議員立法で提出された福島県議選特例法案について質疑、わが党の修正案を提出した。
原発事故で国の避難指示による住民避難が続いている状況に鑑み、福島県議会議員の選挙区について特例措置を講じてほしいという福島県議会からの要望を重く受け止めている。
国勢調査人口と選挙人名簿の基礎となる住民基本台帳人口との間のかい離に対処するため、特例法を立法することは必要だ。自民党らが提出した法案の問題点を指摘し、わが党の修正案を提示した。
「議事録」(質疑)
<第196通常国会 2018年04月04日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 2号>
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
福島県議会議員選挙の選挙区特例法案について質問をいたします。
日本国憲法は、国民主権、議会制民主主義の基本理念のもと、主権者たる国民が政治に参加する手段として選挙制度を位置づけております。また、地方自治は、選挙によって住民の意思が示されることで、住民の意思に基づき、自治体みずからの意思と責任を持って役割を果たしていくことを明記しております。
憲法上の権利行使にとっても、住民の意思を議会、首長に反映した地方自治を行うためにも、選挙が重要であることは言うまでもありません。
そこで質問ですが、まず、本案を提出する趣旨、目的は何かという点です。
二〇一七年五月に、福島県議会から、原発事故で国の避難指示による住民避難が続いている状況に鑑み、福島県議会議員の選挙区について特例措置を講じてほしいという要望をいただきました。この要望を重く受けとめております。
現状の双葉郡選挙区は、五万五千人の有権者が投票やまた被選挙権の行使ができ、そのもととなっている住民基本台帳人口は六万五千人で、直近の国調人口のほぼゼロに近い数字と大きく乖離をしているわけであります。公選法では直近の国勢調査に基づいて選挙区設定と定数配分をすることが定められておりますが、直近の国調の人口では実態に合っておりません。
そこでお尋ねしますが、直近の国調の人口では実態に合っていないので、実態に基づく人口を用いるための特例を講じる必要があるということは、各党とも認識が一致しているのではないかと思いますが、この点を確認したいと思います。
○谷議員 私、震災復興の委員長ですので、余り、答弁は遠慮していたんですけれども、塩川委員おっしゃるとおり、何らかの特例を法律、特例法で手当てしなければならないという点は、共産党も含めて各党一致していると思います。
○塩川委員 実態に基づく人口を用いるための特例を講じることが必要だという点については、この点、各党とも異論はないところだと思っております。
このことを踏まえてお尋ねしますけれども、そもそも住民や有権者の実態に基づく人口を用いるための特例を講じることが、今回の立法の土台であると考えております。
そこで、続けてお尋ねしますが、提出者の逢沢一郎自民党選挙制度調査会長は、法案提出に当たり、ツイッターにおいて、復興、住民の帰還を進める福島県双葉郡の県議定数を確保する法案と発信をしておられます。
事務方では、双葉郡選挙区定数二維持のための法案ではないと整理していると述べておりますが、これでは双葉郡定数二維持のための法案ととられるのではないのか。なぜ、双葉郡の強制合区阻止、定数二維持を趣旨とした法律にしていないのか。このことを正面から趣旨とすると、憲法九十五条の住民投票を伴う特別法としなければならず、これを回避するためということになるのではないでしょうか。
○逢沢議員 委員御指摘のように、本法律案は、福島第一原子力発電所の事故による災害が発生をいたしまして、国による避難指示が出された避難指示区域等において多数の住民が住民票を残したまま避難をすることを余儀なくされておることにより、国勢調査人口と選挙人名簿の基礎となる住民基本台帳人口との間に大きな乖離が生ずるという異例の状況を受けたものであります。中でも、特に委員御指摘の双葉郡につきましては、平成二十七年の国勢調査人口の七千三百三十三人が、平成二十二年の国勢調査人口七万二千八百二十二人に比べ九割減となっております。平成二十七年国勢調査人口を基礎といたしますと選挙区や定数を維持することができないというのは、厳然たる事実であります。
このような状況を踏まえ、既存の法制度との整合性を確保しつつ、原発事故の避難指示区域等において特例人口を用いることができるようにして、もって県議会において当該地域の代表を確保しようとするものであります。
当該地域の住民の声を県政に十二分に反映をさせることができるようになるものと考えております。御理解をいただけるものと承知をいたしております。
○塩川委員 公明新聞を拝見しますと、「福島県内の一部市町村の声を県政に十分反映させることが目的。」と述べておられます。地方自治にとって、住民の意思を自治体に反映させることは極めて重要であり、その中心的役割を果たすのが地方議員であり、意思決定機関としての議会の役割だと考えます。
議会は、一部の住民の声だけ十分に反映させればいいというものではありません。この一部市町村の声を十分に反映させることが目的という意図、この公明新聞の報道ではありますけれども、この点について、お聞きできないでしょうか。
○佐藤(茂)議員 塩川委員の御質問にお答えいたします。
今御引用いただいたのは、三月三十日の公明新聞でございますが、その引用いただいた部分の前段がございまして、「同法案は、東京電力福島第一原発事故による避難指示で人口が激減した、福島県内の一部市町村の声を県政に十分反映させることが目的。」である、こういうように記載をしているわけでございます。
これは、先ほど逢沢委員も述べられていたんですけれども、やはり、今回の法の目的にも関係するんですけれども、国による避難指示が出された避難指示区域等において、多数の住民が住民票を残したまま避難することを余儀なくされていることによって、この国勢調査人口と選挙人名簿の基礎となる住民基本台帳人口の間に大きな乖離が生じているという、この異例の状況を受ける中で、放置しておくと、この双葉郡を始め避難指定区域の幾つかの中で、県議会において当該地域の代表を確保できなくなる、こういう事態を避けるためにも、今回、特例人口を用いることができるようにして、もって県議会において当該地域の代表を確保しようとするものであって、これによって、当該地域の住民の声を県政に十分に反映させることができるようにするのが今回の法目的である、そういう趣旨のことをこの公明新聞では記事として述べさせていただいているということを御理解いただきたいと思います。
○塩川委員 今答弁にもありましたように、やはり、国調人口と、選挙人名簿のもととなるその住民基本台帳人口に大きな乖離がある、これはやはり、その人口の実態に合わせたものにしていくことが必要なんだ、この点での特例を設けることが必要だ。ですから、何か定数二を維持するのが先にあるような話ではそもそもないということは指摘をしなければなりません。
参政権、国民主権、地方自治の観点から、そういった定数二ありきというのは問題がある。住民、有権者の実態に基づく人口を用いるための特例を講じるということが立法措置の土台であるべきだということを、重ねて申し上げておくものであります。
次に、我が国の選挙制度は、憲法で、普通選挙、平等選挙を宣言し、公職選挙法で人口比例に基づく選挙区設定、定数配分を原則としております。その基礎となる人口は同一のものであることは大前提だ。
そこでお尋ねしますが、同一選挙でありながら一部の区域だけ特例人口を用いるという、このダブルスタンダードというのは、平等選挙の原則と異なるのではありませんか。
○根本(匠)議員 まず本法案の趣旨はもう御説明があったとおりであります。
この法案の趣旨、これは繰り返しになりますが、福島第一原子力発電所の事故による災害が発生し、国による避難指示が出された避難指示区域等においては、多数の住民が住民票を残したまま避難することを余儀なくされている、この異例の状況を受けて、公職選挙法の特例を定めるものであります。このような状況にある地域に限って特例人口を適用することにより、この異例の状況に対処しようとする、これが本法案の趣旨であります。
選挙制度の分野においては、従来から一貫して国勢調査人口を用いてまいりました。その特例を設けるに当たっては、必要な範囲に限って補正しつつも、国勢調査人口を用いるという基本的な考え方は、これだけは、これはできるだけ維持すべきであると考えております。本法案では、その意味で、特例人口の適用範囲を最小限に絞り込むこととしたものであります。
今、選挙の原則という御指摘もありました。公職選挙法上は、国勢調査人口を用いるというのが、いわば原則であります。そして、これに加えて、地方選挙においては、地方住民の声を反映するため、地域の代表を確保するというのも大切な原則であると考えております。公選法の原則を維持しつつも、この異例の状況に対応するために、最小限の範囲で特例人口の適用を認めることとしたものであります。
○塩川委員 ですから、国調人口を用いる、その特例の部分を小さくという趣旨でおっしゃるんですけれども、でも、同一の選挙なんですから、同一の選挙において二つの人口基準を設けるというあり方がいいのかということで質問をしているわけです。
地域代表という話もありましたけれども、県議は地域代表の役割があるから、じゃ、この平等選挙の原則を外れてもよいという話は、理にかなっていないと思います。
公選法は、国会議員とは異なり、県議の地域代表の役割を鑑みて、一定の一票の格差を許容しているのであって、人口比例というのは原則であります。あらかじめかさ上げした人口で定数配分するということを想定するものではないということも申し上げておきたいと思います。
東日本大震災、原発事故による福島県の避難者の方、多数まだいらっしゃる。住民票を残したまま県内外に避難をしておられます。県内避難者の方々も数多くおられ、一部の区域だけ特例人口を用いると、例えば、浪江町から福島市に避難をしておられる方、住民の方は、浪江町と福島市の両方の人口に含まれる。つまり、住民票を残している、ですから住基台帳に記載がされている浪江町でカウントされ、しかし、国調では現に居住している方ですから、そこでもカウントをされるというダブルカウントになるということであります。
一方、特例人口を用いない区域でも、住民票を残したまま避難しておられる方もいるわけですが、こういった自主避難者は県内の国調人口にはカウントされていないということにもなります。
そこで、質問ですが、この法案では、一部は特例でかさ上げした人口、ある地域はダブルカウントで水増しをした人口、一方で、他の地域は自主避難者が目減りした人口、こういう形で、人口基準のあり方として、それぞればらばらになることになってしまうんじゃないのか。この点については、どのように受けとめておられますか。
○金子(恵)議員 お答えいたします。
いわゆるダブルカウントについての御質問がまずあったんですが、本法案では、特例人口を用いる地域を限定いたしました。それは、特例人口の適用範囲を必要最小限に絞り込むことが、国勢調査人口を用いるという公職選挙法の原則に忠実であり、また、原発事故の避難指示区域等の状況に鑑みて特例を設けるという本法案の趣旨に合うと考えたからでございます。
委員御指摘の点ももちろん考慮いたしましたが、その上で、今申し上げました公職選挙法の原則等を重視して、特例の適用を必要最小限に絞り、それ以外の市町村については、公職選挙法上、本来用いるべき国勢調査人口を用いることにしたということを御理解いただきたいというふうに思います。
自主避難者についての配慮ということでございますけれども、特例人口を用いない区域からの避難者の数がその地域の人口に適切に反映されているのかとの御指摘がありました。
この点、本法案の共通の事情を背景とするものとして、いわゆる避難住民事務処理特例法が既に制定されていますので、本法案では、同法における指定市町村の枠組みをそのまま引用し、同法の指定市町村からの避難者にまず着目しているという状況であります。
その上で、本法案については、避難指示により住民票を残したまま多数の住民が避難した地域に限って特例人口を用い、それ以外の地域については原則どおり国勢調査人口を用いることにしております。これにより、公職選挙法の原則を忠実に踏まえつつ、全体として県議会において適切な定数配分を確保できると考えております。
その意味で、法的な整合性を維持しながら、避難者の方々を含めた住民の適切な代表を確保できると考えたところでございます。
○塩川委員 特例は狭い方がいいという趣旨でお話をされておられるわけですが、そういう意味でも特例は限定的であるべきだと。福島県議選という一つの選挙でありながら、一部の区域だけ別の人口を用いて異なる基準にするということは、特例に特例を重ねるようなものではないのか。
被災地に着目をしての事務処理特例法の話が今ありました。福島県議会の関係者の方からお話を聞いた際に、事務処理特例法も限定的なもので、屋内退避は入っていないとか、避難を受けた人がそのまま指定市町村というものではないとか、福島県全域が被災地ではないのかという声もいただいているところです。
事務処理特例法の、指定市町村から選んだ市町村だけを被災地と見るような話というのは、県民の理解を得られるのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
○根本(匠)議員 特例人口を用いる対象となる市町村を指定市町村のうち条例で定める市町村としたのは、繰り返しになりますが、公職選挙法の原則である国勢調査人口を用いることがどうしても適切であるとは言えない市町村に限って、必要最小限の範囲で特例人口を用いることとしたためであります。
これは、本法案と共通の事情を背景にするものとして、ただいま金子議員からも話がありましたが、原発事故の被災地からの避難者を対象とする避難住民事務処理特例法が制定されておりますので、まず、同法における指定市町村の枠組みをそのまま引用することとしています。まず前段として、そのまま引用する。そして、いわば原発事故の被災地ともいうべき指定市町村に着目して、その上で、国勢調査人口の減少率が著しいという基準を加味して特例人口を用いる対象となる市町村を定めるということであって、決して特例人口を用いる市町村のみを被災地として見るという考え方に立ったものではありません。
また、福島県議会の最新の要望書、これは県議会全体としての最新の要望書、この要望書においては、避難指示があった区域で、平成二十七年国勢調査の人口が平成二十二年国勢調査の人口を著しく下回る結果となった区域において、特例の通知を当該区域の人口とみなすことを可能とする臨時特例法を今通常国会において速やかに制定していただきますよう特段の御配慮をお願いいたしますと。要は、県民の声を代表する県議会からもこのような要望書をいただいておりますということをつけ加えたいと思います。
○平沢委員長 塩川君、時間が来ましたので、手短にお願いします。
○塩川委員 最後にお尋ねしますが、同一の選挙にダブルスタンダードを持ち込むということは、平等選挙の原則を崩すものと言わなければなりません。平等選挙の原則は議会の民主的正統性の基盤であり、これが崩れては、地方自治も崩れてしまいかねない。参政権、国民主権、地方自治の観点から見れば、本案の問題点を解消し、特例人口を福島県全域で適用することが、選挙の一貫性を貫き、福島県民の意思を議会に反映させることになると考えますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
○國重議員 委員御指摘のように、県内全域で特例人口を用いて次の県議会選挙という特定の選挙の中での整合性をとっていくという考え方も、一つのお考えではないかと思います。
本法案の検討段階においてこうした点ももちろん考慮に入れていたところではありますが、公職選挙法などの既存の法体系との整合性という観点を重視するという判断で、避難指示区域等に限定して特例人口を用いることができるようにしたものであります。
県内全域で特例人口を用いることとした場合、本法案が原発事故による避難指示によって国勢調査人口と住民基本台帳人口の間に大きな乖離が生じている地域があることを契機として特例を定めるものであって、こうした地域以外にも特例人口を適用するのは本法案の趣旨を超えるのではないかといったことや、選挙制度の分野においては従来から一貫して国勢調査人口を用いてきたところであり、その特例を設けるに当たっては、必要な部分は補正しつつも、基本的な考え方はできるだけ一貫させ、例外は必要最小限とすべきではないかといった点が課題となるとも考えたところであります。
このような理由から、特例人口の適用範囲は必要最小限に限り、それ以外の地域では国勢調査人口を用いることとしておりますが、これによって、国勢調査人口を用いるという公職選挙法の原則を維持しつつも、全体として福島県民の意思を議会に反映することができるような適切な定数配分が確保できるものと考えているところであります。
○塩川委員 福島県議選という同一の選挙で人口基準が二つというのは、これはいかがかというところが出発点で、それを土台に本来考える措置ではないのか。我が党としては修正案を提出するつもりであります。
以上で終わります。
「議事録」(修正案の提案理由説明)
<第196通常国会 2018年04月04日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 2号>
○塩川委員 東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するための避難住民に係る事務処理の特例及び住所移転者に係る措置に関する法律に規定する指定都道府県の議会の議員の選挙区に関する臨時特例法案に対する修正案の提案理由説明を行います。
ただいま議題となりました修正案について、日本共産党を代表し、その理由、内容を御説明申し上げます。
我々は、国の避難指示による住民避難が続いている状況に鑑み福島県議会議員の選挙区について特例措置を講じてほしいという福島県議会の要望を重く受けとめております。すなわち、国勢調査人口と選挙人名簿の基礎となる住民基本台帳人口との間の乖離に対処するため、特例法を立法する必要があるという認識は、原案提出者とも共有しております。
ただし、選挙区及び定数のあり方は、住民の代表をどう選ぶかという選挙権のあり方の基本にもかかわる問題です。このことからすれば、公職選挙法が原則としている人口比例に基づく定数配分の基礎となる人口は、同一の選挙においては、全ての地域で同一の基準であるべきです。この点、原案は、同一の選挙でありながら、定数配分の基礎となる人口に異なる基準を用いるものであり、また、二〇一五年国勢調査人口が二〇一〇年国勢調査人口を著しく下回る市町村とは何かについて、明確な基準があるのかとの懸念もあります。
そこで、本修正案においては、人口の特例の適用対象となる区域について、二〇一五年国勢調査人口が二〇一〇年国勢調査人口を著しく下回る市町村の区域に限らず、指定都道府県の全域とすることとしております。
以上が、本修正案の提案の理由及び内容であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
「議事録」(修正案)
<第196通常国会 2018年04月04日 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会 2号>
[東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に耐処するための避難住民に係る事務処理の特例及び住所移転者に係る措置に関する法律に規定する指定都道府県の議会の議員の選挙区に関する臨時特例法案に対する修正案]
東日本大震災における。原子力発電所の事故による災害に対処するための避難住民に係る事務処理の特例及び住所移転者に係る措置に関する法律に規定する指定都道府県の議会の議員の選挙区に関する臨時特例法案の一部を次のように修正する。
第二条中「をいい、「指定市町村」とは、同条第一項に規定する指定市町村」を削る。
第三条第一項中「指定市町村であって平成二十七年の国勢調査の結果による人口が平成二十二年の国勢調査の結果による人口を著しく下回るものとして当該条例で定めるもの」を「市町村」に、「、同年」を「、平成二十二年」に改め、同条第三項中「又は当該条例で定める指定市町村」及び「又は指定市町村」を削る。