【内閣委員会】金属盗対策法案/小規模太陽光発電事業者への支援を/衆院委で可決

 金属窃盗による被害防止を目的とした金属盗対策法案が23日、衆院内閣委員会で可決され、日本共産党は賛成しました。質疑において私は金属窃盗の実態について確認。警察庁によると、統計を取り始めた2020年と最新の2024年について比較すると、発生件数は5500件程度だったのが約4倍の2万件強へと、被害総額は25億円程度だったのが6倍近くの約140億円となっています。中でも太陽光発電設備における銅製のケーブルの盗難被害が特に深刻です。

 私は、被害にあった太陽光発電事業者の「盗難被害そのものはもちろん、売電収入が入らないことの減収が大きく、また今後の損害保険料への影響も心配だ」という切実な声を紹介。また、警察庁の検討会で、窃盗被害の急増に伴い、その被害が保険の補償適用外となり銀行の融資も受けられなくなるなどの実態に言及されていることも指摘。経産省の担当者は「憂慮すべき事態」としたうえで、「保険会社とも連携し対策を横展開していく、本案の成立で盗難が減少し引き受けが再開されることに期待」と答弁。私は、市民参加型など「小規模事業者には被害が重くのしかかる」と踏み込んだ支援を行うよう求めました。

 また、法案は一定のボルトクリッパーやケーブルカッターなど金属切断工具の「隠匿携帯」に対し罰則を設けており、工具箱やトランクに積んで運ぶことも当たり得ると警察庁は認めています。私は「濫用による人権侵害の懸念も生じる」と濫用防止の措置を求めたのに対し、坂井国家公安委員長は「具体的な運用基準を都道府県に示し不適切な運用を防止する」と答弁しました。

衆議院TV・ビデオライブラリから見る


「議事録」

第217回通常国会 令和7年5月23日(金曜日)内閣委員会 第23号

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 金属窃盗防止法案について質問をいたします。

 多発する金属窃盗事件に対し、その防止策としての本法案ということであります。

 金属窃盗全体の被害の実態についてまず確認したいと思います。二〇二〇年から二〇二四年の件数の推移と比較、被害額の規模についてどうなっているのか、また、品目別、材質別の件数についても明らかにしていただきたいと思います。

○檜垣政府参考人 お答えいたします。

 金属盗の認知件数につきましては、二〇二〇年は五千四百七十八件であったのに対し、二〇二四年は二万七百一件と約四倍に増加しております。また、金属盗の被害額につきましては、二〇二〇年は約二十五億円であったのに対し、二〇二四年は約百四十億円と約六倍に増加しているところでございます。

 二〇二四年の金属盗に係る品目別の被害状況につきましては、金属ケーブルが八千九百十六件と最も多く、次いでグレーチングが千六百九十八件、金属管が九百二十八件となっております。

 二〇二四年の金属盗に係る材質別の被害状況ですが、銅が一万一千百九十一件と最も多く、次いで鉄が三千五百三件、しんちゅうが千百四十七件となっております。

○塩川委員 この四年間で認知件数が四倍、被害額は六倍ということでありますし、品目別では金属ケーブルの件数が過半を占め、また、材質別では銅がやはり過半を占めていると。そういう点でも、太陽光発電のケーブルの盗難というのは非常に大きいというのがこういうところにも表れていると思います。

 私がお話を伺った方でも、栃木県の那須町で太陽光発電所を設置をした事業者の方がいらっしゃいます。三月の二十九日に突然発電が止まったというような通知があって、何だろうと思ったら、ケーブル盗難の被害を受けていたということでありました。

 やはり、盗難被害による損害とともに、売電収入が入らないといった点での減収というのは非常に大きいということを訴えておられました。損害保険に入っていて、ケーブルの盗難については保険がかかったんだけれども、売電収入についての保険まで手当てしていなかったので、その分はもろに減収にかぶってくると。今、損保の保険料率も上がっているというので、次の契約時にはどうなるのかと強く心配の声を上げておられるということを、改めて今日の審議を通じても非常に重大な点だなと受け止めていたところであります。

 そこで、保険の問題についてまずお聞きしたいんですけれども、太陽光発電の事業者にとって、盗難の増加の被害が深刻であります。警察庁の検討会においても、この盗難の被害が保険の対象外となり、結果として、銀行から融資を受けられず、事業が継続できないなどの影響について指摘がありました。

 経産省にお尋ねしますが、このような太陽光発電のケーブルの盗難という事態が頻発をしている、こういう状況について、このことは再生可能エネルギー推進への大きな悪影響になるのではないのかと思いますが、その点についての認識を伺います。

○伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 再生可能エネルギーは、地域との共生と国民負担の抑制を前提に最大限導入していくということが政府の基本方針となってございます。今後、更なる再エネの導入拡大が必要な中で、委員から御指摘がありましたとおり、太陽光発電に関して、盗難に起因しまして、保険会社において保険の引受け等に影響が生じているケースがあると認識しております。太陽光発電における盗難事案の多発は、犯罪行為であることはもちろん、再エネの長期安定電源化の観点からも大変憂慮すべき事態であると認識してございます。

 こうした事態に対して、経産省としても、警察庁そして都道府県警と連携をいたしまして対応すべきものと考えており、再エネ発電事業者に盗難事案の情報を広域的に提供するとともに、保険会社とも連携しながら、業界団体が取りまとめた防犯対策を横展開し、効果的、効率的に盗難リスクの低減を図っていくこととしているところでございます。

 本法案の成立により、盗難が減少し、保険会社による保険引受け等が再開されることを期待しております。

 引き続き、警察庁と連携をいたしまして、盗難事案の発生に適切に対応するとともに、太陽光の導入拡大にしっかりつなげてまいりたいと存じます。

○塩川委員 長期安定電源化にとって憂慮すべき事態ということで、資源エネルギー庁としても、昨年十二月には、保険の在り方の検討のために、被害実態を聞くアンケートも行っていると承知をしております。

 やはり、保険の対象外となるようなことも深刻な事態ですし、保険料率が大きく上がるということも、このような再生可能エネルギーの普及にとっての一つの大きな支障、障害にもなりかねないといった点について、今若干のお話があったんですけれども、より踏み込んだ対応策が必要なんじゃないのか。こういった支援策についてどのように考えるのか、この点についてお答えください。

○伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御指摘いただきましたとおり、エネルギー政策、とりわけ再生可能エネルギーの推進にも大変影響を与えるということでございまして、盗難事案の発生に対しては、再エネ発電事業者に盗難事案の情報提供等を行っているところでございますが、引き続き、事業者団体と連携しまして、とりわけ小規模事業者に対しても情報が行き届くようにしっかりと配慮してまいりたいと存じます。

 その上で、太陽光発電事業に対しては、引き続き、事業の規模また形態に応じてFIT、FIP制度に基づく支援を講じていくこととしております。

 さらに、太陽光発電事業に限らず、とりわけ小規模事業者支援をする観点からは、各地の商工会、商工会議所やよろず支援拠点などを通じた相談対応、また、日本政策金融公庫等を通じた資金繰り支援などを通じ、きめ細かく支援を行ってまいりたいと存じます。

○塩川委員 事業者、特に小規模事業者についての話がありました。もちろんメガソーラーの被害もあるわけですけれども、やはりこういった再生可能エネルギーに当たっては、市民参加型の太陽光発電などの取組も進んでいるところであります。そういった方々にとって、こういった盗難被害というのは非常に重くのしかかる。私が紹介しました方もそういった市民参加型の太陽光発電所の運営をされておられる方でもありまして、再生可能エネルギーの普及に障害となるようなものを取り除いていく、こういうことが必要だ。

 その点で、警察庁にお尋ねしますけれども、今回の太陽光発電に係る盗難事件について、規模別でのデータというのはないのか。そういう意味では、メガソーラーと中規模、小規模、こういった形で整理をして、その被害の特徴などを明らかにしていく、こういうことが必要ではないのかなと思うんですが、その点について、警察庁はいかがでしょうか。

○檜垣政府参考人 お答えいたします。

 まず、先ほど、答弁の際にちょっと数字を誤った部分がございまして、訂正させていただきます。

 二〇二四年の金属盗に係る品目別の被害状況で、金属ケーブルにつきまして八千九百十六件と申し上げましたが、正確には一万一千四百八十六件でございました。訂正させていただきます。誠に済みませんでした。

 今の御質問のところでございますが、太陽光発電施設におけます金属盗の規模別の被害状況、これについては、警察庁では正確には把握できておりません。ただ、警察庁で開催しました金属盗対策に関する検討会においてヒアリングを実施した太陽光発電施設に係る業界団体の方々が実施したアンケートによれば、低圧事業者、高圧事業者、特別高圧事業者のうち、被害件数が多いのはやはり高圧事業者であり、また特別高圧事業者については被害額が非常に多額に上っているということでございました。

○塩川委員 是非、実態を正確に把握をして、それにかみ合った対策、支援策というのを講じていただきたい。特に、小規模事業者の施策の推進につながるような、そういう取組を強く求めたいと思います。

 次に、特定金属切断工具の隠匿携帯の禁止に関してお尋ねします。

 犯行に使われる工具に対する規制もあるということで、本案は十五条で、ボルトクリッパーやケーブルカッターなどの工具を隠匿して携帯することを禁止とし、また違反した場合、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に科すとしています。

 この隠匿して携帯とはどのようなことなのか。例えば、車のトランクに入れてあるとか、あるいは工具箱に入れて運ぶといったことも含まれるんでしょうか。

○檜垣政府参考人 お答えいたします。

 指定金属切断工具の隠匿携帯規制に該当するかどうかにつきましては、個別具体の事例に基づいて判断していくこととなりますが、携帯している方の職業や携帯している状況、携帯に係る動機、目的、時間的、場所的合理性といった要素のほか、そういった要素を勘案いたしまして、正当な理由の有無、隠していると認められるかどうかを総合的に判断することとなります。

 その上で、一般論として申し上げますれば、御指摘のような事例につきましても隠匿携帯に該当し得るものがあると考えております。

○塩川委員 ですから、トランクに入っていました、それが隠匿という形になる。あるいは、工具箱に入れている、普通でしょうけれども、それも隠匿携帯、外形的にはそうなると。もちろん、様々な案件を総合的に勘案しての正当な理由かどうかというところでしょうけれども。

 こういった工具というのは、事業をやっている方はもちろん、一般の家庭でも、例えばDIYをやっているような方々、日曜大工などの際にも使う可能性もあります。農家の方でお持ちの方なんかもあるわけであります。そういったものを携帯するだけで罰則に問えるという、そういう権限を警察に与えることで、それが濫用されることによる人権侵害の懸念も生じるところであります。

 坂井国家公安委員長にお尋ねをいたしますけれども、指定金属切断工具について、何を政令で指定をするのか、また、取締りに当たって、立法時の意図に反して、解釈の拡張とならないような濫用防止の措置をどのように行っていくのか、この点についてお答えください。

○坂井国務大臣 一般家庭における工具の使用実態、盗難の多い金属製物品の特徴、犯行用具の使用実態等を考慮をし、金属ケーブル窃盗に用いられることが多い、高い切断能力を有するケーブルカッター及びボルトクリッパーを指定金属切断工具として政令で指定することを現在検討しております。

 具体的にどのようなものかということでございますが、警察庁において開催された検討会で、工具メーカーの業界団体によって、盗難実態の多い外径二センチメートルを超えるケーブルを切断するには、ケーブルカッターであれば四百五十ミリメートル以上の全長、ボルトクリッパーであれば七百五十ミリメートル以上の全長か、又は電動、油圧等の特殊な機構を備えていることが必要だ、ボルトクリッパーもケーブルカッターも、基本的には一般家庭用の道具ではなく、一般の方が持ち歩くことはまずないと考えられ、その流通量も、一般的な工具であるニッパーと比較するとかなり少ないという見解が示されたこと等を踏まえ、こうした一定以上の長さか特殊な機構を備えるケーブルカッター及びボルトクリッパーを指定していくことを検討しております。

 そして、本法律案の運用に当たっては、濫用という御指摘がありましたが、そういったことが起きないように、適正な運用が全国で斉一的に行われるべく、都道府県警に対して、具体的な運用基準を示して、その基準を徹底し、不適切な運用の防止に万全を期すよう指導してまいりたいと思います。

○塩川委員 そういう意味では、政令で更に追加することもあり得るということもありますので、この政令への指定についての必要最小限のものを定めていくという立場と、恣意的な運用にならないという点についての厳しく徹底をいただきたい、このことを求めて、質問を終わります。