万円の壁」の解決をめぐっても、「生活に必要な生計費は非課税」の立場で、課税最低限度を引き上げることが当然です。加えて、生計費に容赦なく課税される消費税は、廃止をめざし、緊急に5%に減税することが求められます。
賃上げでも、大企業が巨額の内部留保を積み上げても労働者の賃金にはごく一部しか回さないというゆがみにメスを入れることが必要です。大企業の内部留保に時限的に課税して10兆円規模の財源を確保し、中小企業への直接支援を行いながら、最低賃金を速やかに1500円以上に引き上げることが求められます。
国民の暮らしを押しつぶす最たるものが「戦争国家づくり」の大軍拡です。政府の「総合経済対策」にも軍事力の「抜本的強化」が盛り込まれました。
右肩上がりの軍事予算は8・5兆円規模にまで膨れ上がり、社会保障や教育など暮らしのための予算を圧迫しています。さまざまな国民要求を実現する妨げになっています。5年間で43兆円をつぎ込むための軍拡増税など許されません。同時に、軍拡増税の是非だけでなく軍拡そのものの見直しが必要です。
日本共産党は、平和構築のために「軍事でなく外交を、排除でなく包摂を」の立場で日本外交を根本から問い直し、大軍拡路線からの転換、核兵器禁止条約の批准を求めてたたかいます。
国民とたたかい広げ/政治転換、ここからが勝負
新しい国会では、自民党政治の転換を迫る論戦とともに、国民的なたたかいと世論の結集が求められます。
真っ先に問われてくる政治とカネの問題や補正予算をめぐっての税制のゆがみや大軍拡の見直しのほか、国民が強く求める切迫した課題が山積しています。衆院での与党過半数割れで、その実現の可能性が開かれています。
自民党は、これを阻むために「103万円の壁」の引き上げと引き換えに「緊急経済対策」で国民民主党の協力を得るなど、野党の取り込みに必死です。
自民党の抵抗、妨害をはねのけ要求実現を進めるには、共産党が国民とともに草の根のたたかいを広げ、世論で包囲することが不可欠です。
何より総選挙では裏金問題を中心に「自民党ノー」の審判は下りましたが、政治の中身全体の転換については、十分な論議も選択もなされたとは言えません。
国民の暮らしを破壊してきた社会保障、労働法制、税制等をめぐる新自由主義的政策の転換、「日米同盟」の4文字で思考停止に陥り大軍拡と憲法破壊を進める政治の転換はここからが勝負です。
新しい政治に向けた国民の模索、探求は財界の利益最優先、米国言いなりの政治という「二つの異常なゆがみ」の是正に向かう必然性があります。しかし、それは自動的に進むとは言えません。
日本共産党の田村智子委員長は15日の都道府県委員長会議で、新しい探求が、「新しい政治に実を結ぶためには、国民的なたたかい、党の主体的・攻勢的たたかいが決定的な意味を持つ」と強調しました。
裏金疑惑を暴露・追及し現在の新しい政治局面を切り開く役割を果たした共産党だからこそ、国民と力を合わせて政治を変える大きなうねりをつくりだす力を発揮できます。