国民の通信情報を常時収集・監視し、政府の判断で警察・自衛隊がサーバーに侵入・「無害化」できる「能動的サイバー防御法案」が4日の衆院内閣委員会で一部修正され、自民、立民、維新、国民民主、公明などの賛成多数で可決しました。日本共産党と、れいわ新選組は反対しました。
私が反対討論に立ち、反対理由の第一に「『通信の秘密』を根本から覆す違憲立法だ」と主張。政府が送受信者の同意なく通信情報をコピーでき、基幹インフラ事業者や民間事業者と協定を結べばその利用者の情報を取得できると指摘しました。「自動選別」でIPアドレス(ネットワーク上の住所)など機械的情報のみを分析すると言うが「機械的情報」も「通信の秘密」だと強調。情報は外国政府にも提供可能で、事業者と協定を結めば警察や自衛隊などが自らの業務に使用することも可能だと批判しました。
第二に「憲法と国際法が禁じる先制攻撃に踏み込む危険がある」と指摘。政府は「アクセス・無害化措置」の違法性を阻却(取り外すこと)できると言うが、それは国際社会の共通認識となっておらず相手国の同意がないまま、「疑い」だけで実行すれば「国際法違反の先制攻撃とされる危険は否定できない」と強調しました。
安保法制に基づく「重要「影響事態」などの際、米軍が軍事行動を行う相手国に対し同措置を実施できるとしていることに対し、先制的に実施すれば「『参戦』と見なされる。憲法9条を踏みにじり、戦争の危険を呼び込むもので断じて容認できない」と批判。警察が令状なしに、犯罪処罰を超えて安全保障にかかわる域外実力行使が可能なことは令状主義の形骸化と警察権力の肥大化をもたらすと断じました。
以下、反対討論の全文です。
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私は、日本共産党を代表して、いわゆる「能動的サイバー防御」法案に、反対の討論を行います。
第一の理由は、「通信の秘密」を根本から覆す違憲立法だからです。
本案は、サイバー攻撃の実態把握のためと言って、送受信者の同意なく、政府が通信情報をコピーできるとしています。さらに自治体を含む基幹インフラ事業者に加え、あらゆる民間事業者と協定を結び、その利用者の情報を吸い上げることを可能とします。国民の「通信の秘密」侵害法案に他なりません。
自動選別によりIPアドレスなど機械的情報のみを分析するといいますが、機械的情報も「通信の秘密」の対象であることは政府も認めたではありませんか。
また、収集した情報は、外国政府など第三者提供も可能です。そもそも個人情報の原則は、必要以上に収集しないこと、目的外利用や第三者提供は事前に本人同意を得ることです。政府がこれらをことごとく無視するのは極めて重大です。
国民への監視強化の危険も深刻です。協定で得た情報は、目的外利用も可能でその範囲に制限はなく、警察や自衛隊などが自らの業務に使用することも政府は否定しませんでした。まさに公安警察が個人情報を収集・保有、提供したことについて違法と断じた大垣事件の判決をないがしろにするものであり、全く容認できません。
第二に、自衛隊と警察が、憲法と国際法が禁じる先制攻撃に踏み込む危険があるからです。
政府も認めるように、サイバー攻撃に関する世界の共通認識はいまだ形成途中です。そのような中、「アクセス・無害化措置」を海外の機器に対して行えば、相手国から主権侵害と受け取られる危険があります。政府は国際法上の緊急状態によって違法性を阻却できると言いますが、国際社会の共通認識とはなっていません。にもかかわらず、相手国の同意もなく、しかも「疑いがある」だけで、そのような措置にふみきれば、国際法違反の先制攻撃と評価される危険は否定できません。
さらに政府は、自衛隊がいわゆるグレーゾーン事態や重要影響事態で、米軍が軍事行動を行う相手国のサーバーに措置できることを認めました。日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず、先制的に無害化措置や通信防護措置にふみきることになれば、日本の側から参戦してきたとみなされかねません。憲法9条をふみにじり、日本に戦争の危険を呼び込むもので、断じて容認できません。
また、警察が犯罪処罰を超えて安全保障に関わる域外の実力行使にふみこむことは、日本の警察のあり方を根底から覆すものです。こうした行為を裁判所の令状さえなく、第三者機関の承認などというまやかしで容認することは、令状主義の形骸化と警察権力の肥大化をもたらすもので全く認められません。
なお、修正案は、法案の問題点を改めるものではなく賛成できません。
以上、憲法と国際法をふみにじる本法案の廃案を求め、討論を終わります。
先制攻撃に道開く危険/能動的サイバー法案 衆院内閣委で可決/塩川氏が反対討論
国民の通信情報を常時収集・監視し、政府の判断で警察・自衛隊がサーバーに侵入・「無害化」できる「能動的サイバー防御法案」が4日の衆院内閣委員会で一部修正され、自民、立民、維新、国民民主、公明などの賛成多数で可決しました。日本共産党と、れいわ新選組は反対しました。(関連2面)
日本共産党の塩川鉄也議員が反対討論に立ち、反対理由の第一に「『通信の秘密』を根本から覆す違憲立法だ」と主張。政府は送受信者の同意なく通信情報をコピーでき、基幹インフラ事業者や民間事業者と協定を結べばその利用者の情報を取得できると指摘しました。「自動選別」でIPアドレス(ネットワーク上の住所)など機械的情報のみを分析すると言うが「機械的情報」も「通信の秘密」だと強調。情報は外国政府にも提供可能で、事業者と協定を結べば警察や自衛隊などが自らの業務に使用することも可能だと批判しました。
第二に「憲法と国際法が禁じる先制攻撃に踏み込む危険がある」と指摘。政府は「アクセス・無害化措置」の違法性を阻却(取り外すこと)できると言うが、それは国際社会の共通認識となっておらず相手国の同意がないまま、「疑い」だけで実行すれば「国際法違反の先制攻撃とされる危険は否定できない」と強調しました。
安保法制に基づく「重要影響事態」などの際、米軍が軍事行動を行う相手国に対し同措置を実施できるとしていることに対し、先制的に実施すれば「『参戦』と見なされる。憲法9条を踏みにじり、戦争の危険を呼び込むもので断じて容認できない」と批判。警察が令状なしに、犯罪処罰を超えて安全保障にかかわる域外実力行使が可能なことは令状主義の形骸化と警察権力の肥大化をもたらすと強調しました。